2020年12月9日水曜日

第2542話 ニュー新橋は もはやオールド (その2)

しばしSL広場にたたずんだものの、

TV局のインタビューを受けることはなかった。

ニュー新橋ビルに行きつけはないが

懐旧の心に蹴つまずき、階段を降りていった。

 

地下1階をグルリ一めぐりしてみると

まだ宵の口のせいか、どこもガラガラ。

オバちゃん・オネバちゃん・オネエちゃんに

声を掛けられっ通しだ。

 

先客ゼロの「あかり」という店に入った。

1杯目の小ジョッキが180円。

そこに惹かれたワケじゃないけれど

控えめなオネエさんの客引きがよかった。

 

200CCくらいかな? 

小ジョッキは瞬時に蒸発してしまう。

おざなりな突き出しの玉子焼きをつまみつつ、即お替わり。

品書きをチェックして焼き鳥の正肉(220円と

手羽先(230円)を1本づつ塩でお願いする。

 

当店のキャッチフレーズは“お魚のおいしいお店”。

なるほど、いわし塩焼き(刺身用)、

かれい煮つけ、さば味噌煮、ぶりあら煮などが揃い

オール780円と大ざっぱな値付けだ。

 

焼き鳥の正肉はヤケに小さくてショボい。

反して手羽先は水準をクリア。

たった10円でずいぶん差が出るものだ。

 

ジョッキを立て続けに3杯空け、芋焼酎のロックに移行。

宮崎の黒霧島が440円、赤霧島だと450円。

この店の10円差はいったい何なんだ。

オーナーの顔を見てみたいヨ。

 

しばらくして同僚のオネエさんが戻ってきた。

二人とも大陸系チャイニーズである。

「二人だけで商売してるの?」

「ソです、わたしたちだけ」

「男のスタッフはいないの?」

「社長サンはほかの店で、ここにお店4軒あります。

 みんな女の子二人づつ、社長サンとこだけ女一人」

「へえ~、4軒もあるんだ」

 

このご時世じゃ大変だろうな。

古ぼけても腐っても一等地だから店賃は推して知るべし。

なみなみと注がれたロックを飲りながら同情してしまう。

30分の滞空で勘定はピッタリ2千円。

この間、後客もゼロだった。

 

2年後には建て替えられる予定の老朽ビルだが

店はそれまで持つだろうか?

彼女たちもお払い箱にならなきゃいいんだが・・・。

 

「あかり」

 東京都港区新橋2-16-1

 03-3593-1161 ニュー新橋ビルB1