2025年1月20日月曜日

第3714話 富山のブリは ひと味違う (その1)

四十七士ゆかりの泉岳寺で乗り換えた、
京急羽田行きを北品川で降り、
東へ歩いてほどなく、
高浜運河に架かる楽水橋が見えてきた。
橋の西詰に「楽水軒」なる町中華があり、
二十数年前に一度訪れたが今は跡形もない。

橋を渡って今度は南下。
港南公園の先を左へ回り込むと
高浜運河遊歩道になるが目の前の運河は
すでに天王洲運河と名称を変えている。

看板に偽りがあるんじゃないの?
「責任者出て来い!」ー怒鳴るところなれど
誰も見当たらず、仕方ないので
目の前のふれあい橋を南に渡る。
向こう岸右手に
「T.Y.HARBOR BREWERY」。
この建物こそが天王洲のトレードマークだ。

運河沿いを左に進むと
すぐにファーストタワーが現れる。
今日のランチはこの1階の「常喜房」。
日本そば屋である。

おや、おや、隣りに「味喜庵」があるゾ。
「本陣房」系列の蕎麦居酒屋「味喜庵」は
神田や御徒町にも展開している。
それにしてもそば屋を2軒、
雁首揃えずともいいんでないかい?

接客のオニイさんに訊いたら
この「常喜房」も「本陣房」系列だった。
経営陣は一体何を考えてんだかなァ。
まっ、いいけどサ。

かねて狙いを定めてあった、
変わりそばのゆず切りを注文すると
くだんのニイさん、眉を曇らせた。
「すみません、ゆず切りは
 土曜の夜のみなんです」
無い袖は振れず、あらためて品書きに見入る。

思い出すなァ、新橋の「本陣房」では
ゆず切りを幾度となく食べた。
本当はしそ切りが好きだったが
いつの頃からか、しそを打たなくなり
ゆず一本になったのだった。

オススメに富山沖の寒ブリ漬け丼がある。
ブリの照焼きは好きだけれど
刺身はあまり得意としない。
ときとしてイヤな脂っこさがあるからネ。

ところがここで思い出したのは
20年前の富山県・氷見。
魚市場で食べたブリ刺しは極の上。
サラリとした旨みに思わずうなった。

=つづく=