2025年2月19日水曜日

第3736話 ♪ どうすりゃいいのさ 思案橋 ♪

今は亡き、のみとも・半チャン。
彼ゆかりの店「グリーングラス」を
今年初めて訪れた。
その前にY子ママと一献傾け、
同伴をシャレ込む。

落ち合ったのは銀座ナイン地下、
長崎料理「銀座 吉宗」だ。
暴れん坊将軍の ”よしむね” ではなく、
”よっそう” と音ずる。
幕末の長崎で開業の祖となったのが
吉田宗吉さんなので「よっそう」。

一昨年の七月以来になるが
その際は鯨刺しで飲んだだけ。
当店の名物は、茶碗蒸し、蒸し寿司、
皿うどん、鯨刺し、飛魚すぼまきなど。
目移りするわ、腹に溜まるもの多いわで
"どうすりゃいいのさ思案橋" もいいところ。
ほうら、青江三奈の懐かしい歌声が・・・

♪ 逢えば別れが こんなにつらい
  逢わなきゃ 夜がやるせない
  どうすりゃいいのさ 思案橋
  丸山せつない 恋灯り
  ああ せつない長崎ブルースよ ♪
   (作詞:吉川静夫)

名曲「長崎ブルース」は1967年のリリース。
レコードは120万枚も売れた。
翌年「池袋の夜」(150万枚)に抜かれるが
彼女のセカンド・モーストである。

相方はマルエフ中ジョッキ、
当方は熟撰中瓶で乾杯。
ともにアサヒながら好みではない。
予約時に茶碗蒸しの人数分の注文を
確約させられた。
以前、こんなシステムはなかった。

お通しのカンパチあら炊きが、ちと生臭い。
鯨の赤身刺し&ベーコン。
ハトシ揚げ(海老すり身トースト)。
豚の角煮を通した。
彼女は赤身、J.C.はハトシが気に入った。

凍らせたカットレモンが
ゴロゴロ入ったサワーを飲んだり、
皿うどんを食べ切れずに残したりして
くだんの茶碗蒸しで締めた。

「グリーングラス」には
うたとも・Hルがすでに出勤しており、
歌を愛した故人を偲び、3人でカラオケ三昧。

Y子に教えた浅草観音裏「ニュー王将」に
味をしめた彼女がお連れした常連さん、
H 坂サンも来店してさらに盛り上がり、
早めに帰る予定が大幅にずれ込む。
結局は薬局、看板まで居座り、
Hルと新橋駅へ急いだ。

東京駅で高崎線に乗り換える彼女に手を振り、
そのまま山手線で日暮里下車。
夜が更け切った夕焼けだんだんを
ヨタヨタ降って往きましたとサ。

「銀座 吉宗」
 東京都中央区銀座8-7番先
 銀座ナイン2号館 B1F
 03-6274-6002

「グリーングラス」
 東京都中央区銀座8-7-5 昌栄ビルB1
 03-3572-3110

2025年2月18日火曜日

第3735話 食堂は 染井銀座に ただ一軒

最近はしょっちゅう往来する染井銀座。
そこで見つけたのが食堂「伏見家」だ。
青いテントが目立つ清潔そうな佇まい。
これは一度訪れなきゃな。

二人掛けと四人掛けのテーブルのみで
カウンター席はない。
キンリンラガーの大瓶をトクトクやって
メニューを手に取った。

=ランチメニュー(豚汁)=
 サービスランチ 900円
A.豚肉しょうが焼き+メンチカツ
B.豚肉しょうが焼き+アジフライ
C.豚肉しょうが焼き+サラダ+豚汁(大)
すべての定食に豚汁が付きます。

是が非でもしょうが焼きと豚汁を
食わせたいらしい。
他にはアジフライや
ミックスフライの定食があり、 
サービスランチも含めて
混雑時、こちらのメニューが
優先となります、あった。

Bをお願いするとアジフライの身が分厚い。
サクサクのコロモは好いが問題はゼイゴ。
綺麗なバラに棘ある如く、
旨いアジにも棘がある。
これはちゃんと取り除いて欲しいな。

