2025年1月9日木曜日

第3707話 正月早々 ランチ難民 (その1)

雷蔵の「お嬢吉三」を観た1月3日と
「切られ与三郎」&「弁天小僧」の4日。
銀座・有楽町といえども
上映前の腹ごしらえには難儀した。
ちょくちょく利用する「三州屋」「煉瓦亭」
「泰明庵」「きたぎん!」は
雁首並べて討死を遂げ、玉砕の憂き目。
こいつは困ったゾ。

3日の14時過ぎ。
あちこち彷徨った挙句に転がり込んだのは
開業3年の「日比谷達磨酒場」。
有楽町ガード下に並ぶ店々の真向かいだ。
以前、何度も利用した中華料理店、
「慶楽」があった場所で
慶楽傳順ビルにその名を残す。

ドライ中瓶には緑のキューちゃん風お通し。
上に鰻蒲焼きの細切りが乗っている。
地鶏ハラミの炭火焼きがあって即注。
柚子胡椒が添えられ、
タップリの生キャベツにレモンひと櫛。
最近、価格が高騰しているキャベツだが
芯まで柔かいのに驚いた。

終映後、有楽町から銀座を
ほっつき歩いたものの、
コレといった店が見つからない。
東京で飲む場所に困ったら
イの一番に上野である。

あの忌まわしいコロ助禍においても
崩壊した浅草を尻目に
上野は元気を失わなかった。
エンコはしぼんだ風船さながら。
ノガミは空にゃ今日もアドバルーン。
ほうら美ち奴も歌い出した。

♪ 空にゃ今日も アドバルーン
   さぞかし会社で 今頃は
      おいそがしいと 思うたに
   あゝ それなのに それなのに
   ねえ おこるのは おこるのは
      あたりまえでしょう  ♪
  (作詞:星野貞志)

1937年発表の「あゝそれなのに」は
映画「うちの女房にゃ髭がある」の主題歌。
歌った美ち奴は北海道・浜頓別出身の浅草芸者で
当時、一世を風靡した鴬歌手(芸者上がりの歌手)。
時流に乗ってヒットを飛ばし続けた。

萩本欣一やビートたけしのお師匠さん、
深見千三郎は美ち奴の実弟である。
あの姉にして、この弟アリを地でいった。

それはそれとして、その宵のJ.C.は
銀座で乗ったメトロ銀座線を
上野広小路で降りたのでした。

=つづく=

「日比谷達磨酒場・海神の後楽園」
 東京都千代田区有楽町1-2-8
 03-3528-8021