2014年6月17日火曜日

第861話 試しに飲んだフローズン (その2)

大正時代には花街として栄華をきわめた神楽坂。
その中腹にある「龍公亭」にいる。
この街でもっとも古い中国料理店の一軒である。

たいした距離でなくとも
新宿から歩いてきたからノドが渇いた。
当然、冷えたビール、
それも好みの銘柄を晩酌の口切りとするのだが
その日はわけもなく気がまぐれた。

一番搾りのフローズン生を注文しちまったのだ。
それがコレ。
 泡がスムージー状態 
ミニストップのソフトクリームの親玉みたいでもある。
いきなりグイッとは飲めないので半分凍った泡を一なめした。
舌に残るのはなんだか奇妙なあと味。
楽しむよりも試しに飲んだのだから、さもありなん。
やはりなじみの薄いものは避けたほうが無難だ。

本日のおすすめメニューには、自家製腸詰め、
よだれ鶏、有頭海老のXO醤蒸しなどが並んでいる。
吟味して海老のチャイニーズトーストをお願いし、ビールの友とした。
ビールのアテにふさわしい
小品だから食べ応えはなくとも、まずまずのデキ。

店内を見渡すと1階がオープンキッチンになり、
以前よりずっとモダンになった。
接客スタイルは中国料理店よりも西洋料理店のそれに近い。
そのせいかワインを飲む客が目立つ。

トーストを食べ終えてもグラスの泡は消えない。
残った泡を箸で食べてしまった。
隣りの卓の客たちもかなりの確立でフローズン生を注文している。
ほとんどが女性だが、彼女らも箸で泡をかきまぜたりしている。
デザート好きの女性たちにとって恰好の手なぐさみになるらしい。

同じく一番搾りの中瓶に切り替え、五目焼きそばを追加した。
見た目は美味しそうじゃないか
鳥胸肉・小海老・いかなどが入り、
味はそこそこにして可も不可もない。
見映えがよいだけに、多少の不満は残った。

会計は3千円と少々。
割高感はまったくないけれど、
そりゃ大衆酒場よりは高くつくわな。

窓の外はまだ明るい。
宵の口もいいところである。
さて、これからもう1軒、
焼きそばを食べながら狙いを定めた、
気に入り店に出向くとしますかの―。

「龍公亭」
 京都新宿区神楽坂35
 03-3260-4848