しょうが焼きはある程度まで
作り置いたものだろう。
よって素早く提供できるわけだ。

自慢の豚汁はドッサリの白菜に
大根・ごぼう・にんじん・しめじ・
油揚げ・豆腐のフルキャスト。
かぶ&きゅうりのぬか漬けチョッピリに
半分でお願いしたハズのごはんがタップリ。

店内はオッサンとアンチャンが入り混じり、
みな単身で女性は皆無。
いつも思うことながら、この惑星に日本ほど
ダイニング・シーンの性別分離が激しい国は
男女共存が制限されるアラブ圏以外にない。

豊島区・駒込の染井銀座で唯一の食堂なのに
界隈の女性住民はカフェや喫茶のお世話に
なっているらしい。
ふ~む、男女を分けるのは
大衆浴場だけでじゅうぶんじゃないの? 
そう、思った次第です。

「伏見家」
 東京都豊島区駒込6-27-8
 03-3917-2540

2025年2月17日月曜日

第3734話 駿河台 人気の理由が 判らない

メトロ千代田線を新御茶ノ水下車。
なが~いエスカレーターを昇り、
駅直結の新お茶の水ビルを出ると
目の前に「中華 やまだ」。
近くにニコライ堂がある。

近隣のリーマンでいつもいっぱい。
混雑ぶりが半端じゃないから
今まで遠巻きに眺めるだけだった。
この日は意を決し、ピーク時を避けて入店。
キリンラガー中瓶とラーメンを通す。

バラチャーシュー・シナチク・
ワカメがプカプカ浮かんでいる。
真っ直ぐの中細麺に粉々感があり、
町中華らしい昔ながらの醤油味。 
スープはこういうのが落ち着く。
まずまずの味わいに一応はうなづいた。

周りを見ると他客のボリュームがスゴい。
若者中心だが中年も頑張ってるし、
年寄りの冷や水的な老人もちらほらと
自分で自分の寿命を縮めている有様。
こりゃヤバいんじゃないの?

肉野菜炒めが人気だってんで
食べてみようと半月後に再訪。
混み合う12時半だったから
ビールをアッサリ断られた。
まあ、しょうがないわな。

料理もライスも半分でお願いしたが
すんごい量で着卓した。
こんなに食ったら病気になるぜ。
例え病気は免れてもデブにはなるな。

5席ほどのカウンターはともかく、
テーブルはすべて相席。
みなさん慣れてるせいか
先客に会釈もせず、ヅカヅカ座る。
好きじゃないよぉ、
こういうデリカシーが欠如した店。

若い娘も相席の後客を全然無視。
でもねェ、むさ苦しい爺さんならまだしも
チンピラやくざ風のアンちゃんが
目の前に座ったらおちおち飯なんか
食ってられないんじゃないの、娘さんよっ!
まっ、いいか。

2回利用して人気の理由がさっぱり判らん。
なんでこんなに混み合うの?
みんな大食漢だからかな?
町中華に寄せる日本人の郷愁だろうか?
店には悪いが他に理由が見つからない。
オモテに出てニコライ堂を見上げながら
つくづく思ったことでした。

「中華料理 やまだ」
 東京都千代田区神田駿河台2-10-5
 03-3233-1905

2025年2月14日金曜日

第3733話 縁切榎を 再訪&再々訪 (その2)

牛に引かれて善光寺参りじゃないけれど
そばに引かれてまたもや縁切榎を再々訪。
お相手はアパレル界のやり手・T子サン。
昨夏の「弁天山美家古寿司」以来だ。

板橋区役所近く、仲宿の入口で待ち合わせ。
読書家の彼女はいろいろ読んでいて
「この商店街は森まゆみのお気に入りネ?」
「よく識ってるなァ、その通り」
森まゆみさんはわれ棲む町、
谷根千在住で女王様的存在の作家だ。

再会を祝しての乾杯はキリンラガー。
最初のつまみは
こんにゃくの味噌田楽と焼き油揚げ。
最近はこんにゃくが好きになった。
子どもの頃はこんにゃくなんて
見向きもせずに跨いでたのにネ。

油揚げも素朴でけっこう。
花がつお・海苔・貝割れが載り、
マヨネーズが添えられる。
これだけで恰好の肴になってくれる。

二人してかっぱ割りに移行した。
そば焼酎・白雲郷の水割りに
きゅうりスライスと似非わさびを投入。
そんなに美味いもんでもないが
舌先と目先が変わり、楽しくもある。

