2013年7月8日月曜日

第615話 巣鴨のそば屋をもう1軒 (その1)

日曜日の昼めしどきに@巣鴨。
「武蔵野本店」のせいろは
バーコードみたいで地肌のすだれが透けていた。
肩透かしを食い、駅前で身の振り方を思案中だ。
真向いの「コージーコーナー」で何か補食してみようか。
パスタや洋食プレート、選択肢は限られるものの、
食事メニューにこと欠くことはない。

実はこの店、今を去ること44年前に
たったひと夏ながら、ずいぶんと通いつめた。
あれは高校三年生の夏休み。
当時のGFと近くの巣鴨図書館で一緒に勉強したあと、
一息つくためちょくちょく立ち寄った。
彼女はとげぬき地蔵の裏手にあった精米店の娘。

白く咲いたが百合の花、
四角四面は豆腐屋の娘、
色は白いが水くさい。

フーテンの寅さんに倣うと・・・

白く咲いたが百合の花、
丸く小粒な米屋の娘、
色は白いがヌカくさい。

てなことになる。
風の噂にシアワセな家庭を営んでいると聞いた。
さしづめ糟糠の妻といったところか。

でもって別段ケーキ屋のスパゲッティなんぞ食いたかないが
懐かしさのつれづれに中仙道を横断して店先へ。
座ったのはいつも2階の窓際だったなァ。
44年ぶりに同じ席にくつろぎ、往時を偲ぶとしましょうか。

店内に踏み込もうとしたとき、
中から中年女性のグループがゾロゾロ出てきた。
すると脇をすり抜けて女子学生が二人、先に入っていくじゃないか。
ここでJ.C.、われに返り、
「コージーコーナー」が女の楽園だったことを思い出す。
そうだヨ、オヤジが独りで窓際じゃ、窓際族もいいとこだ。

気づいたときが身の引きどき。
体裁が悪くてもう入店できなくなった。
近いうちに誰かをつき合わせればそれで済むことだ。
うしろ髪を引かれることもなく、
すみやかにとげぬき地蔵方面へと歩み出した。

そうして見つけたのが地蔵通りの「菊谷」である。
「武蔵野」とは真逆の非町場風たたずまい。
オサレというか、スカシてる(死語かも?)というか、
まあ、そんなタイプで早いハナシが好みとは違うタイプ。
しばし迷った末、「エイヤ!」とばかり、暖簾をくぐったのでした。

=つづく=