2023年9月29日金曜日

第3373話 小さなお店に いきました (その1)

♪ ご無沙汰しました 三年ぶりね
  ペンをもつ手が 
  震えています 震えています
  このたび横浜関内に
  小さなお店を もちました
  昔のよしみに おすがりします
  力になって いただきたいの ♪
   (作詞:星野哲郎)
  
黒沢明とロス・プリモスの
「小さなお店をもちました」は
1978年秋のリリース。
前年の「夜の横浜泣いてる私」、
翌年の「ぬれて横浜」と合わせ、
横浜三部作とJ.C.は勝手に呼んでいる。

この曲を披露したのにはワケがある。
実はこのたび、本当に久しぶりに
訪れた店があった。
昔は毎月のように顔を出していたのにー。

♪ ご無沙汰しました 七年ぶりね
  箸をもつ手が
  震えています 震えています
  このたび浅草管内の
  小さなお店に いきました
  昔の料理が 残っています
  力をこめて いただきたいの ♪
   (作詞:J.C.オカザワ)

最後におジャマしてから
7年の月日が流れていた。
観音裏の「ニュー王将」である。

ストックホルム在住の旧友、
S水クンが急遽、帰国して来て
ひと月近くも浅草に滞在するという。

ついては安くて旨い店に
連れてってくれと言うんで
同じくクラスメートのN田クンを誘い、訪れた。

ドアを引くと
ママのタエちゃんの笑顔が待っていてくれた。
旧交を温めるが如くに手を握る。
マスターのヤッちゃんともハンド・シェイキング。
二人は元気で変わらぬが
7年の歳が変えたのは彼のヒゲ。
真っ白である。

特等席に収まって
黒ラベルのジョッキをガツンと合わせた。

=つづく=

2023年9月28日木曜日

第3372話 青井のそば屋で合鴨三昧

12時ちょい前「松月」に入店すると
20席がほぼ満席、3人組と相席になる。
11時半の開店で12時にこれだもんな。
人気店であることが伝わってくる。

「お時間かかりますがよろしいですか?」
「ああ、いいですヨ」
ドライの大瓶を通すと
ビールとお通しはすぐに出て来た。
なめたけと細切りごぼうの和えものだ。
あんまりうれしくないな。

注文はすでに決めてある鴨つけそば。
お願いして壁に目をやると
貼り紙に目ン玉を射抜かれた:

”只今 合鴨ハツ 入荷中”

当店は合鴨もそのハツもすべて国産を使用。
これを見逃してはJ.C.オカザワの沽券にかかわる。
おそらく合鴨の脂で焼いてくるのだろう。
あひ焼きならぬ、あひハツ焼きに違いない、
売り切れて札が裏返されるのを怖れ、
間髪入れずに発注した。

チキンのそれより大きめのが7つも来た。
脇には白い部分だけの焼きねぎと
サニーレタスにスライスレモン。
そしておそらく自家製のマヨネーズ。

いや、美味いのなんのっ。
今度はあひハツに舌を撃ち抜かれた。
もともと焼き鳥でもハツは背肝と並ぶ好物。
そのくせ焼きとんのハツは好んで食べない。

ほとんどの客は帰ってゆき、
ようやく鴨つけそばが運ばれた。
注文から35分が経過している。
そばは3つのチョボに分かれていた。
池之端の行きつけの2倍はゆうにある。

別皿で来た3枚のロースの薄紅色が美しい、
よく見かける中国産とはシットリ感がまったく違う。
これには柚子胡椒が添えられた。

つゆには鴨つくね3個と
もも肉の切れ端に南蛮ねぎ。
「松月」は”3”という数字が好きなようだ。
店主が長嶋ファンなのかな?
薬味はさらしねぎのみ。

そば湯を飲み干してお勘定は2千5百円ほど。
女将さんに定休日をうかがうと
月・火・水との答えが返ってきた。
「もうかってるんですネ」
「いいえ、仕込みがけっこう大変で」
「真っ当なモノが出て来ますもんネ」
「ありがとうございます」

満腹につき、五反野の酒場をあきらめ、
今日は青ざめずに青井駅に到着。
おとなしく帰宅の途に着きましたとサ。

「松月」
 東京都足立区弘道2-24-20
 03-3889-6641

2023年9月27日水曜日

第3371話 東京拘置所をすり抜けて

あれから四日が経ちました。
一度フラれた足立区・青井のそば屋「松月」に
あまり期待もせず、電話を入れると
「今日は営業する日です」ー
受話器の向こうから
オバちゃんの元気な声が聴こえた。
いや、受話器じゃなくて
クソ面白くもないスマホだけどネ。

「松月」はどの駅からも遠いんだ。
近い方から並べると
つくばエクスプレス・青井、
メトロ千代田線・綾瀬、
東武伊勢崎線・五反野、そして小菅。

前回は綾瀬から行ってソデにされ、
青井へ歩いてエクスプレスで北千住に移動し、
久々のそば屋でもりをたぐり、
ブレイクルームで飲んだのだった。
今日は一番遠い小菅から歩くつもり。

小菅とくれば東京拘置所、ほかに何もない。
駅を降りてちょいとゆくと堀割があり、
ぐるり拘置所の裏手まで続く。
水は緑色に淀んで汚い。
以前は生き物が多く、
シマヘビが泳いでいたのにはビックリした。

親水公園があり、沿って歩くと立派な錦鯉が数尾。
山梨の桃とか東京湾の牡蠣とか
金になるものは何にでも手を出す、
大陸系のならず者に見つからぬよう祈るあばかりだ。
もっとも此処は拘置所の真裏。
連中も塀の向こうに送られたくなかろうてー。

