2014年6月19日木曜日

第863話 背肝も肝も肝のうち (その2)

神楽坂の焼き鳥店「駒安」を初めて訪れた際のメモのつづき。

店主のポリシーでお通しは出さない。
あの手この手で収益増を図り、
具にもつかない駄品を出す店があふれるなか、
見上げた心意気と言わねばならない。
開店30分ほどで7席ほどのカウンターは満席。
みな近所の常連である。

焼き鳥は稀少部位の取り揃え多く、そこから攻めてゆく。
ふりそで(肩肉)、ハツモト(大動脈)、さえずり(食道)、
ハラミ、ソリ(モモのつけ根)は塩。
背肝(腎臓)×2、豚シロはタレ。

背肝はお替わりをするほどだった。
すべて旨いが豚シロはイマイチ。
腸壁の掃除が不じゅうぶん。
この店は豚もつを捨て、鳥の稀少部位に集中すべし。

周囲の客は常連にもかかわらず、
正肉、ねぎま、ささみ、つくねなどを注文している。
宝の山に気づいていない悲劇がここにある。
価格帯は1本、140円~220円。

焼き鳥の友・キャベジンはキャベツの浅漬け(250円)。
これがすばらしい。
きゅうりもタッブリ入り、
赤唐辛子の小口切りがよいアクセントで必注品目。
卓上のキッコーマンしぼりたて生しょうゆ本醸造とよく合う。

本日のメニューに、まぐろぶつ、ぶり大根(各480円)がある。
牛すじ煮込み(700円)にはこうあった。
“お好みでお入れします。豆腐100円、ニラ100円、キムチ150円”
実にユニークなアイデアだ。

会計は大瓶2本、焼き鳥7本、キャベジンで、2750円也。

メモにあるように、この店の焼きとんはダメ。
東京には名立たる焼きとんの名店が数あるが
その水準には遠く及ばない。
けして不味いわけではないけれど、一度試してそれきりにした。
ここは焼き鳥専門店として認識しておくことが大切だ。

前述の「文ちゃん」のように
焼き鳥の値頃感を完全に無視した焼き鳥屋があとを断たない。
しかもそんな高級店に限って部位の品揃えも少なく、
稀少な内蔵類には出会えない。

焼きとんはもとより、焼き鳥の醍醐味もまた、モツにとどめを刺す。
その点、「駒安」はいいですゾ。
ホントに好きだなァ。

=つづく=