2025年2月28日金曜日

第3743話 バッタリ出逢った ソフトシェル

JR日暮里駅から山手線外回りに乗った。
行く先は決めていないが
今日は大田区か目黒区に行こう。
五反田で池上線かな?
目黒から目黒線でも構わない。
五反田を素通りして
隣りの目黒で日吉行きに乗り換えた。

田園調布の次の多摩川で
多摩川線に再び乗り換え、下丸子下車。
此処は大田区である。
かねて狙いを定めていた駅そばの食堂へ。
すると4卓のテーブルはみな埋まっていた。
他に2卓あるがグラス類やら荷物やら
いろいろ並んで整理整頓がなっちゃいない。

見るからにやる気のなさそうな爺さんが
「今、席が空いてなくてー」
「ハイ、それじゃまたあとで」
一応、下丸子のメインストリートを流す。
と或る中華料理屋の前で足が止まった。
多彩な菜譜は点心も豊富。
そうだ、フカヒレ餃子でビールといこう。

目が留まったのはソフトシェル・クラブ。
脱皮したばかりの殻の柔らかい蟹である。
シンガポール赴任時代はお世話になったけど、
日本では5年前にただ一度、
東武伊勢崎線・曳舟駅前の「上海飯店」で
唐揚げのチリソースを食べただけ。
其処は墨田区である。

当店では食べ比べと称して
2種のソースで味わえる。
此処で逢ったが百年目、
餃子をソデにして柔ら蟹に決めた。
運ばれ来たのは細かい賽の目オニオンの
ピリ辛炒めが載ったのと、
チリソースと天津ソースの中間みたいのが
掛かっているヤツ。
蟹本体は油で揚げてある。

ビールは生も瓶もサントリーのオンパレード。
仕方なくサントリー生の中瓶を発注した。
プレモルよりなんぼかマシなんでネ。

そこそこ美味しくいただいて会計は2330円也。
「新荘園」は下丸子の本店以外に
都内各地と鎌倉にも支店がある。

くだんの食堂に戻ると、客は一人もおらず、
爺さんがボ~ッと腰掛けていた。
何処でも好きなとこに座れと言われ、
ど真ん中の卓に落ち着き、ビールをお願い。

「お酒はないヨ」
「エエ~ッ! サンプルケースにあるじゃん」
そう、ケースにはキリンラガーと
サントリーオールド(通称ダルマ)が並んでる。
「あれはただ置いてるだけ」
何処の世界にこんな店があるんだヨ、ったく。

ダメだこりゃ!
憤然と席を立ち、出て来たのでした。

「新荘園 本店」
 東京都大田区下丸子3-13-20
 03-3758-7105

2025年2月27日木曜日

第3742話 四人の美女に囲まれて (その2)

飯田橋二丁目の「お食事の店 まさみ」。
つまみを吟味していたら
隣りに常連らしきアンちゃんが座り、
日替わり定食を通した。
これが630円とお安い。
いったいどんなのが出て来るんだろうか?

頼んだポテトサラダは白雪姫みたいに純白。
紅いにんじんがホンの少しポツリポツリ。
「肉のハナマサ」製なんかじゃなく、
手造り感が伝わってきた。

あさりの佃煮も出来合いではなく、
針生姜とジックリ炊いたもの。
女手が四人もあれば朝飯前だろうが
見たところ、最年長のオバちゃんだけが
料理を担当しているようだ。

アンちゃんの日替わりが着卓。
許しも得ずにリポートさせて貰うと
小さな塩鮭・じゃが芋煮・
新香・味噌汁・白飯である。
鮭がかなり小さいけど値段が値段だし。

あらためて品書きを眺めると
町中華でもないのに中華がメイン。
うまにそばとタンメンの注文がよく入る。 
あとはやはり日替わりが人気。

大瓶のお替わりと白菜漬けを追加する。
ここまでの3品はすべて160円也。
白菜はそこそこの量でやって来たが
表面に何やら白いものがキラキラ。
あゝそうだ、そうなんだヨ、
昔の食堂にありがちな化学の子は
J.C.が忌み嫌う粉末である。

コップのビールでティッシュを湿らせ、
入念に粉を拭き取った。
素までは、もとい、元までは戻らないが
どうにか許容範囲となった。
白菜自体はほどよい漬かり具合だから
良いビールの友となる。

肝心の原節子は16作中、
6本観ることにした。
支払いは千円札2枚にバラ銭のオツリ。
ごちそうさまでした。

ちなみに女性の容姿に関しては
人それぞれ好みがあるため、
過剰な期待をしないでください。

「なんだ! 全然違うじゃないか!」
まことに申し訳ありませんが
その手の苦情は受け付けられません。

「お食事の店 まさみ」
 東京都千代田区飯田橋2-3-1
 03-3262-3062

2025年2月26日水曜日

第3741話 四人の美女に囲まれて (その1)

3月8日(土)から始まる、
神保町シアターの特集は
 没後10年 
 原節子をめぐる16人の映画監督
そのパンフレットを
ピックアップするためにシアターへ。

そうしておいて昼めしである。
特集の内容を吟味しがら過ごすため、
飯を喰うのはちとめんどくさい。
箸の上げ下げが煩わしくもある。
よって昼めしならぬ、昼飲みでOK。

ゆっくり飲める店を物色していて
アンテナに引っ掛かったのは
「お食事の店 まさみ」。
地番は千代田区・飯田橋だが
最寄りはメトロ&都営の九段下だ。

前を何度か通り過ぎたものの、
入店は初めてである。
引き戸を引くと
「いらっしゃいませ~!!」
黄色い嬌声に迎えられた。

東京の飲食店における声のチャンピオンは
バリトンなら神保町「Angolo」の店主。
メゾ・ソプラノは此処のオバちゃんだ。
スゴいな。

店内は四人掛けが四卓にカウンターが三席。
その左隅に陣取った。
オバちゃんのそばだから
客の出入りのたびに耳がつんざかれる。
都会の孤独の中、
こういうのもたまにはいいでしょう。

