2013年7月29日月曜日

第630話 下町へべれけ道中 (その4)

2軒目の「みたかや酒場」をあとにした。
二人ともほろ酔いながら千鳥足にはほど遠い。
まだまだ足取りはしっかりしている。
取りあえず新大橋通り方向へ。
行く先は西に向かって浜町か、北に上って両国だろう。

ほどなく目についたのが1軒のそば屋だ。
「おにぎりのおかげでお腹は落ち着いたけど、汁モノが欲しいな」―
ありゃりゃ、また始めやがったぜ。
仕方ないから、たぬきそばでも食わせとくか・・・。
たぬきがたぬきそば食ってどうすんの?
てな思いはあったにせよ、大したアイデアもなく入店してみると、
そこは「麺打処 いいじま」なるうどん屋だった。
それも田舎うどんがウリらしい。
どうでもいいけど、田舎うどんっていったい何だ?

うどん屋なのに相方・P子が選んだのはラーメン。
日本そば屋のラーメンは
意外にアタリが多いから言うがままに任せる。
期待もせずに味見をしたらこれが悪くない。
ほかにつまみを取るでもなく、ここでもビールと日本酒である。

あとで判ったことながらラーメンは470円の安さだった。
ほかにタンメン・もやしそば・ワンタンメン・チャーシューメンと
中華系もうどん屋にあるまじき品揃えだ。
1品だけそばメニューがあった、ただし焼きそばだがネ。
中華風あんかけなのか
屋台風ソース焼きそばなのか、そこは不明だ。

3軒もクリアするとさすがに酩酊度は半端じゃない。
酔いざましに中距離を歩きたい気分。
清澄通りを北上して京葉道路を左折した。
左手は鼠小僧の墓のある回向院、右手には大相撲の国技館。
その真ん中を進み、赤穂浪士が渡るに渡れなかった両国橋を渡る。
そのまま神田川の最下流に架かる柳橋を北へ。

さびれ果てた旧花街を縦断し、隅田川のほとりに出た。
川向こうに国技館が黒いシルエットを見せている。
暗い川面にはさざ波が立っていた。
テラスのベンチで休憩すること30分。
二つの影は重なることもなく、時刻は23時を回った。
互いに気を取り直し、最寄りの浅草橋に向かう。
いえ、電車に乗るんじゃなくて、狙いはガード下である。

焼きとんの「ぶたいちろう」に到着すると、タッチの差で閉店時間。
店のアンちゃんに、まだ開けてるところを訊ねたら
紹介してくれたのが「みかみ」という、J.C.未踏の居酒屋だ。
店は八幡様の前にあった。
3階だか4階まである大型店は夜中まで営業しているという。

よく覚えちゃいないが生ビールがめちゃくちゃ安かったような・・・。
そのぶん下らん突き出しに数百円払ったような・・・。
それなりの規模を持つ外食産業の商法は基本的にあざとい。
個人経営の心ある優良店と比べるべくもない。
品書きにはつまらん料理が割高感を漂わせていた。
ここはノータッチが賢い。

サワーに移行してノドの渇きをいやし、夜更けの街へ。
そのあと相方とどこでどう別れたのか、
トンと思い出せない、へべれけ道中記でありました。

=おしまい=

「麺打処 いいじま」
 東京都江東区森下3-6-11
 03-3631-8778

「みかみ」
 東京都台東区浅草橋1-29-1
 03-5835-019