2018年4月2日月曜日

第1840話 大衆酒場とビヤホール (その1)

この日は有楽町でショッピング。
本格的な春を迎える前に身の回り品を買い揃えた。
築地で仕事をしている友人にメールを送り、
”軽く1杯” を誘いかける。

5分後には二つ返事でOKの返信あり。
落ち合ったのは「三州屋 銀座一丁目店」だ。
「三州屋」は2丁目にも銀座店があり、
雰囲気は銀座店だが、あちらはかなり立て混む。
その点、一丁目はだいぶ静かだからリラックスして飲める。

入店したのはほぼ同時。
おきまりのサッポロ黒ラベルで再会を祝した。
店内を取り仕切るのは
ちょっと見、八十路にならんとするオバちゃんがただ独り。
コンパクトなスペースといえども
ある客は食事、またある客は晩酌と相当な数である。
これを一人で捌くのだから、チャイナ娘ではハナからムリだ。

ビールを飲みつつ、料理注文のタイミングを見はからう。
いや、これがホントに難しい。
こちらと思えばまたあちら、オバちゃんは始終、
動き回っているから、なかなか捕まらない。

どうにかお願いできたのは刺身の盛合せ。
厨房には年配と若いのと二人いて品物はすぐに整った。
まぐろ赤身・ぶり・真鯛の3種。
真鯛は皮を残して霜降りにした松皮造りである。

つい、行きつけの「三州屋 神田駅前店」と比較してしまう。
見た目も食味も行きつけには遠く及ばず。
皿の上のサカナたちに活気がない。
躍動感がまったく伝わってこない。

これもまた「三州屋」の定番、白鶴の燗に切り替えた。
都内各地に散在する「三州屋」は
それぞれ採算は独立していても
ビールはサッポロ、清酒は白鶴、これが不文律である。

刺盛りに満足がいきかねて、〆あじを追加した。
オバちゃんにずいぶんと気を遣いながらネ。
しばらくして届いた〆あじ。
一切れ口元に運んで、またもやガックシ。
塩気を感じるばかりで酢がまったく足りない。
酢〆でなくって、塩〆なのだ。
好きなタイプじゃないなァ。

口直しに何かほしいねェ。
壁の品書きから1品選んでみた。
すると、普段はおとなしい相方が
珍しくも異を唱えたのだった。

=つづく=