 真上の太陽の位置から
ちょっと西にそれてるなと思っていたら案の定。
五反野駅に往き着いてしまった。
五反野緑道のパネルがこれみよがしだ。
入口に表示するなら
出口(拘置所裏)にもお願いしますヨ、ホントに、

駅そばに勝手知ったる昼飲み酒場「幸楽」。
北千住に「幸楽」あらば、五反野にもある。
2軒は関係ないけどネ。
帰りに立ち寄って飲み直そう。
となると、そば屋であれこれ頼めない。

ハンカチは持たない主義につき、
ティッシュで汗を拭きながら
炎天下をなおもテクテクのテク。
小菅から五反野まで20分。
五反野から「松月」までさらに20分。
ようやく到着したのでした。

2023年9月26日火曜日

第3370話 やはり足立は北千住

ほとんど人影のない青井の駅で青ざめたが
プラットフォームには数人の乗客。
上り電車に乗って一駅、北千住に移動した。
そば屋にフラれたのでそば屋にするかー。

宿場町通り商店街から続く、その南側、
本町商店街の「柏家」に入店。
10年以上前に一度利用した。
この道筋は旧日光街道である。

当店の名物は山の幸を盛り込む山賊そばと
海の幸満載の海賊そばだが
際物は好まぬゆえ、今回もスルーする。

ドライの大瓶で渇いたノドを潤しつつ、
品書きに目を通したが結局はもりを1枚。
鴨せいろもあったが
どうせ近々青井に舞い戻るつもりだ。

色白のそばは中太、量はタップリ。
地元の行きつけの1.5人前はあろうかー。
そば・つゆともに劣るものの、
水準には達しており、不満はない。
あちらが好すぎるのだ。

そば屋が少ない街の、
しかも目抜き通りとあって
買い物客も多く、
客足は一向に衰えを見せない。
次から次へと押し寄せる。

客層はオジさんとオバちゃんに若いリーマン。
街に花咲く乙女たちの姿は見えない、
よって店内に華やかさが芽ばえてこない。
そば湯をいただき、オモテへ。

マルイの食遊館で晩酌の肴を調達して帰ろうかー。
とも思ったが、この街に来ると、
どうしてもブレイクルームに立ち寄ってしまう。
ベトナム娘の「イラッサイマセ~!」に迎えられ、
ボール(焼酎ハイボール)を発注した。

「幸楽」の楽しみの一つは
ポン酢が添えられる白身の刺身。
種類は少なくても
必ず意に染まるものが用意されている。
先月など珍しいヒゲソリダイがあった。

今日はマゴチである。
コチは好きだなァ。
マゴチにせよ、メゴチにせよ、
夏のコチは実に好い、と一人ゴチる。

やはり足立区で頼れるのは北千住。
食遊館に立ち寄り、生モノはもういいので
生麩の田楽味噌を購入する。
おっと、これも生モノの端くれでした。

「柏家」
 東京都足立区千住2-32
 03-3881-2807

2023年9月25日月曜日

第3369話 青井の駅で青ざめた

東京の北の玄関、北千住はこのところ大人気で
老若男女がこぞって棲みたがる。
そのすぐ北側に青井という町があり、
つくばエクスプレスで一つ目。
そこに鴨つけそばの美味しい店があると
聞き及んで出掛けた。

メトロ千代田線の本線の終点、綾瀬から向かった。
暑いなか30分近くも歩いたのに「松月」は休業中。
うっかり本日の営業の有無をチェックし忘れた。
しかも滑り止めの候補がない。

周りを見回したり、
近辺を物色したりしたが、まるで何もない。
第一、人が歩いていないんだ。
団地みたいなマンションばかりが目につく。

さて、困ったゾ。
此処から綾瀬に戻るのは愚の骨頂。
何をやっているのか、知れたものではない。
東武伊勢崎線の五反野ならば
昼から飲み食いできる店が何軒もある。

訪れたことはないが
エクスプレスの青井駅なら何とかなるだろう。
殺風景だけど道幅だけはそれなりにある、
道路を北上して行った。

歩くことおよそ10分と少し。
駅らしき建造物に到達した。
ロータリーに地下の改札へと続く階段はある。
コミュニティ・バスの停留所と
タクシー乗り場もあった。

だけどネ、店舗が1軒として無いのだ。
世の中にこんな駅があるのかえ?
痩せても枯れても東京23区の足立区だぜ。
店舗は商売だから
それなりの売上ナシに成り立たない。

夜も更ければ、タクシーに乗る客はいても
モノを買ったり、食事をする客は皆無なのだろう。
コンビニも無ければ、歯医者も無い。

♪ 喫茶も無ェ 集いも無ェ 
  歩いているなァ 俺一人
  婆さんと 爺さんと 
  数珠を握って 空拝む ♪

紙芝居なんざ、来るわけも無ェ。
此処は23区内で
ザ・モースト・ショップレス・ステーション。
青井の駅で青ざめたJ.C.なのでした。

2023年9月22日金曜日

第3368話 ベトナムのアンちゃんが焼く 炭火焼き鳥

この日は巣鴨のとげぬき地蔵通りで
昼過ぎから飲むつもり。
ところが通りの入口で気が変わった。
真性寺の手前を左折。
寺の塀沿いに隣り町、大塚へ進路変更。

普段は南大塚で飲むことが多く、北大塚はまれ。
東京一の酒亭「江戸一」と
大塚一の焼きとん屋「富久晴]の存在が
そうさせえるのだ。

昼飲み可能な店は散見されたが
どうでもいいようなところばかり。
界隈を二周した、
すると一周目には閉じていたのに
”営業中”の札を掲げた焼き鳥屋あり。
渡りに舟とばかり入店。