鴨の串焼きを塩でお願いすると
鳥肉と見まごうほどに白っぽいけど
味はなかなかだった。

そしてもう一品は
島根県・浜田市の名物、赤天。
さつま揚げみたいだが
蒲鉾のようにきめ細やかな食感。
赤い色は紅しょうがじゃなく、
赤唐辛子の成せる業である。
縁切榎「長寿庵」のつまみは佳品揃い。

締めは榎そばをシェア。
タイトルロールの冷たいそばは
みょうが・おろし・貝割れ・花がつお・
そばの実・海苔・なめたけと具沢山。
そばには珍しいなめたけは瓶詰だろう。

おっと、そうかァ!
ここで初めて気が付いた。
なめたけは早い話がえのきだけ。
榎にかけてるんだ。

枯れた榎の根元によく生える茸なので
榎茸と名付けられた。
スーパーや八百屋で見かける白いのは
即席栽培で自然の物とは違うらしいがネ。

美味しく楽しいひとときを過ごし、
さて、二次会は何処に参ろう。
協議の結果、
巣鴨の地蔵通りに決めました。

「長寿庵」
 東京都板橋区本町18-9
 03-3961-2421

2025年2月13日木曜日

第3732話 縁切榎を 再訪&再々訪 (その1)

去年の師走の初訪時には
冷やしたぬきで天国、ごまサバ丼で地獄。
同時に天と地を味わされた、
縁切榎隣りの「長寿庵」を再訪。
相方は浅草在住ののみとも・S織だ。

キリンラガーのグラスを合わせたら
発注前なのに店主と思しきオヤジさんが
スゴい勢いで皿を運んで来た。
てっきり誤配かと思いきや、
「何だか判る? 食べてみてヨ」

ハハ~ン、日比谷「いわさき」の娘ように
S織が少し美人だからお近づきの印なんだネ。
白っぽいコロモの天ぷらは・・・
んん? ひね生姜じゃないかー。
「ハイ、ご名答!」
元気で陽気なオッサンですこと。

相方を口説くつもりは毛頭ないが
くどき上手の冷たいのに切り替えた。
山形県・鶴岡市は
亀の井酒蔵の手になるものだ。

つまみを3品通す。
いぶりがっこ&クリームチーズ。
有明海産天然芝海老の素揚げ。
たぬき豆腐(豚バラ・しめじ・豆腐・揚げ玉)。

いぶりがっこは相方の大好物。
芝海老は常日頃、どうして佐賀産ばかりなのか
不思議に思っていたけど有明海だったんだ。
やっと謎が解け、目からウロコがポロリンコ。
たぬき豆腐はスゴかった。
固形燃料を忍ばせた鍋がグツグツグツ。
食べ応えじゅうぶんである。

ふと手に取った箸袋に
板橋・本町 縁切榎前 そば処 長寿庵
” 悪縁切って 蕎麦食べて
  良縁結んで 蕎麦食べて "
こう、ありやした。

早い話が年がら年中、蕎麦食ってろ!
って、こっちゃないかー。
縁切榎は商売繁盛の神様でもあるらしい。

何だか二人とも腹がふくれてしまい、
締めはもりそばを分け合うことに。
その美味しさにS織は目パチクリ。
ついでにそば湯の猪口もカチンと合わせる。

本日の二軒目はナシ。
三田線から山手線に乗り換えるツレとは
巣鴨で手を振り合いました。

=つづく=

2025年2月12日水曜日

第3731話 ♪ 約束通り 僕は食べてた ♪

Zooとも・白鶴とビールを飲むため、
いつものように錦糸町の喫茶「ニット」へ。
診療を終えて来る彼女は18時近くになるが
今日の J.C.は早めに到着した。

去年、他客の食べるビーフシチューが
とても美味しそうで
高齢のマダムに勧められ、
「それじゃ、今度来たときにネ」
約束を果たすための早仕掛けだ。

マダム本人にドライ中瓶とお願い。
15分ほどでライスとともに運ばれた。
ほうら、伊藤きよ子も歌い出す。

♪ 可愛い花を 僕は積んで
  部屋の机に 飾っておいた
  毎日僕は 急いで家に
  帰って花と お話をした
  小さいままで 可愛いままで
  或る朝花は 散っていったよ
  約束通り 僕は見ていた
  花の命の 終わるまで  ♪
   (作詞:浜口庫之介)

