2025年3月25日火曜日

第3760話 あゆみと共に あゆんだ青春 (その2)

テレビ朝日の「路線バスで寄り道旅」で
お馴染みの徳さんが先日。
歌の上手い都はるみとちあきなおみに
いしだあゆみがコンプレックスを
抱いていたという話を披露していたが 
J.C.はそうとも思わない。

はるみ&なおみには歌で負けても
容姿じゃ圧勝しているからネ。
彼女が強く意識した歌手は
大先輩の西田佐知子だったのではないか。
二人は声質と容貌のみならず、
スラリとした体系までよく似ている。

J.C.は昔から佐知子から歌唱力を
マイナスしたらあゆみと信じて疑わない。
関口宏との結婚で佐知子が引退したとき、
心底ホッとして
肩の荷を降ろしたんじゃないかな?

さて、女優としてのいしだあゆみ。
脚本家にして演出家の倉本聰は
彼自身が脚本を書いた高倉健主演の映画、
「駅 STATION」(1981年)における、
彼女の演技を絶賛している。

この意見にも J.C.は与しない。
冒頭、函館本線・銭函駅のシーン。
不倫を理由に離縁される、
あゆみを乗せた列車がホームを離れてゆく。
見送る健さんに敬礼しながら
笑顔を涙が伝わってゆく。

脚本家は高く評価しているんだが
あの役柄を演じたときのあゆみが
不貞を犯す女には
どうしても見えないんだ。
ましてや夫は高倉健だヨ。
しかも刑事で拳銃の名手なんだぜ。

それに一度の過ちで妻子を棄てる男が
女を駅まで見送りに来るものかネ。
聰さん、申し訳ないが
貴男の仕組んだ筋書きには
見過ごせないキズがありますヨ。

彼女の映画では何と云っても
寅さんシリーズ第29作、
「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋」。
1982年のこの作品を愛してやまない。
彼女は人間国宝の陶芸家宅に住み込む、
お手伝いさんのかがりに扮する。

結婚に失敗した未亡人で
娘を実家に預けている。
それが丹後半島の伊根の舟屋。
訪ねていった寅次郎と
結ばれそうになるものの、
結ばれちゃったら
寅さん映画にならないからネ。

もう1か所、映画で大事な舞台は
鎌倉のあじさい寺・成就院。
 J.C.は一昨年の6月27日。
自分の誕生日にバンコクから来た、
タイのレディーと境内を歩いた。

夏になったら今度は
伊根の舟屋まで出掛けたいと思う。
海を眺めてビールを飲みつつ、
あゆみと共にあゆんだ青春を
振り返るつもり、彼女を偲びながらネ。

2025年3月24日月曜日

第3759話 あゆみと共に あゆんだ青春 (その1)

今日は先日亡くなった、
いしだあゆみを語りたい。
当欄でも何度か書いているが
J.C.はあゆみの大ファンである。

女優としてよりも歌手としての彼女。
それもデビュー間もない頃、
セシルカットの彼女が好きだ。
あまりヒットに恵まれなかった時代。
それでもわが青春は彼女と共にあった。
例によってマイ・ベスト10いきます。

① サチオ君
② 太陽は泣いている
③ みどりの乙女
④ 喧嘩のあとでくちづけを
⑤ 時には一人で
⑥ ブルー・ライト・ヨコハマ
⑦ 今日からあなたと
⑧ あなたならどうする
⑨ 砂漠のような東京で
⑩ 真珠(パール)の指輪

かようなラインナップです。
ほかにイタリア映画の主題歌を歌った、
「ブーベの恋人」と「ガラスの部屋」も好き。

中学一年のとき、
板橋区・弥生町に棲んでいたが
住まいは下頭橋通り(旧川越街道)から
ちょいと入った小路のどん突きにあった。

下校時、そこを歩いていると
民家から流れて来たラジオの音は
デビュー2曲目の「サチオ君」。
家に駆け戻ってラジオをスイッチ・オン。
後半を聴くことができた。
家にレコード・プレイヤーが無かったのだ。

♪ ふるさとの想い出 それはサチオ君
  いつも二人で 落書したわ
  ふるさとのにおい それはサチオ君
  お寺のかべに 二人の名前
  傘をまん中に サチオと良子
  それからまもなく サチオが死んだ
  ふるさとの想い出 それはサチオ君
  雨に落書き 濡れて泣いてた  ♪
   (作詞:岡田教和)