東南アジアあたりの歌謡曲が
かなりの音量で流れる店内。
カウンターに着いて黒ラベルの中瓶を通す。
一緒に来たお通しはゆでもやし。

レシートには330+33円とあった。
ヒドいもんを出すなァ。
原価率1%に満たないんじゃないの。
慣れない北大塚で外しちまったかー。

焼き台には炭火が熾っていた。
気を取り直して焼き鳥の注文。
おう、ツナギがあるじゃないかー。
なぜかこれだけ”特撰”の二文字がかぶさった、
レバーと1本づつ、タレでお願い。
うん、どちらもなかなかだ。
ゆでもやしの件は忘れよう。

「この音楽はどこの国の言葉なの?」
「ベトナムです」
「アナタもベトナム人?」
「そです」

想い出すなァ、若き日のロンドンをー。
ハンバーガー・レストランで昼夜働いたが
往時のスタッフは日本人が一番多かった。
あとはスペイン・イタリア・ポルトガルなどなど。

カナリア諸島出身のミゲルなんぞは
ビリー・バンバンの「さよならをするために」が
大のお気に入り。
「ビューティフル・ソング!」を連発してたっけ。

そんなこんなを懐かしみながら
ツクネを1本追加しました。

「かいちゃん」
 東京都豊島区北大塚2-13-5
 電話ナシ

2023年9月21日木曜日

第3367話 上野の「古城」は サザンのイメージ(その2)

間口の狭い、細い階段を地下に降りてゆく。
すると、何でこんなところにこんなに広い空間がっ!
これには少なからず驚かされた。
シャンデリアにステンドグラスがゴージャス。
「古城」というと昭和歌謡のファンなら
三橋美智也のその名も「古城」を思い浮かべるハズ。

♪   松風騒ぐ 丘の上
  古城よ独り 何偲ぶ
  栄華の夢を  胸に追い
  あゝ 仰げば佗し 天守閣 ♪
   (作詞:高橋掬太郎)

ところが、そうじゃないんです。
当店のイメージはサザンの「HOTEL PACIFIC」。

♪   森に眠る 古城のように
  夢ははるか 蜃気楼
  さらば青春の ステージよ
  胸がJin-Jinと疼く
  だのに太陽は もう帰らない To me
  何故 砂漠のように
  心が渇くでしょうか
  エボシ岩を 見つめながら
  夜霧にむせぶシャトー   ♪
   (作詞:桑田佳祐)

そんな雰囲気の中、ボックスに腰を沈めて
モーニングのBセットをお願いした。
内容は6枚切りバタートースト1枚、
ハードボイルド・エッグ、
トマト・きゅうり・キャベツのサラダ、
ホットコーヒー。

ハムエッグやサンドイッチのセットもあったが
昭和のモーニングにふさわしいのはゆで玉子だ。

運んでくれたウエイトレスに
「お店はいつ頃からあるの?」
「1963年みたいですが
 翌年の東京オリンピックの説もあって
 誰も正確には判らないみたいです」
「ふ~ん、そうなんだ」

彼女カウンターを振り返って
「あの眼鏡の男性のお父さんが始めたんです」
「それじゃ、彼は二代目?」
「そうです、そうです」
「でもって、アナタが奥さん?」
「ちがいます、ちがいます。
 単なるアルバイトです」
「そうなの? 可愛いネ」
「あっ、ありがとうございます」

ずいぶん和めたモーニングでした。
やっぱ、サザンのサテンのコーヒーは旨いや。

「古城」
 東京都台東区東上野3-39-10
 03-3832-5675

2023年9月20日水曜日

第3366話 上野の「古城」はサザンのイメージ (その1)

この日は読者の方からいただいたメールを
貯めてしまったので返信に追われた。
ミルクティーを飲みながらラジオを聴きつつ、  
作業は順調にはかどる。
岸田智史の「きみの朝」が流れて来た。

♪ 生まれようとする魂と
  老いぼれてゆく魂と
  あゝ人間のはしくれに
  生まれてきたというのに

  モーニング モーニング
  きみの朝だよ
  モーニング モーニング
  きみの朝だよ   ♪

   (作詞:岡本おさみ)

1979年リリースのこの曲を
初めて聴いたのはパチンコ屋だった。
当時は千葉県・松戸から新京成で一つ目の
上本郷に棲んでおり、仕事が休みの日は
ちょくちょく駅前で球を弾いていた。
サビの部分のメロディーラインが大好きだ。

返信をすべてクリアして朝めしにしようかー。
そうだ!
モーニング モーニング
ぼくの朝だよ
モーニングいったろうじゃないかー。

喫茶店のモーニングなんてもう何年も食べていない。
行くとなったらちゃんとした店がいい。
それも昭和レトロが望ましい。
上野に出掛けよう。

上野にはJ.C.が勝手に定めた三大喫茶があるんだ。
エッ? 知りたいの?
しょうがない人たちだな、甘えてばかりいてー。
くだらねェこと言ってないで
早くぬかせ! ってか?
ハイ、ハイ、判りやしたヨ。

「丘」、「王城」、そして「古城」ざんす。
「丘」と「王城」はアメ横近くだが
「古城」だけは東上野、
上野警察のはす向かいと来たもんだ。
3軒ともゴージャスな内装が特徴で
昔はこういう喫茶がたくさんあった。

コロ助来襲以来、
コーヒーを多少は飲むようになったが
以前は飲む習慣がまったくなかったからネ。

=つづく=

2023年9月19日火曜日

第3365話 新橋で馬刺しと芋煮と梵天丸 (その2)

