2023年2月28日火曜日

第3220話 東小路のディープな晩酌 (その1)

空港線沿線を踏破したが、ちと歩き足りない。
京急蒲田からJR蒲田に進み、
今度は東急池上線沿いに
蓮沼を経て池上にやって来た。
折よく停まっていた大井町行きのバスに乗り込む。

大森の山王飲食店街、
俗称・地獄谷に灯が点るにはまだ間がある。
終点の大井町まで行った。
大井町線・大井町駅の東側、
東小路と平和小路を流すも
16時を回ったばかりで開いてる店が少ない、

とある店先で呼び止められた。
発音から大陸系の女性と判ったが
選択肢がないのと、こういうのに弱いのとで
誘いに乗った、というより連れ込まれたに近いネ。

カウンター10席ほどの和風居酒屋、
「一角」は焼き鳥が中心。
先客は中年のカップルとオネバさんが一人。
旧知の仲らしく席が離れているのに
大きな声で会話に興じている。

とにかく左端に腰を下ろし、ドライ中瓶をー。
ツー・オペの女性はともに
”ソウシュウ”出身と聞いたが意味が分からず、
紙に書いてもらったら”蘇州”だった。
途端に李香蘭が歌い出す。

♪   君がみ胸に 抱かれてきくは
  夢の船歌 恋の唄
  水の蘇州の 花散る春を
  惜しむか柳が すすり泣く ♪
   (作詞*西條八十)

服部良一の曲もさることながら
西條八十の詞がいいですねェ。
”み胸”は彼の気に入りワードらしく
島倉千代子のデビュー曲、
「この世の花」の三番でも使われている。

♪   君のみ胸に 黒髪を
  うずめたたのしい 想い出月夜
  よろこび去りて 涙はのこる
  夢は帰らぬ 初恋の花  ♪

「蘇州夜曲」は李香蘭主演の映画、
「支那の夜」(1940)の劇中歌で
彼女自身が歌っている。
周知のように李香蘭は
のちの参議院議員・山口淑子、その人です。

=つづく=

2023年2月27日月曜日

第3219話 空港線沿いを往く

せっかくこの町に来たので
穴守稲荷神社に詣でてみた。
いやァ、やたらめったら鳥居の多い神社だこと。
デカいのだけでも五つはあった。
中小合わせたらおびただしい数に達する。

羽田空港に最も近い神社につき、
航空業界とのつながりが深く空の氏神様的存在だ。
”穴”を”守る”ということで古来より
花柳界や婦人病に悩む女性に崇められてきた。
大穴に通ずるところから
ギャンブルや宝くじにご利益があるともー。

当地に伝わる羽田節には
「羽田ではやる お穴さま 朝参り 晩には 利益授かる」
と謡われている。

神社のそばにずいぶんさびれすたれた、
「旭」なる割烹があった。
一応、営業しているよで
どうやら名物は穴子天重らしい。
もっと早く出て来てヨと恨んではみたものの、
アフター・フェスティバル。

隣りの大鳥居に移動。
かつては穴守稲荷の大鳥居があり、
駅名の由来でもあるのだが
関東大震災で倒壊し、今は跡形もない。

環状八号線と産業道路の交差点に位置して
商店街もないし、殺風景この上なく素通り。
なおも西下する。

途中、コンパクトながら
真紅の鳥居が印象的な三徳稲荷神社。
新興宗教・神命愛心会の本拠、
神命大神宮と、鳥居が連続して現れる。
歩いてみて判ったが
沿線はまさに鳥居だらけなのだ。

蒲田以東では最も繁華な(羽田空港を除く)、
糀谷に到達した。
そしてもう一つ判ったことに創価学会の池田大作氏。
同じ大田区・大森に生を受けた彼は
この糀谷の地にも深い縁(ゆかり)を持つ。
宗教家を育むに絶好の地が空港線沿線なのかな?

糀谷駅の南はすぐに環八通り。
北に向かって商店街、OIDE通りが延びている。
中華も出しながら酒場感漂う「万福食堂」。
うなぎ&どぜうの「川松」。
典型的町中華の「味一番」。
個性的な店々が軒を連ねている。

近いうちに来てみよう、なんて思いつつ、
わが身は京急蒲田の駅舎に吸い込まれたのでした

2023年2月24日金曜日

第3218話 穴子がカルビに化けまして

電車を何度も乗り換えて
着地したのは京浜急行空港線・穴守稲荷。
羽田空港ターミナルの2駅手前だ。

羽田と言えば、第一感はエアポートだが
われわれ鮨好き・天ぷら好きには何てたって穴子。
今日は昼営業のみの「ゆたか」で
穴子天重を賞味するつもりなりけり。

ところがどっこい、いや、すっとこどっこい、
「ゆたか」は許しもなく閉店してやんの。
はるか昔に一度歩いた穴守稲荷。
何の予備知識もなくさまよう羽目に陥った。

とは言っても猫の額のような町。
15分少々で駅の北も南も踏破した。
目についたのは「東」なる店。
これは”ひがし”ではなく”あずま”。

なぜこんな店名にしたのか判らぬが
此処は焼肉店である。
ノースかサウスか知らないが
コリアンはコリアン、コリャン困ったゾ。

結局は薬局、入店してみました。
瓶も生もドライなので中瓶をー。
ランチメニューから国産カルビ定食を選択。
何の因果か、穴子天重がカルビ定食に化けちまった。
まっ、いいか。

カルビは8切れ。
プレートにはキムチともやしナムル、
そこになぜか、キャベツ繊切りも。
わかめスープはモロに化学の子。
ライスが多いので半分に減らしてもらった。

わざわざ遠征した羽田で穴子を空振ったが
何も焼肉を食うことはないだろ?
自問しつついただきました。
旨くはないけど、不味くもなかったネ。

勘定は1610円、文句は言えないなァ。
帰り際、店主らしきオジさんに訊いたら
昨年末で創業50年を迎えたとのこと。
彼は雇われ店長だが
親切にいろいろ話してくれた。

