その日は新宿三丁目に所用があり。
昼前にはこなして喧騒を避けようと新宿御苑前に逃れた。
税金泥棒の犯行現場、御苑が右前方に見えた。
あんな恥知らずは思い出したくもないので
まずは昼めしをと「そば処 更科」に向かう。
客のほとんどがラーメンを注文する特異なそば屋だ。
ランチのピーク時では相席は当たり前、
先客に軽く会釈して座った。
向かいのオジさんはやはりラーメンをすすっている。
何も食べずに家を出たため、腹ペコくん。
だとしてもちょいとムリかな? と思いつつ、
ラーメン&ミニカレーのCセット(1000円)を通す。
ビールは自重しておいた。
ほぼ真っ直ぐの細打ち麺に鶏ガラ&豚骨のスープ。
水準に達していてもすばらしくはない。
以前のほうがよかったような気もする。
チャーシューはロースかな? 2枚浮かんでいる。
あとはシナチクと小松菜に長ねぎがいっぱい。
居合わせた15人ほどの客は9割方がラーメン。
うち半分がCセットで
ほかはカレーライスとたぬきそばが一人づつだけ。
こんな日本そば屋、ありなのかい?
ミニカレーは典型的なそば屋カレーで真っ黄色。
言っちゃ悪いが、お世辞にも旨いとは言えない。
卓上のウスターソースをこれ幸いと垂らしてみたら
旨くはならなかったけど懐かしさがよみがえった。
昭和の子どもはカレーにソースを掛けて食ったものだ。
今宵は池袋で飲むつもり。
距離があるが腹ごなしに歩き始めた。
新大久保、高田馬場を過ぎ、神田川を高戸橋で渡った。
川面を見下ろせば、つがいのカルガモが仲良く泳いでいる。
河原には数羽の土鳩の姿も―。
なるほどなァ、土鳩の別称は河原鳩だもんねェ。
ほどなく千登世橋に差し掛かる。
西島三重子のいじらしい歌声が流れてきた。
♪ 電車と車が並んで走る
それを見おろす橋の上
千登世橋から落とした白いハンカチが
ヒラヒラ風に舞って飛んで行ったのは
あなたがそっとさよならを
呟いた時でしたね ♪
「千登世橋」の歌詞の通り、
橋の下に明治通りと都電荒川線が並んで走っている。
鬼子母神の脇を抜け、サンシャイン60に到着。
半世紀前の1970年まで巣鴨刑務所があった場所だ。
GHQの接収時には巣鴨プリズンと呼ばれ、
幾人ものA級戦犯の絞首刑が此処で執行された。
「そば処 更科」
東京都新宿区1-30-5
03-3351-2951