中野新橋の「こあら」。
生の馬刺しが運ばれた。
ロースとももの盛合わせ。
そのハーフ・ポーションである。

色鮮やかな赤身に
箸を持つ手が震えています、震えています。
脇に添えられたおろし生姜と
にんにくスライスが出色。
殊ににんにくは素晴らしく青森産と思われた。

いや、たまらなく”馬”いねェ。
本当に生は冷凍物とは別モノだった。
会津の馬刺しは美味なれど、
山形もまったく負けていない。
目の前の店長に訊いたらば
にんにくも山形産で真室川のほうで獲れる由。

カールスバーグは早くも3杯目。
山形といえば芋煮だ、
「こあら」の芋煮はうれしい三段構え。
お椀・小鉢・鍋が揃うから
単身もグループも楽しめる。

お椀をもらい、米沢の純米酒、
冽の冷たぃのと合わせていただく。
J.C.は半世紀も前から
米沢という土地に深くかかわってきた。
何だか米沢に帰った気分がしたものだ。

品書きに梵天丸の浅漬けを見つけた。
山形産の小さな丸茄子である。
夏場の胡瓜と茄子の浅いぬか漬けは大好物だが
茄子の種類は多種多彩なのに
なぜ胡瓜は種類が少ないのだろう。
そのぶん仲間の瓜がいろいろあるから
バランスは取れている。

梵天丸が6粒、小皿に乗って登場。
てっきりぶどうの巨峰かと
思ったほど見た目が似ている。
すかさず練り辛子をリクエスト。
目の前の店長が深くうなづく。
茄子には色合いも味わいも辛子がピッタリだ。

手打ちのそばも出色とのことなれど
すでにストマックはイッパイ、いっぱい。
次回の楽しみにとっておこう。
会計は樋口一葉にコインが数枚。
店長がドアを開いて見送ってくれた。

中野小町で良い店に出逢ったと
ほくそ笑みながら新橋を渡って往きました。

「こあら」 
 東京都中野区本町3-11-9
 03-5352-0825

2023年9月18日月曜日

第3364話 新橋で馬刺しと芋煮と梵天丸 (その1)

山形料理をいただきに新橋へ。
いえ、あの「鉄道唱歌」でおなじみの

♪ 汽笛一声 新橋を
  はや我汽車は 離れたり ♪

ではなくて、神田川のほとりに佇む、
コンパクトな町、中野新橋だ。
そう、小野小町ならぬ、
中野小町でありまする。

メトロ丸ノ内線を降りたら
神田川に架かる中野新橋を渡って
ちょいと坂を上がり、
右折してすぐ右手に「こあら」はあった。
駅から徒歩1~2分。

ユーカリの葉を食べる、あのコアらのことだが
別に意味はないらしい。
ただ店主が居酒屋っぽくない店名にしたかった由。
まっ、こういうのは店主の勝手だ。

カウンターに促され、ビールの銘柄を確かめる。
生はカールスバーグ、瓶はサッポロ赤星。
ときどき見かけるけどデニッシュは珍しい。
生を発注に及んだ。

クイ~ッ! ノド越しがスムースこの上ない。
カールスバーグってこんなに美味かったっけ?
キメ細やかさにかけては
いつもの銘柄の上をゆく。
即刻お替わり。
今後、出逢ったらコレを飲もう。

お通しは山形茄子のオランダ煮。
なんでオランダなのか訊きそびれたが
いわゆる茄子の煮びたしで
小海老が1尾鎮座していた。
うん、コレも美味いや。

あらためて店内を見渡す。
客も若けりゃ、スタッフもみな若い。
年配者が一人としていない。
いや、J.C.だけが孤軍奮闘、
平均年齢を上げているものの、
所詮は多勢に無勢。
自分は大洋に流される処理水に過ぎない。

品書きをくっていて目が釘付けとなったのは
山形県白鷹町産の馬刺しであった。
”生で届いた馬刺しは冷凍物とは別モノです”
そうこられちゃ、
頼まないわけにはいきまっしぇん。

=つづく=

2023年9月15日金曜日

第3363話 八戸のうまいもの屋で 初めて外す

   雨がふります 雨がふる  
   遊びにゆきたし 傘はある ♪

いや、傘はあっても
雨の中を歩くのはイヤ。  
メトロを降りたら外に出ず、
すぐ行ける店が何よりだ。

到達したのは日比谷OKUROJI
そう、たびたびお世話になっている、
八戸のアンテナショップ「8 base」だ。
ランチタイムの充実した定食群から択ぼう。

一番人気は刺身にさば塩焼きなどが組み込まれた、
浜定食だが今日は肉が食べたい気分。
田子牛と県産豚のWバラ焼き定食と
美保野ポークの生姜焼き定食で長考に沈む。
サッポロ赤星を飲りながら
迷いを振り払って生姜焼き。

調ったお盆にサラダ付きの厚切りポーク。
サラダはサニーレタスに賽の目切りの山芋。
チョコチョコした小鉢は、めかぶもやし、
南蛮味噌をあしらった小冷や奴、
きゅうり&大根醤油漬け、
さばよしなるサバと根菜の和えもの。
そして焼き麩&わかめの味噌椀に白飯。

では、いただきましょう。
味噌椀を一口すする。
こんなものかな。
めかぶもやしに一箸つけて
主役の美保野ポークを一切れパクリ。
ん? お~い、肉が硬いよぉ。
んん? ソースもしょっぱいよぉ。

これなら米国やカナダ産の豚肉でじゅうぶんだ。
しかも片栗粉でトロみをつけたタレが濃すぎる。
初訪以来、気に染まって
幾度も利用してきたけれど
今回初めて大きく外した。

