2019年1月3日木曜日

第2038話 年の瀬の足立市場 (その2)

千住大橋の足立市場。
ほどなく相方が現れた。
さっそくマトウ鯛の一件をかいつまんで説明し、
偵察を頼み込んだ。
いったんは拒否されたものの、なだめすかしてハシらせる。

こういうケースは入店してテーブルに着いたら最後、
売切れを告げられても店を出にくい。
それなら自分で確認しろヨと言われそうだが
大の男が(女を見下すワケじゃないけど)入っていって
先客たちの見守るなか、目当ての料理の有無を問い、
無ければ立ち去るという所業はやたらに角が立つ。
こういう役目は”女子の特権”なのだ。

斥候が店内に消え、外で待つこと30秒。
再び引き戸が引かれ、指で作った〇サインにニンマリ。
おもむろに敷居をまたいだ。
空いたテーブルをスルーして奥のカウンターへと進む。

壁の短冊を入念にチェックしたのち、
通したのはスーパードライの中瓶。
兵庫産生がきの一年物。
もちろんメインのマトウ鯛ミリン漬け定食。
そして八戸ラーメンとミニ鮪丼のセットである。
海鮮食堂を謳うわりには
八戸ラーメンをもウリとしているらしい。

兵庫のかきはおそらく坂越(さこし)の産であろう。
小粒ながら味は濃い。
八戸ラーメンは昔ながらのシンプルな中華そばだが
具材の焼き麩が珍しい。
ほかには焼き豚、シナチク、焼き海苔が器を彩る。
あっさりとした醤油スープに
細打ちのちぢれ麺はバリカタに近かった。
卓上の白胡椒がエラい。
支那そばや中華そばに黒胡椒は合わない。

セットのミニ鮪丼には
赤身と中落ちが盛合わされて、まあそれなり、
というか、海鮮食堂を名乗るわりには少々もの足りない。
わさびは当然、粉である。

主役のマトウ鯛定食はかなりリッチであった。
切身の脇に大根おろしと玉子焼き、
けんぴ風のさつま芋天ぷら、いかげそボールの炊いたの、
なめこおろし、つぼ漬けたくあん、なめことわかめの味噌汁。
大盛りサービスのごはんは普通盛りでお願いした。

すばらしくはなかったものの、
とにかくマトウ鯛に逢えてシアワセ。
ビールのお替わりを含め、会計は3千円。
納得して年の瀬の魚河岸をあとにした。

「海鮮食堂 かどのめし屋」
 東京都足立区千住橋戸町50足立市場内
 03-3882-5811