しばらくぶりの京浜急行羽田空港線。
今日は沿線沿いを歩くつもりでやって来た。
これもまた楽しからずや。

「東」
 東京都大田区羽田4-10-7
 050-5571-5111

2023年2月23日木曜日

第3217話 令和の風はすきま風 (その2) 

今ミッドタウン日比谷がある場所の地下に
かつて「井泉」の支店があり、
ランチタイムにちょくちょく伺った。

半世紀も以前の話だが
近くの雀荘でプレイの折、
弁当を取り寄せることたびたび。
昔馴染みの仲だったのだ。

その後、本店を利用するようになったものの、
直近の3年前には大きく落胆。
好きだったカニサラダのカニの量が激減。
きゅうりだらけで
これはカニサラダとは呼べないぜ。

期待薄で追注したカニオムレツ。
コイツはもっと悲惨だった、
ホントにカニを入れたのカニ?
問い質したくなるほどだった。
この温厚なJ.C.がっ!

そして今回。
逆L字形カウンターのテッペンの一番奥、
サンドイッチ製造係の真ん前に坐した。
次々と入る注文を手際よくさばく、
お手並みをとくと拝見。

とりわけ参考になったのは
メインのヒレカツよりも
きゅうりサラダと玉子サラダのサンド。
これは勉強になった。
意外と簡単だから自宅でやってみる気にー。

本日の注文はロースかつ定食(1500円)。
銘柄の合わないビールは無視。
昨夜の「多古久」同様に練り辛子が効きまくる。

5切れのロースかつはほど良い厚さ。
昔からの謳い文句「箸で切れるとんかつ」は健在だ。
もうちょいと脂身がほしいくらいだが
上野のとんかつはこのスタイルが伝統でもある。

適量のキャベツ繊切りにパセリが1房。
豚汁の長ねぎがスゴい。
刻みネギじゃなくてブツ切りだ。
にんじん&ごぼうに加え、豚肉もドッサリ。
新香はキャベツ漬けに高菜が混ぜ込まれている。

座敷に通ずる場所で建付けが悪いせいか
すきま風が冷たい。
このせいでごはん&豚汁がたちまち冷めてゆく。
昭和の風が吹き抜けた所に令和の風がすきま風。
ほうら、杉良太郎も歌い出した。

♪   人を愛して 人は心ひらき
  傷ついて すきま風知るだろう ♪

おあとがよろしいようでー。

「井泉本店」
 東京都文京区湯島3-40-3
 03-3834-2901

2023年2月22日水曜日

第3216話 令和の風はすきま風 (その1)

一人やさぐれて、もとい、たそがれて
不忍池のほとりを歩いて帰った、その翌日。
犯人は犯行現場に戻るというが
何も悪いことをしていないJ.C.もまた戻った。

この日は3年ぶりの「井泉本店」。
創業は昭和5年(1930)である。
こちらは前夜の「多古久」とはまったくの真逆だ。

地番が文京区・湯島3丁目なのに最寄り駅は
台東区のメトロ銀座線・上野広小路と
都営大江戸線・上野御徒町なのだ。
この辺りの区割りはなかなかややこしい。
前話に倣い、当店も自著から抜粋したい。

■昭和の風が吹き抜ける
とんかつ発祥の地・上野には
相当数のとんかつ店がひしめいている。
雰囲気的にもっとも好きな店がここ。
古き良き時代の濃密な空気が流れている。
とりわけ気に入りは2階の座敷。
昭和30年代までこの部屋に
芸者衆が舞い踊っていたという。
さもありなん。
小津安二郎の愛した「蓬莱屋」より、
小津映画らしいシーンを見ることができる。
川島雄三がメガホンを取った、
「喜劇・とんかつ一代」のモデルが
この店だと信じて疑わない。
セット以外にここで撮影したフシのある、
カットが少なくないからだ。
森繁・のり平・フランキーの芸達者に
女優陣も淡島千景・団玲子・池内淳子が絡み、
楽しい映画に仕上がっていた。
一夜、2階に男4人が集まり、飲み会を開いた。
特ロースカツ(1600円)は柔らかいわりに
豚肉のコク味がいま一つ。
蟹肉入りのオムレツ(800円)が
トロリと上出来で当夜のベスト。
上かつ丼(1350円)のアタマをつまみにすると、
玉ねぎではなく長ねぎの使用が珍しい。
ユニークなのは鳥の唐揚げ(850円)。
きざんだねぎを鳥肉の周りに
まとわりつかせて揚げてあった。
部屋を吹き抜ける初夏の風が涼やか。
小津ファンも川島ファンも
昭和5年創業のこの店を訪れて損はない。

J.C.が深くなじんだのは
この本店ではなく、ほかにあった。

=つづく=

2023年2月21日火曜日

第3215話 東京最古のおでん屋さん (その2)

思い起こせば、初めて「多古久」に伺ったのは
1978年だから実に45年前。
浅草の「弁天山美家古寿司」訪問も同年で
隅田川の花火が復活した年だった。
仕事が終わると旨いモンを求め、
都のあちこちに出没し始めた時期だった。

鍋の前に陣取る女将さんに
黒ラベルの中瓶と小肌酢をお願い。
小肌が切れて生モノはまぐろだけだという。
それではと、目刺しを焼いてもらう。

こんがり焼けたのが4尾来た。
中瓶を飲み終え、褒紋正宗のぬる燗を所望。
白鷹の酒造によるこの酒は知る人ぞ知る銘酒だ。
そろそろおでん。
初っ端はスジとつみれをー。

