2019年1月23日水曜日

第2052話 田園調布に泡が立つ! (その2)

生のエーデルピルスを味わっていると
接客の娘サンがバスケットを手にやって来た。
中には焼き栗みたいな茶色い粒がいくつか。
よおく見ると変わったカタチのプレッツェルだった。
可愛いので1人1個づついただく。

最初に通したのはトロニシンと根セロリのサラダ。
トロニシンって何だ? ってか?
マグロのトロみたいに脂が乗って
トロッととろける柔らかいニシンのことらしいッス。

メニューにはオランダ王室御用達と銘記されている。
オランダははるか昔に一度だけ訪れたが
アムステルダムのあちこちの街角に
塩漬け後に塩抜きした生ニシンを売る屋台が出ており、
道行く人が気軽につまんでいたのを思い出す。
陽気なオルガンのメロディーなんか流しちゃってネ。

「メッツゲライ ササキ」のトロニシンは
ゆでたポテトと合わせ、
アンチョヴィのアクセントを効かせたもので
王室御用達だけあってエレガントな仕上がり。
そのぶん青背のサカナ特有のパンチ力には乏しいが
強烈なサカナの匂いはちょいと苦手な身には
むしろありがたかったりもする。

和食ではまず使われることのない根セロリのサラダは
マヨネーズで和えたロングパスタのようなルックス。
カブラとゴボウの中間のような食感を楽しめる。
それほど美味しいものではないがネ。

一粒のプレッツェルでは足りないので
カイザーゼンメルとアクティパンをお願い。
フランスの陰に隠れがちだが
ドイツは文字通り隠れたパンの王国である。

カイザー(皇帝)のゼンメル(小麦粉のロール)と
呼ばれるオーストリア生まれの丸パンは軽い食感が命。
焼き立てがベストながら3~4時間は持ち味が消えない。
当店のカイザーゼンメルはプレーンだが
J.C.はケシの実を散らしたタイプが大好きだ。

アクティパンはライ麦入りのハードタイプ。
ロシアのパンに似ている。
サーモンやハムにはピッタリだ。
接客の女性に訊きそこねてしまい、名前の由来は判らない。

シャルキュトリーに来たからは
ハム・ベーコン・ソーセージのうち、
少なくとも何か1品はトライしなければ―
さて、何をいただくとしますかの?

=つづく=