2026年7月28日火曜日

第4145話 或る子鳩との出逢いと別れ (その2)

日医大病院の待合スペース。
(鳩かァ・・・今まで
 いろんなことがあったなァ)
つらつらと思い泛べていた。

あれは1974年。
J.C.はロンドンにいた。
ハンバーグ・レストランで
ウエイターをしていた。

そこの皿洗いが
ポルトガル領マデイラ出身の
セニョール・マルティン。
この人のことは前にも書いたが
英語がほとんど話せない。

店はハンバーガーも
主力商品につき、
バンズは売るほどある。
週にいっぺんくらいかな?
自分の休みの前日になると
マルティンはバンズを
手に店先に立つ。

目の前は地下鉄の
グロースター・ロード駅。
駅は洋の東西を問わず、
鳩の恰好の棲みかなのだ。

バンズをちぎって通りにまくと
鳩たちが一気に全羽集合。
押し合いへし合いパクパクパク。
よく食うったらありゃしない。

すると何気ない顔して
様子を伺っていたマルティン。
やおら一羽の鳩を捕まえると
アッという間に
首根っこをコキッ!
哀れ、鳩は天国へと旅立ち、
初めてそれを見たわれらは
度肝を抜かれたのだった。

そのあと鳩は
どうなるかというと
ライスや野菜と一緒に
スープ煮にされるそうだ。
食味は子鳩がいいらしい。
大きく育つと肉質が
硬くなるんだとー。

われわれスタッフは彼のことを
”ピジョンキラーのマルティン”、
そう呼んで怖れたものだった。
その後、故郷マデイラに帰ったが
当時、60代だったから
もう生きてはいないだろう。
天国でも鳩を
捕まえているのかな?

=つづく=