2014年6月13日金曜日

第859話 バンとオオバン 動物園こそわが楽園 Vol.11

ごぶさたしていた”動物園シリーズ”、いきます。
今話は水鳥のバンとオオバンが主役。
サブタイトルを見て
「何のこっちゃい?」―そう思われた読者も少なくないでしょう。
バンなんてあんまり耳にしませんものネ。

バンは漢字で鷭と書く。
したがってオオバンは大鷭。
ともにクイナ科に属する。
ちなみにクイナは水鶏と書くのだそうだ。
クイナといってもピンとこないが
沖縄のヤンバル(山原)クイナと聞けば、
ああ、あれかと思われる向きも多かろう。

その日は上野動物園の西園をぶらぶら。
池のほとりづたいに歩いていた。
ペリカンのたまり場とオオワシの番(つがい)の間あたりで
幸いにもオオバンを見つけた。

水鳥の中でもバン類は警戒心が強い。
人影に気づくと、すかさず水草の陰に逃げ込む性癖を持つ。
それでもここ数年はパンくずを放る人のもとへ、
カモメやキンクロハグロにつられて
あとからノコノコ現れるようにもなった。

その日のバンがコレ。
真鯉より小さいオオバン
特徴はクチバシが伸びたような額板。
真っ白ではなく、ほんのり薄紅色がさしている。
水かきはほとんどないが、そこそこ巧みに泳いでいる。

一方のバンはもっと小型、ハトと同サイズといったところか。
バンとは動物園の外、弁天堂前の天竜橋で遭遇した。
水かきがまったくない
したがって泳ぐには泳ぐが前のめりでずいぶん不恰好。
エッ? よく判らないってか?
それならコレでいかがでしょう?
あんまり変わらないってか?
なじみの薄い鳥ながら日本全国で見られ、
東日本では夏鳥、西日本では留鳥なのだそうだ。
ただし、東京近県の千葉・埼玉では準絶滅危惧種に指定されている。

いろいろと調べていて驚いたのは
何とこのバン、江戸時代には食味のよさで食通をうならせていたという。

何でも美味の象徴に三鳥二魚というのがあって
陣容は、雲雀・鷭・鶴に、鯛・鮟鱇。
魚に関しては現代と変わらないけれど、
江戸のグルメはとんでもない鳥たちを食していたんですねェ。
いや、ビックリ。