「花と小父さん」は1967年のリリース。
彼女の唯一のヒット曲と言えるだろう。
クレージーの植木等と競作だったが
多くの歌手がカバーしており、
J.C.の気に入りは藤圭子。
演歌歌手がジャズりまくって印象的だ。

マダムとの約束を守ろうと
師走に訪れたときは生憎の早仕舞いで
シチューがもんじゃになった顛末は
12月30日の第3699話で書いた。

ようやく約束を果たすことができ、
約束通り僕は食べてた、
シチューの皿の終わるまで。
煮込まれた牛バラがとろけるよう。
皿を彩る具材はほかに
じゃが芋・にんじん・マッシュルーム。
期待に沿う美味しさだった。

引き続きビールを飲んでいると
白鶴が舞い降り、店の由来を話してやる。
店名の「ニット」は元々、
此処に縫製工場があったから。
創業が1965年で今年がちょうど60周年。

しょっちゅう顔を出すため、
気にもとめていなかった奴さん、
目を丸くして聞き入っておりました。

「ニット」
 東京都墨田区江東橋4-26-12
 03-3631-3884

2025年2月11日火曜日

第3730話 忘れかけてたインドカレー

レギュラー・カストマーになった、
「チャントーヤ」の近くにもう1軒、
町で噂のカレー店があると聞き及んだ。
これは行かなきゃネ。

淡路町交差点の南東、
神田須田町の「ジンコック」は
カウンター6席に小テーブルが2つだけ。
よって昼時は常に行列だ。

11時55分に着いたら6人待ち。
20分並んで入店できた。
キリン一番搾りの中瓶を貰い、
メニューを吟味する。

当店のカリーはおおむね3タイプ。
インド風・カシミール風・トマト味のインド。
あとは数量限定のキーマだ。
インドは濃い味派、カシミールはあっさり派。

メニューにそうあったんで
舌も性格もあっさり派の J.C.は
迷うことなくカシミールのチキンカリーを
名物のクリームコロッケとともに通した。

んん? あっさりはいいが、ちともの足りない。
多めのジャポニカ米にチキン3個とポテト2個。
コロッケはクリームのみで不味くはないけど
やっぱり蟹クリームがいいな。

周りの状況を把握するため、
ダンボの耳(死語か?)にすると
注文はほとんど全員インドカリーで
トマトが一人にカシミールはわれ独り。
失敗したな、再訪はないな。

帰宅後、フード・ダイアリーに
メモっていて、ふと思った。
みんなが食べるインドを食べずに
再訪ナシの低評価は不味いんじゃないの。
女性の容姿を後姿で判断するに等しい。

ひと月後、また並びました。
12時15分に着いたら9人待ち。
意外にスムースで12時半に入店。
今日はインドのポークカツカリー。
辛さは前回同様に上から二番目の中辛だ。

湯島「デリー」恵比寿「ボンベイ」ほど
辛くないソースはサラッサラ。
固形物が全然ないのは J.C.好みである。
気を取り直して再訪したのは正解だった。

映画前のカリーはタイなら「チャントーヤ」。
インドの場合は「ジンコック」で決まり。
ドラエもん特集が終わる3月になったら
またおジャマいたします。

「ジンコック」
 東京都千代田区神田須田町1-2-3
 03-3251-1795

2025年2月10日月曜日

第3729話 昨今は カレーとあらば タイが好き (その2)

神田小川町の「チャントーヤ」。
あまり日をおかず二度目の来訪。
最高値の、と云っても1400円だけど、
デラックス・シーフードカリーを通した。

魚介のカレーは好きながら
今まで ”これゾ!”という一品には
出逢った験しがほとんどない。
期待に胸をふくらませ、
ビールを飲みながら出来上がりを待つ。

オー・マイ・ガッ! 
あっさりと期待を超えられた。
人生最高のシーフードカリーに最敬礼。
小海老・いか・帆立貝柱に
生桜海老が重要な役割を果たす。
ソースも素晴らしく、
コレが当店 No1であることを確信する。