「スジは魚のスジですけど」と女将。
「存じております」とJ.C.。
品書きにも、=スジ(魚)=と明記されている。
今の若者の間では牛スジが主流だからネ。
困った風潮で、べつに困らなくてもいいんだが
アレはそもそも浪花の食いモンなんだヨ。

辛子がよく効いて、これぞ名店の証し。
燗酒をお替わりし、お次は白滝と牡蠣。
この稿を起こすにあたり、自著をチェックしたら
はるか昔もほとんど同じモノを食べていた。
今回はフキがスジに変わっただけ。
記憶はまったく失せていたけれど
人の好みって何十年も変わらないんだネ。

「女将さんは先代の女将さんのお嬢さん?」
「ええ、さいです」
言葉を交わし始めた。
包丁を握るのはご亭主ではなく弟さん。
お運びが娘さん。
家族3人の揃い踏みと判明した。

シャコ爪は品書きから消えて久しいとのこと。
そりゃそうだよなァ、
シャコ本体が消えちまったもの。
江戸前なんざ、ついぞ見かけない。
ほうら。五木ひろしも歌い出したヨ。

♪   シャコ爪は 消えて 消えてしまった
  シャコ爪は 消えて 消えてしまった
  もう 帰らない        ♪

一人たそがれて
東京最古のおでん屋さんをあとにしました。

「多古久」
 東京都台東区上野2-11-8
 03-3831-5088

2023年2月20日月曜日

第3214話 東京最古のおでん屋さん(その1)

上野仲町通りの「池の端藪蕎麦」が閉業して
通りに唯一残された、
古き良き店はおでんの「多古久」のみとなった。

最寄りはメトロ千代田線の文京区・湯島ながら
地番は台東区・上野2丁目である。
久方ぶりに出掛けた。
リニューアルのあとが垣間見られるものの、
設えは昔のままである。

1904年創業。
119年前の此の年2月、日露戦争勃発。
かくも長き歴史を今も刻み続けているのだ。
ここで自著「古き良き東京を食べる」の当該欄を
ダイジェストで紹介してみたい。

■蝦蛄爪に往時がよみがえる
明治37年創業。
東大前の「呑喜」に遅れること17年、
東京で二番目に古いおでん屋になる。
記憶が確かならば、当時この店は20時過ぎに店を開け、
23時頃には暖簾をしまっていたように思う。
入り口近くに女将さんが陣取って
客はおそるおそる女将の顔色をうかがいながら、
入店の許可をもらうのだった。
何せ、虫の居所が悪いと空席があっても
入れてくれないのだから、
客はまるで箱根の関所か、
J.F.K空港の入国管理を通過するような、
心細い気持ちになったものだ。
20年ぶりにおジャマしたのは200111月。
すでに店主の姿なく、
大鍋を取り仕切るのは忘れ得ぬ大女将。
昔の面影が残っていても
心なしか角が取れたように感じた。
まずは褒紋正宗の燗と小肌酢。
甘酸っぱい小肌は好きだが、わさびがニセモノ。
先代は蝦蛄爪にも本わさを添えてくれたけれど・・。
おでんの白滝・つみれ・ふき・牡蠣は
みな花マルで言うことなし。
一夜「呑喜」のあとに、おでんのはしごを試みた。
すでにキンシ正宗のせいで酔いが回っている。
それでもなお、褒紋正宗のぬる燗と〆さばが上々。
ここで蝦蛄爪がスッと出されたのだった。
一瞬にして往時がよみがえる。
月日は百代の過客にして
行き交う年もまた旅人なり。

以下、次話であります。

=つづく=

2023年2月17日金曜日

第3213話 桜吹雪に舌つづみ

深川の北端、森下の「みの家 本店」に入店。
馬肉専門店で桜吹雪に吹かれるためにー。
メンバーは2ヶ月前と同じ。
美女軍団+後輩夫婦である。

一同、時間厳守で集結したのは15時。
早め仕掛けの早め仕舞いは
コロナ禍のクセ未だ抜け切らずの証しだが
この風潮はわれわればかりではなかろう。
日本全国、オッサンもオバちゃんも
”よいこの皆さん化”しているんだ。

3台のガス台を前にドライで乾杯。
愛すべき皆の衆よ!
ビールが苦手の後輩・N々は
早くも白鶴の熱燗に切り替えている。

通した注文の品々はかくの如し。
肉刺し3・あぶら刺し2・
桜鍋3・桜ロース鍋3・
焼き豆腐2・生玉子6・
べったら漬け2

最初に運ばれたのは桜刺し。
深紅の赤身と白色のあぶらは
まさしく卓上の紅白”馬”合戦。
一同、舌つづみを打ち鳴らす。
ポンポンポン!

あぶらはコウネ、いわゆるタテガミ部分。
クリーム色を帯びた脂身が少しもクドくない。
すんなり、すっきり口中に溶けてゆく。
このときJ.C.が発した指令は
おのおのあぶら1切れを鍋用に
キープしておくこと、これが大事なのだ。

べったら漬けで箸を休める。
今度はポンポンポンの代わりにポリポリポリ。
たくあんだと田舎臭くなるが
べったらならば、火事と喧嘩に並ぶ江戸の華。
この辺りでみな熱燗に移行した。

