2023年10月31日火曜日

第3395話 カキも入ったミックスフライ

もんじゃタウン・月島で昼めし。
土曜日ということもあって
かなりの人出だが若者ばっかり。
爺さん・婆さんはもとより、
父さん・母さんの姿すらほとんど見かけない。

人気店の店先なんぞ並んだ丸椅子に
カップルやグループがズラリである、
年寄りは鍋を箸で着っつくのを好むが」
若いのはコテをズリズリするのが好きみたい。
何せ、小手先が器用だからネ。

めったにもんじゃやお好み焼きを口にしないJ.C.は
魚料理「ますや」の暖簾をくぐった。
昨年、エボ鯛の塩焼きに魅了され、今回が二度目。
気に入りの店である。

狙っていたのはカキフライだが
カキがあるならミックスフライにも
混じっているに相違ない。
そう踏んで内容を確かめもせず、
ミックスの発注に及んだ。

ドライの中瓶を通すと
浅漬け白菜のザク切りがサーヴされる。
こいつがめっぽう旨い。
ビールにピタリ寄り添って
飯にもバッチリだろう。

予想通りに、そして期待通りに
わりと大ぶりのカキが2粒入っていた。
あとは3枚おろしのアジが1枚に
カンパチかな? いや。ブリだなこれはー。
小さめのが2切れと申し分なし。

繊キャベ&ポテサラはともにタップリ。
嬉しいのは味噌椀の具のアサリ。
豆腐やわかめが主流を占める昨今、
立て看板に”魚料理”とあるのは伊達じゃない。

去年のエボ鯛ほどではないにせよ、
ミックスシーフードを味わいつくして
マンのゾクである。

あらためてホワイトボードの品書きを見つめ直す。
目を射抜くのはキンキ(3000円)と
のどぐろ(3500円)の塩焼きである。
値段的にはこれらが双璧を成す。

ひと昔前ならキンキの方が高かったが
ここ数年、逆転現象が起きている。
のどぐろ(赤ムツ)だと料理の幅が広がるため、
高級割烹も扱いやすいのだろう。
J.C.のイチ推しは
肝付きキンキの煮付けですけどネ。

「ますや」
 東京都中央区月島3-15-2
 03-3531-5246

2023年10月30日月曜日

第3394話 ぶらり大江戸線の旅 (その3)

門前仲町から大江戸線内回りの都庁前行きに乗車。
最も出没率の高い上野御徒町では面白みがない。
一つ手前の新御徒町で降りた。

大江戸線の開通にあたり、
当駅名の候補は新御徒町と元浅草の二択。
地元の人々は前者を択んだとのことだ。

近所にJR御徒町、日比谷線・仲御徒町、
大江戸線・上野御徒町と御徒町だらけなのに
なんでまた右に倣うのかネ。
頭がオカチいとしか思えん。

J.C.考えるに開業時の今世紀初頭は
浅草が完全復活を遂げる前、
両者を天秤にかけたのだろう。
”元”より”新”が新鮮にして
ハイカラと考えたんだネ。

J.C.は”元”のほうがワンランク上だと思う。
世田谷の桜新町はいい町で好きだけど
横浜の元町にはかなわない。

さて、この町で降りたのには理由がある。
1軒の角打ちに目星をつけたのだった。
「松井酒店」は8年ぶりくらいかな?
時刻は17時半過ぎ、5分歩いて行ってみた。

店は開いていた。
入口に座るご主人はあのときのまま。
カウンターに立つバーテンダレスもそのまま。
2人とも無事に生きていた。

ドライの生を1杯飲って
ジャマイカのダーク。ラム、
マイヤーズをロックでー。

ん? この酒を最後に飲んだのは
幡ヶ谷のジャマイカ・カフェ「カリプソ」だ。
同じ幡ヶ谷の小料理屋「のっこい」で
のみとも・B千チャンと落ち合う前だった。

んん? さっき食べたプルドポークを
日本で初めて見たのも
「のっこい」の隣りの「フリーマン食堂」だ。
これを単なる偶然とは思えぬ自分がいたが
ハハ、これは単なる偶然だネ。

3杯目は桜餅の葉っぱの香り、
ズブロッカを炭酸で割ってもらう。
タンカレ No10 のジン・ソーダ、
サウーザのテキーラ・ソーダと続けて
一番好かったタンカレに戻る。

言葉少なな相方ともそこそこ言葉を交わし、
けっこう飲んじまった。
近いうちの再訪を約して
大江戸線の旅も終わりを告げたのでした。

「松井酒店」
 東京都台東区台東4-6-7
 03-3831-4451

2023年10月27日金曜日

第3393話 ぶらり大江戸線の旅 (その2)

練馬「よつぼし」の支払いは約3千円。
栗焼酎を愛でつつ、つらつらと思っていた。
そうだ、今日は都営大江戸線沿いを飲み歩こう。
豊島園や光が丘に行っても仕方ないので
新宿方面の電車に乗った。

都庁前で外回りには乗り換えず、
六本木・麻布十番・大門を過ぎてゆく。
宵闇が迫りくるとどうしても下町に心が動く。
門前仲町で降りた。

時刻は16時半。
”来れば立ち寄る”の立ち飲み酒場、
「ますらお」に直行。
あれェ、シャッターが下りてるぜ。

7月末に清澄白河の「天竜」で飲み会の際、
0次会を目論んだ、
のみとも・B千チャンからメールが入った。
「『ますらお』は臨時休業みたいです」
ちぇっ、またかい。

すぐそばの「魚三」に廻ると案の定、満席。
2階に行け! と言われて階段を上がったら
店のオジさんが首をフリフリする。
「下で上に行けって言われたんだけど・・・」
「そう言われても座れないもんは座れない」
「そりゃそうだネ」
おとなしく引き下がる。

門仲なら何とかなるサ。
永代通りと大横川に挟まれた飲み屋ストリートへ。
「立ち呑み wine Maru-shu2」が何気に良さげ。
スッと入店した。

折よくハッピー・アワーで
ハートランドの生が350円。
グラスワインはすべて200円引き、
まずは生を1グラス。

フード・メニューがおっそろしく豊富だ、
フレンチ、イタリアン、」スパニッシュに
アメリカンまで揃っている。

ありゃあ、プルドポークがあるヨ、
”ちぎった豚肉”はエルヴィスの生まれ故郷、
テネシー州・メンフィスの郷土料理で
南西部、いわゆるディープ・サウスでは
バーベキューの定番なのだ。

