2014年2月28日金曜日

第784話 雪解けのサル山 動物園こそわが楽園 Vol.10

今月は二度も大雪が首都圏を襲った。
まるで蒙古来襲みたいだネ。

最初の大雪の翌日。
雪景色の動物園もオツではないか・・・と思い、独り訪問。
いつものように池之端門から西園に入場した。
予想に反してけっこうな人出である。
そりゃそうだヨ、腐っても日曜日だもの。

不忍池から吹く風は頬に冷たい。
池の向こうは広小路の街並み

イソップ橋を上り渡って真っ直ぐ東園に移動する。
脇を園内モノレールが追い越してゆく。
カフェテラスで一服とも思ったが入園早々の休憩もないもんだ。

普段は西園でのんびりすることが多いのに
その日の第一目標はおサルさんだった。
家を出たときから雪のサル山に心が弾んでいたのだ。
長野・地獄谷の野生のサルたちは温泉を楽しむ。
はたして上野はどうであろうか?

 ♪ 雪解け間近の 北の空に向かい 
   過ぎ去りし日々の夢を 叫ぶ時 
   帰らぬ人達 熱い胸をよぎる 
   せめて今日から一人きり 旅に出る ♪
            (作詞・谷村新司)

おうおう、雪解けのサル山で
みんな寒さをものともせずに元気じゃないか!
子ザルまで笹の葉を食べてるヨ

確か、野生のサルの生息地の北限は青森・下北半島。
本州最北端に比べれば上野なんざ、
ぬるま湯に浸かってるようなものか。

運よく体重計に乗ってくれてる1匹がいた。
意外と軽いんだねェ
ウチのバカ猫より軽いじゃん。

どこの世界にもイジメはあるもので
急に騒がしくなったと思ったら
ガキ大将が弱者を追い掛け回し始めた。
ボスザルだろうか、
逃げてるサルがその背中に隠れて一件落着。

風が冷たくなって来たので長居は無用。
出口専用の弁天門から出て今宵の止まり木を求め、
ゆくはアメ横か天神下か?
鵜とペリカンに見送られ
雪の動物園を去りました。

2014年2月27日木曜日

第783話 わが心にも雪ぞ降る

今年の冬はよく雪が降る冬だ。
東京では三月に入ってからの降雪が多いのに
どういうわけか今年は降り急ぐ雪多かりし。

 ♪ 雪 気がつけばいつしか
   なぜ こんな夜に降るの
   いま あの人の命が
   永い別れ 私に告げました

   あの人が旅立つ前に
   私が投げつけたわがままは
   いつかつぐなうはずでした
   抱いたまま 消えてしまうなんて

   雪 気がつけばいつしか
   なぜ こんな夜に降るの
   いま あの人の命が
   永い別れ 私に告げました

   手をさしのべればいつも
   そこにいてくれた人が
   手をさしのべても消える
   まるで 淡すぎる 雪のようです ♪

中島みゆき作詞・作曲の「雪」。
美しい曲であり、悲しい曲である。

浅草ではしご酒を重ねたあと、
しばらく無沙汰をしていたスナックを訪ねた。
客の影はない。
それをいいことに・・・かどうかは知らねど、
ママがのんきにチョコレートの大きな缶を抱えて
その中身をつまんでいた。

「何やってんの?」
「エッ? あら、失礼ッ!」
老いたりとはいえ、とまどった笑顔が心なしか可愛い。
旧交を温めながら互いの身の上話をしばし。

それにしても年明け以来、浅草の飲食店は静かに過ぎる。
一時期の停滞から息を吹き返したかに見えた浅草。
それもつかの間、結局は薬局、元のもくあみに戻るんかい?

そんな夜にママが歌ってくれた「雪」。
吉兆宝山のロック片手に耳を傾ければ心にしみ入る。
中島みゆきのナンバーでは「雨」が大好きだが
「雪」もまた素敵な曲だった。

巷に雨の降るごとく、わが心にも雪ぞ降る。
柄にもなくしんみりしちゃった或るエンコの夜でした。

2014年2月26日水曜日

第782話 あとずさりの大衆酒場 (その3)

板橋駅前の大衆酒場「明星」。
出会いがしらにガツンと一撃食らい、
やっとこさ、カウント・ナインで立ち上がったところだ。

つまみの思案をしていたら新規のお客が来店。
おやおや、初老のカップルじゃないですか。
この店でデートする客もいるんだねェ。
とにかく客は四名になった。

今来た二人はいきなり燗酒、同時ににら玉を頼んだ。
こちらも何かお願いせねば・・・。
選んだのはウインナー焼きである。
”焼き”といってもガス火であぶるわけではあるまい。
フライパンで炒めるのであろうヨ。