見渡すと厨房の三人と合わせ、
スタッフ四人がすべて女性。
しかも美人揃いと来たもんだ。
スゴいな。

「お食事の店」を謳いながら
昼飲み可であることは調査済み。
まずはドライの大瓶を貰って
壁のホワイトボードを見上げた。

チョコチョコっとした、
つまみ類が並んでいる。
それも160円均一と来たもんだ。
値段もうれしいが
これならサイズ小さ目だろうヨ。
そこがとてもありがたい。

=つづく=

2025年2月25日火曜日

第3740話 とんかつは 独自の調理で 焦げ茶色

頭上を日暮里・舎人ライナーが通る、
尾久橋通りは赤土小学校前駅の北側に
川の手もとまち商店街が口を開けている。
100mほどの短い商店街だ。

尾久本町通りが正式名称なんだが
尾久橋通りを突き抜けて
西側が川の手~、東はおぐとぴあ23と
地元の人たちに呼ばれている。

川の手~入口のとんかつ屋「かつ一」は
コロナ禍を引きずるかのように
カウンター2席、4人掛け1卓、
1人掛け2卓の8名で満席、
スカスカの配置だ。

奥の1人掛けに座って一番搾り中瓶をー。
すかさず女将さんがスポーツ新聞を
持って来てくれた。
目の前に飲み物の品書きが貼り出され、
そこに一筆あった。

当店のかつは独自の調理法により、
焦げ茶色の香ばしい
とんかつに仕上げております。

右手の壁には料理メニューがあって
ロースかつ定食 1000円
 (当店人気No.1です)
こうこられちゃ、
ロースかつにするしかないヨ。
こうこられなくても決めてたけどネ。

なるほどモロに焦げ茶色だ。
8切れにカットされ、
繊切りキャベツと練り辛子が一刷毛。
絹ごし豆腐&わかめの味噌椀に
きゅうりぬか漬け&たくあん。

ごはんは小ぶりの茶碗ながら
手に持ったらズシリときた。
デフォの分量を確かめるため、
今日は半ライスにしなかった。

焦げ茶の深い揚げ上がりは
目黒の有名店「とんき」を思わせる。
脂身の付きもそこそこあって
J.C.好みではあるが
ちと熱が入り過ぎて硬い。
入れ歯の人は難儀するやろなァ。

味噌椀と新香に手抜かりなく、
丁寧に作られている。
ただ、問題はごはんだ。
柔い、軟らかすぎる。
舌と上あごで押し潰すだけで
噛まずともいいくらい。

硬いロースかつに軟らかい白飯。
硬軟併せ持つとは
まさしくこのことでした。

「かつ一」
 東京都荒川区東尾久4-11-12
 03-3800-0096

2025年2月24日月曜日

第3739話 深川・常盤の「 芭蕉そば」(その2)

芭蕉そばの主役を張る厚焼き玉子。
ヨソの店では見たことがない。
でも、考えてみりゃ、
そば屋に厚焼き玉子は付き物だ。
そばに入れるアイデアを誰一人、
思いつかなかっただけだろう。

5分後に若い女性が来店すると
そこから次々に計6人。
定員に達して満員御礼。

ツルツルのそばがなかなか。
つゆも水準に達している。
おすすめに従い、途中から味変。
赤い柚子胡椒を加えるとこれがバッチリ。
七色唐辛子より温そばに寄り添って
みやげ用に1パック購入したくらい。
緑の柚子胡椒は冷そば用とのことだった。
ふ~ん、なるほどねェ、勉強になるなァ。

缶ビールをお替わりすると、
かき揚げがスッと出て来た。
ありがたきかなオヤジさんのサービス心。

ここから会話に弾みがついた。
何でも旅行先の京都で食べた、
奈良産のそばが気に入ってしまい、
ずっと使っているそうだ。

営業は朝の5時から14時くらいまで。
夫婦二人の切盛りで25年になるという。
オヤジさんは今年の誕生日を迎えたら
八十路に突入、だいぶ若く見えるけどネ。

住まいは両国と常盤の間の墨田区・千歳。
ずぶの素人がそば屋を始める前は
両国で雀荘を経営していたそうだ。
当時はブクブク太って98kgあったという。

雀荘のお客の食事は中華の出前一本やり。
一人前の出前じゃ店に申し訳ないってんで
餃子や炒飯をつき合った結果の肥満である。

血糖値と血圧もヒドかったらしい。
幸い今は72kgで、これをキープするため、
店を閉めたらジム通いを続けている。
話が合うというか、ウマが合うというか、
居心地よくて楽しくて、ビールをもう1缶。

「ウチでビール3缶飲んだお客さんは
 25年やってて初めてヨ」
「いや、ボクも立ち喰いそば屋さんで
 缶3つは生まれて初めて」
顔を見合わせ、笑い合った。
「近くに来たらまた寄ってネ」
「月に一度はおジャマするネ」

萬年橋のたもとから
芭蕉庵史跡庭園に下りる。
右手前方の清洲橋のブルーが目に鮮やか。
ドイツはケルンの吊り橋を模したそうだが
あの橋を渡ったのは半世紀前の1974年。
J.C.の胸の血も夢と希望に燃えていた。
それが今じゃ・・・タハッ、やめとこう。

川のほとりに芭蕉の句碑が並んでいる。
隅田川に馴染むのに絶好のスポットだが
ほとんど人がいない。
出逢ったのは1組のカップルと
ベンチで弁当をひろげる娘だけでした。