奮闘努力の末、どうにか食べ終える。
「8 base」はやはり魚介のほうが良い。
八戸はまぎれもない港町。
日本有数の水揚げを誇る漁港なんだ。
かれこれ四半世紀以上も前に訪ねた八戸では
肉なんか口にしなかった。

唯一食べたのは今は無き、
「板橋食堂」のラーメンのチャーシューのみ。
板橋育ちのJ.C.には
忘れ得ぬ昭和の匂いあふれる中華そばでした。

「8 base]
 東京都千代田区内幸町1-7-1
 03-6807-5611

2023年9月14日木曜日

第3362話 奥世田・チトカラの担々麺

世田谷の奥へ行った。
担々麺を食べるためだけにー。
行った先は京王線・千歳烏山。
若者たちがチトカラと呼ぶ街だ。
J.C.はこの辺りを世田谷の奥、
いわゆる奥世田と呼んでいる。

駅から歩いて10分弱。
千歳烏山から成城学園前方面に向かう、
はっけん通り添いに「天天厨房」はあった。
夜は本格的な台湾料理がいただけ、
昼は生担々麺の専門店となる。

カウンター主体のコンパクトな店は夫婦かな?
30代と思しき2人の切盛り。
料理担当の男性は判じかねただ
接客を受け持つ女性は
言葉遣いからして、なでしジャパンだろう。

カウンターに促され、台湾ビールをお願い。
ほかには同じ台湾のフルーツビールしかない。
台湾ビールは大陸の青島よりずっと好きだ。
小瓶だから、すぐに2本目。

昼は生担々麺のみの提供で
汁アリ、汁ナシ、麻辣の3種。
ほかにサイドメニューとして
揚げパイコー、魯肉版、水餃子。
そしてトッピングが
肉みそ増し、パクチー、小松菜、極玉子。
汁アリ(950円)と水餃子(200円)を通した。

先に来た水餃子はフツーの美味しさ。
続いた汁アリ生担々麺のスープを一口。
う~む、思わずうなった。
極上の美味しさはコク味に奥行きがある。

具材は肉みそ、小松菜、刻みねぎ。
麺は極細のほぼ真っ直ぐ。
コイツは残せんゾ、味わいつくしたい。
あわてて追い飯(100円)を追い注する。

細いくせに最後までノビない麺もさることながら
スープ・イズ・ザ・ベスト。
チトカラだけにちと辛いけど
人生最高の担々麺が此処にある。

これは再訪必至。
仲間を誘い、夜の台湾料理を試したいが
2人掛け2卓にカウンターだけでは
大勢の来訪は難しい。

ドアを開けてくれた奥さん(?)の笑顔に
送られて気分爽快。
はっけん通りを戻って往きました。

「天天厨房」
 東京都世田谷区粕谷4-18-7
 03-6754-6893

2023年9月13日水曜日

第3361話 サラマンカが胸に響いて (その3)

それはそれとして、S織のバースデイ。
まずはエストレージャ・ガリシアの生で乾杯。
ワインは前回の訪問時に頼んであった。

リオハのテンプラニーリョ100%。
ラモン・ビルバオ リミテッド・エディション ’18。
これを当日の24時間前に抜栓、
そしてデキャンタージュを済ませるよう、
お願いしてあった。
角が取れてまろやかな味わい、満足である。

最初にタパスを数皿。
スペイン料理屋では必注のボケロネス。
いわゆるイワシの酢漬けで
本場ではカタクチイワシが重用されるが
本邦では真イワシが多い。
当店もご多分にもれず、それでも美味い。

モハマはカラスミの盛合わせ。
ボラ・マグロ・紅ダラの3種だ。
普段、国産のソレに馴染んでいるだけに
ボラが一番好かった。

続いてはハモン・イベリコ。
ハム・ソーセージ・サラミの類は
パンがないともの足りなさが残る。
空輸されてくるスペインのバゲットをお願い。
これが実にけっこうだ。
白く細く密度の高いパンはフランスのものとは
異なる魅力に満ちていて、即お替わり。

ハモンも素晴らしい。
コク味がイタリアのプロシュートに大きく勝る。
今まで食べて来たうち、ベスト3の一品だった・

そして本日の主役はサルスエラ。
イタリア・オペラとほぼ同じ歴史を誇る、
スペイン・オペラがサルスエラ。
セリフがイタリア物より多く、
音楽と舞踏入り乱れてゴチャゴチャ。
そんなごった煮感満載の魚介の鍋である。

フランスのブイヤベース、イタリアのカチュッコ、
ベルギーのワーテルゾーイに並ぶ、
欧州の四大寄せ鍋だ。

渡り蟹、赤海老、真鯛、帆立、烏賊、
ムール貝がふんだんに使われ、
立ち上る香りは紛れもなくサフラン。
残ったスープをリゾットにしたかったが
その前に飲み干しちまった。
相方の食欲も旺盛、もう、どうにもとまらない。

店主はスペインの血を引くベネズエラ人。
パートナーとサラマンカのバルで食事した際、
いつか自分の店を持ったら店名を
「SALAMANCA」にしようと決めたそうだ。
よくぞ、そうしてくれました。
ムーチャス・グラシャス!

