2019年1月2日水曜日

第2037話 年の瀬の足立市場 (その1)

足立区・千住大橋のたもとにある足立市場は
築地、もとい、豊洲、太田と並び、
23区内にたった3ヶ所しかない魚河岸の1つ。
コンパクトで素人も利用しやすいマーケットだ。

深川の住まいを舟で離れ、
大川をさかのぼって来た松尾芭蕉は
この地で陸に上がり、日光道中を北上して行った。
ここは「奥の細道」の起点なのである。

市場で昼めしを食べるために友人を誘った。
例によって先乗りを目指し、
降り立ったのは東京メトロ千代田線・北千住駅である。
相方は京成本線・千住大橋駅からアプローチするとのこと。
この駅は市場の真ん前だからネ。

掃部(かもん)宿通りを南下していて
とあるオステリアの店先にあったメニューに注目。
プンタレッラの文字を発見したからだ。
この野菜は永遠の都・ローマの冬の風物詩。
いつぞや2月に当地を訪れた際、
街の青空市場にはプンタレッラだけを商う店があったくらい。
マラソンランナーのドリンクを並べるような細長いテーブルに
山盛りになって売られていたのだ。
ちなみにイタリアでは通常、複数形のプンタレッレと呼ばれる。

先を急ぎ、仲町交差点で墨堤通りを横断。
すると、信号機にとまっていたカラスが舞い降りてきた。
おやっ、珍しくもハシボソカラスじゃないか―。
スッキリした顔立ちはハシブトみたいに憎たらしくない。
クチバシの色は黒くとも、ほとんど九官鳥みたいだから
これなら飼ってもいいかな?
やっぱりやめよう、第一、とっつかまえるのは至難の業だ。

当日の狙いは市場内の「カフェ食堂みどり」。
かきフライでビールを飲むつもりだった。
すでに大半の人々が去った後の市場は閑散。
ぶらり一回りしていたら
またもや、とある食堂の品書きに足が止まった。

長いこと訪れていない足立市場だが
十数年前にはちょくちょく利用した。
その頃には無かった「海鮮食堂 かどのめし屋」の品書きに
マトウ鯛ミリン漬けを見つけたのだ。

ふた月前に幡ヶ谷の大衆割烹「こまい」で
超ビッグな一夜干しをやっつけたばかりなのに
このサカナに遭遇したら最後、矢も楯もたまらない。
これはおっつけやって来る相方に
パシリを任せるしかないな・・・。
悪代官は策謀をめぐらせていたのでした。

=つづく=