「芭蕉そば」
 東京都江東区常磐1-15-4
 電話:ナシ

2025年2月21日金曜日

第3738話 深川・常盤の「 芭蕉そば」(その1)

「奥の細道」の出発点、千住大橋で
朝昼兼食したため、連想されたのが
下町・深川の芭蕉記念館と
芭蕉庵史跡庭園だった。
そして両者の中間点に位置する、
立ち喰いの「芭蕉そば」もだ。

都営大江戸線を森下駅で降りた。
駅前交差点の南西に出て
すぐ近くの深川神明宮に手を合わせる。
下町・深川の地名の由来となった、
深川八郎右衛門が伊勢神宮より、
分霊(天照大御神)を勧請して創建。
八郎右衛門は一帯の膨大な開拓に
大きく貢献した人物である。

此処は江東区常盤。
あの有名な「魚三酒場」も
森下店ではなく常盤店を名乗っている。

神明宮そばの居酒屋「三徳」と
深川めし「みや古」に行ってみた。
前者は7年前、後者は20年前に訪れた。
コロナ禍を乗り越えてなお、
営業を続けていることを慶びたい。

深川芭蕉通りと万年橋通りの交差点に
目当ての「芭蕉そば」の幟がはためく。
13時過ぎとはいえ、先客はゼロ。
もっと混んでると思ったがネ。

定員6名のカウンターの左端、
釜を仕切るオヤジさんの前に立ち、
タイトルロールの芭蕉そばをお願い。
店内を見回してもビールの札が無い。
ビールケースも見当たらない。
仕方ないからツルツルやったら
毎度お世話になってる、
牛めし屋に流れるとしよう。

でも、念のために
「ビールなんか無いですよネ?」
「いえ、ありますヨ」
「エエッ! じゃ、お願いします」

オヤジさん、ドライのレギュラー缶を
揚がった天ぷらのショーケースと
カウンターの隙間から滑らせながら
「夜勤明けのお客さんが飲みたがるんで」
「ですヨ、夜通し働いたあとの1杯は
 最高ですもんネ」
「そう、そう」

芭蕉そばも隙間から出て来た。
ん? いろいろ浮かんでいる。
主役は厚焼き玉子で
脇にごぼうとにんじんの細切り、
いわゆるキンピラ揚げと
拍子木切りのさつま芋。
あとは小松菜にわかめと来たもんだ。

=つづく=

2025年2月20日木曜日

第3737話 足立市場で 朝昼兼食

この日はマンションの水回り点検とやらで
立ち合いを管理人のオバちゃんに任せ、
早い時間に住まいを脱け出た。

ブランチだから築地にでも行くか?
いや、ちょいと待て・・・。
千住大橋のたもと、足立市場にしよう。
此処は芭蕉が「奥の細道」へ
一歩を踏み出したスタート地点である。

10時前に到着すると、
人気店「とくだ屋」には10人余りの列。
みんな海鮮丼や市場めし定食が
目当ての馬鹿者、もとい、若者たちだ。
朝から化けモノ、もとい、生モノを
食べる習慣のない J.C.は
お隣りの「しいはし食堂」の暖簾をくぐる。

先客は単身のオッサン1人にカップル1組。
余裕で4人掛けに落ち着いた。
丸20年ぶりの訪れである。
一時期、店を閉じていたが
常連客が引き継ぎ、再開したそうだ。
オススメの定食が並ぶ黒板を
まずは紹介しておきましょう。

赤崎産カキフライ     1800円
カキフライとまぐろぶつ  1900円
アジとホタテのフライ   1500円
きんきの塩焼き      2000円
しゃけカマ焼きとたこぶつ 1550円
こんなところだ。

シーズンたけなわでもあるし、
大船渡湾の赤崎産があると聞けば、
カキフライしか選択肢はないネ。
赤崎は三年物の牡蠣しか出荷しないんだ。

大粒にドッサリ来られたら持て余すので
朝から生モノは御免と言っときながら
上から二番目を半ライスで通しちまった。
まぐろぶつ程度なら許されるでしょうヨ。
ドライ中瓶にお通しは切りこぶ佃煮。

上物のカキフは2粒、ぶつは9粒もあった。
カキは問題なくいただいたけれど、
ぶつには相当な頑張りを要した。
アオサの味噌汁と半ライスを平らげ、
朝昼兼用を無事食了。
中瓶も2本飲んでごちそうさま。

旧日光街道を北千住駅へ歩く。
この街のマイ・ブレイクルーム、
「幸楽」のカウンターに滑り込み、
ドライ大瓶とデンキブラン。
そして珍しい石垣鯛刺しが美味し。

白身の刺身がいつも何種類か揃う当店。
ツラいことがあったとしても
悲しみはとまるけど、お刺身がとまらない。
杏里の歌声が聴こえてきたものの、
浪花の小姑が五月蠅いため、
今話は自重しておきます。

「しいはし食堂」
 東京都足立区千住橋戸町50 足立市場内
 03-3879-2806

「大衆酒蔵 幸楽」
 東京都足立区千住2-62
 03-3882-6456

2025年2月19日水曜日

第3736話 ♪ どうすりゃいいのさ 思案橋 ♪

今は亡き、のみとも・半チャン。
彼ゆかりの店「グリーングラス」を
今年初めて訪れた。
その前にY子ママと一献傾け、
同伴をシャレ込む。

落ち合ったのは銀座ナイン地下、
長崎料理「銀座 吉宗」だ。
暴れん坊将軍の ”よしむね” ではなく、
”よっそう” と音ずる。
幕末の長崎で開業の祖となったのが
吉田宗吉さんなので「よっそう」。

