2013年9月18日水曜日

第667話 ハマの酒場で酔いました (その3)

新子安で飲むのは初めての体験。
「市民酒蔵 諸星」もH江クンの推奨店である。
市民の酒蔵を名乗るくらいだからCPはよいのだろう。
聞くところによるとメディアに何度も紹介され、
ハマでは名の知られた人気店なのだそうだ。

駅の改札から徒歩1分。
到着したら暖簾も看板もずいぶんと年季が入っている。
都内でこんな店にはなかなか出会えない。
先刻訪れた「根岸家」とは似ても似つかぬご面相である。

入店してまた驚いた。
縦長の店内の左側に長いカウンターが一本走っている。
客はカウンターの両側に向かい合って座るのがルールだ。
となれば向かいがツレで両サイドは他人になる。
ヨソではまず見ないユニークなレイアウトだから
初めての客は例外なく隣り同士に座っちゃうネ。
こんなスタイルもあるんだなァ。

最初の1杯はここでもキリンラガーの生。
相方は梅しそ風味のバイスサワーをチョイスした。
何の変哲もないキンピラがお通しで少々ガッカリ。
ハムカツが名物と聞き及んだものの、
かねて狙いの餃子メンチカツをお願いした。
挽き肉代わりに餃子のアンが仕込まれたメンチカツは
大して旨いものでもなかったが
一応、初物はトライしておこうと思ったわけだ。
もう一品は水茄子浅漬け、好きなんだよなコレ。

店内は活況を呈している。
接客はオニイさん独りで何だか不機嫌そう、客に対しても素っ気ない。
まァ何度か短い言葉を交わすうちに打ち解けてはきた。
相性ヨシとまでは言わないが互いの印象は悪くないハズだ。

生ビールの次は飲みものリストにあったズブトニック。
初めて目にするドリンクである。
読者でこれが何だか瞬時に判る方はかなりの呑ン兵衛ですヨ。
もちろん、あちこちで飲んだくれているJ.C.には容易に察しがついた。

競馬用語に”ズブい馬”というのがあるが、この”ズブ”はさに非ず。
酒場で”ズブ”といったらズブロッカしか考えられない。
絶滅危惧種・ヨーロッパバイソン(野牛)の主食となる、
バイソングラスを注入したウォッカの一種がズブロッカ。
桜もちの葉にそっくりな香りを持つ蒸留酒は
キンキンに冷やして生(き)で飲るのが一番旨い。
ただし、旨いが強い。
だからこそ「諸星」はトニックウォーターで割って出すのだろう。
要するにウォッカトニックならぬ、ズブロッカトニックなのだ。

いささか酔いが回ってきていい気分である。
それにしてもハマの大衆酒場で
ポーランドの銘酒に巡り逢えるとは夢にも思わなかった。
季節はずれの葉月(八月)に桜の葉の匂いを嗅いだ相方は
「桜もち! 桜もち!」―ことのほかオハシャギあそばしている。
フフッ、どこまでも目出度いヤツよのォ。

=おしまい=

「市民酒蔵 諸星」
 神奈川県横浜市神奈川区子安通3-289
 045-441-0840