肩ロースが使用され、
最も主張する香りはクミンである。
これにはルーマニアのピノ・ノワール、
ラヴィを合わせて美味しくいただいた。
予期せぬ出会いに感謝であります。

=つづく=

「立ち呑み winw Maru-shu2」
 東京都江東区富岡1-6-10
 03-6458-8199

2023年10月26日木曜日

第3392話 ぶらり大江戸線の旅 (その1)

オイスターのシーズンが到来した。
この日は生がきが食べたい気分。
思い浮かんだのは練馬区・練馬の「よつぼし」。
品揃え多彩な佳店である。

ちょうど2年前、この世で最も好きな生がき、
三重県・的矢湾の産に出逢い、
舌鼓をポンポコポンのスッポンポン。
2週と置かずに再訪したら入荷なく肩透かし、
ガックシ肩を落とした覚えがある。

今回もやはり的矢は無かった。
ドライの中瓶をもらい、
オイスター・リストとにらめっこ。
読者の方々にもご覧いただきたい。

岩手   大船渡
青森   陸奥湾
兵庫   相生
北海道  噴火湾
兵庫   室津
長崎   小長井

けっこうな顔ぶれじゃござんせんかー、
けれどもネ、北は北海道から南は長崎まで
順番に並べておくれでないかい?
2種類ある兵庫産も併記してほしいな。

第一感は小長井である。
最初の出会いは2019年春。
青砥の「小江戸」だった。
清冽な中にもコクが感じられ、気に染まった。

2個お願いする。
いいネ、いいですネ。
ポン酢も付いてきたがレモンだけを搾る。

お次は噴火湾をやはり2個。
おやおや、こちらはずいぶん小ぶりだこと。
小長井の半分くらいかな。
かきは一律1個300円。
小長井の方がずっとおトクだ。
味覚の点でも繊細ではあるが小長井に軍配。

当店のもう1枚の看板は焼き鳥&焼きとん。
鶏のハツを塩、豚のカシラを辛味噌で。
カシラに辛味噌は埼玉県・東松山の手法で
当地では豚なのに”やきとり”と称する。

栗焼酎のダバダ火振りに切り替えた。
四半世紀の以前、
NYから帰国し、日本橋の会社に勤め始めたとき、
生まれて初めての本格的な健康診断で
血糖値とコレステロールが引っ掛かり、
医者に日本酒→焼酎を勧められた。

麦では物足りず、土佐は四万十のこの銘柄に
長らくお世話になった時期がある。
いや、懐かしい。

=つづく=

「よつぼし」
 東京都練馬区豊玉北5-15-5
 03-5946-9244

2023年10月25日水曜日

第3391話 普段は避ける サンデー浅草

出没率が極めて高い上野と浅草は
芋洗い状態となる週末に限り、
努めて避けるようにしている。
殊に明るいうちはネ。

ところがその日曜は日暮里から
錦糸町行きのバスに乗って東武浅草駅前で降りた。
日曜と知った上での狼藉ながら、これでいいんだ。
何となれば狙いは「神谷バー」。
正午前に着いたが、この時間なら余裕である。

1階のチケット売り場でいつものように
ドライ大瓶・電氣オールド・串カツの3点セットをー。
トクトクトクのグビ~ッを三連発。
こいつはたまらん。

続いておもむろに電氣のグラスに
唇を近づけると唇のヤツ、震えてやがんの。
初めてのキスみたいなもんだけど、
ヨイヨイのジイさんじゃあるまいし、
コレってヤバくネ?

とは言え、楽しい30分間でした。
雷門の門前を横切るとスゴい人だかり。
中国語の嵐も吹きすさんでる。
とうとう戻って来やがったかー。

こんなとこにサリンなんかまいたら
トンデモないことになる。
チツオ亡きあと誰も手を出さないから
ひとまず安心だけどネ。

昭和30年代から、いや、20年代かな?
とにかく古くからある、
「酒富士」の止まり木に止まった。

思い出すなァ、あれは6年前の春。
ブリスベン生まれの豪州娘、
その名もブリの隣りに座ったのはー。
彼女は平穏にかつ丼を食べていた。

その平和を破り、
反捕鯨急先鋒国の出身者に内緒で
鯨ベーコンを食わセちゃったヨ。
白状しても別段、取り乱すことなく、
ケロッとしていたのにはこちらが驚いた。

そんなことを思い出しつつ、
ドライとまぐろのぬたを所望する。
そしたらまぐろがスゴいんだ。
デッカい粒、いやブツが7~8粒、
これでもかと云わんばかり。

どうにかやっつけたけど、
まぐろはしばらく食いたくないや。
立て込んできたことだし、
そろそろ浅草を脱出しよう。

「神谷バー」
 東京都台東区浅草1-1-1
 03-3841-5400

「酒富士」
 東京都台東区浅草1-6-1
 03-3843-1122

2023年10月24日火曜日

第3390話 七福神 お寺とお墓に 挟まれて

JR日暮里駅北口から夕焼けだんだんに続く御殿坂。
その坂上を左に折れて
三崎(さんさき)坂上に通ずる道筋には
東京で最もレトロなスポットの一つ、
初音小路や朝倉彫塑館が連なっている。

道の東側は谷中霊園、
西はおびただしい数の寺院群。
いずれにしろ御仏(みほとけ)に
限りなく近しいエリアだ。

ここに「松寿庵」なる古い日本そば屋あり。
前を何度も通っているから
存在は認知していた。
先日、たまたま店先のサンプルケースを
のぞいていて1枚の貼り紙に目がとまった。

七福神そば NHKで紹介されました

ん? 七福神そばァ?
何だろう? 何かしら?
こういう際物はハズレが多いが
ものは試し、ダメ元でトライしてみるかー。

翌週、行ってもうた。
四人掛けが四卓の店内に先客はゼロ。
冷やしもあったが、あえて温かい方をお願い。
七福神にちなんで
七種の具材がちりばめられていた。
内容はかくの如し。