一昨年の七月以来になるが
その際は鯨刺しで飲んだだけ。
当店の名物は、茶碗蒸し、蒸し寿司、
皿うどん、鯨刺し、飛魚すぼまきなど。
目移りするわ、腹に溜まるもの多いわで
"どうすりゃいいのさ思案橋" もいいところ。
ほうら、青江三奈の懐かしい歌声が・・・

♪ 逢えば別れが こんなにつらい
  逢わなきゃ 夜がやるせない
  どうすりゃいいのさ 思案橋
  丸山せつない 恋灯り
  ああ せつない長崎ブルースよ ♪
   (作詞:吉川静夫)

名曲「長崎ブルース」は1967年のリリース。
レコードは120万枚も売れた。
翌年「池袋の夜」(150万枚)に抜かれるが
彼女のセカンド・モーストである。

相方はマルエフ中ジョッキ、
当方は熟撰中瓶で乾杯。
ともにアサヒながら好みではない。
予約時に茶碗蒸しの人数分の注文を
確約させられた。
以前、こんなシステムはなかった。

お通しのカンパチあら炊きが、ちと生臭い。
鯨の赤身刺し&ベーコン。
ハトシ揚げ(海老すり身トースト)。
豚の角煮を通した。
彼女は赤身、J.C.はハトシが気に入った。

凍らせたカットレモンが
ゴロゴロ入ったサワーを飲んだり、
皿うどんを食べ切れずに残したりして
くだんの茶碗蒸しで締めた。

「グリーングラス」には
うたとも・Hルがすでに出勤しており、
歌を愛した故人を偲び、3人でカラオケ三昧。

Y子に教えた浅草観音裏「ニュー王将」に
味をしめた彼女がお連れした常連さん、
H 坂サンも来店してさらに盛り上がり、
早めに帰る予定が大幅にずれ込む。
結局は薬局、看板まで居座り、
Hルと新橋駅へ急いだ。

東京駅で高崎線に乗り換える彼女に手を振り、
そのまま山手線で日暮里下車。
夜が更け切った夕焼けだんだんを
ヨタヨタ降って往きましたとサ。

「銀座 吉宗」
 東京都中央区銀座8-7番先
 銀座ナイン2号館 B1F
 03-6274-6002

「グリーングラス」
 東京都中央区銀座8-7-5 昌栄ビルB1
 03-3572-3110

2025年2月18日火曜日

第3735話 食堂は 染井銀座に ただ一軒

最近はしょっちゅう往来する染井銀座。
そこで見つけたのが食堂「伏見家」だ。
青いテントが目立つ清潔そうな佇まい。
これは一度訪れなきゃな。

二人掛けと四人掛けのテーブルのみで
カウンター席はない。
キンリンラガーの大瓶をトクトクやって
メニューを手に取った。

=ランチメニュー(豚汁)=
 サービスランチ 900円
A.豚肉しょうが焼き+メンチカツ
B.豚肉しょうが焼き+アジフライ
C.豚肉しょうが焼き+サラダ+豚汁(大)
すべての定食に豚汁が付きます。

是が非でもしょうが焼きと豚汁を
食わせたいらしい。
他にはアジフライや
ミックスフライの定食があり、 
サービスランチも含めて
混雑時、こちらのメニューが
優先となります、あった。

Bをお願いするとアジフライの身が分厚い。
サクサクのコロモは好いが問題はゼイゴ。
綺麗なバラに棘ある如く、
旨いアジにも棘がある。
これはちゃんと取り除いて欲しいな。

しょうが焼きはある程度まで
作り置いたものだろう。
よって素早く提供できるわけだ。

自慢の豚汁はドッサリの白菜に
大根・ごぼう・にんじん・しめじ・
油揚げ・豆腐のフルキャスト。
かぶ&きゅうりのぬか漬けチョッピリに
半分でお願いしたハズのごはんがタップリ。

店内はオッサンとアンチャンが入り混じり、
みな単身で女性は皆無。
いつも思うことながら、この惑星に日本ほど
ダイニング・シーンの性別分離が激しい国は
男女共存が制限されるアラブ圏以外にない。

豊島区・駒込の染井銀座で唯一の食堂なのに
界隈の女性住民はカフェや喫茶のお世話に
なっているらしい。
ふ~む、男女を分けるのは
大衆浴場だけでじゅうぶんじゃないの? 
そう、思った次第です。

「伏見家」
 東京都豊島区駒込6-27-8
 03-3917-2540

2025年2月17日月曜日

第3734話 駿河台 人気の理由が 判らない

メトロ千代田線を新御茶ノ水下車。
なが~いエスカレーターを昇り、
駅直結の新お茶の水ビルを出ると
目の前に「中華 やまだ」。
近くにニコライ堂がある。

近隣のリーマンでいつもいっぱい。
混雑ぶりが半端じゃないから
今まで遠巻きに眺めるだけだった。
この日は意を決し、ピーク時を避けて入店。
キリンラガー中瓶とラーメンを通す。

バラチャーシュー・シナチク・
ワカメがプカプカ浮かんでいる。
真っ直ぐの中細麺に粉々感があり、
町中華らしい昔ながらの醤油味。 
スープはこういうのが落ち着く。
まずまずの味わいに一応はうなづいた。

周りを見ると他客のボリュームがスゴい。
若者中心だが中年も頑張ってるし、
年寄りの冷や水的な老人もちらほらと
自分で自分の寿命を縮めている有様。
こりゃヤバいんじゃないの?