その間を利用して今度は飲み物の品定め。

 焼酎 170円   日本酒・ハイボール 各280円   
 レモンサワー・牛乳サワー・デンキブラン 各300円
 ホッピーセット 370円
 
今宵はビール1本で退散する予定だが、
一応、頭に入れておく。

カップルのにら玉より先に、わがウインナーが出来上がった。
正直言って驚いた。
期待のかけらもなかっただけに見直してしまった。
見た目も可愛く、デジカメ不携帯を悔やんだほどだ。

目の前の小皿に盛られているのはウインナーに非ず。
もっとずっと大きい。
さりとてフランクフルターにも非ず。
サイズ的にはちょうど両者の中間かなァ。
それが3本、縦割り真っ二つで計6ピース。
ほどよい焼き目もついておいしぞうだ。
脇にはザク切りのキャベツ炒めまでも。
ありがちな千切りでないところがとても好もしい。

ふと見れば、マスタードまでチョコンと添えられている。
女将曰く、
「コレ、粒マスタードねっ!」―判ってるヨ、そんなこと。
おそらく集結する客の中には
「何だコレ?」―この手の客が多いのだろう。

向かいのにら玉も遠目ながら旨そうだ。
もちろん当方のウインナー&キャベツも上々。
人は見掛けによらぬもの、店も見掛けによらぬもの。
かと言って再訪するのはどうもねェ。

会計は金900円也。
「また、ぜひどうぞ!」―背中で声を聞く。
こういうのに弱いから一度はあとずさった酒場なれど、
また来ちゃうかもしれないなァ。
そんなことより、たかだか30分の滞在に900円のお支払い。
これで三日分書けちゃったんだから
感謝のシルシにウラを返さにゃなるまいて―。

=おしまい=

「明星」
 東京都板橋区板橋1-18-2
 電話ナシ

2014年2月25日火曜日

第781話 あとずさりの大衆酒場 (その2)

JR板橋駅西口から徒歩1分の大衆酒場「明星」。
入店直後に後悔の念が芽生えたが
どうにか落ち着きを取り戻して着席した。

店内の模様とはうらはらに
よく見ると、切盛りする女将は小ざっぱりしている。
一本結びではあるが髪をおさげに結っている。
失礼ながら言わせてもらえれば、
はき溜めに鶴とは言えないまでも
はき溜めに鷺(さぎ)くらいはいけるのではないか。

先客はおそらく近所のオジさんだろう、ただ一人。
ポジション的にあちらからは丸見えながら
こちらからは首を振らねば様子が判らない状況だった。
それでも気づかれずにちょこちょこうかがうと、
さんまのひらきで焼酎を飲んでいることは判明した。

おさげの女将に飲みものを訊かれ、
即座に瓶ビールをお願い。
さすがに銘柄を訊ねる余裕はなかった。
出てきたのはキリンのラガーだ。
いいでしょう、許容範囲であるからネ。

おもむろにつまみの品書きをチェックする。
ボードと貼り紙の二段構えながら品目は限定的。
安価な順に紹介してみましょう。

 チーズ・ポテトサラダ・にら玉  各300円
 きゅうりもみ・あつあげ  各320円
 豚もつ煮込み・ウインナー焼き・
 鮭焼き・餃子・ほうれん草  各350円
 まぐろ・さんまひらき 各400円

計12品、これだけである。
どうやら固定メニューではなく、
日替わりで何品か入れ替える方針のようだ。

ほうれん草とあるのは
ごま和えかもしれぬが、おそらくおひたしのハズ。
まぐろは言わずとしれた刺身だろう。
あいや、ブツかもしれないな。

あとに飲み会が控えているから
注文するのはビール1本につまみが1品くらいのもの。
ここでまぐろはさすがにリスクが伴う。
不味い餃子は食えるけど、
ダメな刺身はどうにもならない。

コップに2杯目のビールを味わいながら沈思黙考。
いや、餃子はないだろう・・・煮込みもなァ・・・
鮭じゃ週末の和朝食だぜい・・・ならば、にら玉にしとくか・・・

そのとき引き戸が開いて、お客が到来、
黙考は中断の憂き目をみたのであった。

=つづく=

2014年2月24日月曜日

第780話 あとずさりの大衆酒場 (その1)