恵比寿・・・海老
大黒・・・・袋茸
福禄寿・・・筍
寿老人・・・海苔
弁財天・・・紅白かまぼこ
布袋・・・・うずら玉子
毘沙門天・・とり肉

ちょいとばかり、こじつけがましいが
勢揃いしたお歴々はなかなかに華やかで
おかめそばのヴァージョン・アップといった景色。
ノビないうちにそばの大半をやっつけ、
神様たちはキリン一番搾りの友とした。

五人連れが二卓に分かれて座り、
最後に残った一卓に外国人のカップルが着く。
ありゃあ! 彼らの顔を見て驚いた。
向こうも驚いている。
どちらからともなく「ハァ~イ!」

ついさっき初音小路の入口で
言葉を交わした二人だ。
昼なお暗い小路の奥を
怪訝そうにのぞいているから
「This is a one of the most retrospective spot
   in Tokyo city」
「Is that so ?」
「Yeah, go ahead and have a look」
「Thank you so much」
「Take care」
だったのでした。

「松寿庵」
 東京都台東区谷中5-8-28
 03-3821-5235

2023年10月23日月曜日

第3389話 そば屋では そば食べるのが 基本なり

寅さんとさくらの銅像を振り向きつつ、
京成電車の高砂行きに乗った。
高砂で乗り換えるのだが
日暮里・上野方面だと
隣りの青砥でもう一度乗り換えが必要。
都営浅草線直通電車に乗り、浅草橋で降りた。

神田川を浅草橋で渡り、
江戸通りを真っ直ぐに日本橋本町まで歩く。
NYから帰国して柳橋に棲んだ当初、
オフィスまで何度も歩いた道筋である。

かつてたびたび利用した日本そばの名店、
「室町砂場」までやって来た。
ドライの大瓶には梅くらげのお通し。
これにチャージなどと、
ケチなマネを老舗はしない。

卓上に書店のポップみたいな小メニューあり。
んん? なんだ、なんだ、
どんぶりのすすめじゃないかー。
「砂場」にどんぶりあったかな?
どんぶりどころか
米の飯を見たことなんかないゾ。

よくよく見れば、
焼き鳥丼 1300円
天とじ丼 1100円
親子丼  1100円
3種もあるぜ、驚いたネ。

腕を組むことしばし。
食べてみようかー。
となると、もっとも「砂場」らしいのは
天とじ丼だろう。

わりと小ぶりなのを左手でリフト・アップ。
おもむろに箸を進める。
ん? なんだかなァ・・・。
どうやら期待し過ぎちまったみたいだ。

脇のしば漬けでいったん箸を休め、
さらに口元に運ぶ。
ガシガシとしたかき揚げが
口内で暴れ、食感を損なう。

これが町場のそば屋なら文句は言わない。
さすれど天下の「室町砂場」となれば話はベツだ。
とてもじゃないが他人様にあすすめなどできない。

そば屋のどんぶり物は神田駅の向こう側、
旧連雀町の「まつや」に
任せときなさい、っての。

「室町砂場」
 東京都中央区日本橋室町4-1-13
 03-3241-4038


2023年10月20日金曜日

第3388話 小雨にけむる帝釈天 (その2)

川魚料理のうちでおそらく最大の難関、
鯉こくにあえて挑むことにした。
こればかりは信頼のおける、
料理屋以外ではまず食べられない。

柴又にはかつて「川甚」なる大店の老舗があった。
1969年の虎さん映画第一作、
「男はつらいよ」に実名で登場する。
此処で妹・さくらと博の結婚披露宴が
開かれたのだった。

一方の「川千家」は映像に映らないものの、
やはり実名で登場する。
草だんごの「高木家」同様に
三崎千恵子扮するおばちゃんが
店名を口にするのだ。

配膳された鯉こくは迫力満点。
筒切りがお椀の中で
ひときわ存在感を放っていた。

うれしいのはワタを抜いた穴を
埋めるように肝と白子そして
海水浴シーズンはとうに過ぎたというのに
浮き袋まで潜んでいた。

菊正の合いの手としては
じゅうぶん過ぎるほど、存分に楽しんだ。」
ここで思い出されたたのが
中学生のときに読んだ週刊誌である。
父親が買ってきた文春だか新潮だろう。

食コラムに当時、一世を風靡した女優、
山本富士子が登場。
「私の大好物」として
赤坂のうなぎ割烹「重箱」のうなぎではなく、
鯉こくが紹介されていたのだ。

これには中学生のJ.C.、マジで驚いた。
あんなに綺麗な人が何でまた鯉こくなんぞをー。
まさに
あの顔で 鯉こく食うかや 富士子さん
てな感じだ。

数週間後の同じコラム、
今度は小川真由美である。
彼女の大好物は京都のすっぽん専門店、
「大市」と来たもんだ。
こちらも
その顔で すっぽん食うかや 真由美さん
でしたネ。
満足の会計は3250円也。

駅前の寅さん像の真ん前。
ロケの合間に寅さんが納豆オムレツを食べた、
飲み処「春」に来ると、あいにくの定休日。

思い出すなァ、あれは20年前。
元カノ・K子と堀切菖蒲園から流れて飲んだ。
銀行勤めだったから人当たりがよかったんだねェ、
「春」のママがすっかり彼女を気に入ってしまい、
柴又駅のホームまで見送りに出てくれた、

さくらに送られる寅さんの心持ちになったのを
昨日のことのように思い出す。

「川千家」
 東京都葛飾区柴又7-6-16
 03-3657-4151

2023年10月19日木曜日

第3387話 小雨にけむる帝釈天 (その1)

前日、寅さん映画を観たため、
葛飾柴又に行きたくなった。
4年前の年末、2週続けて土曜に行って以来だ。
のみとも・Fちゃんが「行ってみたい」と言い、
元カノ・T子は「連れてけ!」とほざいた。

