2025年2月24日月曜日

第3739話 深川・常盤の「 芭蕉そば」(その2)

芭蕉そばの主役を張る厚焼き玉子。
ヨソの店では見たことがない。
でも、考えてみりゃ、
そば屋に厚焼き玉子は付き物だ。
そばに入れるアイデアを誰一人、
思いつかなかっただけだろう。

5分後に若い女性が来店すると
そこから次々に計6人。
定員に達して満員御礼。

ツルツルのそばがなかなか。
つゆも水準に達している。
おすすめに従い、途中から味変。
赤い柚子胡椒を加えるとこれがバッチリ。
七色唐辛子より温そばに寄り添って
みやげ用に1パック購入したくらい。
緑の柚子胡椒は冷そば用とのことだった。
ふ~ん、なるほどねェ、勉強になるなァ。

缶ビールをお替わりすると、
かき揚げがスッと出て来た。
ありがたきかなオヤジさんのサービス心。

ここから会話に弾みがついた。
何でも旅行先の京都で食べた、
奈良産のそばが気に入ってしまい、
ずっと使っているそうだ。

営業は朝の5時から14時くらいまで。
夫婦二人の切盛りで25年になるという。
オヤジさんは今年の誕生日を迎えたら
八十路に突入、だいぶ若く見えるけどネ。

住まいは両国と常盤の間の墨田区・千歳。
ずぶの素人がそば屋を始める前は
両国で雀荘を経営していたそうだ。
当時はブクブク太って98kgあったという。

雀荘のお客の食事は中華の出前一本やり。
一人前の出前じゃ店に申し訳ないってんで
餃子や炒飯をつき合った結果の肥満である。

血糖値と血圧もヒドかったらしい。
幸い今は72kgで、これをキープするため、
店を閉めたらジム通いを続けている。
話が合うというか、ウマが合うというか、
居心地よくて楽しくて、ビールをもう1缶。

「ウチでビール3缶飲んだお客さんは
 25年やってて初めてヨ」
「いや、ボクも立ち喰いそば屋さんで
 缶3つは生まれて初めて」
顔を見合わせ、笑い合った。
「近くに来たらまた寄ってネ」
「月に一度はおジャマするネ」

萬年橋のたもとから
芭蕉庵史跡庭園に下りる。
右手前方の清洲橋のブルーが目に鮮やか。
ドイツはケルンの吊り橋を模したそうだが
あの橋を渡ったのは半世紀前の1974年。
J.C.の胸の血も夢と希望に燃えていた。
それが今じゃ・・・タハッ、やめとこう。

川のほとりに芭蕉の句碑が並んでいる。
隅田川に馴染むのに絶好のスポットだが
ほとんど人がいない。
出逢ったのは1組のカップルと
ベンチで弁当をひろげる娘だけでした。

「芭蕉そば」
 東京都江東区常磐1-15-4
 電話:ナシ