いやあ~、まいりましたヨ、驚いた。
いやネ、つい一昨夜のことですけど、
その夜の飲み会は板橋区・板橋の開催。
例によって他のメンバーより先着したJ.C.、
どこかヨソで行きがけの駄賃と
軽く一杯、独り飲みを目論んだ。

時間はたかだか30分しかなく、文字通り一杯しか飲めない。
何度か訪れたJR埼京線・板橋の駅前盛り場で
初めての店を開拓する腹積もりだった。
家を出たときからかねてより聞き覚えた大衆酒場、
「明星(あけぼし)」に狙いを定めてはいた。

店の前を素通りしているから
アルミサッシの引き戸には見覚えがある。
4枚の引き戸の中央2枚の前に植木鉢が三つ四つ。
ちょっと見は障害物っぽく、
酔客が千鳥足で流れ着いたら、けつまづいちゃう。

中の様子は皆目見当がつかない。
外に品書きも何もない。
こういうのは不気味でありながら密かな楽しみをいざなう。
どんな世界が待ち受けていることやら・・・
出たとこ勝負の「えいやっ!」で入店するのだ。

右端の戸に”出入り口”とあった。
右端のサッシを左に引くのだから
左手で引いたほうが身体を滑り込ませやすい。
これを右手で開けてるようじゃ、まだまだ酒場修業が足りない。

スルッと引いてスイッと入店。
だけどネ、だけどですヨ、次の瞬間、全身が凍りついた。
完全にフリーズ状態である。
数秒後フリーズは溶けたものの、一歩あとずさり。
出来るものなら、許されるのなら、
も一度、一から出直したい。
アタマの中で由紀さおりの「手紙」がこだましている。

TV番組を実際に観たことはないけれど、
キタナシュランの星三つ(★なんてあるのかな?)は
いただけちゃいそうな光景が拡がっていた。
なんつう~んだろうネ、こういうの?
とにかくありとあらゆる物が店中ところ狭しと散らばっている。
いえ、店側としては単に置いたんだろうが、
客側としては散らかっているようにしか見えないんだな。
店の名誉のためにあまりツッコミたくはないけれど、
わが目を疑いやした、久々の茫然自失でありやした。

あとで調べ直して判ったが「明星」の開業は昭和23年。
いや、まいったな、ホントに終戦直後にタイムスリップだ。
それにしても食糧難の時代にいったいこの酒場は
何を飲ませ、何を食わせていたんだろうか?

われに返ってカウンターの席に着こうにも
椅子の上にはスーパーかどこかのレジ袋。
中には食料品が詰まっている。
見たところ50代後半と思しき女将がすぐにどけてはくれたがネ。
いや、まいったな・・・ハハ、まだ言ってるヨ。

=つづく=

2014年2月21日金曜日

第779話 理解不能の唐揚げブーム (その2) にせどろ千夜一夜 Vol.10

上野は不忍池にほど近いフーゾク街に「赤提灯」はある。
実は昨夜も数ヶ月に一度の割合いで集う、
食事会の二次会で流れてしまった。
メンバーには好評でこれからリピーターが出てくるに相違ない。

品書きをつまびらかにしてみよう。

=酒=
 生ビール(中)     577円
 ビール大瓶        420円
 緑茶ハイ        420円
 レモンサワー       420円
 日本酒1合        262円

=料理=
*名物料理
 ガツ刺し         315円
 レバー唐揚ポン酢   367円 
 もつ煮込み        367円
*お気軽おつまみ
 冷奴           262円
 しらすおろし       262円
 じゃがバター      367円
 冷やしトマト        367円
*サラダ
 ポテトサラダ       262円
 わかめサラダ       515円
*麺類
 焼きうどん        515円
 あんかけ焼きそば   630円
 長崎皿うどん       630円

ほかに刺身・串焼き・揚げ物・酢の物・納豆料理などが並ぶが
キリがないのでこのへんでやめる。
J.C.は一人で訪れることがほとんど。
ここでは晩酌のあとに食事をすることが多い。

いつものパターンは焼きとん2~3本をつまみに瓶ビールを飲み、
レモンサワーか日本酒に切り替えてカキフライかイカフライ。
最後に長崎皿うどんで締める。
ここの皿うどんは秀逸。
細い揚げ麺を焼きそばに替えるとあんかけ焼きそばになり、
たまさかこちらにすることもある。