歌詞にある良子はあゆみの本名。
1964年6月のリリースで
東京五輪の4カ月前のこと。
夢中になったJ.C.少年は
池袋東武7階にあった売り場で
彼女のブロマイドを
セッセセッセと買い込むようになる。

翌 ’65年1月、今は無き日劇で
彼女のコンサートを観た。
強く印象に残った曲は「サチオ君」、
「みどりの乙女」、「真珠の指輪」。
ほとんど無名の2曲は
You Tubeで聴くことができても
カラオケには収録されていない。

今でもそうだが子どもの頃から
短い髪の女性が好き。
梓みちよ、九重佑三子、槇みちる。
揃いも揃って短髪の乙女たちだった。

=つづく=

2025年3月21日金曜日

第3758話 一人酒場で 煮るもつ鍋

そうしてこうして降りた千駄木駅。
階段を昇り、地上に出ると
すぐ右手に居酒屋「マルコ」あり。

何度か利用しているが
住まいの近所じゃあまり飲まないため、
3年ぶりくらいかな? おジャマしよう。

雨のせいか、店内はスキスキのガラガラ。
カウンターに着き、赤星中瓶をー。
最初の一品はホタルいか酢味噌。
焼き手のオニイさんに
「ホタルは富山? 兵庫?」
「エッ? 仕入れ担当が休みで判りません」
プックリのツヤツヤが5尾並び、
これなら良質な富山湾産と推測された。

目の前の貼り紙が目立つ。
もつ鍋のデカいイラストの下に

1人前 790円
シメのちゃんぽん麺 190円
※ 1人前からの注文OK!

イラストが可愛い。
実は J.C.、自慢じゃないけど
未だかつて、もつ鍋を食べたことが無い。
読者は意外と思われるだろうが
紛れもない事実である。

もつ煮込みは少なくとも千回食ったが
もつ鍋に箸を差し入れたことは無い。
味は想像の範囲内ながら
生まれてこのかた未食のままってのもなァ。
これも雨降りがもたらせた巡り合わせ。
童貞を捨てちまおう! 発注に及んだ。

卓上ガスコンロが運ばれ、
具材が全員集合の鍋が上に置かれる。
着火のつまみを回して待つことしばし。
グツグツ言い出したら
醤油味のスープをすくい、口元に運ぶ。

脂肪がビッシリ付いた白もつ、
キャベツ・ニラ・豆腐に
にんにくと赤唐辛子のスライス。
一人酒場で突つく鍋はいいもんだ。

日本酒のリストは
~ 伊勢五さんセレクト ~
近隣の須藤公園横にある酒店である。
和歌山県海南市の純米吟醸、
紀土(きっど)春乃薫風を所望した。

いや、奥行きが拡がり、味わい深い。
和歌山の酒は飲んだ記憶がないゾ。
もつ鍋ともども初物づくしの春の宵。
牧水みたいに秋でなくとも酒は独り、
しづかに飲むべかりけり。

「やきとん酒場 マルコ 千駄木店」
 東京都文京区千駄木3-33-12
 03-5842-1882

2025年3月20日木曜日

第3757話 ♪ 人が割れるのよ ♪

この日は月例の「二人でビールを飲む会」。
ズーとも・白鶴と錦糸町のいつもの喫茶店、
「ニット」で落ち合った。
相方は中瓶を1本弱、当方は2本強飲む。
この日もそうだった。

およそ2時間後、
帰巣してゆく白鶴をバス停まで送り、
さて、これからどうしよう。
雨が降っている。

取り合えずJRの改札を通った。
秋葉原で山手線に乗り換え、
最寄りの日暮里で飲み直す案もあったが
日暮里だと家まで10分は歩く。

お茶の水まで行き、1杯引っ掛けて
千代田線に乗ることにしよう。
ところが、お茶の水という街は
学生にゃいいけど、呑兵衛にゃ適さない。
傘をさしてブラブラしたが収穫はゼロ。

時刻は19時半、あきらめて
常磐線直通我孫子行きに乗ろうとすると
うわ~っ! 何だ、何だ、この混みようは!
朝のラッシュ並みに次から次と
電車が来るにも関わらずヒドい混雑ぶりだ。