肉野菜炒めが人気だってんで
食べてみようと半月後に再訪。
混み合う12時半だったから
ビールをアッサリ断られた。
まあ、しょうがないわな。

料理もライスも半分でお願いしたが
すんごい量で着卓した。
こんなに食ったら病気になるぜ。
例え病気は免れてもデブにはなるな。

5席ほどのカウンターはともかく、
テーブルはすべて相席。
みなさん慣れてるせいか
先客に会釈もせず、ヅカヅカ座る。
好きじゃないよぉ、
こういうデリカシーが欠如した店。

若い娘も相席の後客を全然無視。
でもねェ、むさ苦しい爺さんならまだしも
チンピラやくざ風のアンちゃんが
目の前に座ったらおちおち飯なんか
食ってられないんじゃないの、娘さんよっ!
まっ、いいか。

2回利用して人気の理由がさっぱり判らん。
なんでこんなに混み合うの?
みんな大食漢だからかな?
町中華に寄せる日本人の郷愁だろうか?
店には悪いが他に理由が見つからない。
オモテに出てニコライ堂を見上げながら
つくづく思ったことでした。

「中華料理 やまだ」
 東京都千代田区神田駿河台2-10-5
 03-3233-1905

2025年2月14日金曜日

第3733話 縁切榎を 再訪&再々訪 (その2)

牛に引かれて善光寺参りじゃないけれど
そばに引かれてまたもや縁切榎を再々訪。
お相手はアパレル界のやり手・T子サン。
昨夏の「弁天山美家古寿司」以来だ。

板橋区役所近く、仲宿の入口で待ち合わせ。
読書家の彼女はいろいろ読んでいて
「この商店街は森まゆみのお気に入りネ?」
「よく識ってるなァ、その通り」
森まゆみさんはわれ棲む町、
谷根千在住で女王様的存在の作家だ。

再会を祝しての乾杯はキリンラガー。
最初のつまみは
こんにゃくの味噌田楽と焼き油揚げ。
最近はこんにゃくが好きになった。
子どもの頃はこんにゃくなんて
見向きもせずに跨いでたのにネ。

油揚げも素朴でけっこう。
花がつお・海苔・貝割れが載り、
マヨネーズが添えられる。
これだけで恰好の肴になってくれる。

二人してかっぱ割りに移行した。
そば焼酎・白雲郷の水割りに
きゅうりスライスと似非わさびを投入。
そんなに美味いもんでもないが
舌先と目先が変わり、楽しくもある。

鴨の串焼きを塩でお願いすると
鳥肉と見まごうほどに白っぽいけど
味はなかなかだった。

そしてもう一品は
島根県・浜田市の名物、赤天。
さつま揚げみたいだが
蒲鉾のようにきめ細やかな食感。
赤い色は紅しょうがじゃなく、
赤唐辛子の成せる業である。
縁切榎「長寿庵」のつまみは佳品揃い。

締めは榎そばをシェア。
タイトルロールの冷たいそばは
みょうが・おろし・貝割れ・花がつお・
そばの実・海苔・なめたけと具沢山。
そばには珍しいなめたけは瓶詰だろう。

おっと、そうかァ!
ここで初めて気が付いた。
なめたけは早い話がえのきだけ。
榎にかけてるんだ。

枯れた榎の根元によく生える茸なので
榎茸と名付けられた。
スーパーや八百屋で見かける白いのは
即席栽培で自然の物とは違うらしいがネ。

美味しく楽しいひとときを過ごし、
さて、二次会は何処に参ろう。
協議の結果、
巣鴨の地蔵通りに決めました。

「長寿庵」
 東京都板橋区本町18-9
 03-3961-2421

2025年2月13日木曜日

第3732話 縁切榎を 再訪&再々訪 (その1)

去年の師走の初訪時には
冷やしたぬきで天国、ごまサバ丼で地獄。
同時に天と地を味わされた、
縁切榎隣りの「長寿庵」を再訪。
相方は浅草在住ののみとも・S織だ。

キリンラガーのグラスを合わせたら
発注前なのに店主と思しきオヤジさんが
スゴい勢いで皿を運んで来た。
てっきり誤配かと思いきや、
「何だか判る? 食べてみてヨ」

ハハ~ン、日比谷「いわさき」の娘ように
S織が少し美人だからお近づきの印なんだネ。
白っぽいコロモの天ぷらは・・・
んん? ひね生姜じゃないかー。
「ハイ、ご名答!」
元気で陽気なオッサンですこと。

相方を口説くつもりは毛頭ないが
くどき上手の冷たいのに切り替えた。
山形県・鶴岡市は
亀の井酒蔵の手になるものだ。

つまみを3品通す。
いぶりがっこ&クリームチーズ。
有明海産天然芝海老の素揚げ。
たぬき豆腐(豚バラ・しめじ・豆腐・揚げ玉)。

いぶりがっこは相方の大好物。
芝海老は常日頃、どうして佐賀産ばかりなのか
不思議に思っていたけど有明海だったんだ。
やっと謎が解け、目からウロコがポロリンコ。
たぬき豆腐はスゴかった。
固形燃料を忍ばせた鍋がグツグツグツ。
食べ応えじゅうぶんである。

ふと手に取った箸袋に
板橋・本町 縁切榎前 そば処 長寿庵
” 悪縁切って 蕎麦食べて
  良縁結んで 蕎麦食べて "
こう、ありやした。

早い話が年がら年中、蕎麦食ってろ!
って、こっちゃないかー。
縁切榎は商売繁盛の神様でもあるらしい。

何だか二人とも腹がふくれてしまい、
締めはもりそばを分け合うことに。
その美味しさにS織は目パチクリ。
ついでにそば湯の猪口もカチンと合わせる。

本日の二軒目はナシ。
三田線から山手線に乗り換えるツレとは
巣鴨で手を振り合いました。

=つづく=

2025年2月12日水曜日

第3731話 ♪ 約束通り 僕は食べてた ♪

Zooとも・白鶴とビールを飲むため、
いつものように錦糸町の喫茶「ニット」へ。
診療を終えて来る彼女は18時近くになるが
今日の J.C.は早めに到着した。

去年、他客の食べるビーフシチューが
とても美味しそうで
高齢のマダムに勧められ、
「それじゃ、今度来たときにネ」
約束を果たすための早仕掛けだ。

マダム本人にドライ中瓶とお願い。
15分ほどでライスとともに運ばれた。
ほうら、伊藤きよ子も歌い出す。

♪ 可愛い花を 僕は積んで
  部屋の机に 飾っておいた
  毎日僕は 急いで家に
  帰って花と お話をした
  小さいままで 可愛いままで
  或る朝花は 散っていったよ
  約束通り 僕は見ていた
  花の命の 終わるまで  ♪
   (作詞:浜口庫之介)