今にも降り出しそうな空模様。
天気予報の雨マークは傘が閉じていたため、
いてまえ! てなもんだった。
しかし着いたら、ちょいと強めのパラパラだ。

帝釈天(題経寺)は小雨にけむっていた。
竹ぼうきで庭を掃く源公の姿は無かった。
参道を戻り、川魚料理店「川千家」の暖簾をくぐる。

18年ぶりである。
そのときのことは当時、
連載していた日刊ゲンダイのコラムに書いた。
銀座の現役ママ・E美子と一緒だった。

「テーブルでもお座敷でもお好きな方へ」ー
そう言われて靴を脱いだ。
こういう店では畳がよりしっくりくる。

まだ11時なのに先客が数組。
一様にうなぎの重箱をある者は肘をついて突つき、
またある者は人目もはばからず搔っ込んでいる。
とても外国人に見せられる姿ではない。

女性はともかくもニッポンの男どもの
食卓における作法には目を覆いたくなる。
これもみな女性であるところの
母親のしつけが悪いんだ。

ドライの中瓶とうざくを通したら、うざくNG。
仕込みが間に合わないのかな?
代わりに肝ロールをお願いする。
うな肝の詰め物の色は黒ずんでいるが
イタリアのサラミに似た感じだ。

菊正の上燗に切り替えた。
胡坐をかくと清酒が欲しくなる。
ニッポンの Jesus Crist、
J.C.にも日本人の血が流れているんだネ。

さて、つまみをもう1品。
せっかく柴又の「川千家」まで来て
うなぎなどと悪手は指したくない。
初心者じゃないんだしネ。

鯉にしようか、どぜうにするかー。
難敵なれど此処は一番、鯉でいこう。
さすれば、あらいでいこうか、濃いこくでいくかー。
鯉の悩みは尽きないものがございます。

=つづく=

2023年10月18日水曜日

第3386話 新橋駅前 ちょい飲みハシゴ

夜にはガッツリ・ディナーが待ち受ける、
週末の昼下がりである。
軽くつまんで軽く飲もうという腹積もり、
JR山手線を降りたのはオヤジの聖地・新橋だ。

地下に潜って新橋駅前ビル。
B1、1F、2Fとめぐって
落ち着いたのは2Fの「ビーフン東」。
10年ぶりくらいになる。

カウンターでドライの中瓶と
焼ビーフン(並)の小盛りを通した。
昼間の当店は焼とスープのビーフン2種。
あとはバーツアンと呼ばれるちまきのみ、
これだけなのにけっこうな客入りだ。

焼ビーフンといっても軽く炒まったところに
豚肉が数枚、キャベツ、もやし。
アッサリしていてなかなかよろしい、
加えて炒飯に付いて来る清湯。
お茶は温かいジャスミンティー。

卓上には、にんにく醤油、
白胡椒、紙ナプキン、爪楊枝。 
運んでくれたオジさんが
「これを少しかけてネ」と
にんにく醤油を指し示す。
美味しくいただき、会計は1300円也。

もう1軒をと目論み、ガードをくぐって西口へ。
今度はニュー新橋ビルに潜った。
こちらは中国色が濃くなり、
ちょいとばかりガラも悪くなる。
地下1階を3周ほどしたが気に染まる店はない。
地上に出て界隈を物色するもやはりダメだ。

結局は薬局、駅前ビルに戻ったヨ。
自分でも何をしているのか判らない。
B1の「立呑処 へそ」に滑り込んだ。
赤星大瓶と熊本産馬刺し(890円)を所望する。
千興ファーム の赤身は半解凍のルイベ状態で来た。
これがとてもウマい。

通路を挟んで向かいにあるトイレに行く際
オニイさんに
「トイレなんだけど、払っとこうか?」
「いや。けっこうです」
「戻って来ないと困っちゃうでしょ? 」
「信用してますから ダイジョブです」

J.C.は大体どこでも信用される。
自分で言うのもなんだけど
信頼感指数はかなり高いものがありますからネ。

「ビーフン東(あずま)」
 東京都港区新橋2-20-15 新橋駅前ビル2F
 03-3571-6078

「立呑処 へそ新橋駅前店」
 東京都港区新橋2-20-15 新橋駅前ビルB1
 03-3289-9380

2023年10月17日火曜日

第3385話 SPF豚もいいけれど

正午の時報を聞いて出発。
家の前の不忍通りを北に向かった。
本郷通りとの交差点を右折し、
JR駒込駅を右に見ながら霜降橋商店街へ。
ここは北区・西ヶ原である。

スーパー「サカガミ」をのぞいたものの、
買いたいものとてなく、駅方面に戻る。
東口改札前のガードをくぐり、山手線の内側へ。
駒込のメインストリート、
アザレア(つつじ)通りを南下する。

「食堂 ときわ」の前に来て
腹が減ったなァ。
いや、それよりもノドが渇いたゾ。

ちゅうちょなく暖簾をくぐると
いきなり女将さんに
「2時に締めま~す!」ー釘を刺された。
エッ? もうそんな時間かー。
壁の時計は13時40分を指していた。

取り急ぎ、ドライの大瓶を発注。
張り巡らされた品書きを吟味し、
当店自慢のSPF豚ロースカツを単品でー。 

千葉県産の林SPF豚は 
specific pathogen free pig 。
いわゆる無菌豚で菌がないため、
レア状態でも提供できるのだ。

ビールに小さな冷や奴がサービスされた。
何の気なしに醤油を垂らすと
ボーッとしてたんだねェ。
醤油じゃなくてソースをかけちまったヨ。

これじゃあ、チコちゃんに叱られは
しなくとも笑われるだろうな、きっと。
それでも醤油をかけ直して食べた。

調ったロースカツにはキャベツだけが添えてある。
左端に今度は間違いなく醤油を垂らす。
とんかつはまず塩で1切れ、
続いて2切れ目は醤油がJ.C.の習わしだが
卓上に塩はなかったのだ。

ん? あまり美味しくない。
硬い肉質に肉汁と旨味が乏しく
ガシガシのコロモも不味い。
店先や店内にやたらSPF豚を推奨する貼り紙。
言わば「食堂 ときわ」の名代的存在なのに
感心しないなァ。