年が明けてからの3度目は
とろ豚とキャベツとトマトのカリー。
すると・・・これが好くなかった。
まず第一にトマトが合わない。
当店のカリーの好もしさを阻害している。

14品目に期間限定品が1品で計15種中、
9種までトマトが使われていて
こりゃ、あんまりだ。

おまけにキャベツも何だかなァ。
多過ぎるのと生過ぎるのとのWパンチ。
そしてとろ豚にダメを押された。
豚バラのトロトロ感を期待したが大外れ。
パサパサでトロ豚ならぬ、パサ豚だ。

4度目はイチ推しのシーフードに回帰。
初回の感動は薄れたものの、
ズバ抜けた旨さをあらためて堪能した。

ずっと気になっているのに
つい聞きそびれていた疑問を
スタッフに投げかける。
店名「チャントーヤ」の意味だ。

女性スタッフ応えて「チャントーヤ」は
日本人オーナーとタイ人創始者、
彼らの名前の掛け合わせだと云う。
ふ~ん、そうなんだ。

「掛け合わせでも二人の間に
 肉体関係はないでしょ?」
「ないです、ないですっ!」

焦ってあわてた否定ぶりに
彼女自身もテレくさかったのか、
顔を見合わせ、吹き出したのでした。

「チャントーヤ ココナッツカリー」
 東京都千代田区神田小川町3-28-7
 03-5281-4747

2025年2月7日金曜日

第3728話 昨今は カレーとあらば タイが好き(その1)

J.C.は子どもの頃、
カレーをさほど好まなかった。
大人になって好きになったといえる。
こういう食べものってけっこうあるよネ。

鮨種の光りモノ、冷奴や鍋などの豆腐、
そして嫌いだった芋類に豆類。
自分の典型例はそんなところだ。

昔、たまに家で鮨の出前を取ると、
母親の玉子とJ.C.の小肌は
常に物々交換の対象となっていた。
大学生になってもそれは続いた。
今は鮨種で小肌が一番好き。

カレーに目覚めたのは
シンガポール赴任時代。
中国系住民が7割以上を占めるなか、
インド系は1割程度ながら
インド料理の水準は高いものがあった。
カレーはもとよりタンドゥーリも好きで
実によく食べた。

そんなカレーだが
近頃はタイカリーが気に入っている。
殊に緑の唐辛子を使った、
グリーンカレーを好む。

神保町シアターにほど近い、
「チャントーヤ」を見つけて以来、
短い間に4度も通ってしまった。
グリーンカレーが無いにも関わらず。

常に立て混むものの、
待っても15分かそこいら。
男女の比率は圧倒的に女性が多い。
日本のアジア系エスニックは女の天下で
オッサンはもっぱら焼き魚か煮魚にとんかつ、
あとは日本そばと相場が決まっている。

初回は無難にタイトルロールの
チャントーヤカレーをお願い。
即刻通したドライ中瓶に
コーン散らばるミニサラダが供された。
女性客を呼び込むのに
生野菜は不可欠とみえる。

ソースとライスが別盛りで登場。
具材はチキン・ナス・タケノコ。
てっぺんにパクチーが一葉鎮座している。
黄色いカリーを一匙口元に運ぶ。
ふむ、ココナッツはさして主張しないが
深い滋味を感じた。

(コイツは美味いや!)
思わず心の内でつぶやいた。
緩みゆく頬を実感していました。

=つづく=

2025年2月6日木曜日

第3727話 ”わかれ” が切ない 日比谷の食堂

先週の第3722話でふれた、
日比谷の食堂「いわさき」。
地番は有楽町一丁目だが有楽町駅の有る、
晴海通り北側はそれで良しとしても
こちら南側は日比谷と呼びたい。
公園はじめ、シャンテもミッドタウンも
日比谷を名乗っているしネ。

懐かしくなって13年ぶりに訪問した。
店頭の小さな貼り紙が微笑ましい。
(イワシフライ定食 850円)
 ◎美味だぜそこのところよろしくね
(さば味噌煮定食 900円)
 ◎すこし美人の娘が作っています