そうこうするうち鍋の支度が整う。
鞍置き(鞍下肉)とロースに
さほどの違いは見られない。
ロースに多少のサシが入っている程度だ。

鍋は白滝・ねぎ・麩入り。
そこに焼き豆腐を追加してある。
割下と味噌だれで煮てゆくのだが
味噌は八丁味噌と江戸味噌の混合。

肝心の馬肉は寒冷地が良いとのことで
青森とカナダの産。
サラブレッドの倍以上もある大型馬を使用する。
煮るほどに味わうほどに
再び舌つづみが連打されたのでした。

「みの家 本店」
 東京都江東区森下2-19-9
 03-3631-8298

2023年2月16日木曜日

第3212話 行き掛けの 駄賃はキンクロ ゆりかもめ

この日は昨年末に
中華の円卓を囲んだメンバーの食事会。
此度は円卓の代わりに桜鍋を囲む手はずだ。

その前に上手いこと時間をつぶせないJ.C,は
独り零次会でやり過ごすしかない。
そうです、今宵も行き掛けの駄賃です。

家からトコトコ歩いて不忍池にやって来た。
うららかな陽光を水面(みなも)がはじき返している。
池のほとりのベンチに腰掛け、水鳥の様子を眺めた。

ほとんどがキンクロハジロとゆりかもめ。
群れて水に浮かぶキンクロ。
舫われたボートに羽を休めるゆりかもめ。
あとはカルガモ、オナガガモ、
オオバンがおのおの数番い。
年々、種類も総数も減ってきている気がする。
ちょいと心配だ。

弁天堂の神前に数台の屋台が並んでいる。
珍しいことに紅ズワイガニの串焼きがあった。
のぞいてみたらやけにブットい。
タラバガニの脚よりブットい。

これが600円だっちゅうから
あからさまにカニカマもいいところ。
テキ屋の方々はいろいろ知恵をしぼるもんですな。

アメ横にやって来た。
入店したのはなじみの「ほていちゃん上野4号店」。
他の店は立ち飲みスペース完備だが
此処だけはカウンターも座り飲み。
しかも立ち飲み限定のサッポロ赤星が
1割引きで座って飲める。
2階で天井が低いせいかな?

軽いつまみはと・・・
そうだ、カニカマサラダにしよう。
これには先刻見かけた屋台の紅ズワイが
多分に影響しているネ。
てなこって人生初、
カニカマを発注し、大瓶の友とした。

さっきの屋台にゃ負けるが
けっこう太いのが2本。
掛かっているのはオーロラソースとオニオンチップ。
カマちゃんの下には
水菜のサラダとオニオンスライス。
立派な一品になっていた。

大好きな花月サワーを外1:中2で飲み、
深川・森下へと向かいました。

「ほていちゃん上野4号店」
 東京都台東区上野6-13-2渡辺上野ビル2F
 03-6284-4130

2023年2月15日水曜日

第3211話 えぞ鹿せいろと和牛モツそば (その2)

千駄木のそば処「弁慶」に居る。
和牛モツそばを食べてみたら、これがなかなか。
主役のモツは牛のシロコロである。。
腸壁に脂がビッシリ付着したシロモノだった。

どんぶりを彩るのは
3枚のレモンスライスにきざみねぎだが、
ねぎの背の背に揺られて揺れて
見え隠れするのがニンニクスライス。

塩味の日本そばは極めてまれ。
ニンニク入りの日本そばは
初めての体験じゃなかろうかー。
しかも生のスライスが7~8枚も。
あとは鷹の爪が散見されるばかり。
いや、おどろいたな。

翌〃日、再び弁慶と相まみえるJ.C.の姿を
千駄木の町にみることができた。
此度はえぞ鹿せいろである。
凝り始めるとハマる悪癖。
いつものことながら
近所だから可能な芸当だ。

えぞ鹿の部位は肩ロースかバラと推測される。
かなり脂身が付き、つけづゆにコクを与えている。
とは言え、鴨せいろと比べ、
けして鹿せいろが勝るというんでもない。

あえて蝦夷から鹿を取り寄せるんなら
津軽か南部辺りの鴨で
じゅうぶんじゃないのかな。

帰宅してこの稿を起こしかけたとき、
ふと思った。
ついでだから和牛モツラーメンもいっとこうかー。

翌日、三度(みたび)J.C.の姿を
「弁慶」で見ることができた。
ここまで弁慶と付き合うと
自分が義経になった気がしてくる。

そうしていただいたモツラーメンも悪くなかった。
薄い塩ラーメンながらこれはこれで良し。
ただし、モツそばのときには
いっぱいあったニンニクがホンの2,3枚に激減。
たまたまだと思われるものの、ちょいとばかり落胆。
よって、もつそばに軍配を挙げざるを得ない。

そんなこんなで短い間に仏の顔を三度も見たワケだ。
しつこく重ねるが昼めしどきのビールに
くだらん有料つまみはおやめなさい。
ハナからビールが安くないんだし、
こここそ”弁慶の泣き所”になってるネ。

「蕎麦人 弁慶」
 東京都文京区千駄木2-11-5
 03-5832-9233

2023年2月14日火曜日

第3210話 えぞ鹿せいろと和牛モツそば (その1)

7年前の今頃、一度訪れた、
文京区・関口の「蕎麦人 弁慶」。
その系列店が同区・千駄木に出来たのは
3年ほど前だったろうか?

其処が面白いものをメニューに載せ始めた。
和牛モツのそばとラーメンである。
加えて、えぞ鹿せいろと来たもんだ。
何度か利用しているが
再訪の価値ありと判断して赴いた。

初めはモツそば。
サッポロ赤星の中瓶と一緒に通す。
すると4点盛りのお通しが運ばれた。
品書きにはアルコールを頼むと昼夜問わず、
オッツケられるとある。

しかも390円がチャージされる。
夜ならまだしもランチタイムに気易く飲む、
ビール1本にこれはないだろう。
またその内容がヒドいんだ。

蒸した鳥むね肉、揚げた鳥皮、切り干し大根、
薄っぺらい玉子焼きと、
よくもまあ、愚にもつかないものばかり。
中瓶本体が750円だから合わせて1140円。
真っ昼間から、これはないぜセニョリータ!