わりと好きな店だけど、
豚肉の素材うんぬんよりも
とんかつを揚げる調理技術に
磨きをかけて欲しいのでござるヨ。

「食堂 ときわ」
 東京都北区田端2-1-1
 03-3824-6070

2023年10月16日月曜日

第3384話 タマクエと初めての遭遇

本日の散歩は文京区・茗荷谷からスタート。
この辺りの地番は小日向(こびなた)である、
跡見学園をすり抜け、
小日向神社を眺めながら坂を下って行った。

古川橋で神田川を渡り、地蔵通りをぶ~らぶら。
赤城下町から赤城元町と坂を上り、
赤城神社の脇に出る。

ここまで来たら
スーパー「SainE」に立ち寄らぬ手はない。
鮮魚売り場が実に楽しい。
コンパクトながらも必ず珍魚に出逢えるのだ。

この日も居ました、居ました、
居らっしゃいました。
まずは北海道産・背子蟹(ズワイ蟹のメス)。
手を延ばしかけたものの、
処理が厄介なので手を引っ込める。

続いてはカラスガレイ。
こちらはアイスランド産である、
ずいぶん遠くから来たんだねェ。
スウェーデンのずっと向こうだもの。
煮つけにすると旨いが、まだ何かありそうだ。

バカデカい青森産のお化けムール貝が居た
通常の5倍はあるな。
前夜の仏産なら10倍はありそうだ。
このお化けぶりにはメッツの千賀も真っ青だろう。

さて、しんがりに控えしは
鹿児島産・タマクエと来たもんだ。
人生初めてのお目もじに血圧も上がる。
今日はこれでいくしかないな。

この珍魚はハタの仲間のタマカイと
クエとのハイブリッドである。
旨くて”タマらんからクエ!”との説もある。
ん? ないか?

身アラながらかなりの量は1300円超え。
鍋に出来そうなので即購入した。
残りはあと1パックのみ。
どこの果報者が買うのやら。

背骨なんかがズドンと入って上身は少ない。
アラ煮と鍋に分けて食した。
嬉しかったのは肝と白子だ。
予期せぬ僥倖に欣喜雀躍を余儀なくされた。

ちりポン酢でいただく鍋は菊正宗の樽酒。
甘辛い味付けのアラ煮には
センシィのキャンティ・クラシコ。
わが身のシアワセを
奥歯でグッと噛みしめたのです。

「SainE(セーヌ) 神楽坂店」
 東京都新宿区神楽坂6-11-1
  03-3268-3266

2023年10月13日金曜日

第3383話 あの頃みんな 若かった (その2)

ドーバー→パリ→シェルブール→
サザンプトン→ロンドン
その珍道中については
何度も披露しているので今日は控える。

3人が向かったのは雷門から徒歩30秒。
浅草で一番おいしい料理を出すイタリアンだ。
「Carissima」は何度も利用しているが実に久しぶり。
先日もS水と一緒だった、 
「ニュー王将」と同じくらいかな?

アサヒ熟撰生で乾杯。
通常のスーパードライでいいのに
どうしてわざわざ熟撰にするかネ。
理解に苦しむ。

この夜も料理はほとんどJ.C.まかせ。
好きなあの娘は恋まかせ。
アンティ→プリミ→セコンディの3コースは
年寄りには無理なので
2皿→1皿→2皿をシェアすることにした。

★アンティパスティ
平目&やりいかのフリット
仏産ムール貝の白ワイン蒸し
★パスタ
ガルガネッリのマッシュルーム・クリーム
★セコンディ
仔うさぎのカチャトーラ
骨付き仔羊の網焼き

フリットも好かったが
コッツェ(ムール貝)が素晴らしい。
仏産ならばモン・サン・ミッシェル辺りだろうか?
小粒にしてデリケート、通常の半分ほどのサイズだ。

ガルガネッリはJ.C.が最も好むショートパスタ。
当店のスペシャリテといってよい。
説明が難しいんだが
3cm四方の折り紙を想像してほしい。

1角から対角に向かい、
指先でクルッと巻き上げた一種のマカロニだ。
中心は幾重にも、端は一重か二重になることにより、
歯応えの差が生じ、食感の妙を味わえるのだ。

カチャトーラはトマト主体の野菜と
仔うさぎの蒸し煮。
イタリアではチキンかうさぎが使われるが
断然うさぎが好きだ。
J.C.は卯年の生まれだからネ。

仔羊の焼き加減も絶にして妙。
ピエモンテの赤ワイン、
ドルチェット・ダルバ トレヴィグネ ’20 との
相性もバッチリである。
2人はカッフェ、J.C.はエスプレッソで締めて
楽しい宴はいったんお開き。

「神谷バー」に向かうも何故か今宵は早仕舞い。
S水のリクエストに応え、
「BIG ECHO」に突入したのでした。

「Carissima(カリッシマ)」
 東京都台東区浅草1-18-4
 03-5826-0678

2023年10月12日木曜日

第3382話 あの頃みんな 若かった (その1)

スウェーデンから帰国して
浅草に滞在中のS水クンからメール来信。
離日が近づいたのでもう一度、
酒を酌み交わそうとの提案だ。

当然のように快諾した。
すると、ついてはゲストを一人、
呼んでほしいという。
それがJ.C.の元カノと来たもんだ。

あれは1974年夏。
日本から訪ねて来た、とM子とパリで落ち合い、
ポルトガル→スペイン→フランス→
ルクセンブルク→ドイツ→デンマーク→
ノルウェーをめぐり、
S水のいるストックホルムに落ち着いた。

ベッドルームが4つもある大きなマンションに
1週間ほど居候したのだが
そこの住人の顔ぶれがすごかった。

S水のほかにヴィッキーなる、
フィンランド娘とその彼氏の日本人青年。
ヴィッキーとはロンドンで何度か会っているので
旧知の仲だが、それに加えて
同じくフィニッシュ・ガールがあと2人。
それぞれに3歳くらいの男の子がいた。

