2014年6月24日火曜日

第866話 町屋の「ときわ食堂」 (その2)

早朝でも真夜中でも飲める町屋は呑ん兵衛の聖地。
中でもそのリーダー格ともいえる、
「ときわ食堂」の小上がりにあぐらをかいた。

本日の相方は鎌倉武士の末裔、P子嬢だ。
グラスのビールを飲み干し、
注がれるままに壁の品書きを見やる。
とにかく品数が多いので目移りしてしまう。
ハシからハシまでつぶさに吟味しているヒマはない。

そこでJ.C.の案じた妙案。
互いにつまみたいメニューを2品づつ選ぼうじゃないかというものだ。
持ち時間は3分。
そのあいだにそれぞれの注文品を決めた。
まず、P子が選んだのは
かにクリーム・コロッケとハンバーグ・エッグ。
いかにも洋食屋の献立である。

一方のJ.C.は水なすとイワシ天ぷら。
泉州岸和田産の水なすは今まさに旬を迎えている。
この地でしか収穫できないジューシーな逸品だ。
初夏のイワシもけして不味くはないハズ。
イワシは刺身や塩焼きより、フライや天ぷらが好きだ。

しかしながら、ここでふと思った。
P子のチョイスはまごうことなき若い娘の好み。
J.C.のは逆に年寄りくさい。
ジェネレーション・ギャップの差を痛感した。
まっ、いいか。

頼んだ4品はみなまずまず。
いや、200~400円の値段を考慮すれば立派なものである。
「ときわ食堂」は独立採算なので
一律に安価というわけにはいかない。
町屋店の値付けはひじょうに良心的だ。

接客しながら各テーブルを見回る女将が
われわれのもとにやって来た。
整った顔立ちは女将というより、ママといった感じ。
P子が盛んに言葉を交わしている。

オススメに従い、最後にお願いしたのは
新玉ねぎと玉子の炒め。
同時に飲みものを酎ハイに切り替える。
炒めものは焼酎にもよく合って
結果的にはこのメニューがベストであった。

ほろ酔いでフラフラと西日暮里まで歩き、
古都に帰ってゆく相方を見送る。
これから独り、谷中銀座の酒屋の店先で
冷たい生ビールを一杯やる心積もりであった。

「ときわ食堂」
 東京都荒川区荒川7-14-9
 03-3805-2345