2013年9月19日木曜日

第668話 Zooでピープル・ウォッチング (その1) 動物園こそわが楽園 Vol.8

 ♪  どこかに故郷の 香をのせて 
  入る列車の なつかしさ 
  上野は俺らの 心の駅だ 
  くじけちゃならない 人生が 
  あの日ここから 始まった ♪
     (作詞:関口義明)

本日は井沢八郎の「あゝ上野駅」で始めてみました。

上野駅は今年の7月28日に開業130周年を迎えている。
おっと、井沢八郎といっても判らない方のほうが多いかもしれない。
すでに亡くなって6年にもなるし、
女優・工藤夕貴のパパのほうが通りがいいだろう。

集団就職にスポットライトを当てたこの曲は
東京五輪の年にリリースされた。
集団就職は東京・世田谷区にある、
桜新町商店街(通称・サザエさん通り)に新潟県・高田から
中学を卒業したばかりの15名がやってきたのが始まり。
ときに昭和30年3月26日だった。

さて、ひと月ほど前、灼熱の午後のこと。
埼玉県・浦和市で所用を済ませ、上野駅に戻ってきた。
降りた京浜東北線のプラットホームにしばしたたずみ、
にわかハムレットの心境である。
とにかくノドが渇いて仕方がない。
弱ったときには生ビールだろう。
三木のり平は、何はなくとも江戸むらさき、
J.C.オカザワは、何はなくとも生ビールである。

ハムレットのごとく、何を迷っているのかというと
駅のホームの階段を昇るか、降りるかであった。
階段を降りて不忍口に出れば、目の前はアメヤ横丁、
昼から飲ませる酒場が目白押しである。
はたまた階段を昇って公園口を出れば、
そこはアカデミックな一画、飲み屋なんぞありはしない。
でもJ.C.にはとっておきのスポットがあるんでやんす。
そう、わが楽園の上野動物園だ。
動物園にはアルコールとして唯一の生ビールがあるのだ。

悩んだ末に階段を昇り、東京文化会館の脇を抜けた。
動物園にはメインゲートから入園し、
パンダ舎を右に見ながら進路を左にとる。
3頭のインドゾウに見送られてサル山の前に出た。
そこは休憩所で、奥にはカフェテリアも完備されている。

よっぽどここで1杯と思ったものの、
気に入りスポットはイソップ橋の先にあった。
ハチスの花咲きみだれる鵜の池のほとりか、
クロサイ夫婦の真ん前の西園カフェテリアだ。

その日の太陽は灼けていた。
パラソルの下といえども、さすがに野外はきびしい。
よって冷房の利いたカフェテリアへとなびいてしまった。

=つづく=