2019年1月8日火曜日

第2041話 中華そばとたこ焼きと (その2)

10号坂を昇り返していてノドの渇きを覚えた。
「福寿」でビールを飲みたかったが
とても頼める雰囲気ではないし、
ハナから酒類は置いてないかもしれない。
その有無を問うことさえためらわれたのだ。

10号通り商店街を笹塚駅方面に向かう。
途中、「みなと屋」なる店に差し掛かり、歩行停止。
店頭でオバちゃんとオネエちゃんの中間、
いわゆるオネバちゃんがたこ焼きを焼いている。
いえ、たこ焼きに惹かれたのではなく、
品書きに生ビールの文字を見つけたのでネ。

「お持ち帰りですか?」
「エッ、いや、その、生ビールが飲みたいと思って・・・」
「じゃ、店内ですネ、でも、生は無いんですヨ」
「ああ、瓶でもいいッス!」

接客はおそらく彼女の旦那だろう。
サッポロ赤星の中瓶(500円)と
たこ焼き6個(520円)をお願いした。
旦那応えて
「青海苔、かつお節、マヨネーズが掛かってますが?」
「ええっと、かつ節だけ抜いてもらおうかな」

当店は地元の人気店であるらしく、
通常のたき焼きのみならず、
たこ玉焼き、明石焼き、たこせんに加えて
夏場の看板賞品、かき氷を通年、提供している。

先客は単身の女性が独りで
さっきの「福寿」と同じシチュエーション。
ビールのほかにハイボール、ウーロンハイ、
レモンサワー、グレープフルーツサワーが揃い、
オール330円と居酒屋より安めだ。

赤星で渇きをいやし、たこ焼きをパクリ。
飛び切り美味しくはなくとも
ビールの合いの手として悪くない。
壁のポスターにはプリッとした大蛸入りとあったが
中身は小ぶりの足先ばかり。
それでも蛸の絶対量に不満とてなく、
もともと細い足は蛸でも女性でも好きなほうだから
まったく問題ないんだけどネ。

2本目のビールを思いとどまり、
甲州街道を渡って、笹塚駅南側の観音通りへ。
気に入りの「常盤食堂」で飲み直すつもりだ。
すでにラーメンとたこ焼きをやっつけているから
つまみは何か軽いモノ1品でじゅうぶんだろう。

ところが「常盤食堂」はいつの間にやら閉業していた。
気に染まった店だけに残念である。
界隈に飲み屋はいくらでもあるが
ことここに及び、スパッと方針を切り替えることにした。

「みなと屋」
 東京都渋谷区笹塚2-41-20
 03-6383-3120