先月のことである。
かけがえのないのみとも、
馬主の半チャンに死なれてしまった。
知らせてくれたのは銀座のY子サン。
半チャンと何度か訪れたラウンジ、
「グリーングラス」のママである。
この春にはカレーのO野チャンに先立たれ、
今年はヒドい厄年になってしまった。
O野チャンとは何人かで
卓を囲むことが多かったが
半チャンとはほとんどサシ。
とにかく痛烈に痛い、そして哀しい。
Y子ママと馬主を偲びつつ、
飲むことになった。
20時開店のところ17時に開けてもらい、
サシ飲みと相成る。
店との関係はこうだった。
彼の知り合いがある日、
「銀座に『グリーングラス』って
バーがあるんですが、まさか半サンが
経営してるんじゃないでしょうネ?」
「何だって!知らないヨ、そんな店あるの?」
聞き及んで乗り込んだそうだ。
「グリーングラス」の先代オーナーが
菊花賞馬・グリーングラスの大ファンで
店名に拝借したとのこと。
何を隠そう、グリーングラスは
半チャンの父君の持ち馬だったのだ。
テンポイント、トウショウボーイと並び、
TTGと称されて一世を風靡した。
緑の刺客の異名を取った黒鹿毛(くろかげ)の
立派な体躯は今も目に灼きついている。
彼と最後に飲んだのも銀座。
「三州屋本店」、「スターバー」、
「グリーングラス」の流れでとことん飲んだ。
こんなこともあった。
第3651話 スチュワーデスやら遊女やら(その2)。
そこでチラリとふれた田原町のスナック「B」。
今は亡きママと3人でカラオケ大会状態にー。
午前3時にならんとする頃、
「キリがないからそろそろお開きにしよう。
それじゃ最後に半チャン、前川清の
『そして神戸』『東京沙漠』『噂の女』を
3曲続けてお願い!」
奴さん、我が意を得たりと歌い上げたネ。
睡眠不足の翌日、彼は椿山荘へ出掛ける。
結婚披露宴に出席するためにー。
すると隣りに前川清夫妻がいたんだとサ。
互いの持ち馬の調教師が同じ人で
花嫁は調教師の娘さんと来たもんだ。
式では「そして神戸」と「東京沙漠」を
本人が披露し、大いに盛り上がったそうだ。
さすがに披露宴で「噂の女」は不味いわな。
単なる偶然とは思えない半チャンは
夢見心地で聴いていたそうな。
そのうちオネバのHるが出勤して来て
歌好きだった故人を偲び、
ママと3人でカラオケ三昧となりました。
「グリーングラス」
東京都中央区銀座8-7-5 昌栄ビルB1
03-3572-3110