2018年4月20日金曜日

第1854話 名残りの桜に迎えられ (その1)

やって来たのは京王線・仙川駅である。
改札を抜けると、駅前広場で何だか判らんが
イベントが執り行われていた。
見上げれば立派な桜の木から花びらが舞い落ちている。
風情ある出迎えにほほがゆるんだ。

目当ては広場にほとんど面した酒場、
「さくらや」ならぬ、「きくや」である。
桜に菊、花札のバカッパナなら”花見に一杯”の役。
いや、めでたし。

昭和38年開業の「きくや」は串焼処を謳っている。
早いハナシが大衆的な焼き鳥&焼きとん屋だが
ちゃんと備長炭を使用する店だ。
8席ほどのカウンターに先客は3名、余裕で座れた。

カウンターの脇にビール用冷蔵ケースがあって
チラリのぞくとキリンラガー、新一番搾りが並んでいる。
着席と同時に注文を取りに来たオニイさんに
一番搾りを指定した。

キリンビールが堤真一、満島ひかり、石田ゆり子、
挙句は西郷どんまで駆使して
一大CM攻勢をかけている新一番搾りの初飲みだ。
堤真一なんか、試飲してみて
旧商品と全然違うとのたまうが
それじゃ以前はそんなに不味いビールを売ってたのかと
ツッコミを入れたくなるネ。

卓上のメニューを手にとってつまみの吟味。
あれっ! 何だよ、アサヒがあるじゃないか!
まっ、いいや、あとで飲めばいいんだし・・・。
中瓶と一緒に笹かまが運ばれた。
へぇ~っ、突き出しに笹かまとはリッチじゃん。
これだけでこの店がおざなりな仕事をしないことが判る。

新一番搾りはクセがなくなってアッサリとまろやか。
好きなタイプながらそのぶん踏み込みが足りない。
まずは鳥のハツを塩、とんのシロとレバをタレでお願いした。
目の前で串を焼くオジさんの姿をながめながら待つ。

ハツはちょいと焼き過ぎ。
レバはだいぶ焼き過ぎ。
素材が悪くないだけにもったいないな。
ところがシロは下ゆでの塩梅よろしく理想的なクニュクニュ感。
いや、これは旨いゾ。
一串で斜めになりかかった機嫌が直った。
ハハ、われながら単純至極なりけり。

=つづく=