父親はどちらも日本人で彼女たちの妊娠を知るや、
日本に逃げ帰ったのだという。
まったくヒドい話があったもので
男の、そして日本人の風上にも置けないヤツラだ。

しかし、スウェーデンは面倒見のよい国で
子どもが18歳になったとき、
スウェーデン・日本・フィンランド、
子どもに国籍を択ぶ権利を与える。
もっとも日本はノー・チャンスだろうがネ。

生活費の援助も半端じゃなく、
なんでんかんでん補助されるというので
われわれ2人の買い物のレシーも
彼女らにくれてやったりした。

J.C.&とM子は3カ月滞在してロンドンに戻った。
S水にしてみりゃ、あの頃が懐かしいんだねェ。
ぜひ逢いたいと言うんで
望みをかなえてやった次第なり。
2人が相まみえるのは45年ぶりのこと。
あの頃はみんな若かった。

さて、3人は雷門の下で待ち合わせた。
想い出すなァ、1973年11月1日。
その年、前後して日本を離れたS水とJ.C.は
パリの凱旋門の下で再会を約していた。
それが前夜、ドーバー駅のプラットフォームで
偶然にもバッタリ遭遇しちまったのだった。

=つづく=

2023年10月11日水曜日

第3381話 暗闇を走るバス

どこかで飲もうと出かけた夕まぐれ。
家のそばからバスに乗り、
上野松坂屋前までやって来ると
近くに江戸川区・平井行きのバスが停まっていた。
よしっ、平井にしよう。

浅草・押上を経て中居堀通りを真っ直ぐに
強烈なヘアピンカーブを曲がり、
ゆりのき橋通りに入った。
都内を走るバスの路線で
これほどの急カーブはほかにあるまい。
ほとんどUターンに等しい。

ゆりのき橋の手前から
旧中川沿いをバスは走り続ける。
日はとっぷりと暮れ、辺りは真っ暗闇である。
ほうら、鶴田浩二が歌い始めたぜ。

♪ 何から何まで 真っ暗闇よ
  すじの通らぬ ことばかり ♪

すじは通らなくとも
バスは通って平井駅前着。
揺れる車内で決めた「松ちゃん」に直行する。
最後に来たのはおよそ10年前。
学生時代の仲間と10人ほどで宴会を催した。

カウンンターの左端に促され、ドライの大瓶をー、
お通しは鶏肉と大根を煮たヤツ。
これが意外に秀にして逸。
唐揚げになりそうな塊一つに大根が数片。
お替わりしたいくらいだ。

多種多彩な品書きにイカメンチを見つけて発注。
思い出すなァ、今は無き麻布十番の洋食屋、
「ミスター・ガーリック」のオヤジさんをー。
「こいつは仕込みが大変なんだよぉ。
 特に冬場は水が冷たくてさぁ」
ボヤきながら揚げるイカメンチは絶の品であった。

十番ほどじゃなくともまずまずの仕上がりだ。
大瓶をもう1本に油が良かったので
穴子天を追注すると、これも水準に達していた。

「松ちゃん」に来ておいて
主役の焼きとんを頼まぬわけにはいかない。
遅ればせながらカシラを塩、レバをタレで1本づつ。
ともに大粒がゴロゴロと旨い。

カレーの頭(ルーのみ)がある。
コレを出す店のカレーは当たりが多い。
一口スプーンですくうと味はいいんだがヤケに濃い。
かといって、ここでライスをもらったら
何をしてるのか判らなくなる。
観念してビールで流し込みましたとサ。

「松ちゃん」
 東京都江戸川区平井3-26-4
 03-3638-1682

2023年10月10日火曜日

第3380話 噂聞きつけ高島平

東京都の北の果て板橋区。
そのまたはずれ高島平。
餃子・ラーメン・炒飯が
旨い店があると聞き及んで遠征。

いくらなんでも3つは食えないから
何とか2つクリアしてやろう。
降り立ったのは都営三田線、終点の西高島平から
2つ手前の高島平駅である。

改札を出たときに
スマホを忘れて来たことに気づいた。
店名の「天宝」は覚えているが住所はうろ覚え。
確か、高島平9丁目だったような・・・。

駅周辺は8丁目で
方角的に北東だったような・・・。
ところが、この8丁目がだだっ広い。
どこまで行っても8丁目から抜け出せないんだ。

とうとう新河岸川に架かる徳丸橋に来ちゃった。
すると向こうから若いお巡りさんが渡って来る。
渡りに舟ならぬ、渡りにお巡りとばかり呼び止めた。
親切な彼は自分のスマホで検索してくれる。
「8丁目は何でこんなに広いんですかネ?」
「そうですよネ、われわれも迷いますから」
指し示してくれた方向に向かい、歩き始めた。

そうして到着した「天宝」。
3日前に大島で餃子を食べたばかりなのに
餃子とラーメンのBセットをお願いする。
炒飯はあきらめた。

5カンの餃子は3日前と似たタイプ。
けれども焦げ目がつき過ぎて歯を跳ね返す。
う~ん、及ばないなァ。

そこを補うようにラーメンがなかなか。
中太ちぢれ麺に穏やかな醤油スープ。
細麺派の気にも染まった。

もも肉チャーシュー・シナチク・ナルトに
わかめだけが残念ながら
それでもシャッキリとした食感が好い。
わざわざ北のはずれまで
出張るほどではないにせよ、
後悔の念が湧くこともなかった。

隣りの席に子連れ夫婦。
料理の注文を終えたあとで
就学前と思しき男の子のためにラムネを発注、
へえ~、普通はコカコーラかバヤリースだろ?
板橋のガキンチョはラムネと来たもんだ。
小童(こわっぱ)、やるじゃないかい。

「天宝」
 東京都板橋区高島平9-20-13
  03-3937-8744

2023年10月9日月曜日

第3379話 大島に 東京一の 餃子あり

最近は若い頃ほど餃子を食べなくなった。
嫌いになったわけじゃないが、なぜかこうなった。
餃子ライスなんて、もう何年も口にしていない。
餃子ビールにすっかりとって替わられた感がある。

そうだ、今日は餃子でビールを飲もう。
そう思って向かったのは江東区・大島(おおじま)。
都内で一番好きな餃子が「亀戸餃子 大島店」にある。
二番目は北区・飛鳥山の「豫園飯店」だ。