ここで思い起こされるのが2週間前の「川勇」。
墨田区・石原のうなぎ屋さんだが
あすこは好かった。

スーパードライは同じ750円ながら大瓶だ。
良くできた油揚げ&切り昆布の煮たのはフリー。
雲泥の差とはこういうことを言う。

この差を文京区・千駄木と
墨田区・石原の違いと断言したら
千駄木に悪いから言わないけれど・・・
あれェ、言っちゃったかー。
文京区民のみなさん、ごめんなさい。
ん? 自分で自分に謝ってどうすんだ!

その日はどうにか気を取り直し、
モツそばに挑んだ。
ビールの恨みは恨みとして、そばは美味しかった。
このフェアな精神こそが
J.C.のJ.C.たる所以である。

勝手に自画自賛したところで
以下、次話でありんす。

=つづく=

2023年2月13日月曜日

第3209話 日比谷の八戸 ワンス・モア 

♪   津軽海峡 渡る船は
  横なぐり 横なぐりの雨
  も一度 も一度 やり直せるなら
  このまま このまま 引き返すけど
  もう遅い もう遅い 涙の海峡  ♪

吉幾三の「海峡」は’87年5月のリリース。
J.C.はその2ヶ月前にNYに渡った。

それはそれとして、心の内で津軽海峡を渡り、
「きたぎん!」から「8 base」にやって来た。
まっ、どちらも日比谷のJRガード下なんだけどネ。
町名こそ有楽町から内幸町に変われど、
同じ千代田区ではある。

生中を3杯飲んできたのでさっそく日本酒。
八戸酒造の八仙 ISARIBI 特別純米は
1合が1100円也と、
この手の物産館としては強気の値付けだ。
もうちょいと勉強してもらえるとありがたいネ。

お通しは小鉢二つ。
五戸・元祖コムラのなんばんみそを乗せた小冷奴。
これを田舎臭いと感じるか、牧歌的と思うかは
人それぞれ、J.C.はもちろん後者である。
もう一つは砕いた南部せんべい。
鯖の身肉を混ぜ込んだ白味噌が添えられる。
素朴な一品に八戸らしさが漂う。

高価なだけあって八仙はふくよかに味わい深い。
八戸名物・いちご煮(1350円)を通した。
海胆と鮑を一煮した潮汁である。
缶詰のそれとは別物の本場の風味が立ち上る。

言うなれば、アバローン(鮑)入り、
シーアーチン(海胆)チャウダーだ。
海胆の滋味あふれる濃厚なスープがたまらない。
軽い火の通しの鮑はアバローンだけに
アバレルくんだが歯の丈夫な人なら
噛みしめ感を楽しめる。

実はJ.C.、過去に一度だけ八戸を訪れた。
’90年のことで列島には
美空ひばりの「川の流れのように」が
流れまくっていた。

当時の恋人・E子が東京のアパートを引き払い、
ふるさとに戻ったので追いかけて八戸。
此処で
♪ 追いかけて 追いかけて ♪
と「雪國」はやらない。
「海峡」と「雪國」の連荘じゃ、
浪花の小姑もだまっちゃいまい。

八仙をお替わりして締めは八戸らーめん。
バラチャーシュー薄切り2枚、
シナチク、焼き海苔、ねぎはささがき。
中細ちぢれ麺に魚介系醤油スープ。
旭川の醤油と函館の塩の中間に近いが函館寄りだ。

八戸のすでに無き「板橋食堂」でE子と食べた、
ラーメンに心なしか似ている気もした。
E子だけに、いいコだった。
今、ほろ苦く思い起こされる。

「8 base」
 東京都千代田区内幸町1-7-1日比谷OKUROJI
 03-6807-5611

2023年2月10日金曜日

第3208話 八戸の 前に 立ち寄る 北海道

1月半ばに一度度訪れた、
八戸の食堂兼酒場「8 base」。
リポートした際に近々再訪する旨はお伝えした。
今宵はそこで飲むつもりである。

だが、その前に1軒、立ち寄りたい店があった。
当欄で何度か紹介した、
北海道酒場の「きたぎん!」がソレ。
何だよぉ、また行き掛けの駄賃かよぉ!
ってか? 仰せの通りにございますればー。

てなこって八戸の前に北海道である。
われながらオツなマネをするもんだと、
感心することしきりなり。

時刻は16時半、今夕最初の客としてカウンターに。
何杯飲んでも299円の中ジョッキを通す。
銘柄はもちろんサッポロ黒ラベル。
例によってオキマリのお通しは
一口ネギトロいくらごはん(400円)。

何が入っているか判らないネギトロは
普段なるべく避けるようにしているが
当店に限り、なかなかにイケる。
飲み初めのチョコッとごはんは
ときどき見かける手法だが好きだ。

来れば食べるの山わさび涙巻きは
次があるため、涙を飲んだ。
北海道は何てったって山わさび。
イギリスのホースラディッシュ、
フランスのレフォールですネ。

ん? たらば蟹のかにみそあえ(680円)がある。
何でまたこんなに安いんだ。
読者におかれては
J.C.の蟹好きは先刻ご承知であろう。
何てったって蟹座の生まれですからネ。
ジョッキのお代りとともにお願い。

するとこれが美味いのなんのっ!
いい塩梅に蟹味噌がからまり、
身も脚肉みたいな上等部位ではないものの、
適度な歯応えに蟹の風味も万全。
おそらく胴体の脇のペラペラしたとこだな。

