2019年1月4日金曜日

第2039話 知る人少なき冠新道

足立市場から北千住へと、さっき来た道を戻り歩く。
途中、プンタレッラがどうしても気になって
くだんのオステリアのドアを引いた。
ハナシがややこしくなるので
今回はパシリを使わず、自分で起動する。

この夜は新三河島の冠新道にある「熱海屋」で飲むつもり。
しかし、もしもプンタレッラのサラダがいただけるのなら
予定変更も辞さない気でいたのだ。
結果、サラダはムリだった。
ストック少量につき、主菜の彩り程度に使用とのこと。
ここはスッパリあきらめた。

夜の帳が下りて冠新道にやって来る。
荒川区民ならいざしらず、
東京都民でここを知る人は少ないだろう。
何度も歩いた商店街だが飲食店を利用したことはない。
新道入口のピッツァ屋でテイクアウトしただけだ。
インパクトのある通りの名は
新道造成の際、冠サンなる奇特な方が
土地を無償で提供したためらしい。

冠姓は全国に600名あまりしかいないレアもので
現在の大阪府と兵庫県にまたがる、
摂津国・島上郡・冠庄にルーツを持つとのこと。
演歌歌手の冠二郎もその地の出かと思い、
調べてみたら噺家の林家たい平と同じ、
埼玉県・秩父市の出身だった。

さて「熱海屋」、昼の足立市場同様に
スーパードライの中瓶で本日二度目の乾杯を―。
ここでもテーブルでなくカウンターに陣を取った。
突き出しは蒸し鶏と青梗菜を合わせたもの。
あまり面白くないし、美味しいものでもない。

狙った馬刺しは入荷ナシ。
仕方なくハタハタの一夜干しと
昼に浮気したせいで食べられなかったかきフライを通す。
ハタハタは可も不可もない。
かきフライは水準に達していたが
添えたキャベツに胡麻だれドレッシングは余計だ。

芋焼酎に移行して
前村貞夫 克(かつ)なる聞きなれない銘柄を―。
造り手の名前だろうが、かようなネーミングは感心しない。
感心しないが珍しさに誘われて試した次第。
すると、意想外になかなかのキレ味だった。
相方は浦霞の冷酒を舐めている。

バルサミコ酢で仕上げたマグロのソテーを追加注文。
ソテーというよりタタキに近く、まあ、これもそれなり。
付合わせのわさび菜(生わさびの葉に非じ)も何だかなァ。
不完全燃焼ながら、広い店内は居心地がよかった。
会計は2人で5千円と、それ相応である。

これからリトル・コリアの三河島に流れるか、
行き着けた西日暮里に落ち着くか、
パワー不足の今宵は無難に西日暮里だネ、たぶん。

「熱海屋」
 東京都荒川区西日暮里6-26-12
 03-3894-4858