2018年4月27日金曜日

第1859話 くじベコとハゼ天 (その2)

東京拘置所のある足立区・小菅から
東武伊勢崎線で一つ先の五反野。
地元民の集会所みたいな酒場「幸楽」のカウンターにいる。
壁に貼られた短冊に日光唐揚げを見とめた。

何だい、日光って?
日光名物の食べものを思い浮かべる。
養殖のニジマスかな?
立ち上がってよくよく見ると、日光じゃなくって目光だった。
常磐沖で穫れる小魚、メヒカリのことだ。
だけどサ、カタカナ表記しないんだったら、
目光と送り仮名をお願いしますヨ。

結局、食指が動いたのはハゼの天ぷら。
キス天はどこでも食べられるがハゼ天はそうはいかない。
しかも昨今、大衆店で出されるキスは
ほとんどがタイから輸入された冷凍品のハズ。
ハゼなら日本近海の生鮮品だろうしネ。

ビールのお替わりを飲みつつ、
なおも品書きをながめていた。
焼き鳥はモモとツクネのみ。
どちらも1本100円と安めの価格設定だ。

焼きとんもオール100円で王道の6種が居並んでいた。
王道の6種って何だってか?
ハツ・タン・カシラ・レバ・シロ・ナンコツ。
以上、春の七草ならぬ、豚の6モツなり。

届いたハゼ天は2尾、大葉と茄子が添えられている。
大根おろしの頂きには生姜もチョッピリ。
卓上の塩をサッと振ってパクリ。
真っ白な身は湯気を立ててホックリ。
揚げ上がりはサクサクとカリカリの中間のサクッカリ。

天つゆをくぐらすと、
薄めで甘めのつゆもけして悪くない。
最後は残ったおろしと生醤油で完食。
尻っ尾まで残さず食べちゃった。

酔っぱらったオッサンが入店して隣りに着席。
常連だねこれは―。
お運びサンになれなれしくちょっかいを出す。
幼く見えた彼女は酔客のあしらいも上手だ。
チラリと足元を見たら
赤いサンダルにミッキーマウスが描かれていた。

品書きに、いかいろりってのを発見し、
彼女に訊ねたら炙ったイカとのこと。
なるほど囲炉裏焼きかァ・・・炉端焼きだネ。

  ♪    お酒はぬるめの 燗がいい
     肴はあぶった イカでいい  ♪

瞬時に八代亜紀の「舟唄」が
脳裏を駆け巡ったのは言うまでもありません。

「幸楽」
 東京都足立区弘道1-1-16
 03-3849-6981