一夜、出張で上京して来た旧友と訪問。
たまにはパターンを変えてみようと思い、
相方と吟味の末、初めて注文したのがこの2品だ。
自家製厚揚げ焼き(420円)
レバー唐揚ポン酢(367円
いや、これが大成功。
前者は豆腐の唐揚げといったふう。
削り節とおろし生姜もたっぷりと、他店の厚揚げとは根本的に違う。
後者はカラリと揚がった豚レバーと
ポン酢&もみじおろしの相性がすばらしく、
うれしいのはレバーの下に潜むオニオンスライスだ。
理解不能の唐揚げブームのなか、こんな唐揚げたちなら大歓迎。
以来、必注の2皿と相成った。

大瓶ビールがたったの420円。
ビール好きのパラダイスがここにある。
 
「赤提灯」
 東京都台東区上野2-10-4
 03-3835-496

2014年2月20日木曜日

第778話 理解不能の唐揚げブーム (その1) にせどろ千夜一夜 Vol.10

ウチのマンションの隣りのビルに
鳥の唐揚げスタンドが出来たのはいつだったろうか。
おそらく2年ちょっと前のハズ。
開業してしばらくはダクトから流れ来る、
油臭い匂いに閉口したものだった。

「とんでもねェモンが出来やがったなァ!」―偽らざる心境だった。
その後ダクトを改良したせいか、さほど気にならなくなったが
風向きによっては今でも
油とにんにくと醤油が入り混じった匂いが風に乗ってやって来る。

ときどき行列ができている。
そんな人気ぶりを見るにつけ、
昨今の唐揚げブームはいったい何なんだ? 
首をひねってしまう。

全部が全部じゃなかろうが
そして間違ってたらゴメンだけれど、
ブラジルあたりの安い冷凍チキンを大量に仕入れ、
秘伝の味付けだなんだと言葉巧みに売りさばいている様子。
どうにも理解に苦しむブームである。

さて、それはさておき、
千円でべろべろに酔わせてくれる店が”せんべろ”ならば、
二千円で泥酔できる店は”にせどろ”。
久方ぶりに
=にせどろシリーズ=いきます。

ところは東京メトロ銀座線・上野広小路と
同じく千代田線・湯島の中間あたり。
道筋に風俗ストリートの上野仲通りがあって
立ちんぼうの日本男子と中国女子が
引かれたくもない袖をさかんに引く。

「オニイさん、オニイさん!」―
かしましい中国勢♀はまだ可愛げがあるが
日本勢♂は揃って強面。
中には昨日まで臭いメシを食ってたんじゃないかと
おぼしきアンちゃんもいたりして、いやはや怖すぎ。
あれじゃ客もビビるだろうに―。
どう考えても逆効果だと思うんだがねェ。
唐揚げブーム同様、まったくの理解不能。
少しは考えたほうがいいんでないかい?

湯島方面から仲通りを行くと途中で右折、
逆に広小路から行けば左折してすぐ、
真夏のビアガーデンみたいに赤い提灯が
いくつも軒先にぶら下がった大衆酒場がある。

その名も「赤提灯」。
大塚駅前の「大提灯」よりもこちらのほうが大箱だ。
以前は湯島天神下の交差点そばにあったが
数年前に移転してきた。
まっ、徒歩で数分の距離ではあるがネ。
実はこの店を最近、見直してしまったのだ。

=つづく=

2014年2月19日水曜日

第777話 日仏友好たらちり 男やもめのキッチン Vol.9

昨12月と今1月の状況から
この冬は暖冬だとタカをくくっていたら
とんでもございませぬな、けっこう寒いじゃないの。
気温や風速よりも問題は雪。
東京でこんなに降るのはあまり記憶にない。
それでも東京の雪(除く奥多摩地方)など、
可愛いもので北関東で孤立している村々はお気の毒、
心からお見舞い申し上げたい。

”寒”極まってくると、やはり恋しくなるのは温かい鍋と熱燗。
よって今話は久々に
=男やもめのキッチンシリーズ=いきます。

さて、どんな鍋にしましょうかの?
湯豆腐じゃちとわびしいし、
寄せ鍋なんてのは男やもめにゃ仰々しすぎる。
結局は薬局、大好きなたらちりにいたしましょう。

ただし、ありきたりのたらちりじゃ面白くも何ともない。
そこでアッと驚く裏ワザをご披露する気になった。
名付けて日仏友好たらちりときたもんだ。

用意する食材(2人前)は
=1st ハーフ=
 真だら切り身・・・・・2切れ(生 or 甘塩)
 出し昆布・・・・・Pasmoカード大1枚
 木綿豆腐・・・・・1丁
 長ねぎ・・・・・1本
 春菊・・・・・・1把
 きざみねぎ&大根おろし・・・適量
 ポン酢・・・・・適量
=2nd ハーフ=
 上記同様に真だら2切れ
 プチトマト・・・・・8個
 ルッコラ・・・・・・1袋
 ニンニク・・・  適量
 マヨネーズ・・・・適量
 
