2020年12月28日月曜日

第2555回 暮れの築地の焼鳥丼

作曲家・中村泰士(ときには作詞も)に続いて

作詞家・なかにし礼(ときには作曲も)も亡くなった。

哀しむべし。

お二人については年が明けたらあらためて語りたい。

 

悪夢の令和2年も残すところ数日。

年末の築地場外市場に出向いた。

最後の訪れは昨年、大型10連休の初日だった。

築地魚河岸小田原橋棟3Fの「小田保」で

ホタテフライとカニクリームコロッケをつまみに

サッポロ赤星を飲んだ。

 

その節の場外は芋の子を洗うがごとし。

英語・スペイン語・韓国語が空中を飛び交い、

ひときわ喧しかったのはもちろん中国語。

此度は静かなもので、ほとんど誰も歩いちゃいない。

客を呼び込む店員の声だけが空しく響く。

 

それにしても海鮮丼屋の多いこと。

猫も杓子も海鮮丼の一つ覚え、いくら呼んでも客がいないから

海鮮丼じゃなくって閑散丼だネ、この有り様は―。

 

8年ぶりにくぐったのは焼鳥丼の老舗「とゝや」の暖簾。

はるか昔、ストックホルムの私設日本クラブで

手にした文芸春秋に作家の丸谷才一サンが

「食通しったかぶり」を連載しており、当店の紹介があった。

題して「春の築地の焼鳥丼」。

帰国後、直行したのは言うまでもない。

 

ボリューム少なめサービス丼(1100円)を通し、

ドライの中瓶をお願いした。

ビールとともに鳥の煮凝りがサーヴされる。

ありがたや。

 

どんぶりを構成するのはもも肉3枚、つくね2枚、もみ海苔。

これに焼き麩&かまぼこ入りのスープ、白菜漬けがつく。

ももは赤ん坊の手のひらサイズでプリプリと旨い。

つくねはミートローフ状のものを

斜めにスライスしてあり、こちらもイケる。

何度も利用しているが今回が最も美味しく感じた。

 

15年以上前、会社の部下たちと此処で忘年会を開いた。

鳥の水炊きを囲んだところ、期待ほどではなく、

「とゝや」は明るいうちに限るなと思った。

 

現在は昼のみの営業。

店主の住まいだった2階を改装し、客を入れるようになった。

コロナ禍にあってもそこそこに繁盛している様子が頼もしい。

魅力の薄れた築地場外で自信を持ってオススメできるのは

当店とすぐ裏手にある「てんぷら黒川」の2店。

次回は「黒川」で天丼にするつもりであります。

 

「とゝや」

 東京都中央区築地6-21-1

 03-3541-8294