2019年1月7日月曜日

第2040話 中華そばとたこ焼きと (その1)

平成最後の師走に2018年最後の理髪。
行き着けたサロンの店主が数ヶ月前、
病に倒れたことをいきなり知らされた。
快方に向かうよう祈るしかすべがないが
現在は娘のK子チャンが孤軍奮闘している。

やたらスペースのある店は1月いっぱいで閉じるとのこと。
幸い、よい物件が彼女たちの自宅に近い、
東急目黒線・不動前の駅そばに見つかり、
2月末には開業できる由、互いにまずは一安心である。

何とか力になってあげたいのだが
床屋は居酒屋と違い、通い詰めることなどできやしない。
頭は一つしかないし、髪はなかなか伸びない。
友人を紹介しようにも、すでに毛髪を失った老兵少なからず。
とかくこの世はままならぬ。

髪を切って、シャンプーして、少量のジェルで整えて
いつものように渋谷区のハチ公バスに乗り込んだ。
行く先は笹塚である。
10年以上前にしたためた”行きたい店リスト”が最近、
ひょっこり出てき、その中にラーメン店「福寿」の名を見つけた。
図らずも現在まで未訪のままだ。
ハチ公バスがたまたま店の近くを通ることもあり、
この日は家を出たときからターゲットに定めていた。

「福寿」は10号坂ストリートの坂下にポツンとあった。
暖簾には”中華そば 創業67年”の文字。
創業年ではなく、年数を明記しており、
すでに加えて数年、経過しているものと思われる。

さすがに風情漂う店内である。
先客は常連と思しき沖縄出身の娘が一人きり。
楽しそうに店主と世間話を交わしている。
カウンターに座ると、目の前には
かまどに据えられた鉄鍋の湯が煮えたぎっていた。

普段は注文しない五目ラーメン(620円)を通す。
もともとそば職人だった老店主。
その名残りからユニークな具材を使うと聞いた。
はたして、もも肉チャーシューの薄いのが2枚、
シナチク、かまぼこ、ナルト、もやし、
味玉ではない、ただのゆで玉子、
そして甘く煮つけられた椎茸が2片という内容だった。

かたゆでの細いちぢれ麺は好きなタイプ。
甘みの勝った濃い色のスープは意外にあっさり。
しかし、どうしても甘さが気になってしまう。
けして不味いわけではないから
フリークならずとも一訪の価値はあるでしょう。

=つづく=

「福寿」
 東京都渋谷区笹塚3-19-1
 03-3377-2615