①真だらを一口サイズにカットして塩をする。
  その間15分ほど。
  塩だらには必要ナシ。
②鍋に水を張り、昆布を投入しておく。
  その間15分ほど。
③豆腐を一口サイズにカットし、
  電子レンジで1分を2回、計2分チンして水気を飛ばす。
④野菜を好みにカットし、薬味のきざみねぎとおろしの用意。
⑤鍋を火にかけ煮立ったら具材を随時投入し、ポン酢でいただく。
                 =以上1st ハーフ=
⑥前半の名残りを鍋から丁寧にすくい去る。
⑦生にんにくをすりおろし、市販のマヨネーズと和えて
  アイオリを作っておく。
  ここに一味やカイエンペッパーを加えると、ルイユになる。
⑧真だらは同じく一口サイズ、トマト&ルッコラはそのまま煮て
  アイオリをつけていただく。

純和風のたらちりがアイオリによって南仏風に大変身。
より本格的にするには後半、
魚介スープ(フュメ・ド・ポワソン)を使用すればスープまで楽しめる。
1st には白滝・せり、
2nd にはグリーンアスパラ・ゆでうずら卵もオススメ。
一鍋で二度美味しい日仏友好たらちり、ぜひともお試しあれ。

2014年2月18日火曜日

第776話 兵庫横丁の隠れフレンチ (その2)

和建築ではないが民家を活用した「ARBOL」。
なだらかにくだる兵庫横丁の中腹にある。
横丁の名前の由来は鎌倉の昔、
武器商人の町であったことから―。
 兵庫→兵器庫→武器庫
ということだ。

「ARBOL」はテラスも備えており、
寒い時期はクローズしているが夏場の週末など、
外まで客があふれていた。
前述した通り、玄関にはご丁寧に“F田”の表札あり。
階上に誰かが住んでいるとも思えないが、
それならば、何のための表札?

鎌倉の昔から、もとい、
現代の鎌倉からやって来た、のみとも・P子を伴って訪問。
ダイニング・フロアにはゆったりした空間が拡がる。
手軽な価格の豊富なワインが魅力だ。
周りを見渡すと、若いカップルやグループ利用が目立つ。
年配者はきわめて少なく、わが身が最年長ではなかろうか。

通されたのは大テーブルの相席。
とはいっても隣りとの間隔が保たれており、ストレスは感じない。
アサヒ熟撰の生は小さめのグラスで600円、J.C.はそれを。
相棒はグラス700円のシャンドン・ロゼだ。
グラスワインはおおよそ700~950円といった値付け。
当夜はこのあと、神楽坂下の焼き鳥屋に流れる腹積り。
ボトルワインは見送った。

飲みものとともに胚芽パンと、
フロマージュ・ブラン(クリームチーズ)が突き出しとして登場。
まずまずのご提供である。

注文した料理は以下3品

 自家製いろいろ野菜と鴨スモークの入った田舎風パテ(600円)
 大分県 軽く〆た天然さば 徳島スダチとハニー正油ソース(1200円)
 飛騨 たっぷりモッツァレッラ入り千両なすとズッキーニのラザニア(950円)

最初のパテはいわゆるパテ・ド・カンパーニュ。
野菜が多く肉の醍醐味に欠ける

続いての〆さばもパッとしない。
これはむしろ添えられた生野菜のほうがいい。 
さばは全て天然だろうに

ラザニアはボリュームじゅうぶんで味もけっこう。
二人で分けるにちょうどよい

北イタリア・ピエモンテのバルベーラ種、
エルバルーナ・ラベットラ(800円)を2杯。
グラスは大きめでワインの質もよし。

概して接客はフレンドリーで好印象。
ただし、料理やワインに精通したスタッフは身受けなかった。
仏人オーナーが目立つ神楽坂のフレンチは
クラシックな料理をウリにする店が主流。
その中にあって真逆的存在といえる。
そのせいか仏人には受け入れ難いようで外人は皆無だった。
とはいえツレはそこそこ満足の様子、まずはヨシとしておこうか。

「ARBOL」
 東京都新宿区神楽坂4-7
 03-6457-5637

2014年2月17日月曜日

第775話 兵庫横丁の隠れフレンチ (その1)