ハハハ、昔はこんなん無かったヨ。
その日の日替わり定食がさば味噌煮。
半量なので割安価格(750円)になり、
少食派には打ってつけ、即決した。

カウンターの右端に着くと
懐かしの女将サンが背後に立つ。
「日替わりお願いします」
「アッ、日替わり終わっちゃったの」
「それじゃ ”わかれ”をー」
「あら! 昔のお客さん?」
「ええ、初めて来たのは50年前ですヨ」
「ん、まァ!」

”わかれ”を通すたびに
「昔のお客さん?」と訊かれるんだ。
今ではみんなかつ丼定食を
頼むようになって”わかれ”は絶滅した。
厨房にはこれまた懐かしい親父サンと
娘がいたがマスクをしていて
少し美人かどうかは不明のまま。

「アッ、あと、ビールください」
「あら、ウチはごはんだけなんですヨ」
以前はキリンラガーがあったけどなァ。
まっ、このあと近所の立ち食いそばで
缶ビールを飲むからいいとして
いつの間にやら営業は昼だけになった。

かつての名代、”わかれ”が調いました。
う~ん、秘伝の味付けの手法が未だに
判らないが美味さは変わらない。
薄い豚肉も往時のままながら
今日はヤケに肉質が硬い、まっ、いいかー。

でもネ、ビールが無いんじゃ今日でお別れ。
再訪はもうないだろう、哀しいねェ。
切なくなった途端に裕次郎が歌い出したヨ。

♪  逢えば短かい 夜だから
   何も云わずに 踊ろうよ
   淡い灯りが 又ひとつ
消えてゆく
   別れが切ない ナイトクラブ
   恋のクラブよ    ♪
  (作詞:池田充男)

「二人の世界」は1965年のリリース。
当時の歌謡ベストテンにおいては
20週連続1位を記録する大ヒットとなる。
池田は新宿の音楽喫茶「ラ・セーヌ」で
鶴岡雅義のレキントギターに魅せられ、
そこからつき合いが始まり、
東京ロマンチカの生みの親になった。

「いわさき」よ、さようなら。
ん? ううん、やっぱりまた来るネ。

「いわさき」
 東京都千代田区有楽町1-6-9
 03-3591-4740

2025年2月5日水曜日

第3726話 逢うが別れの はじめとは (その2)

閉店してしまうお店を紹介しても
しょうがないんだけど、
やっぱり放っておけない。
素通り出来ないものがある。

ピアディーナなんか
食べなきゃよかったと思ったりしたが
「PANZEDINA」に寄ったからこそ
「大自然」に間に合ったともいえる。

あらためて品書きを手に取った。
店のオススメは2品で
温かい柚子おろしそばと
そば付きのしらす丼定食。
定食なんざハナからムリだ。
冷たい柚子切りだったら即決ながら
そばは冬でも(温)より(冷)が好き。

まずはビールのアテに
田楽こんにゃく&おしんこを発注した。
こんにゃくの田楽味噌が旨い。
おしんこの陣容は
岩下の新生姜、野沢菜、べったら漬け。
けしておざなりなものではない。

ともに破格の200円から店主の良心が伝わる。
量が少な目なのも J.C.好みだ。
きな粉をまぶしたわらび餅が2粒提供されて
これはデザートだろうネ。

よおし! もう1品いてまえとばかり、
イカソーメンを追加する。
こちらは380円だったかな?
本わさに近い偽わさで登場した。

宮城は塩釜の醸造元・佐浦の手になる、
浦霞の冷たいのを所望すると
しっかり正一合で供された。
どこを取っても閉店が惜しまれるほどに
佳いそば屋さんである。

締めくくりのもりそば(490円)は
中細のそばが皿盛りで出てきた。
薬味はさらしねぎと先刻のわさび。
つゆも気取りのない町場感あふれるもの。
満足してそば湯もちゃんといただいた。

”逢うが別れの始めとは”
歌の文句にあるけれど
出逢いと別れの同時襲来は儚すぎる。
近江敏郎が歌い出すのもむべなるかな。

  逢うが別れの はじめとは
  知らぬ私じゃ ないけれど
  せつなく残る この思い
  知っているのは 磯千鳥  ♪
   (作詞:福山たか子)

「別れの磯千鳥」の近江版は
1952年のリリース。
この曲には作詞者の福山たか子と
作曲者のフランシス座波にまつわる、
悲恋が絡むのだが書き始めたら
丸一話を費やしてしまうため、
興味のある方はググッて下さいまし。