J.C.は何が嫌いって人混みが大嫌い。
ニューヨーカーはギュウギュウの地下鉄に
まず乗らないが日本人はお構いなし。
民度の低い民族は困りもんだヨ、ったく。
と言っても乗らなきゃ、会社に遅刻するし、
カミさんの機嫌を損なうし、
まったくもって男はつらいよ。

隣りの湯島で若い娘が降りようとした。
蚊の泣くような声で「降ります」。
誰も聞く耳なんか持っちゃいない。
そこで正義の味方J.C.、
大きな声で「降りますって!」

会釈して彼女は降りてゆき、事なきを得た。
すると入口をふさいでた乗客が何人も
 J.C.を振り向きやがんの。
大声の主はどこのどいつだ? 
と言わんばかりにー。
ケッ、どうなってんだヨ、此の国は?

根津の次はマイ・千駄木。
ところがお茶の水で乗ったのと逆側だから
にっちもさっちもいきまへん。
「すみません」なんて通用しない状況。
仕方なく伝家の宝刀を抜きやした。

「Excuse me !」
これは効いたヨ、スパッと道が開けた。
あたかもモーゼの十戒の如くにー。
日本人は外国人に親切というか、
英語に弱いからネ。

ほうら、天童よしみまで
歌い始めたぜ、「珍島物語」をー。

♪ 人が割れるのよ 道ができるのよ
  中と外とが つながるの
  こちら車内から あちらホームまで
  客の皆様 カムサハムニダ   ♪
   (作詞:J.C.オカザワ)
   (原詞:中山大三郎)

無事、プラットフォームに
抜け出ることができました。
やれやれ。

2025年3月19日水曜日

第3756話 節子の前の重慶飯店

原節子特集をいきなり2本観たが
その際の昼めし処は
神田神保町に近い神田駿河台。
初日は際コーポレーション系列の
タイ料理店で海老チャーハンをー。

こいつがあんまりだった。
ジャスミンライスまでは期待しなかったが
ジャポニカ米がヤワヤワのネチョネチョ。
若い女性たちで席は埋まっていたけれど、
タイ人のオッサンにこんなん食わせたら
「馬鹿にすんじゃねェゾ!」
テーブルをひっくり返すと思われる。
よって多くを語らず、スルー。

翌日は「太一」なる中国料理店があった場所を
居抜いた「東々包(トントンパオ)」。
重慶料理を全面に押し出す店で
正式には”ドンドンバオ”と発音するらしい。

可憐な原節子の映画の前に
重慶料理はかなり”重”く、
”慶”ぶに値しないかとも思ったが
まあ、いいでしょう、行きましょう。

店オススメの重慶名物は3皿。
水煮牛肉・宮保鶏肉・酸菜魚である。
3つ目のサカナ料理だけは
かつて一度も食べたことがない。

本来なら川魚のソウギョを使うが
興味は湧いたものの、
鮎のように爽快なサカナならともかく、
鯉みたいに泥臭いのが出て来たら
もうお手上げ、見送ることにした。

赤星中瓶をトクトクやって択んだのは
”本場の四川重慶味”の欄にあった、
仔羊肉のクミン炒め(1480円)。
仔羊もクミンも大好きですからネ。

運ばれた膳は主菜に加え、
とろみのついた玉子スープ、
サニーレタス・紫キャベツ・水菜のサラダ、
そして白飯。
ここにザーサイか辣白菜があれば
カンのペキなのになァ。
代わりにプリン状のつゆなし杏仁豆腐。

メインディッシュは豪華絢爛。
タップリの仔羊に野菜も8種類ほど入り、
赤唐辛子がこれでもか、と云わんばかり。
これをみんな喰ったひにゃ一日中、
ヒーハー、ヒーハー繰り返さなきゃならん。

赤星をもう1本いきたいところなれど、
映画を観てる最中に
自然の呼び出しを受けること必至、
思いとどまったのでした。

「東々包」
 東京都千代田区駿河台3-3-10
 050-5872-0222

2025年3月18日火曜日

第3755話 可憐な少女の原節子

いしだあゆみが亡くなった。
大好きな女(ひと)だった。
J.C.が長い人生において
ブロマイドを買ったのは彼女ただ一人。
中学一年生のときは夢中だった。
日をあらためて彼女を語りたい。