「アアッ~!」―真夜中に思わず悲鳴を上げた。
いえ、殺人事件を目撃したわけじゃないが
出し抜けの惨劇に凍りついてしまったのだ。
そう、われらが羽生結弦の転倒である。

ソチに来てからというもの、練習も含めて
失敗がただの一度もナシと聞き及んだ4回転ジャンプ。
何で肝心要の場面で出ちゃうかネ。
終わってみれば、”銀”のP・チャンとの点差は
逆に開いていたけど、ホンマ心臓に悪いアルヨ。

団体のSPを終えた時点でのみともやポン友に
「一度くらい尻餅ついても羽生の”金”は動かない!」―
豪語していただけに顔色を失った。
やはり頂点を目指す滑走者は
ギリギリの難度に挑戦しているだけに
大きなミスと背中合わせなんだねェ。
でも本当によかった、何はともあれ、めでたし。

ハナシはいきなり、ソチからコッチへ。
舞台はかつて花街として栄えた神楽坂。
とあるミッションも手伝い、
最近、この街をひんぱんに訪れている。

都内23区でJ.C.がいつくしむ街は浅草と銀座。
この”金”・”銀”のワン・ツー・フィニッシュは未来永劫だが
”銅”はそのときどきでコロコロ変わる。
門仲・向島・西荻などと並び、神楽坂もその一つなのだ。

何たって、ここで飲む酒は旨い。
料理のほうは意に反してときどき裏切られるが
晩酌にはとても適した街といえる。

有名な本多横丁の西側に
これぞ神楽坂! という雰囲気を漂わせる細い坂道がある。
その名も兵庫横丁。
途中に石段なんぞがあって情緒たっぷり。
灯ともし頃にそぞろ歩けば、
頭上から三味線(しゃみ)の爪弾きが降りそそいできそうだ。

兵庫横丁をご存知の方は
かなりの神楽坂通を自負しても許されますヨ。
そこそこ名の知られた店々が並んでいるのに
横丁の知名度はけっして高くない。
道を行き交う人もめっきりと減るのだ。

ある日、坂を下る途中に「ARBOL」という仏料理店を発見。
F田サンなる民家で、玄関には表札とインターフォンが出ている。
変わった店だよねェ、っていうかァ、何かヘンだよなァ。
玄関先にはワインリストとメニューの立て看板も出ている。
以来、通り過ぎるたびに
盛況ぶりがうかがえたりもして、ずっと気になっていた。

そんなとき、たまたま鎌倉ののみともからレンラクがあり、
渡りに舟と誘ってみたら、二つ返事で乗ってきた。
フフッ、相変わらず能天気なヤツよのォ・・・。

=つづく=

2014年2月14日金曜日

第774話 途中下車は熱海と藤沢 (その2)

JR熱海駅から徒歩数分。
「御冨久路」なるラーメン店にいる。
ほどなく焼き餃子が出来上がった。
特製にんにくニラ餃子と称するヤツだ。

うむ、確かににんにくもニラも効いている。
なかなかのデキでビールにもピッタシ。
ほぼ満腹だったのに6カンがすんなりと胃に収まった。
餃子から推測するにラーメンもイケるのではないか。
醤油らぁめん、塩らぁめんはどちらも650円。
帰宅後、チェックしてみたら地元では評価の高い店であった。

シャッター閉まりすぎの商店街の坂を上り、
再び上り電車に乗り込む。
餃子を食べながらぼんやりと
次は藤沢で降りるつもりでいた。
藤沢で飲むのは初めてのことだ。

到着すると、雨足が強まっている。
キオスクで雨傘を買おうと思ったものの、
駅構内はたいそうな人波。
こりゃ、早めに抜け出したほうがよさそうだ。

駅そばのコンビニに入ったものの、
突然、雨が小降りに転じて、これなら傘ナシでもOKだ。
目星をつけていたのは「みっちゃん」という居酒屋。
正しくは「やきとん 焼鳥 みっちゃん」であるらしい。

ここのウリはキリン一番搾りの生中と
角ハイボールでともに314円。
ずいぶん安いじゃないか。
そのせいか、客のほとんどがこのどちらかを飲んでいる。
ホッピーセットが504円、レモンサワーは441円。
生中と角ハイの値段が際立っている。