即刻、お替わりするところなれど
2軒目があるため断念。
でも近いうちにアイ・シャル・リターン。
ラムレバーの炙りなんかも食べたいし・・・。

代わりにジョッキをまたお替わりし、
滞空30分で津軽海峡を渡った。
ほうら、吉幾三も歌ってやすぜ。

「きたぎん!」
 東京都千代田区有楽町2-1-7
 03-6205-8887

2023年2月9日木曜日

第3207話 梶原銀座の「砂場」にて

この日の散歩は11時スタート。
谷中よみせ通りから西日暮里の進学校、
開成学園脇のひぐらし坂を上り、
田端高台通りを真っ直ぐに
女子聖学院の立派な校舎を左に見ながら
中里から上中里、平塚神社に一礼し、
JRの跨線橋を渡ったら、明治通りを横断して
都営荒川線・梶原駅に達する。
丸1時間歩き、時刻は正午ちょうどだ。

都電最中(もなか)を商う和菓子店が盛況。
しかしながらこの道筋は飲食店が少な過ぎ。
開いていたのは町中華の「生駒軒」と
日本そばの「砂場」のみのていたらくだ。

「砂場」を名乗るからには
それなりのそばの提供があってしかるべき。
暖簾をくぐり、敷居をまたいだ。

興味を抱いたのは開化煮と八宝丼。
開化煮は開化丼のアタマ。
接客の女性に八宝丼とは何ぞや?
訊ねると、八宝菜のどんぶりなんだとー。
早いハナシが中華丼だネ。

J.C.は当たりの多い日本そば屋のラーメンが好き。
品書きに一つだけ赤字で書かれた、
中華そばを見止めると、
日本そばを食べに来たのについ、浮気してしまう。
それにしてもラーメンすらない日本そば屋に
中華丼ってのはきわめて珍しい。
それも天下の「砂場」だヨ。

銘柄が気に染まず、
スルーしかけたが思い直して通した、
本年初のキリンラガーをトクトク。
苦いネ、今度飲むのはまた来年だな。

開化煮をお願いすると、ありゃ~、豚肉だヨ。
てっきり牛肉と早とちりした。
調べてみたら主流は牛肉だが
豚肉もあるんだとー。

味はまことにけっこうながら
いかんぜん甘過ぎのしょっぱ過ぎ。
締めに頼んだかけそばも同様だった。
中太のそばは好いのに濃いつゆが残念。
ただし、かけの方はそば湯をもらい、
うめてやって事なきを得た。

会計は1900円。
そういえば箸袋に「梶原銀座 砂場」とあった。
帰宅後、地図を確認したら
ショッピングロードかじわらに改称されている。。
商店会はモダンなつもりだろうが
これは逆効果、返って野暮ったくなりますネ。

「砂場」
 東京都北区堀船2-38-1
 03-3913-4401

2023年2月8日水曜日

第3206話 町内会に初出席

J.C.は生まれてこの方、
町内会というものに出席したことが一度もない。
自慢じゃないけどネ。
ああいう会合はいったい何を話し合うんだろう。
今度のドブさらいはいつにしましょうか? とか。

あゝ、それなのに人生初の町内会。
いや、マイッたな。
実は前話で食べた札幌の「すみれ」。
その流れを汲むラーメン店が
都営三田線・板橋区役所前にあると聞いた。

そう、その店の名がなんと「あさひ町内会」。
およそラーメン店には似合わないよネ?
いや、日本そば屋だろうが町中華だろうが
飲食店の屋号らしからぬ不届きぶりである。
とは思ったものの、落ち着いて考えりゃ、
これもアリかなと思えてきた。
むしろ客の意表を突くヒットかもしれない。

行ってまいりました。
町内会に出席、もとい、入店しにー。
12時45分到着 6人ほど並んでおり、
店内に導かれたのは13時05分。

「すみれ」と言えば、何たって味噌ラーメン。
醤油も塩もあるんだが初回は王道でいきたい。
みんな同値の900円。
味噌をポチッ、550円のドライ中瓶もポチッ。

ややっ、コレは旨いんでないかい。
少なくとも数日前のカップよりずっと上だ。
「すみれ」の赤茶色とは違い、白味噌仕立てで
シャキシャキ感を残したもやしがナイス。
チャーシューは厚切り肩ロースとサイコロ状も。
細切りシナチクの歯ざわりが快適。

ちぢれ太麺の上にはたっぷりのきざみねぎ。
そのまた上におろし生姜と来たもんだ。
味が濃いと思う客には割りスープの提供あり。
これはありがたいサービス。
味を薄めるとともに
冷めかけたスープを再び温め直す効果がある。
おっと、ここで渡辺真知子が歌い出した。

♪   冷めかけたあの人に 
  意地をはってたなんて
  ひとつ曲がり角 ひとつ間違えて
  迷い道くねくね    ♪

シンガーソングライター、渡辺真知子のデビュー曲、
「迷い道」は’77年のリリース。
彼女のナンバーではこの曲がマイベストだ。

おっと、そんなことより町内会の味噌らーめん。
とても美味しかったのでビールをもう1本ポチッ。
本籍地のある板橋区役所に行く用があったら
再訪間違いナシでありまする。

「あさひ町内会」
 東京都板橋区板橋3-5-1
 03-6915-5569

2023年2月7日火曜日

第3205話 すみれの花咲く頃

根津にある不忍通りふれあい館で
CDを2枚借り入れ、のんびり聴いている。
1枚目は「特選 大河ドラマ名曲集」全23曲。
ここ数年はほとんど観ない大河だが
’60~’70年代はまじめに観たものだ。

「赤穂浪士」(’64年)のテーマソングが好きで
楽しみにしたものの、何故か収録されていない。
まあ、YouTubeで聴けるからいいんだけれど、
そういうもんじゃないやネ。

その代わり「三姉妹」(’67年)を懐かしく聴いた。
悲劇的なカタルシスに心揺さぶられる。
ヴェルディもプッチーニも及ばぬベッリーニの作品群、
例えば「ノルマ」の序曲を
ほうふつとさせる弦楽の響きに魅せられた。