「花と小父さん」は1967年のリリース。
彼女の唯一のヒット曲と言えるだろう。
クレージーの植木等と競作だったが
多くの歌手がカバーしており、
J.C.の気に入りは藤圭子。
演歌歌手がジャズりまくって印象的だ。

マダムとの約束を守ろうと
師走に訪れたときは生憎の早仕舞いで
シチューがもんじゃになった顛末は
12月30日の第3699話で書いた。

ようやく約束を果たすことができ、
約束通り僕は食べてた、
シチューの皿の終わるまで。
煮込まれた牛バラがとろけるよう。
皿を彩る具材はほかに
じゃが芋・にんじん・マッシュルーム。
期待に沿う美味しさだった。

引き続きビールを飲んでいると
白鶴が舞い降り、店の由来を話してやる。
店名の「ニット」は元々、
此処に縫製工場があったから。
創業が1965年で今年がちょうど60周年。

しょっちゅう顔を出すため、
気にもとめていなかった奴さん、
目を丸くして聞き入っておりました。

「ニット」
 東京都墨田区江東橋4-26-12
 03-3631-3884

2025年2月11日火曜日

第3730話 忘れかけてたインドカレー

レギュラー・カストマーになった、
「チャントーヤ」の近くにもう1軒、
町で噂のカレー店があると聞き及んだ。
これは行かなきゃネ。

淡路町交差点の南東、
神田須田町の「ジンコック」は
カウンター6席に小テーブルが2つだけ。
よって昼時は常に行列だ。

11時55分に着いたら6人待ち。
20分並んで入店できた。
キリン一番搾りの中瓶を貰い、
メニューを吟味する。

当店のカリーはおおむね3タイプ。
インド風・カシミール風・トマト味のインド。
あとは数量限定のキーマだ。
インドは濃い味派、カシミールはあっさり派。

メニューにそうあったんで
舌も性格もあっさり派の J.C.は
迷うことなくカシミールのチキンカリーを
名物のクリームコロッケとともに通した。

んん? あっさりはいいが、ちともの足りない。
多めのジャポニカ米にチキン3個とポテト2個。
コロッケはクリームのみで不味くはないけど
やっぱり蟹クリームがいいな。

周りの状況を把握するため、
ダンボの耳(死語か?)にすると
注文はほとんど全員インドカリーで
トマトが一人にカシミールはわれ独り。
失敗したな、再訪はないな。

帰宅後、フード・ダイアリーに
メモっていて、ふと思った。
みんなが食べるインドを食べずに
再訪ナシの低評価は不味いんじゃないの。
女性の容姿を後姿で判断するに等しい。

ひと月後、また並びました。
12時15分に着いたら9人待ち。
意外にスムースで12時半に入店。
今日はインドのポークカツカリー。
辛さは前回同様に上から二番目の中辛だ。

湯島「デリー」恵比寿「ボンベイ」ほど
辛くないソースはサラッサラ。
固形物が全然ないのは J.C.好みである。
気を取り直して再訪したのは正解だった。

映画前のカリーはタイなら「チャントーヤ」。
インドの場合は「ジンコック」で決まり。
ドラエもん特集が終わる3月になったら
またおジャマいたします。

「ジンコック」
 東京都千代田区神田須田町1-2-3
 03-3251-1795

2025年2月10日月曜日

第3729話 昨今は カレーとあらば タイが好き (その2)

神田小川町の「チャントーヤ」。
あまり日をおかず二度目の来訪。
最高値の、と云っても1400円だけど、
デラックス・シーフードカリーを通した。

魚介のカレーは好きながら
今まで ”これゾ!”という一品には
出逢った験しがほとんどない。
期待に胸をふくらませ、
ビールを飲みながら出来上がりを待つ。

オー・マイ・ガッ! 
あっさりと期待を超えられた。
人生最高のシーフードカリーに最敬礼。
小海老・いか・帆立貝柱に
生桜海老が重要な役割を果たす。
ソースも素晴らしく、
コレが当店 No1であることを確信する。

年が明けてからの3度目は
とろ豚とキャベツとトマトのカリー。
すると・・・これが好くなかった。
まず第一にトマトが合わない。
当店のカリーの好もしさを阻害している。

14品目に期間限定品が1品で計15種中、
9種までトマトが使われていて
こりゃ、あんまりだ。

おまけにキャベツも何だかなァ。
多過ぎるのと生過ぎるのとのWパンチ。
そしてとろ豚にダメを押された。
豚バラのトロトロ感を期待したが大外れ。
パサパサでトロ豚ならぬ、パサ豚だ。

4度目はイチ推しのシーフードに回帰。
初回の感動は薄れたものの、
ズバ抜けた旨さをあらためて堪能した。

ずっと気になっているのに
つい聞きそびれていた疑問を
スタッフに投げかける。
店名「チャントーヤ」の意味だ。

女性スタッフ応えて「チャントーヤ」は
日本人オーナーとタイ人創始者、
彼らの名前の掛け合わせだと云う。
ふ~ん、そうなんだ。

「掛け合わせでも二人の間に
 肉体関係はないでしょ?」
「ないです、ないですっ!」

焦ってあわてた否定ぶりに
彼女自身もテレくさかったのか、
顔を見合わせ、吹き出したのでした。

「チャントーヤ ココナッツカリー」
 東京都千代田区神田小川町3-28-7
 03-5281-4747

2025年2月7日金曜日

第3728話 昨今は カレーとあらば タイが好き(その1)