けっこうなサイズの中ジョッキがやって来た。
なかなかの迫力だ
壁のポスターにはこうあった。
”魔法のジョッキでご提供中”
”真空2層構造で最後の一口まで冷たさキープ!”
”通常のジョッキの1.1倍です”
だけど、この2層構造が曲者で
とても1.1倍の容量があるとは思えなかった。
飲んだ印象は通常の0.8ってな感じ、道理で安いわけだ。

さすがにつまみに食指は動かない。
動かないが、やきとんのシロ(147円)と
レバ(105円)をタレで1本づつお願い。
どちらも良質

辛味噌を添えた生キャベツのお通し(294円)が余計ながら
まずまずのCPの高さじゃなかろうか。

ビールは1杯で切上げ、あとはレモンサワーを1杯に角ハイを2杯。
食べもんはいっぱいイッパイなのに
どうして酒はスイスイ入っちゃうんだろうねェ。
われながらあきれつつ、東京行きの列車に乗りましたとサ。

「御冨久路」
 静岡県熱海市田原本町2-11
 0557-83-2481

「みっちゃん」
 神奈川県藤沢市南藤沢3-6 三丸藤沢ビルB1
 0466-50-1588

2014年2月13日木曜日

第773話 途中下車は熱海と藤沢 (その1)

ミナミマグロの街、清水をあとにした。
これがマグロの代わりにカツオであったなら
”南国土佐を後にして”、
ペギー葉山の伸びやかな歌声が耳にこだましたことだろう。
とにかく、お腹はいっぱい、しかし、ビールなら入る。
何となればJ.C.の場合、麦酒は別腹だからネ。

清水から乗った東海道線は当然、上り電車だ。
東京までおよそ150キロ、下車候補駅を思い描くと、
富士・沼津・三島・熱海・小田原あたり。
う~ん、ここは熱海かなァ・・・。

でもって、降りやした熱海で―。
海方向に向かい坂を下ってゆく2本の商店街に活気が失せている。
一時期、復活ののろしを上げた熱海だったが
結局は薬局、もうダメなのかもしれない。

アーケードを抜け出たところに居酒屋風の中華屋を発見。
暖簾越しにのぞくと、初老の店主が立ったまま新聞を読んでいる。
やれやれ、この店もダメなのかもしれない。
だけど費やせる時間があまりないし、
食いモンなんかどうでもいいんだし、
どこの店で飲もうと、アサヒはアサヒ、サッポロはサッポロじゃないか!

ただネ、店名が「御冨久路」っていうんだわ。
”おふくろ”と訓ずるが、ダサさ、やぼったさの極みだぜ。
通常、この手の屋号は看過するところなれど、
事情が事情、大したちゅうちょもなく入店の巻である。

いきなり新聞立ち読みの店主と視線がバッチリ衝突した。
先方が会釈したので、反射的にこちらも頭をペコリ。
すると奴サン、新聞を手にしたままカウンターに着席したヨ。
何のことはない、彼は店主じゃなくて店の常連、
注文した醤油ラーメンの出来上がりを待っていたらしい。

カウンター内の厨房で、ラーメン作りに励んでいたのは
30歳前後かな? こちらが店主であった。
おいおい、まだ若いのに「御冨久路」はないだろがっ!
まっ、命名にはそれなりの理由があるんだろう。

さて、肝心のビールは生がアサヒ、瓶はサッポロ。
いいでしょう、いいでしょう、我慢したかいがあったというものだ。
即座に生ビールと餃子をお願いした。
いや、餃子が食べたかったわけじゃないけれど、
こういう店で飲みものだけじゃカッコがつかない。
って言うかァ・・・、一種のルール違反になるんだわサ。

落ちぶれ果てても、J.C.は武士じゃ!
注文の仕方だけは知っており申す! なのである。
中ジョッキをまたたく間に飲み干し、続けて黒ラベルを所望した。
餃子はいまだ焼き上がってはこない。

=つづく=

2014年2月12日水曜日

第772話 桜海老を空振って (その2)

東海道本線・清水駅にほど近く、
国道149号線沿いの「清水うなぎ店」に独り。
若女将といったふうの女性にビールの銘柄を訊ねると、
プレミアム・モルツの中瓶(650円)だけだという。
天敵の名前を告げられ、
映画「八甲田山」の北大路欣也サンじゃないが
「天はわれを見放したか!」―てなもんや三度笠。

永チャンも結子も罪作りな者たちよのォ。
あのCMのおかげでここ数年、
サントリービールが売れ出しちゃったじゃないか。
かく言うJ.C.、若い頃はサントリー純生を愛飲してたんですゾ。
久しぶりにあのビールを飲んでみたい。
復刻版を出してくれないかな、サントリーさんヨッ!