亀戸の本店以外に錦糸町・両国・大島と
支店が3軒ある「亀戸餃子」だが
なぜか大島店が断のトツ。
すべて同じ製造所で作られるのに
その違いは焼き方によって生ずる。

ドライの大瓶と餃子を1枚(5カン)通した。
うん、やはり旨いなァ。
片面カッチリ、ヒダのある反対側はシットリ。
小ぶりなのも気に染まる。

今日は野菜の補給も兼ねていた、
レバニラ炒めは食べているが
初めての野菜炒めをお願い。

レバニラと肉ニラ炒めはともに750円だが
レバや肉の表記がない、
単なる野菜炒めは700円。
本当に野菜だけなのかな?
それならそれでもいいや、
野菜不足の解消が目的だからネ、

すると・・・豚の小間切れがタップリ。
野菜の陣容は
キャベツ・白菜・にんじん・もやし・
玉ねぎに加えてキクラゲ。

そこにどういうわけか竹の子が1片。
これは何かの間違いだろう。
調理の弾みで紛れ込んだに相違ない。

ずいぶんボリュームがあった。
ライスなしでも満腹だ。
丸二日分の野菜を摂取した気分である。

ビールは1本にとどめておいて
さて、どうしよう。
大島の駅に立ち戻って考えた。
本八幡行きでも笹塚行きでも
先に来た方に乗ってやろう。

結果、本八幡行きの乗客にー。
終点まで行き、大型スーパー、
「カスミ フードスクエア」で
晩酌のつまみを調達し、帰るとしましょう。

「亀戸餃子 大島店」
 東京都江東区大島4-8-9
 03-5628-0871

2023年10月6日金曜日

第3378話 カーボベルデの豆責め

住まいに至近の「サクラカフェ」。
先日、カーボベルデの国民食、
マサ・デ・ガリーニャを紹介した。

以来、ボルシチやカオマンガイのお世話になったが
もう1品、カーボベルデの料理があるんだ。
今回はそれを試してみた。
名前はカーボベルデ・サラダと味も素っ気もない。

スタッフに内容を訊ねたら
「豆が主体です」と返事まで素っ気ないんでやんの。
ここは乗りかかった舟。
豆はあまり好きではないが
子どもの頃よりはいくぶん食べるようになった。

豆好きとなれば、思い浮かぶのは2人。
最初に刑事コロンボ。
彼の大好物チリコンカンは
代表的なメキシコ及びテクス・メクス料理だ。

そしてわが亡父。
軍隊に行ってるせいか、
豆や芋の炊き込みめしが好きだった。
母親は好まず、子どもたちに至っては大嫌い。
そりゃそうだヨ、
3人とも兵隊に行ったことがないからネ。

カールスバーグの小瓶とともに味わう。
白豆がツナ缶と和えてあり、
ディル&アーリーレッドが少々。
豆の量がとてつもなく多く、
食っても食っても減りゃしない。

人生でこんなに豆を食うのは初めてだ。
すさまじい豆責めである。
傍から見りゃあ、豆鉄砲を食らった、
鳩みたいな顔をしていたに違いない。

父親の十八番「麦と兵隊」、
その最終4番が聞こえてきた。
”麦”を”豆”に置き換えてお聴かせしましょう。

♪ 往けど進めど また
  波の高さよ 夜の寒さ
  声を殺して 黙々と
  影を落として 粛々と
  兵は徐州へ 前線へ  ♪
  (作詞:藤田まさと)

天皇陛下万歳!
ってか?

「サクラカフェ」
 東京都文京区千駄木3-43-15
 03-5685-1200

2023年10月5日木曜日

第3377話 醤油・味噌・塩 喜多方の味

喜多方ラーメンは都内各地に展開する、
「坂内」しか知らなかった。
神保町と新橋にも系列店を持つ「喜多方食堂」が
元浅草にあると知ったのは5年ほど前。
以来、何度か利用している。

食堂を名乗っていても
定食類のないラーメン専門店だが
朝の7時に開店する。
喜多方の人々は朝からラーメンを
ツルツルやるのだろうかー。

蔵出し醤油と蔵出し味噌が
不動の二枚看板ながら
此度訪れると以前は無かった、
”にんにく香る塩”が新顔として登場。
さっそく試した。

初めてランチタイム前の10時半に入店。
いやはや、驚きましたネ。
こんな時間に席が八割方埋まっている。
日本そばならまだしも下町っ子は
朝から中華そばをツルツルやっていた。

こりゃ、喜多方っ子をとやかく言えんな。
かく言うJ.C.もこんな時間から
ビールをグイグイ飲ってるんじゃ、
土佐っ子をとやかく言えんがネ。

さて、その塩ラーメン。
厚切りチャーシュー2枚にシナチクと
貝割れの具材は、醤油・味噌と一緒。
中太の平打ち麺も変わることがない。

不満なのはこれといった特徴に乏しく、
にんにくのパンチ力も
ミニマム級か、せいぜいフライ級。
井上尚弥と一戦交えたら命の保証はできない。

3つの味を食べ比べた評価は以下の通り。 
醤油ーかなり旨い 
味噌ーとても旨い 
塩ーフツーに旨い  
よってマイベストは味噌である。

個人的には一時、一世を風靡した、
札幌味噌ラーメンより好きだ。
若い頃には好んで食べたが歳とともに
あの挽き肉&もやしがドッサリの
アタマがキツくなってきた。

その点「喜多方食堂」の蔵出し味噌は好い。
半ライスを付けても食べ切れちゃうんだ。
この歳になってもネ。

「喜多方食堂 浅草本店」
 東京都台東区元浅草4-17-15
 050-1524-0904

2023年10月4日水曜日

第3376話 武蔵新田は かつての花街

旧東急目蒲線は現在、
目黒線と多摩川線に分かれている。
よって目黒から蒲田に直通する電車は走っていない。
多摩川線7駅中、J.C.が一番好きなのは武蔵新田。
此処はかつて花街、いや、色街、
いやいや、赤線地帯が当たっているだろう。