J.C.は子どもの頃、
カレーをさほど好まなかった。
大人になって好きになったといえる。
こういう食べものってけっこうあるよネ。

鮨種の光りモノ、冷奴や鍋などの豆腐、
そして嫌いだった芋類に豆類。
自分の典型例はそんなところだ。

昔、たまに家で鮨の出前を取ると、
母親の玉子とJ.C.の小肌は
常に物々交換の対象となっていた。
大学生になってもそれは続いた。
今は鮨種で小肌が一番好き。

カレーに目覚めたのは
シンガポール赴任時代。
中国系住民が7割以上を占めるなか、
インド系は1割程度ながら
インド料理の水準は高いものがあった。
カレーはもとよりタンドゥーリも好きで
実によく食べた。

そんなカレーだが
近頃はタイカリーが気に入っている。
殊に緑の唐辛子を使った、
グリーンカレーを好む。

神保町シアターにほど近い、
「チャントーヤ」を見つけて以来、
短い間に4度も通ってしまった。
グリーンカレーが無いにも関わらず。

常に立て混むものの、
待っても15分かそこいら。
男女の比率は圧倒的に女性が多い。
日本のアジア系エスニックは女の天下で
オッサンはもっぱら焼き魚か煮魚にとんかつ、
あとは日本そばと相場が決まっている。

初回は無難にタイトルロールの
チャントーヤカレーをお願い。
即刻通したドライ中瓶に
コーン散らばるミニサラダが供された。
女性客を呼び込むのに
生野菜は不可欠とみえる。

ソースとライスが別盛りで登場。
具材はチキン・ナス・タケノコ。
てっぺんにパクチーが一葉鎮座している。
黄色いカリーを一匙口元に運ぶ。
ふむ、ココナッツはさして主張しないが
深い滋味を感じた。

(コイツは美味いや!)
思わず心の内でつぶやいた。
緩みゆく頬を実感していました。

=つづく=

2025年2月6日木曜日

第3727話 ”わかれ” が切ない 日比谷の食堂

先週の第3722話でふれた、
日比谷の食堂「いわさき」。
地番は有楽町一丁目だが有楽町駅の有る、
晴海通り北側はそれで良しとしても
こちら南側は日比谷と呼びたい。
公園はじめ、シャンテもミッドタウンも
日比谷を名乗っているしネ。

懐かしくなって13年ぶりに訪問した。
店頭の小さな貼り紙が微笑ましい。
(イワシフライ定食 850円)
 ◎美味だぜそこのところよろしくね
(さば味噌煮定食 900円)
 ◎すこし美人の娘が作っています

ハハハ、昔はこんなん無かったヨ。
その日の日替わり定食がさば味噌煮。
半量なので割安価格(750円)になり、
少食派には打ってつけ、即決した。

カウンターの右端に着くと
懐かしの女将サンが背後に立つ。
「日替わりお願いします」
「アッ、日替わり終わっちゃったの」
「それじゃ ”わかれ”をー」
「あら! 昔のお客さん?」
「ええ、初めて来たのは50年前ですヨ」
「ん、まァ!」

”わかれ”を通すたびに
「昔のお客さん?」と訊かれるんだ。
今ではみんなかつ丼定食を
頼むようになって”わかれ”は絶滅した。
厨房にはこれまた懐かしい親父サンと
娘がいたがマスクをしていて
少し美人かどうかは不明のまま。

「アッ、あと、ビールください」
「あら、ウチはごはんだけなんですヨ」
以前はキリンラガーがあったけどなァ。
まっ、このあと近所の立ち食いそばで
缶ビールを飲むからいいとして
いつの間にやら営業は昼だけになった。

かつての名代、”わかれ”が調いました。
う~ん、秘伝の味付けの手法が未だに
判らないが美味さは変わらない。
薄い豚肉も往時のままながら
今日はヤケに肉質が硬い、まっ、いいかー。

でもネ、ビールが無いんじゃ今日でお別れ。
再訪はもうないだろう、哀しいねェ。
切なくなった途端に裕次郎が歌い出したヨ。

♪  逢えば短かい 夜だから
   何も云わずに 踊ろうよ
   淡い灯りが 又ひとつ
消えてゆく
   別れが切ない ナイトクラブ
   恋のクラブよ    ♪
  (作詞:池田充男)

「二人の世界」は1965年のリリース。
当時の歌謡ベストテンにおいては
20週連続1位を記録する大ヒットとなる。
池田は新宿の音楽喫茶「ラ・セーヌ」で
鶴岡雅義のレキントギターに魅せられ、
そこからつき合いが始まり、
東京ロマンチカの生みの親になった。

「いわさき」よ、さようなら。
ん? ううん、やっぱりまた来るネ。

「いわさき」
 東京都千代田区有楽町1-6-9
 03-3591-4740

2025年2月5日水曜日

第3726話 逢うが別れの はじめとは (その2)

閉店してしまうお店を紹介しても
しょうがないんだけど、
やっぱり放っておけない。
素通り出来ないものがある。

ピアディーナなんか
食べなきゃよかったと思ったりしたが
「PANZEDINA」に寄ったからこそ
「大自然」に間に合ったともいえる。

あらためて品書きを手に取った。
店のオススメは2品で
温かい柚子おろしそばと
そば付きのしらす丼定食。
定食なんざハナからムリだ。
冷たい柚子切りだったら即決ながら
そばは冬でも(温)より(冷)が好き。

