2024年11月5日火曜日

第3660話 包丁一本 晒しに巻いて (その1)

今宵は両国に現れた。
目当てはうずら鍋で人気の「ふじ芳」。
「ふじ芳」となれば、脳裏を掠めるのは
藤島桓夫の「月の法善寺横町」。
さっそくいってみたいと思う。
浪花の小姑も舞台が大阪ときちゃ、
文句を口にも出さず飲み込むであろうヨ。

♪  庖丁一本 晒しに巻いて
    旅へ出るのも 板場の修業
      待っててこいさん 哀しいだろうが
    ああ ああ 若い二人の
    想い出にじむ 法善寺
    月も未練な 十三夜

     こいさんがわてをはじめて
   法善寺へつれて来てくれはったのは
  「藤よ志」に奉公に上った晩やった
   はよう立派なお板場はんになりいやゆうて
   長いこと水掛不動さんに
   お願いしてくれはりましたなあ
   あの晩からワテはワテは
   恋さんが好きになりました 

  (作詞:十二村哲)

この曲は1960年の大ヒットだが
実際の法善寺横丁は横丁であって
横町はタイトルだけ。
作詞家の意図なのか誤認なのかは不明だ。


法善寺横丁入口に暖簾を掲げる、
おでん屋「おかめ」は思い出深い。
京都に比べりゃ訪問数の少ない大阪だが
行けば必ず立ち寄る気に入り店である。
浪花のおでんもさることながら
京都・北山の清酒、初日の出。
この上燗の旨さといったらない。
おでんには燗酒が一番なり。

さて、両国「ふじ芳」。
此処はもともとふぐ料理店、
「ひょうたん」の在った場所。
横綱・大鵬がひいきにした其の店は
何度か利用したが「ふじ芳」は初訪問。

以前、台東区・柳橋に棲んでいた頃、
「ふじ芳」は隣りの浅草橋に在り、
そのうち行こう、行こうと思っていながら、
つい、行きそびれた。
もっとも浅草橋と両国はJR 総武線で一駅。
ごく近場に引っ越しというわけだ。

予約なしでは席にありつけないため、
3日前に電話予約を入れておジャマした。

=つづく=