ルーツは深川の洲崎。
戦況が悪化の一途をたどる昭和19年に
業者の一部が羽田の穴守へ移転したものの、
飛行場拡張のため、さらに移って来たのが
武蔵新田カフェー街というわけだ。
終戦直前だったのでポツダム赤線とも呼ばれた。

今では往時を偲ぶよすがとてないが
雰囲気というか、佇まいというか、
好きな町である。

最後に来たのは4年前の夏。
大衆酒場「白鶴」で飲んだ。
近いうちに新しいのみとも、
”白鶴”を誘って来よう。

てなこって、今宵も「白鶴 駅前店」。
あれっ、まだ開いてないゾ。
わりかし早い開店のはずだが、時刻はまだ16時。
店頭に開店時間が明記されておらず、
店先でボーッと待ってたひにゃ、
チコちゃんに叱られる。

念のため、近くの本店に廻ると暖簾が出ている。
よし、こっちにするかー。
しかし入店したら、まだだと言う。
「暖簾が出てるヨ」
「すいません、4時半からなんです」
「駅前店も一緒?」
「そうなんです」

界隈をブラブラして時間をつぶし、駅前店へ。
ドライの中瓶と皿うどんを通した。
時間の経過とともに食感の変わる、
皿うどんを肴に飲むのは好きだ。
具材はというと、豚小間、小エビ、
かまぼこ、キャベツ、にんじん、玉ねぎ。
過不足ない仕上がりに満足、満足。

半分食べ進み、ホッピーの白に切り替え、
焼き鳥の正肉を2本、塩で追加した。
テーブル席に比べ、
あまり居心地がいいとはいえないカウンターだが
なぜか落ち着くのが、この店のいいところだ。

中を1杯お替わりし、お勘定は2千円と少々。
線路の向こうの角打ち酒屋が
チラリ頭をよぎったけれど、
今日はこのまま帰ろうか?
取り合えず蒲田へ向かいました。

「白鶴 駅前店」
 東京都大田区矢口1-17-1
 03-3758-2233

2023年10月3日火曜日

第3375話 城南四区を歩く

この日降り立ったのは東急池上線・荏原中延駅。
西島三重子の歌声が耳にこだましているが
もう何度も紹介したことだし、
さすがに浪花の小姑も勘弁しちゃくれめェ。

ここは品川区。
アーケードの商店街を抜け、
大井町線に沿って中延から荏原町へと歩む。
コンパクトな荏原町は好きなんだ。

続いてやって来たのは
池上線と大井町線が交わる旗の台。
給油のために食堂「まるやま」へ。

ドライの中瓶とポテトサラダをお願いする。
ポテサラはあまり関心しなかった。
家の近くの精肉店のほうがずっといい。

カッコがつかないからナスみそ炒めを追加。
これもパッとしなかった。
ナスとピーマンの鉄火味噌は岡澤家の常備菜。
ここは迷うことなく母親に軍配である。

大田区・北千束を20年ぶりに歩く。
相変わらず何もない町だが近代的になったぶん、
情緒が薄れ、味気ないことこの上なし。

さらに大岡山へと進み、
駅前の商店街をぶらぶら。
さすがに疲れた。

そろそろ早めの夕飲みのため、
どこぞへ移動しよう。
大田区・武蔵新田辺りがいいな。
大岡山から電車で向かった。

ところがギッチョン。
目黒線のつもりが乗っていたのは大井町線。
電車は自由が丘に到着。
これならこれでいいや。
沿線の気に入り駅、尾山台で下車した。

駅前から続くゆるやかな坂道は大好き。
おおっと、なじみの牛めし屋があるじゃないかー。
中瓶1本を給油してこの街に来ると必ず立ち寄る、
フレンチ・カフェ兼惣菜屋、
「オー・ボン・ビュータン」に来たら
あいにく定休日と来たもんだ。

しょうがないから初心に戻り、
武蔵新田を目指した。
電車に揺られながら今日を振り返る。
思えば、品川・大田・目黒・世田谷と
城南四区を歩いて来たんだネ。
このクソ暑い中をサ。

2023年10月2日月曜日

第3374話 小さなお店に いきました (その2)

高校の同級生のオッサン3人が
いや、ジイさん3人が出揃った、
観音裏の「ニュー王将」。
隠れ家中の隠れ家が此処である。

料理の注文はJ.C.まかせ、
好きなあの娘は恋まかせ。
立ち上がって店内に一つだけある、
メニューボードにスタスタスタ。

おや? 名代のメンチカツが見当たらんゾ。
調理カウンターを振り返り、
「あれえ、メンチカツがないよぉ!」
「メンチありますよぉ!」ーヤッちゃん応える。
ハハ~ン、載せると注文が集中するので
わざと載せない店の策略だな、これはー。

最初に平目と本まぐろの刺身を通すと
「平目は紅葉おろしとポン酢でいかがです?」
「ですよねェ」

平目は薄造りではなく、わりと肉厚。
旨みたっぷりにしてエンガワも付いている。
まぐろはまぐろで
赤身・中とろ・大とろの三段構え。
正確を期すれば大とろではなく、カマとろだ。

遠来のS水はマイッた!と
云わんばかりに舌鼓を打っている。
そりゃあそうだヨ、
スウェーデンじゃ、こんなの食えめェ。

近来のN田もN田で相好を大きく崩している。
そりゃあそうだヨ、
内房にまぐろは揚がるめェ。

二人は角のハイボールに切り替え、
こちらはさらに中ジョッキを重ねる。
ここでハゼのフライとメンチカツ。
何を食っても旨い店だが
とりわけメンチは東京一のお墨付きを与えたい。

当方も角ハイに移行して料理は
カニサラダ、赤ウインナーフライ、
やりいかゲソバター、ポークチャップと続ける。

3人でハイボールを何杯空けたか数えきれない。
ウスターソースで味付けしたソースチャーハンを
締めとし、これにてお開き。

ママのタエちゃんに
「今度は11月、NY時代の仲間と7人で来るヨ」
「必ずお電話してネ」

♪ 一発お電話 くださるならば
  お席を空けて あなたを待つわ ♪

てなもんや三度笠。

「ニュー王将」
 東京都台東区浅草5-21-7
 03-3875-1066