=おしまい=

「SALAMANNCA」
 東京都千代田区神田須田町1-3
 03-6260-7303

2023年9月12日火曜日

第3360話 サラマンカが胸に響いて (その2)

J.C.が初めて日本を出国した1971年。
マドリッドで出逢ったのが
青山学院大生のM恵子だった。
当時、彼女は欧州最古のサラマンカ大学に
留学中だった。

翌年、帰国して来て交際が始まるのだが
年長の彼女からはいろいろ教わった。
そのかたわら、よく聞かされたのが
ヨーロッパの音楽である。

詳しい事情は知らぬが建てたか買ったかした、
一軒家が市川の郊外の田んぼにポツンとあった。
夏ともなれば、カエルのゲコゲコがすさまじい。

そんな中で聴いたのがスペインの楽曲、
「アディオス・ユニベルシダッド(さらば大学)」、
アイルランドのダニー・ドイル が歌う、
「Yesterday when I was young」、
(アズナブールの「帰り来ぬ青春」)
ギリシャの民族音楽を基調としたポップスなどなど。

あれは或る土曜の朝。
夜明けのコーヒーを二人で飲んでいるときに
ラジオから流れてきたのは
ビリー・バンバンの「さよならをするために」。

2年後、この曲がロンドンのバイト先の同僚、
ミゲル・ゴンザレス・ロドリゲスの
気に入り曲になるとは夢にも思わなかった。

いや、懐かしいな、田んぼの中の一軒家。
J.C.が訪れ始める数年前、
ここをハウス・シェアしていたのは
ブレイクする直前の劇画家、
「ベルサイユのばら」の作者、その人である。

M恵子からはスペイン語の初歩も習った。
中でも笑ったのは
スペインの男が娘を口説くときの文句。
「モサ、キエルメ・ケテンゴ・ムーチャス・バカス」
(娘さん、オイラに惚れな、
 牛をたくさん持ってるからサ}

ハハハ、こりゃいいや。
2年後、セビリヤのバルで出逢った、
セニョリータ相手に披露したら
バカ(牛)だけに、バカ受けだった。

ロッシーニの「セビリアの理髪師」転じて
J.C.は「セビリアの色事師」でありました。

=つづく=

2023年9月11日月曜日

第3359話 サラマンカが胸に響いて (その1)

のみとも・S織のバースデイ。
舞台は神田、旧連雀町のスパニッシュ、
「SALAMANCA」だが、その前に先日の再現。

まずはランチを試そうと思い、
平日の午後訪れると
シャッターが降りている。
夕刻になって電話を入れたら
厨房のガスレンジの具合が悪く、臨時休業の由。
近々リベンジに出向こう。

でもって翌週に再訪した。
4種類ほどあるランチメニューから
イベリコ豚と魚介のパエリャを選択。
ビールはスペイン産、
エストレージャ・ガリシアの生。
ノド越しスッキリがうれしい。

最初に供されたのはサニーレタスのサラダ。
けっこうな量に
シンプルなドレッシングが絡まってグッド。
そしてチキン&オニオンスープがとても好い。
手作り感に満ちてホッコリ和む味わい。
これもカップになみなみとー。

メインのパエリャは具だくさん。
主役のイベリコ豚は
薄切りスライスが5枚もあり、
見た目は和風の生姜焼きそのものだ。
もちろん生姜の風味はしないけど。

あとは小海老、ベイビー帆立、インゲン。
貝割れ大根みたいなのは
ブロッコリ・スプラウトだろうか?
バランスよろしき一品となっている。

エストレージャをお替わりしつつ、
美味しくいただいた。
ランチは飲みもの付きで
烏龍茶、ぶどう orオレンジジュースから択べる.
ぶどうにしてみた。

実はJ.C.、この店に引き付けられたのは
一にも二にも店名の「SALAMANCA」。
もしもほかの名前だったら訪れていない。
行ったこともないサラマンカに思い出がある。

昨年、平野レミさん推奨の中国料理店、
「ふーみん」でのランチ後、
近くの青山学院大学のキャンパスを歩いた。
その際、半世紀前の恋人、
M恵子に登場願ったのだが次話は
再び彼女にまつわるエピソード、お許しをー。

=つづく=

2023年9月8日金曜日

第3358話 希少なる部位 ハラミとツナギ

「サバイディー」をあとにして
阿佐ヶ谷駅前ロータリー。
JRで新宿に出るか、都営バスで渋谷に廻るかー、
渋谷にしよう。
バスを乗り継ぎ、目黒の大鳥神社前で下車。

心当たりの昼飲み酒場を目指し、権之助坂を上がる。
下りはラクだが上りはキツいぜ、この坂はー。
しかも到着したらシャッターが降りてやんの。

三田と大門で乗り換え、やってきたのは門前仲町。
止まり木に止まったのは初めての「高しな」。
炭火焼き鳥の店である。
都内各地に10軒ほどあるが、いずれも未踏だ。
以前、この門仲店の立て看板に
希少部位のハラミとツナギを見止め、気になっていた。

ドライの中ジョッキをプファ~ッと飲って 
ハラミを塩、ツナギをタレで1本づつ。
横隔膜のハラミは背肝と並んで
J.C.が最も好む部位。
肝臓と心臓を結ぶツナギも肝心この上ない。

目黒からずっとガマンしてきたものだから
中ジョッキはまたたく間に3杯を数えている。
キャベツの上に紅しょうがともみ海苔が散る、
くだらない突き出しはひと箸つけて箸を置く。

そうだ新たなるのみとも・白鶴は
江東区の住人だった。
電話を入れると、おっとり刀で現れた。

訊けば本日は彼女の定期健診日で
錦糸町から参上仕ったと言う。
行きつけの「vivo 錦糸町店」で出逢ったのは
去年の11月だった。

内臓類をあまり得意としない彼女には
オーソドックスな部位ばかり、
5点盛りを通してやった。
こういう人に希少部位は
猫に小判、犬に大判なのである。

ハツを塩、レバーをタレで追加する。
ハハ、ツナギの両サイドだネ。
あとは何も頼まず、
酒の肴はもっぱらショウヘイ・オオタニ。
野球に興味の無かった彼女も
朝のBS1だけは観るようになったという。

しかしあの男も罪なオトコよのう。
日本の野球にまったく興味がなくなっちまった。
ん? セリーグの首位はどこだって?
ん? 阪神だってか?

