2013年7月26日金曜日

第629話 下町へべれけ道中 (その3)

「はやふね食堂」と「みたかや酒場」はきわめて至近。
徒歩10分足らずで、はしごにはもってこいのロケーションだ。
前回、隣り町と書いたが
最寄りは菊川駅でも地番は森下、近いわけだヨ。

ここへ来るのは1年と数ヶ月ぶり。
相変わらず、女将サンが元気、ゲンキ。
おとなしい旦那をアゴで使っているように見えて
実際は逆に上手く使われているようでもある。
ひょうひょうとした旦那は柳に風と受け流しているふうなのだ。
威張ったところはまったくなく、フトコロの深さを感じさせる。
居酒屋の運営には理想的なコンビネーションというほかはない。

「みたかや酒場」には生ビールがある。
しかも銘柄は好みのスーパードライ、
さっそくの駆けつけ1杯が音を立ててノドをすべり落ちてゆく。
ここ数年、ビールが旨くて仕方がない。

入れ替わり立ち替わり帰国して来るニューヨーク時代の友人たちと
旧交を温める際、ビールをガブ飲みするJ.C.を見た彼らは
一様に”信じられん”といった顔つきになる。
そうだヨなァ、彼の地のレストランでは
小瓶のビールを相方とシェアしたら即ワインに移り、
二次会ではレミーかヘネシーの水割りだったもの。
あまりの変貌ぶりにみな驚くのも無理はない。

以前を言えば池袋に今もある「銀座ライオン」が行きつけの酒場だった。
まるであの頃に立ち返ったようなビールの消費量である。
わが呑ん兵衛人生は双六(すごろく)の如く、振り出しに戻った。

本日のスペシャルに平目の煮付けを目ざとく見つけ、直ちに注文。
2杯目の中ジョッキが半分ほど空いた頃、
運ばれ来たる大皿に二人は瞠目した。
マンマ・ミーア! 何というデカさだ!
食堂の煮魚定食だったら3人前は取れそうだ。
二人でも持て余すサイズだから独り客は立ち往生するに違いない。

何とか大平目をやっつけ、お次は互いの好みを一品づつ。
J.C.は好物の焼きとん・レバ、P子は目の前に置かれたとうもろこしだ。
くだんの店主のコーン・ガイダンスがいい。
「このままの”ゆで”だったらスグ、”焼き”だと10分」
「焼いてください」
さすがにわが盟友、正しい選択である。

「少しでいいから何かゴハンものが食べたいな、おにぎりかな?」
「ここのおにぎりは炊き立てで旨いらしいけど、デッカいぜ」
「じゃあ、半分づつでどう?」
「飲んでるときにゴハン粒はうれしくないなァ」
「判った、P子頑張る!」
結局は薬局、残したらお店に悪いとつぶやく相方に
梅干しのデカにぎりを1/3ほど押し付けられ不承々々クリアした。

やれやれのお勘定。
まだまだ帰宅の途に着くわれわれではない。
 ♪ はしごは続くヨ、どこまでも ♪

=つづく=

「みたかや酒場」
 東京都江東区森下4-20-3
 03-3632-4744