2枚目はドップリと懐メロに浸る。
小学館昭和ソングス第1巻「丘を越えて」には
藤山一郎が表題のほか「影を慕いて」、
松平晃「サーカスの唄」、
ミス・コロムビア「並木の雨」、 
淡谷のり子「別れのブルース」、
霧島昇「誰か故郷を思わざる」などが
収められている。

その中に「すみれの花咲く頃」があり、
歌うのは宝塚少女歌劇月組生徒。
宝塚の団歌みたいな曲だからネ。
原曲は西ドイツ映画の同名主題歌、
「再び白いライラックが咲いたら」。
ライラックの仏語はリラ。
フランス経由で日本に上陸した際、
日本ではなじみの薄いリラをすみれに置き換えて
誕生したのがこの曲である。

聴き終えて夕食の買い物。
たまたまセブンーイレブンに立ち寄ると
目に飛び込んできたのが”すみれ”の文字。
すみれのカップ味噌ラーメンだ。

札幌の本店「純連」は”すみれ”を
”ジュンレン”と読ませるように改名したが
コンビニ用商品は”すみれ”で通すようだ。
単なる偶然だけれど、これも何かの縁。
せっかくだからとイン・マイ・バスケットにー。

すると今度は冷凍食品のケースに
すみれのチャーハンを発見。
ええい、面倒だ、こいつも買っちゃえ!

2日に分けて食べてみた。
ラーメンのほうは
フツーの味噌ラーメンの域を出なかった。
ところがチャーハンは個性的で
醤油と玉子が主張し、
グリーンピースの存在がとてもユニーク。

「すみれ」のチャーハンは初めてながら
ラーメンははるか昔に
新横浜のラーメン博物館で食べて以来。
宝塚のおかげで
札幌の味を楽しめたのでした。

2023年2月6日月曜日

第3204話 胡麻バナナせいろって 何だ?

日本橋馬喰町で人と逢う約束があり、
その前に軽く腹ごしらえ。
隣り町の浜町のしなびた日本そば屋へ。
これはあくまで”しなびた”であり、
”ひなびた”ではありません。

明治座の正面にあり、
以前から存在を認知していたが初訪。
とにもかくにも度肝を抜かれたのが一つの品書き。
何のことやら、胡麻バナナせいろと来たもんだ。

温かい胡麻づゆにバナナのブツ切りが
プカリプカリと浮いてる姿を想像した。
そんな食いモンが食文化栄えしこの国に
存在し得るものなのかー。

ただ古いだけで、どこから見ても旨いそばが
出て来そうにないんだが
この珍品は看過すること能わなかった。

先客は一人。
初老のオバちゃんが親子丼みたいなどんぶりを
かっこんでいる。
接客も一人。
ひなびたオバちゃんである。
これは”ひなびた”であり、
”しなびた”ではありません。

品書きに珍し物多し。
胡麻バナナせいろ(850円)を筆頭に
トマトとじ(900円)、 柚子そば(1000円)、
ほたるいかそば(1000円)などなど、
店主の思いつきの賜物が並ぶ。

いの一番、オバちゃんに訊いてみた。
「胡麻バナナせいろってどんなんですか?」
「アハッ、アハハ、胡麻汁せいろに
 バナナが1本付くんです」
聞いたときのJ.C.の顔を自撮りして
此処に貼り付けたかった。
こういうのは胡麻汁せいろ、
バナナ1本付きと書くんだヨ、ったく。

店の名は「招福庵」。
あまり福を招きそうにないけどネ。
ビールは苦手なクラシックラガーでパス。

結局は薬局、以前はどこにもなかったが
ここ数年、急に流行りだした、たぬきせいろをー。
谷中の真っ当なそば屋によれば、
まかないから始まったそうだ。

結果、そのたぬせいはヒドかった。
クタッとしたそばからは
店のやる気がまったく感じられない。
つゆには揚げ玉、小松菜に焼き海苔1枚。
薬味のねぎが無いんだ。

薬味のないそばを初めて食べた。
こんなのを大劇場の前で出してたら
タヌキ(他抜き)どころか、
他抜かれになっちゃうぜ。
ちょいと遠回りだけれど、
「浜町藪そば」にしときゃよかったヨ。

「招福庵」
 東京都中央区日本橋浜町2-17-6
 03-3666-5945

2023年2月3日金曜日

第3203話 理髪の後の「ちさとちゃん」

時間が余ったので自由が丘散策。
どうもこの街は歩きにくい。
南口はプロムナードにベンチがズラ~ッと並んで
好い雰囲気ながら、飲食店が集中する北口方面は
歩道がほとんどなく、クルマ優先の街並みとなる。
自由が丘は歩行者にとって、不自由が丘なのだ。

いつものように「オオゼキ」で
ドライのロング缶を買い、
アタマをK子チャンに委ねた。
「今日のランチはどちらに?」
「自由が丘でカレーだヨ」
「エッ? 珍しいですネ。
 でも自由が丘って歩きにくくないですか?」

これには驚いた。
まさに我が意を得たり。
誰しも思うところは一緒なんだ。
若者には人気の街だと勝手に決めてたからネ。

アタマさっぱり、首筋ひんやり。
かむろ坂を下って山手通りのバス停で両面待ち。
左に行けば中目黒・渋谷、
右なら新馬場・大井町、どちらでも良し。

先に来た渋谷行きに乗り、
大橋ジャンクションで下車した。
テクテクと三宿を通り抜け、三軒茶屋に到達。
ポツリポツリと店の灯が点り出す。
すずらん通りの「伊勢元」に入りかけたが
ちょいと待て、三角地帯に回ってみよう。

