2013年7月2日火曜日

第611話 悠が作って さゆりが歌う (その1) この歌詞が魅了する Vol.2

ちょうどひと月前に始めた新シリーズ、”この歌詞が魅了する”。
歌謡曲ファンが多いとみえて反響小さからず、
たくさんのメールをいただいた。
根っからの単細胞が気をよくしてその第二弾とまいりましょう。

今回は日本を代表する作詞家・阿久悠と
これまた日本を代表する演歌歌手・石川さゆりのコンビに
スポットライトを当てたい。
実はこれもまたまた日本を代表する作曲家・三木たかしを加えて
ゴールデントリオになるんですがネ。
一曲目は「暖流」。

 ♪ 私これで帰りますと 席を立った
   急にたずねすみませんと 頭下げた
   いいのここで一人にして 下されば
   後はぶらり海を見つめ 過します
   これで心が 晴れました
   あなたなしで生きることに 決めました
   沖を走る潮の流れ 見つめながら
   私しんみり 南国土佐の 昼さがり 

   バスの窓にキラリキラリ 波が光り
   岬までの道がつづく うねりながら
   季節はずれ風がさわぐ 海べりを
   私ひとり乗せただけの バスが行く
   これで心が 晴れました
   あなたなしで生きることに 決めました
   かもめつれて西へ走る フェリーボート
   私ぼんやり 南国土佐の 昼さがり

   これで心が 晴れました
   あなたなしで生きることに 決めました
   ふり向いては駄目よ駄目よ 戻っちゃ駄目
   私はらはら 南国土佐の 昼さがり    ♪

よせばいいのに全部披露しちゃった。
詞があまりにもすばらしいので歯止めが効かないや。
ご覧ください、赤字だらけであります。
”すみませんと頭下げた”
邦楽の歌詞にあって”頭を下げる”というフレーズは前代未聞。
少なくともJ.C.はほかに知らない。
新鮮な驚きに胸を衝かれ、聴いてるほうが頭を下げた。

”心が晴れる気持ち”、よお~く判るなァ。
そうだヨ、せっかく土佐の高知くんだりまで逢いに来た恋人を
そのまま返す薄情者なんか、これからナシで生きていきなさいヨ。
ヒロインがいじらしくて背中をポンとたたきたくなるくらいだ。

別れを決断したオンナは真っ直ぐ前を向いて歩き出し、
もうけしてあとを振り向かないもの。
新しいオトコが出来たら前のオトコの顔つきすら忘れてしまうもの。
ここが男女最大の違いで
料理に例えればオンナはコース料理を
オトコはビュッフェ料理を愛でるのだ。
もっとも近頃はこの格差が縮まるどころか
逆転現象まで珍しくないんだがネ。

=つづく=