みんながみんな日替わりランチの
ハンバーグ定食をワシワシかっ込む。
その光景を半ば呆れながら見ていた。
しかも全員、食ったらすぐ帰る。
酒を飲んでるのは、J.C. ひとりきり。
すかさず陽水が歌い出したが
浪花の小姑が五月蠅いので今回も見送る。
えっ? 俺たちが許すからやれ! ってか?
じゃ、カトちゃんじゃないけど、
ちょっとだけよ。
♪ 仲良しこよしは 何だかあやしい
夕焼け小焼けは それより淋しい
一人で見るのが はかない夢なら
二人で見るのは たいくつテレビ
星屑、夜空は 星屑、ひとりきり ♪
「青空、ひとりきり」は当欄3度目の登場。
よって詳しい説明は見送る。
アサヒ商店街を西に歩き、吉野通りを渡ると
日の出会商店街に通りの名称が代わる。
そのまま直進して吉原大門に到達。
見返り柳を左手に眺めつつ、
五十間道から仲之町通りを経て
吉原神社に通りすがり、一礼してなおも前進。
やって来たのは吉原弁財天奥宮。
弁天池の一部が残り、錦鯉が遊泳している。
赤富士の滝も辛うじて水流を落とす。
関東大震災では遊女を中心に
500人近い人々がこの池で溺死したが
当時は相当大きな池だった。
今じゃ鯉ですら500尾も入り切らない。
千束のソープ街では黒服たちに
さんざっぱら声を掛けられる。
後ろ髪を引かれることもなく、
すべて無視して突っ切った。
観音裏からひさご通りのアーケードを抜け、
ホッピーロードに差し掛かる。
かつてしょっちゅうおジャマした、
牛すじ煮込みの「正ちゃん」をのぞくと
近頃めっきり姿を見せなくなった、
店主の正ちゃんと目が合った。
「よお~っ!」
「おお~っ!」
今は無き店、そして今は亡きママ。
田原町のスナック「B」に
二人とも通い詰めたから旧知の仲なのだ。
彼と会うのは5年ぶりくらいかな?
ママの思い出話に花は咲かなかったが
しばしオッサンたちは彼女を偲んだ。
黒ラベルの大瓶と塩らっきょをいただき、
「また来るネ」
「うん、待ってるヨ」
エンコの街をあとにしたのでした。
「越後屋」
東京都台東区清川2-1-5
03-3872-1270
「正ちゃん」
東京都台東区浅草2-7-13
03-3841-3673