角川シネマ有楽町で只今開催中、
「市川雷蔵映画祭」
” 刹那のきらめき” もいよいよ大詰め、
30日(木)が最終日だ。
35日間で37本のうち6本を観た。
前半3本は紹介済み、後半3本を語りたい。
「女と三悪人」(井上梅次 1962)は
ヒロイン・山本富士子をめぐる男たちが
雷蔵・勝新・大木実と豪華。
ところがこれだけの面子を
揃えていながら不発に終わる。
三人ともまったく悪人らしくない。
裕次郎の傑作「嵐を呼ぶ男」を撮り上げた、
井上梅次も時代劇は勝手が違ったようだ。
「ひとり狼」(池広一夫 '68)は
監督の池広自身が最高作と豪語する。
自作を最高などとのたまう神経を疑うが
本人が云うだけあってデキは佳い。
脇を固める長門勇が出色の役回り。
TVドラマ「三匹の侍」で
殺陣の上手さは証明済みながら
台詞回しも実に達者だ。
ヒロインの小川真由美が素晴らしい。
妖女・悪女はお手の物の彼女、
悲劇に翻弄される役柄が新鮮だった。
あらためて惚れ直した次第なり。
3本目は雷蔵には稀有な現代劇、
「陸軍中野学校」(増村保造 ’66 )。
中野区・中野に実在したスパイ養成学校が
物語の舞台である。
五代将軍・綱吉により、
貞享二年(1685)に発布された、
「生類憐みの令」のせいで江戸は野犬だらけ。
それを保護するため、幕府は中野に犬小屋、
いや、犬牧場を設置して11万頭を収容。
予算は年20億円、お犬様の本領発揮である。
陸軍中野学校は犬天国の跡地に造られた。
戦後も府中に移転するまで警察大学校が置かれ、
現在は中野区役所が建っている。
武蔵野の真ん中にあるから中野と聞くが
この地はまさに波乱万丈の歴史を持つ。
映画は「ひとり狼」に匹敵する出来映え。
ここでもヒロインは小川真由美。
運命に翻弄され、非業の死を迎えるが
雷蔵の名画の陰に真由美あり。
時代劇から現代劇へと、真由美様々だ。
こうして新年早々、市川雷蔵を堪能した。
彼の主演作中、マイベストは「弁天小僧」。
映画に使用されていないが先日亡くなった、
歌手・三浦洸一の「弁天小僧」を
最後にお送りして、彼をもまた見送りたい。
♪ 牡丹のような お嬢さん
シッポ出すぜと 浜松屋
二の腕かけた 彫物の
桜にからむ 緋縮緬
しらざァいって 聞かせやしょう
オット俺らァ 弁天小僧菊之助 ♪
(作詞:佐伯孝夫)
稀代の名曲は1955年のリリース。
どちらさんも、ごめんなすってー。