2018年4月23日月曜日

第1855話 名残りの桜に迎えられ (その2)

調布市・仙川町の「きくや」にいる。
焼き鳥のねぎまとボンジリを塩で追加注文すると
どちらも浅い火の通しがよろしい。
鳥と豚の二刀流をウリとする串焼き処は
鳥のほうがまさっているように感じた。

予定通り、ビールの2本目はスーパードライ。
うん、やっぱりな。
新一番搾りの直後だと、キレ味の鋭さが際立つ。
1987年発売のこのビールを初めて飲んだのは
確かニューヨークの「レストラン日本」だった。

たまたまその夜は顧客の接待で
先方はアサヒビールのメインバンク。
何の因果かねェ。
とまれ、あれから30年、月日の流れは
五月雨をあつめた最上川より早いものと思われる。

30年来の友を注いだグラス片手に再び品書きを吟味。
特上赤身の馬刺しでもいってみようか。
いや、ちょっと待てヨ。
馬刺しは専門店ですら当たり外れがあるから
そう簡単には行かれない。

ふむ、豚すじキャベツの辛味噌炒めねェ。
牛すじはちょくちょくお目にかかるが
豚すじってのはあまり聞かない。
オケツの下はすぐアンヨみたいな豚から
はたして市場に出回るほどのすじが取れるのかいな。

そう言えば、短足で知られる(?)、
かつての人気歌手について
元NHKアナウンサーの山川静夫サンが語っていたっけ。
布施明 お尻の下は すぐかかと
まさかそんなに短くはなかろうに―。

いずれにしろ布施明が家庭を築くんなら
英国人のオリビア・ハッセーより
柴又出身の森川由加里がふさわしいんじゃないの。
いえ、足の長さの問題じゃなくってネ。
布施は寅さん映画にもヒロインの相手役で出てるしサ。

豚すじをとっかかりにして
ああだ、こうだと、思いを巡らしているうちに
どうやら注文のタイミングを逸したようだ。

中瓶を2本だけにとどめて
あとは見知らぬ町を徘徊すること小一時間。
さまよいながら頭の中では
由加里チャンが歌った、
「SHOW ME」のメロディーが渦巻いていたのでした。

「きくや」
 東京都調布市仙川町1-19-1
 03-3309-5622