ああいうのは大阪人に見せときゃいいの。
東京人は海の向こうを見据えてるの。
小姑には悪い気もするけどな。

「高しな 門仲店」
 東京都江東区門前仲町2-6-1
 03-6458-8221

2023年9月7日木曜日

第3357話 ラオスの人は もち米がお好き (その2)

生春巻を箸休めにガパオライスにも
箸をつけながら食べ進む。
ちょいと遅れてカオニャオが
竹で編んだ円筒の篭でサーヴされた、

茶碗によそうと実につややか、
キラキラと輝いている。
銀しゃりってこういうのを言うじゃないかな? 
思いつつ口元に運んだ。

繊細な味わいが予想をくつがえす。
てっきり日本の赤飯かおこわの類いを想像したが
そうではなかった。

食べものとして日本のソレより、
品格が勝るような気すらしたくらい。
お見それしました、先入観ってダメだねェ。

鶏の挽き肉より粗い、
たたき肉といった感じのガパオは
ジャスミンライスが使われている。
これはこれでとても美味しい。

ドライをお替わり。
カルビアックの麺とスープは少し残したが
2種類のライスは胃に収めた。
まだ飲めるけど、もう食べられない。

ドリンクメニューをめくっていて
惹かれたのはラオラオ。
モロにラオスのネーミングは
もち米の蒸留酒、ロックで所望した。

ウグッ! コイツはキツいぜ。
40度はラクにあるだろう。
グラスの水を注ぎ足して水割りにアレンジ。
ここで渡哲也に登場願うと
浪花の小姑が喧しくなるためスルー。

ジンやウォッカより中国の白酒に近い。
突き抜け感があって旨い酒である。
もち米からできた酒となると
第一感は紹興酒なれど、
醸造酒と蒸留酒では
見た目が明らかに異なる。

帰り際、お運びの彼女に
「お店はタイの人がやってるの?」
「いいえ、みんなタイ人なんですけど、
 独りだけラオス人なんです」
「どういうこと?」
「社長がラオス人」
「何だヨ、ソレ?」

次回は高円寺の本店に行ってみようかな?
ラオス人に会えるかもしれない。
東南アジアの内陸国、
ラオスの人には今まで会ったことがないんです。


「サバイディー 阿佐ヶ谷店」 
 東京都杉並区阿佐谷南2-17-2
 03-6383-2566

2023年9月6日水曜日

第3356話 ラオスの人は もち米がお好き (その1)

都内では極めて珍しいラオす料理店が
杉並区にあると知り、行く気になった。
かつて食したことは一度もない。
主食がもち米というほかに知識もない。
この惑星でもち米を主食とするのは
ラオス人だけではなかろうかー、

杉並への長征につき、
あらかじめ電話を入れて営業の有無を確かめる。
「阿佐ヶ谷店とあったけど、他にもお店があるの?」
「高円寺に本店があります」
一瞬、本店にしようかと思ったものの、
電話口の応対が好印象、阿佐ヶ谷へ向かった。

JR阿佐ヶ谷駅の近くにタイ&ラオス料理店、
「サバイディー」はあった。
中央線の高架の南側だ。
店名はタイ語で”元気です”の意。

さっそくラオスのビール、
ビアラオをお願いすると、残念ながら品切れ。
現地では氷を入れて飲むのが習わしだという。
ドライの生を飲りつつ、ランチメニューに目を通す。

おそらくさっきの電話に出たオネエさんに
どれがラオス的な料理なのか問う。
ほとんどがタイ風だ。
ラオス主体じゃ客が入らんだろう。
誰も知らないからネ。

写真付きメニューで彼女が指し示したのは
カルピアックなるラオスのうどん、
生春巻2切れ、小ガパオライスが付いて780円。
ずいぶん安いや。

「もち米の料理はないのかな?]
「もち米が食べたい人はこの別売りです」
一人前440円とこちらは割高感否めず。
日本人はあまり注文しないだろうと
踏んでいるフシがある。

カオニャオと呼ばれるもち米とうどんセットを発注。
カルピアックは大きなドンブリに
スープが並々と注がれて運ばれた。
薄味の口当たりやさしく、
スープも麺もベトナムのフォーに通ずる。

うどんは稲庭くらいの太さ。
ツルツルのノド越しは
おそらくライスヌードルだろう。
コシがまったくないからフニャ庭うどんだネ。

具材は鶏もも肉ブツ切りにバジル、
青い小ねぎが散っていた。
和風の鳥すきを食べてるようで
ラオス料理とはかなり異なる印象だった。

=つづく=

2023年9月5日火曜日

第3355話 のらくロードの にんにくラーメン

西浅草の「飯田屋」でどぜうを食べた際、
思い起こされた店舗が1軒あった。
深川は高橋(たかばし)の「伊せ喜」である。
小名木川に架かる高橋のたもとにかつて
風情あふれる佇まいを見せていたが
閉業して久しい。

跡地には面白くもない(住民の方ゴメンナサイ)、
マンションが建ってるけれど
高橋から小名木川の水面(みなも)を
眺めてみたくなった、

やはり「伊せ喜」無きあとの高橋界隈は
見るべきところがまるでない。
近くの高橋夜店通り商店街に移動する。
田河水泡の漫画にちなみ、
のらくろードの通称で呼ばれる。