それはともかく、
ようやくドラえもんが何処かへ飛んで
神保町シアターの新しい特集、
没後10年
原節子をめぐる16人の映画監督
が始まった。

16人の異なる監督による16本が
上映される予定だ。
さっそく2本観てきた。

最初は「河内山宗俊」(1936年 日活)。
監督は早世した山中貞雄。
応召した翌年、河北省・開封市で
戦病死したが才能を高く評価された。

宗俊役は河原崎長十郎(4代目)。
節子は甘酒屋を営む娘・お浪。
まだ15歳の若さである。

J.C.は今まで原節子を
美しいと思ったことが一度もないが
今回初めて彼女の魅力を感じとった。
多くの監督たちが揃いも揃って
彼女を重用した理由が判る気がした。

2本目は「巨人傳」(’38年 東宝)。
監督は伊丹十三の実父、伊丹万作。
ビクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル」が
原作ながら画面にクレジットはない。

ジャン・バルジャンの役柄は大河内傳次郎。
傅次郎の”傳”の字が
題名「巨人傳」の由来となったフシがある。
節子はコゼット役。
うん、やはり可憐で綺麗だ。
殊に目を閉じた寝顔には息を飲む。

当時としては長尺の2時間7分。
ほとんどの作品が1時間半そこそこなのに
観る者を飽きさせることがまったくない。

「河内山宗俊」、「巨人傳」の上映は
すでに終了したが
小津安二郎「秋」、黒澤明「白痴」、
熊谷久虎「智恵子抄」などが控えている。

熊谷久虎は節子の義兄(実姉の夫)で
彼こそが節子を銀幕の世界に
引きずり込んだ張本人。
節子は義兄を敬愛してやまなかったと伝わる。

女優・原節子という麦)は
熊谷久虎が種を蒔き、
小津安二郎が刈り取ったと言ってよい。

2025年3月17日月曜日

第3754話 日暮里で にっぽり笑う リユニオン

近頃、散歩していると民家の庭先から
沈丁花の香りが漂って来る。
この世に存在するすべての匂いのうち、
J.C.はこの花の香が一番好きだ。

今年の書初めならぬ、
嗅初め(かぎぞめ)は2月25日だった。
谷中銀座からちょいと入った、
裏道にあるお宅の生け垣に
赤と白とが一株ずつ並んでおり、
いくつかの蕾がほころびかけていた。
桜で言えば、まだ一分咲き程度ながら
沈丁花を嗅がないと J.C.の春は始まらない。

それはそれとして、今宵はTBSラジオ、
「森本毅郎スタンバイ!」のリユニオン。
メンバーたちから谷根千でぜひ、
との声が巻き起こり、
地元在住の J.C.が予約したのは
日暮里のマイ・ブレイクルーム、
中国料理店「又一順(ユーイシュン)」だ。

日暮里は谷根千の外ではあるが隣り街。
そもそも谷根千に宴会に適した店舗など
まったくないのが悲しい現実である。
常連の7人に加えて今回は
TBSのディレクターが2人参加した。

2階の円卓に集い、ドライで乾杯。
最初は干し大根玉子焼きと腸詰め。
今は亡きのみとも・半チャンは
この玉子焼きが大好物だった。

白油鶏(パイユーチ=蒸し鶏)じゃ
芸がないのでこの日は奮発し、
涼菜鮑魚(リャンツァイポーユー)、
いわゆるアワビの冷製にしてみた。

紹興酒も奮発して10年物の龍晶水。
これはロンジンクァンと発音するらしい。
9人で600cc を4本だから
それほどの深酒ではないやネ。

海老と野菜のうま煮、蟹肉豆腐、
沙茶醤牛肉、木須肉(豚肉・木耳・玉子)。
焼きそば&炒飯にはたどり着けず、
6月の再宴を約して、お開きとなった。
日暮里だけにこぞってにっぽり笑った皆の衆。

半数は JR日暮里駅利用。
残りは千代田線・千駄木から帰途に着く。
残った連中を引き連れ、谷根千の穴場、
初音小路とすずらん通りを案内し、
千駄木駅で各自とハンド・シェイク。

と、この原稿を金曜の夕方に書いていたら
会食メンバーの一人、
フタちゃんからメール来信。

ー オカザワさん、大好きな沈丁花が満開ですね
ー 何たる偶然、今、ブログの前フリで
  沈丁花にふれたところ、超能力?
ー 愛読者ですから、わかるんですよ(笑)

持つべきものは読者でありますな。

「又一順(ユーイシュン)」
 東京都荒川区西日暮里2-18-3
 03-3801-8520