2026年8月27日木曜日

第4171話 独り蕎麦屋で 蕎麦も食わずに 

老舗の日本そばを食べたくなった。
そんな店が集中しているのは
東京広しといえども第一に
JR神田駅の北と南だろう。
神田須田町「やぶそば」「まつや」。
日本橋室町「砂場」が御三家だ。

この日は行列覚悟で「まつや」へ。
案の定、順番待ちが何人かー。
あまり大人数だと回避するが
11時45分に並び始め、
12時05分には着卓と相成った。
一応、上首尾と云えましょう。

ドライ大瓶にそば味噌のお通し。
品書きに目を通すと
好物の粒うにが消えている。
お運びのオネバさんに
「粒うにはもう無いんですか?」
「ええ、そうなんですのよ。
 業者さんが辞めてしまってー」
これは残念至極。
菊正との相性も好かったのになァ。

それではと、これまた好物、
葉わさび(550円)をお願い。
山葵の葉と茎のおひたしである。
あれば頼むのわが必注品だ。

大瓶は2本目に突入。
青大豆冷し豆腐(715円)を
追注に及ぶ。
さほど青々しくはないが
大豆の旨さはじゅうぶん。
あしらいのおろし生姜と
刻み茗荷のアクセントが冴え渡る。

菊正(990円)に切り替えた。
当店に冷酒の用意は無く、
常温かお燗の二択。
この暑さじゃ必然的に常温だ。

すぐに1合は底を尽き、お替わり。
何かもう1品つまみが欲しい。
今は昔、ワイン仲間の女性二人と
訪れた際、もりのあとで
親子丼を分け合ったことがあった。
当時から当店の親子は女性に
絶大なる人気を誇っていたのだ。

それを思い出して
親子煮(1430円)を発注。
菊正ともども存分に
楽しんだはいいが
哀れ、J.C.のストマック、
そばを食べる余裕が失われていた。

敬愛する池波正太郎翁は
「酒を飲まぬくらいなら
 蕎麦屋には入らぬ!」
とまで断言された。
翁は手酌酒のあと、
むろんのことに
蕎麦を手繰られたであろう。

蕎麦屋酒における不肖の弟子は
蕎麦屋に入って蕎麦も食わずに
出て来たのでありました。

「神田まつや 本店」
 東京都千代田区神田須田町1-13
 03-3251-1556