2013年9月17日火曜日

第666話 ハマの酒場で酔いました (その2)

JRは東神奈川駅、京急なら仲木戸駅前の大衆酒場、
「根岸家」でのみとも・P子と飲んでいる。
最初のつまみはくずれしゃこなる他店ではお目に掛かれぬ代物。
おっと、その前に突き出しがスッと置かれた。
これが酒場には場違いな心太(ところてん)。
でも涼やかな小品は夏場にピッタリだ。

案の定、くずれしゃこはけして悪くなかった。
しっとりとしてパサついたところがなく味もけっこう。
身体の線は崩れてもなお、
魅力を失わぬ年増女の風情すら漂う。

相方が真っ先に選んだのは〆さば。
小肌酢と迷った末に決断した様子だ。
ポーションは小さめだから両方頼めばいいようなものだが
昼にあじ刺しとあじフライを食べてきたことだし、
これじゃ一日中、青背だらけになっちゃうヨ。
しっかしP子はこういうサカナが好きだ。
DHAやEPAに思い入れでもあるのかな? 美容にいいのかもネ。

くだんの〆さばは〆が甘いものの、水準に達している。
元部下・H江クンが推奨するだけのことはある。
日本酒のぬる燗に切り替えた。
相方のお替わりはレモンハイだ。

市場の「浜膳」で刺身からフライに移行したように
ここでも揚げものの吟味に入った。
互いに一品づつチョイスした結果が玉ねぎフライと自家製コロッケ。
居酒屋であまり見掛けない玉ねぎフライは
あれば必ずオーダーする気に入りメニューだ。
ニューヨークのステーキ屋で食べるオニオンリングより、
東京の居酒屋の玉ねぎフライのほうがはるかによい。

そろそろ二軒目に流れるとしようか。
と、そのとき視界に入ったのが壁の貼り札、支那竹(330円)だった。
メンマじゃなくてシナチク・・・いいですねェ、この響き。
当該国が支那と呼ぶな! ってんだから
仰せに従うのはやぶさかじゃござんせん。
だけどネ、メンマよりはシナチク、ラーメンよりは支那そば、
そのほうがずっと旨そうに聞こえるじゃないか。  
昔はみんな支那竹と呼んでたし、キムチだって朝鮮漬だった。

でもって、追加注文した支那竹である。
隣国に配慮する気などサラサラないウドの大国に
いささかも怖じることなく、
”支那”を明記した店の心意気をJ.C.はシナチクとともに味わった。
大衆酒場で中華風の味付けは舌先が変わってまた楽しい。

お勘定は4000円でオツリがきた。
JR京浜東北線に乗って一駅東京寄りの新子安へと向かう。
目指すは「市民酒蔵 諸星」である。

=つづく=

「根岸家」
 神奈川県横浜市神奈川区東神奈川1-10-1
 045-451-0700