此処で昼めしにしよう。
うなぎ「尾張屋」、ピッツェリア「ベッラ・ナポリ」、
焼き鳥「鳥長」を元カノ・T子と訪れたのは
4年前の年の瀬、柴又の帰りだった。

のらくろードが尽きる辺りに本格中華の「精華園」。
10年前の印象が好く、即入店した。
菜譜を繰っていって
目にとまったのはにんにくラーメン。

お運びの娘さんに問うと、
醤油味でピリッと辛いそうだ。
夏バテ防止のため、
たまにはガッツリいったろうと、セットにした。 
ドライの注文にピリ辛もやしがサービスされる。
どこまでもピリ辛なんだネ、この店はー。

にんにくラーメン着卓。
おう、おう、具材がてんこ盛りだヨ。
ニラ・にんじん・もやし・キクラゲ・シナチクが
豚バラ肉の薄切りと炒め合わさっている。
スタミナ増強、ビタミン補給に打ってつけの一品。 

薄い醤油味のスープはパンチに欠けるが
そのぶん化調感がなくていい。
トマト&レタスのサラダも付いてきた。。
ライスの盛りがよく、
これは行けるとこまで行くしかないな。

 問題は付随する小皿だった。
さっきと同じピリ辛もやしがもう1皿。
どちらもけっこうな量である。
もやしはこの世で一番安い野菜だからって
こんなに出してくれなくてもいいんだ。
小皿といえども料理の重複は
料理人のセンスが疑われる。

麺は何とか食了したが飯は少し残した。
そして2枚目のもやしには
箸をつけませんでした。

「精華園」
 東京都江東区高橋8-7
 03-3635-0841

2023年9月4日月曜日

第3354話 カーボベルデを喰ってやった 

夜にはカーボベルデとの一戦を控えたその日の昼。
よおし、やつらを喰ってやろうと思ったJ.C.、
敵地に乗り込んだ。

と言っても都内に彼の国の料理を喰わせる店など
あるハズもない。
ところがある所にはあるんですな。
それも灯台下暗し、われ棲む町にあったのでした。

外国人の若者に人気が高い、
さくらホテル日暮里のカフェにして
メインダイニング「サクラカフェ」だ。

国民食のマサ・ディ・ガリーニャは
鶏もも肉とポテト・にんじん・キャベツの塩煮込み。
泊り客から教わったレシピを再現して
かれこれ1年以上のロングセラーとなっている。

それは知っていたが食べるのは今回が初めて。
すべてはバスケット、W杯の成せるわざである。
試さなかったのは当カフェ、何を食べても不味いから。
モーニングなんかヒドかった、ジッサイ。

日本の勝利に願かけて期待もせず、来襲した。
中野新橋の山形料理屋で生をいただき、
気に入ったカールスバーグとともに発注。
ここでは小瓶だけどネ。

すると・・・かなりイケるんでないの。
仏料理のポトフにも似た、やさしい味わい。
添えられた白飯にはイタリアンパセリが散っていた。
思いもかけない、くつろぎのひととき。

「サクラカフェ」は
カーボベルデまでカバーするくらいだから
世界各地の料理をメニューに載せている。

カオマンガイ ガパオライス(タイ)
フィッシュ&チップス(イギリス)
ギネスシチュー(アイルランド)
パエリャ ピンチョス オムレツ(スペイン)
スパゲッティボロネーゼ(イタリア)
タコライス(メキシコ)

といった塩梅だ。
今回のマサ・ディ・ガリーニャが好かったので
冷え込んだ互いの関係が修復された。
このレベルに来てくれれば、
利用する機会も増える。

以下の記述は今夜の一線を観てからにしよう。

ハイ、勝った、よかった。楽しんだ。
得意とする第四Qで追いつめられるとは
夢にも思わなかったけどネ。

「サクラカフェ」
 東京都文京区千駄木 3-43-15
 03-5685-1200

2023年9月1日金曜日

第3353話 どぜうは真夏に食べるべし (その2)

こういう場所でまぐろの刺身とか
言うんじゃないヨ。
いさめながらお願いしたのは
どぜう南蛮漬け、玉子焼き、さらしくじら、
くじら竜田揚げ、あと何だったけな?
記憶に残っているのはそこらまで。

おそらく10回は超えている訪問で
南蛮漬けを初めて目にした。
これが意想外の佳品だった。
小さなどぜうの唐揚げが酢に浸っている、
フレンチ風に言えば、
ベイビーどぜうのエスカベッシュだ。
味覚抜群なれど、ごめんネ、ベイビー!

以前はものスゴく甘かった玉子焼きは
時代の変化か、ずいぶんおとなしくなった。
昨今の江戸前鮨屋の煮つめと同様である、

さらしくじらは工場加工のため、
何処で食べてもほとんど変わらない。
中には酢味噌まで出来合いだったりする。
竜田揚げも肉質上等とはいえず、
昭和30年代の学校給食と同レベルだ。
よって、くじらモノはおすすめできない。

笹の川の盃をさらに重ねながら
そろそろ締めと参ろうかの。
メンバー全員がうなぎも食べたいってんで
ここは一ひねり加えてみた。

どぜう屋に来てうな重もないもんだ。
それではどぜうの食文化を
守り続けてくれた江戸の庶民に
申し訳が立たない。

お願いしたのはどぜうとうなぎの半々重。
これなら両方の蒲焼きが一度に味わえ、
まさに一石二鳥なのだ。
重箱にはどぜう3尾、
うなぎ半身が仲良く並んで収まっていた。

お重を3つ取り、6人で分け合った。
一同、満面の笑みを浮かべて
ワシ、ワシ、ワシ。
マル&ヌキ鍋、南蛮漬け、蒲焼きと
4種のどぜうを味わいつくした。

ここがグループの強みで
2~3人じゃとてもこうはいかない。
これで文句の一つでも出ようものなら
まとめ役の立つ瀬がないというものです。

「どぜう飯田屋」
 東京都台東区西浅草3-3-2
 03-3843-0881