月日の流れは速い、此処へ来るのはほぼ5年ぶり。
一めぐりして「ちさとちゃん」の店先の品書きに
見入っていると、
中から若い店主(?)が出て来ていざなう。
こういうのって、つい、つい、入っちゃうんだ。

18時半と早いせいか、
カウンターに空席があり、すんなり着いた。
ドライの中瓶にマカロニサラダのお通し。
わさび菜つんつん漬けに惹かれてお願い。

いや、ホントにつんつん来るわ。
わさび好きにはたまりまへん。
揚げた春雨みたいなツマはコリコリと食感が絶の妙。
店主に訊くと海藻から作った海藻麺で
加工品ながら添加物は一切ないそうだ。

当店はどて焼き居酒屋を自称しており、
ドライの3本目とともに
1本180円のどて焼きを2本。
いや、旨いネ、八丁味噌が自己主張をしまくる。
徳島阿波牛はさすがであった。

2種の昆布〆は長崎のどぐろ&銚子金目鯛。
惹かれるものあれど、そのうちまた来よう。
支払いは3千円とちょっと。
5年前に何度か通った、
近くのスナック「L」をのぞいてみるとしよう。

「ちさとちゃん」
 東京都世田谷区三軒茶屋2-13-19
 03-5787-8022

2023年2月2日木曜日

第3202話 理髪の前の「スーパースター」

本日は理髪日。
目的地の東急目黒線・不動前を通過し、
大岡山で大井町線に乗り換え、自由が丘にやって来た。
理髪の前のランチは街で人気のカレーショップ。
その名も「スーパースター」、ホンマかいな。

店舗は2階にあった。
サービスの女性はマダムだろう、外国人だ。
カレーは日印折衷にスリランカが絡むが
接客係は欧風だった。

それもおそらく東欧か中央ではなかろうかー。
J.C.は若い頃、観光客溢れるロンドンで
ウエイターをしていたから一目見ただけで
その人の出身地が判る。
ほとんど特技と言ってよいくらいだ。
ただし、混血や移民は除きますがネ。

カレーは3種類。
オリジナルチキン、スラキチ、キーマで
うち2種を択べるダブルのせカレーがある。
挽き肉はあまり好まない。
いや、イタリアンのボロネーゼは大好物ながら
インディアンのキーマは好きじゃない。

よってオリジナル&スリランカ風スラキチ2種の
ダブルのせを黒ラベルの小瓶とともに発注。
BGMはずっと山口百恵だ。
今かかっているのは「横須賀ストーリー」。

♪   これっきり これっきり 
  もうこれっきりですか ♪

ってネ。

マイルダーなスラキチは
大山鶏とヒモ付きホタテにキャベツとじゃが芋。
ん? んん~ん?
けして不味くはないが旨味がどこぞに漏れている。
インドのサブジに似たタイプながら
これはいただけないな。

続いてスパイシーなオリジナルチキンをー。
ん? これまた焦点が定まらない。
メニューによれば、
クミンとカルダモンが主役を張るそうだが
それほど香るでもない。

当地の若者が絶賛するカレー。
自分の味覚との落差に唖然とするばかり。
コールスローとヨーグルトは平らげたが
少なめでお願いしたライスをさらに残した。

2150円を支払い、
ご夫婦の「ありがとうございました」を
背中に聞いて階段を降りました。

「スーパースター」
 東京都目黒区自由が丘2-12-12リビン山田2F
 070-3527-5588

2023年2月1日水曜日

第3201話 あの震災から100年

「川勇」をあとにして食後の散歩。
ぼんやり考えていた。
卯年・睦月のベスト3は
「8 base」ー〆鯖棒寿司ハーフ
「とんかつ武蔵野」ーかき盛合わせ定食
「川勇」ー肝焼き&うな重(並)
これでキマリだな。
こいつは春から縁起がいいわい。

横網町公園の慰霊堂が見えてきた。
そうだ、復興記念館に立ち寄ろう。
NYから帰国してほどなく
訪れたのは’98年春だったから丸25年、
四半世紀ぶりになる。
住まいのあった柳橋は
隅田の大川の向こう岸だからネ。

入館してすぐの場所に避難民たちのスナップがー。
この人々がことごとく焼死したのかー。
いや、そうではなかった。
群衆の写真は皇居前広場、
そして上野駅前広場であった。
地震が発生して間もない頃の首都圏各地の写真。
まだみんなノンビリしており、切迫感が見られない。
そりゃそうだ、火の手が回ったら
スナップ写真どころじゃなくなるからネ。

やがて四方から火が押し寄せ、
多くの人が犠牲になったのである。
あれからちょうど100年。
暗い気持ちを引きずりながら退出した。

両国橋で隅田川を渡り、柳橋で神田川を渡る。
鳥越、小島を経て御徒町にー。
「吉池」で酒肴の調達をする前に
吉池直営の「味の笛」で
ドライとH&Hの生を1杯づつ。
身も心も生き返る。
いか塩辛とアサツキ酢味噌和えをテイクアウト。

「吉池」の地下に潜る。
今夜はポークソテーを焼こう。
好みの銘柄、TOKYO Xのロースを
厚さ2cm にカットしてもらった。

ついでに1階の鮮魚売り場に回る。
おおっ、長崎産黄ハタの刺身があるじゃないか。
見るからに上物が1パック800円。
諸物価値上がりの折、鮮魚類も例外ではない。
鯛も鮪もスゴいもんなァ。
ところが知名度の低いサカナは
値上がりとは無縁、ありがたい限りだ。

でも、こういう知識は
あちこち食べ歩いて培ったもの。
授業料はきちんと払って来たつもりです。
その夜、わが家の食卓は
幸福感に満ち溢れておりました。

「味の笛 本店」
 東京都台東区上野5-27-5
 03-3837-5828

「吉池」
 東京都台東区上野3-27-12
 03-3831-0141