2013年9月9日月曜日

第660話 下北に佳店あり (その3)

下北沢の食堂兼居酒屋、「山角」で黒ホッピーを飲っている。
ホッピーには白と黒のほかに、あまり知られていない赤もある。
焼酎と合わせず、ストレート用に売り出された赤だが
これをこのまま飲む人はそうはいないでしょうヨ。

J.C.は自宅でもときどきホッピーを飲む。
冷蔵庫にはそのためのキンミヤ焼酎が常に冷えている。
下町の大衆酒場で絶大な人気を誇るこの焼酎は甲類の25度。
三重県・四日市市、宮崎本店醸の手になるものだ。
三重のさとうきび焼酎がどんな経緯を経て
江戸っ子の心をつかんだのだろうか・・・フシギだなァ。

さて、お次のつまみ。
目にとまったのは水茄子漬、大好物である。
夏の一時期しか出回らない水茄子は泉州・岸和田の特産。
泉州・岸和田じゃ通りが悪いからちょいと説明しておこう。
岸和田市は大阪府南部、泉南地域の中心市。
岸和田城の周りに広がる城下町でだんじり祭りがつとに有名。
だんじりは山車(だし)のことだ。
水茄子はこの土地以外じゃ、まともに育たぬ変わりモン。
生か浅漬けが好もしく、古漬けはいけません。

余計な味付けせずにケレンのない水茄子は文字通り、
みずみずしいさわやかな美味しさ。
ただし、黒ホッピーと相思相愛とは言いがたい。
黒ホが主張しすぎるうらみがあるのだ。
そこで追加したのがハムカツくん。
2枚(480円)の注文なら多少割安ながら
独り飲みには1枚(250円)でイナッフだろう。

ここ10年ほど、居酒屋でハムカツがブイブイ言うようになった。
殊に昨日・今日オープンしたくせに
昭和の酒場を気取る似非レトロに目立つ。
ハムの厚さを強調する店もあったりするが
あの時代の日本は貧しくてハムカツのハムなんぞペラペラだった。
「山角」のそれは厚くもなく薄くもなく、平成の酒場風といえるかも・・・。

なんだかんだと外のホッピーは1本だけなのに
中の焼酎はもう3杯目を数えてる。
ハムカツのあとはタン焼きをお願いした。
1本(180円)から頼めるのがありがたい。
ありがたかったが、ちと固すぎで入れ歯の方はまずギヴ・アップだろう。
そもそも串系がどうしてタンだけなの?
シロやレバやカシラはどこへ消えたの?

食堂を兼ねた店につき、飲み屋ではめったに頼まぬおにぎりを1つ。
中身は好きなたら子だが、かなりデカいのが運ばれた。
パクッとやると、たら子は生だ。
ちょい焼きが理想ながら、米粒がヤケに旨い。
タンの仇(かたき)をたら子で討って、心が晴れた下北の夜。

フタちゃん、佳い店を教えてくれてありがとさん。
そう言えば、今月は彼とそのサテライツとともに
マイ・フェイヴァリット・タウン、西荻は「S」で小宴会の予定あり。
その模様もまた、当ブログでアップいたしますとも。

=おしまい=

「山角」
 東京都世田谷区北沢2-8-12
 03-6407-9032