いしだあゆみが亡くなった。
大好きな女(ひと)だった。
J.C.が長い人生において
ブロマイドを買ったのは彼女ただ一人。
中学一年生のときは夢中だった。
日をあらためて彼女を語りたい。
それはともかく、
ようやくドラえもんが何処かへ飛んで
神保町シアターの新しい特集、
没後10年
原節子をめぐる16人の映画監督
が始まった。
16人の異なる監督による16本が
上映される予定だ。
さっそく2本観てきた。
最初は「河内山宗俊」(1936年 日活)。
監督は早世した山中貞雄。
応召した翌年、河北省・開封市で
戦病死したが才能を高く評価された。
宗俊役は河原崎長十郎(4代目)。
節子は甘酒屋を営む娘・お浪。
まだ15歳の若さである。
J.C.は今まで原節子を
美しいと思ったことが一度もないが
今回初めて彼女の魅力を感じとった。
多くの監督たちが揃いも揃って
彼女を重用した理由が判る気がした。
2本目は「巨人傳」(’38年 東宝)。
監督は伊丹十三の実父、伊丹万作。
ビクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル」が
原作ながら画面にクレジットはない。
ジャン・バルジャンの役柄は大河内傳次郎。
傅次郎の”傳”の字が
題名「巨人傳」の由来となったフシがある。
節子はコゼット役。
うん、やはり可憐で綺麗だ。
殊に目を閉じた寝顔には息を飲む。
当時としては長尺の2時間7分。
ほとんどの作品が1時間半そこそこなのに
観る者を飽きさせることがまったくない。
「河内山宗俊」、「巨人傳」の上映は
すでに終了したが
小津安二郎「麥秋」、黒澤明「白痴」、
熊谷久虎「智恵子抄」などが控えている。
熊谷久虎は節子の義兄(実姉の夫)で
彼こそが節子を銀幕の世界に
引きずり込んだ張本人。
節子は義兄を敬愛してやまなかったと伝わる。
女優・原節子という麥(麦)は
熊谷久虎が種を蒔き、
小津安二郎が刈り取ったと言ってよい。