2014年6月18日水曜日

第862話 背肝も肝も肝のうち (その1)

神楽坂の老舗中華料理店「龍公亭」をあとにして
向かったのは焼き鳥の「駒安」。
この街には「文ちゃん」なる焼き鳥の人気店があるが
そこはやたらめったら高い。
もはや焼き鳥の常識を超越していて庶民には高嶺の花だ。
何せ鮨屋並みの値付けだから
ほとんどの客が領収証を求めているのもうなづける。

 「文ちゃん」の店主は銀座の「武ちゃん」で修業を積んだ。
ところが本家とはまったく異なるスタイルを導入して
街のセレブに愛好され、利益を上げている。

いっぽうの銀座「武ちゃん」はぐっと庶民的。
店内の雰囲気や客あしらいに気取ったところがない。
上から目線で客を見下しているのはキジの剥製(はくせい)だけだ。
J.C.がどちらに肩入れするかは言わずも、
もとい、書かずもがな。

おっと本日の主役は「駒安」であった。
名は体を表すの言葉通り、この店は安い。
きわめて良心的である。
憶測だが、どうやら店主は新潟県・佐渡の出身らしい。
佐渡の高校が甲子園出場をはたしたときの新聞記事が
壁に貼りつけてあるし、
日本酒の取り揃えにも佐渡の銘酒が目立つ。
北雪(ほくせつ)を飲むこともできる。

すっきりとした切味の北雪にはあちこちで出会った。
もっとも高かったのは
竹筒入りではあるもののニューヨークの「Nobu」。
そう、ロバート・デ・ニーロがオーナーの店だ。
一番安いのは御徒町の「味の笛」かな。
何せ、300ml瓶が500円だもの。

「駒安」は初訪問でバッチリ気に入った。
その夜のメモを紹介してみよう。
訪れたのは去年の秋口であった。

小栗通りの東の突き当たり、
焼き鳥の「駒安」に開店時間の17時半に入店。
もちろん先客はいない。
カウンターのスツールが珍しくもビヤ樽だ。
樽には”SAPPORO”の刻印が記されている。
18時半になるとカウンターは一席残すのみ。
テーブルはノーゲスト。

スーパードライの大瓶と中ジョッキがともに580円。
しっかりしたサイズの中ジョッキだ。
瓶はサッポロ黒ラベルの用意もある。
すんなりドライの大瓶を所望した。
ビールはよく冷えてうまし。
御徒町の角打ち、「槇島商店」と同様の水冷式だ。

と、ここまで綴って、以下は次話。

=つづく=