まずはビールのアテに
田楽こんにゃく&おしんこを発注した。
こんにゃくの田楽味噌が旨い。
おしんこの陣容は
岩下の新生姜、野沢菜、べったら漬け。
けしておざなりなものではない。

ともに破格の200円から店主の良心が伝わる。
量が少な目なのも J.C.好みだ。
きな粉をまぶしたわらび餅が2粒提供されて
これはデザートだろうネ。

よおし! もう1品いてまえとばかり、
イカソーメンを追加する。
こちらは380円だったかな?
本わさに近い偽わさで登場した。

宮城は塩釜の醸造元・佐浦の手になる、
浦霞の冷たいのを所望すると
しっかり正一合で供された。
どこを取っても閉店が惜しまれるほどに
佳いそば屋さんである。

締めくくりのもりそば(490円)は
中細のそばが皿盛りで出てきた。
薬味はさらしねぎと先刻のわさび。
つゆも気取りのない町場感あふれるもの。
満足してそば湯もちゃんといただいた。

”逢うが別れの始めとは”
歌の文句にあるけれど
出逢いと別れの同時襲来は儚すぎる。
近江敏郎が歌い出すのもむべなるかな。

  逢うが別れの はじめとは
  知らぬ私じゃ ないけれど
  せつなく残る この思い
  知っているのは 磯千鳥  ♪
   (作詞:福山たか子)

「別れの磯千鳥」の近江版は
1952年のリリース。
この曲には作詞者の福山たか子と
作曲者のフランシス座波にまつわる、
悲恋が絡むのだが書き始めたら
丸一話を費やしてしまうため、
興味のある方はググッて下さいまし。

「SOBA-HOUSE 大自然」
 東京都台東区北上野2-1-14
 惜しくも閉店です

2025年2月4日火曜日

第3725話 逢うが別れの はじめとは (その1)

1月末としては陽光うららかな暖かい日。
毎年7月には七夕祭りで賑わう、
かっぱ橋本通りをズンズン歩いて往った。

北上野二丁目の交差点でふと思い出す。
1月2日に遭遇した「大自然」なる、
不自然な屋号の日本そば屋のことをー。
豊富な品書きに割安な値付けが好印象。
近々来てみようとBMしたのだ。

今日はもう無理だが
再度の値踏みをしてみよう。
交差点を右折して15mほど。
行ってみてガッビ~ン!
何と、何と、ついでにもう一丁何と!
貼り紙に目を射抜かれた。

閉店のお知らせ
いつも当店をご愛顧頂き
誠にありがとうございます。
この度諸般の事情により、
今月、31日をもちまして
閉店する運びとなりました。
突然のお知らせとなり
お詫び申し上げます。
ご愛顧頂きました皆様に
心より感謝申し上げます。
大自然オーナー

1月31日といったら今日じゃないか!
虫の知らせとはまさにこのこと。
虫の知らせに導かれて
閉店のお知らせを目にしている。

もうあまり食べられないけど
本日が営業最終日じゃ、
見逃すわけにはいかない。
余力を振り絞って敷居をまたいだ。

店内は8割方埋まっている。
みんな別れを告げに来たんだろうか?
地元の常連客と思しき人が大半の様子だ。
中に交じって2人掛けに着卓した。

浅草だからビールは瓶も生もアサヒ。
中瓶をお願いするとき訊いてみた。
「お店は今日が最後なの?」
お運びのオネエさん応えて
「はい、そうなんです」
「ヨソに移転とか?」
「いいえ」
「しばらく休んで再開とかは?」
「ありません」

3年半の命が今、終わるのでした。

=つづく=

2025年2月3日月曜日

第3724話 パンツェロッティをご存じ?

読者のみなさんは
パンツェロッティなる食べものを
ご存じでありましょうや?
長靴に例えられるイタリア半島。
そのかかとの部分に位置する、
プーリア州の名物がコレ。

トマトやチーズをピザ生地で半月形に包み、
焼き上げたものをカルツォーネと呼ぶが、
焼かずに油で揚げたのがパンツェロッティ。
カルツォーネほどポピュラーではない。
実際に J.C.も長かったNY時代に
カルツォは幾度か食べたが
パンツェにはお目に掛かったことすらない。

西浅草はかっぱ橋本通りに専門店を見つけ、
初めて利用したのがこの正月2日だった。
ペローニの生ビールとともに
ハムとモッツァレッラのパンツェを頂いた。
ふむ、なかなかに美味しい。

店主は40代だろうか?
たった一人の孤軍奮闘だ。
「奥さんとかガールフレンドとかいないの?」
「ええ、まだ・・・」
「お客さんでいいコがいたらいいネ」
「それを願ってはいるんですが・・・」

再訪してから紹介するつもりで月末に赴く。
この日はイタリアのリキュール、
アペロルのソーダ割りと
ピアディーナをお願いする。

こちらはパニーニに似ているがパンではなく、
やはりピザ生地に挟んだ半月形のサンドイッチ。
中身は、生ハム・クリームチーズ・
ミニトマト・ベイビーリーフ・レタス。
たまに食べると舌先に変化が生まれて
いいもんだネ。

ほろ苦いアペロルもたまに飲むと新鮮だ。
カンパリに似た味わいながら
カンパリの赤に対してこちらはオレンジ色。
ヴェネツィアのサンマルコ広場を思い出す。

店名の「Pnzedina(パンツェディーナ)」は
パンツェロッティとピアディーナの合体語。
夕刻にはピッツァを出すものの、
釜がないため、フライパンで焼くとのこと。

会計は1650円也。
正月同様、昔のパン屋「シミズ」に
立ち寄って帰ろう。
本通りを上野に向かって往きました。

「浅草パンツェロッティ PANZEDINA」
 東京都台東区西浅草2-23-8
 03-6802-8773