「SOBA-HOUSE 大自然」
 東京都台東区北上野2-1-14
 惜しくも閉店です

2025年2月4日火曜日

第3725話 逢うが別れの はじめとは (その1)

1月末としては陽光うららかな暖かい日。
毎年7月には七夕祭りで賑わう、
かっぱ橋本通りをズンズン歩いて往った。

北上野二丁目の交差点でふと思い出す。
1月2日に遭遇した「大自然」なる、
不自然な屋号の日本そば屋のことをー。
豊富な品書きに割安な値付けが好印象。
近々来てみようとBMしたのだ。

今日はもう無理だが
再度の値踏みをしてみよう。
交差点を右折して15mほど。
行ってみてガッビ~ン!
何と、何と、ついでにもう一丁何と!
貼り紙に目を射抜かれた。

閉店のお知らせ
いつも当店をご愛顧頂き
誠にありがとうございます。
この度諸般の事情により、
今月、31日をもちまして
閉店する運びとなりました。
突然のお知らせとなり
お詫び申し上げます。
ご愛顧頂きました皆様に
心より感謝申し上げます。
大自然オーナー

1月31日といったら今日じゃないか!
虫の知らせとはまさにこのこと。
虫の知らせに導かれて
閉店のお知らせを目にしている。

もうあまり食べられないけど
本日が営業最終日じゃ、
見逃すわけにはいかない。
余力を振り絞って敷居をまたいだ。

店内は8割方埋まっている。
みんな別れを告げに来たんだろうか?
地元の常連客と思しき人が大半の様子だ。
中に交じって2人掛けに着卓した。

浅草だからビールは瓶も生もアサヒ。
中瓶をお願いするとき訊いてみた。
「お店は今日が最後なの?」
お運びのオネエさん応えて
「はい、そうなんです」
「ヨソに移転とか?」
「いいえ」
「しばらく休んで再開とかは?」
「ありません」

3年半の命が今、終わるのでした。

=つづく=

2025年2月3日月曜日

第3724話 パンツェロッティをご存じ?

読者のみなさんは
パンツェロッティなる食べものを
ご存じでありましょうや?
長靴に例えられるイタリア半島。
そのかかとの部分に位置する、
プーリア州の名物がコレ。

トマトやチーズをピザ生地で半月形に包み、
焼き上げたものをカルツォーネと呼ぶが、
焼かずに油で揚げたのがパンツェロッティ。
カルツォーネほどポピュラーではない。
実際に J.C.も長かったNY時代に
カルツォは幾度か食べたが
パンツェにはお目に掛かったことすらない。

西浅草はかっぱ橋本通りに専門店を見つけ、
初めて利用したのがこの正月2日だった。
ペローニの生ビールとともに
ハムとモッツァレッラのパンツェを頂いた。
ふむ、なかなかに美味しい。

店主は40代だろうか?
たった一人の孤軍奮闘だ。
「奥さんとかガールフレンドとかいないの?」
「ええ、まだ・・・」
「お客さんでいいコがいたらいいネ」
「それを願ってはいるんですが・・・」

再訪してから紹介するつもりで月末に赴く。
この日はイタリアのリキュール、
アペロルのソーダ割りと
ピアディーナをお願いする。

こちらはパニーニに似ているがパンではなく、
やはりピザ生地に挟んだ半月形のサンドイッチ。
中身は、生ハム・クリームチーズ・
ミニトマト・ベイビーリーフ・レタス。
たまに食べると舌先に変化が生まれて
いいもんだネ。

ほろ苦いアペロルもたまに飲むと新鮮だ。
カンパリに似た味わいながら
カンパリの赤に対してこちらはオレンジ色。
ヴェネツィアのサンマルコ広場を思い出す。

店名の「Pnzedina(パンツェディーナ)」は
パンツェロッティとピアディーナの合体語。
夕刻にはピッツァを出すものの、
釜がないため、フライパンで焼くとのこと。

会計は1650円也。
正月同様、昔のパン屋「シミズ」に
立ち寄って帰ろう。
本通りを上野に向かって往きました。

「浅草パンツェロッティ PANZEDINA」
 東京都台東区西浅草2-23-8
 03-6802-8773