さて、天を仰いだあとは急遽、方針転換の巻である。
瞬時にビールをあきらめた。
好きなビールは2軒目で飲めばそれで済む。
よってお願いしたのは熱燗だ。
本当はぬる燗と熱燗のちょうど中間、、
上燗(じょうかん)だが、外ではなかなかその注文が通じない。
肝心の酒の銘柄は黒松白鹿(420円)だった。
これならまったく文句はない。

酒と同時に肝焼き(2本で700円)とうな丼並(2100円)をお願い。
待つこと数分、お燗と一緒に骨せんべいが運ばれた。
鰻屋の定番といえば定番
さして旨いものでもないが
ベター・ザン・ナッシングであろうヨ。
ましてやサービス品、ここは素直に感謝、カンシャだ。

壁の品書きにうな重は蒲焼とごはんが別盛りとあった。
いわゆる蒲焼ごはんだが、こればかりは一緒盛りのほうが断然よい。
それによって人馬一体感に似た雰囲気が醸しだされるからだ。

そうこうするうち、今度は肝焼きが上がってきた。
立派な肝は迫力満点
粉山椒を振って口元に運べば、
たちまちその口元がほころぶ。
鰻屋に行くと、肝焼きとうな丼の一番小さいのを頼むのが常。
この組合せがベストと信じて疑わない。

1本の肝焼きで酒を飲み、もう1本はうな丼とともに味わう。
これが最高なんですな、ジッサイ。
どんぶりは漆器であった
フタを開けると小ぶりなヤツが丸1尾
このサイズでじゅうぶんすぎるくらいじゅうぶん。
もともとうなぎは小さめに如くはなし。
脇役はコレ
吸い物に肝の姿はなかりけど、
2本の肝焼きをやっているのですでに満足。
新香のたくあんと白菜漬にも手抜かりがなかった。
これで支払いは3千円とちょっと。
鮨屋ならこの3~4倍はいったであろう。

このまま清水にとどまり、2軒目とも思ったが
ここは行き掛けの駄賃ならぬ、帰り掛けの駄賃てこって
どこかほかの街に移動しよう。
そぼ降る小雨の中、傘も差さずに駅へと引き返す。
桜海老を空振って、うなぎに転じた清水の街をあとにした。

「清水うなぎ店」
 静岡県静岡市清水区江尻東3-10-1
 054-366-1649

2014年2月11日火曜日

第771話 桜海老を空振って (その1)

桜海老が大好きだ。
海老類の中では一番好きじゃなかろうか。
そう、伊勢海老よりも、車海老よりも、芝海老よりも・・・。
殊に新玉ねぎと合わせた、かき揚げには目がない。
釜揚げの桜海老を大根おろしと一緒にいただくのも大好物。
小指の先ほどもない小さな身体に滋味が満載されている。
まっことエラいやっちゃ!

その日は桜海老を求めて東海道線の旅。
行く先は本場・由比の町である。
目指すは「さくら屋」なる桜海老専門の食堂だ。
ところが仕掛けが遅かったものだから
由比駅に到着したのがすでに16時。
駅からそこそこ歩かなきゃならないし、あいにく天気は雨模様。
しかも16時過ぎには店仕舞いをしてしまう店なのだ。
こりゃ間に合わん。

よって由比で下車せず、そのまま気ままに車中の旅人を決め込む。
どこかにぎやかな街で降りて桜海老の代替品を探さなければならぬ。
静岡じゃちょいと遠すぎるし、
かといって沼津や三島にとって返すのもシャクだ。

結局、降り立ったのは清水駅だった。
まだ浅い時間だから中休みで閉めている店のほうが多い。
難儀なことである。
およそ10年ぶりで「末廣鮨」に立ち寄ってみようか・・・。
ミナミマグロで名高い人気店ながら
それほどマグロが食いたいワケでもナシ、
第一、ふところ具合が少々さびしいから鮨屋は見送ろう。

アーケードの商店街を端から端まで歩いてみたものの、
ピンと来る店が皆目見つからないのは
やはり時間が早すぎるのだ。
「西友」だったかな?
スーパーの食料品売場で時間をつぶし、
再びアーケードに舞い戻っても同じこと、まいったなァ。

それでも商店街のはずれに1軒の鰻屋を見とめた。
屋号は「清水うなぎ店」。
ずいぶんベタなネーミングだけれど、
店のたたずまいに惹かれるものがあった。
稚魚不足からここ数年、鰻の値段が高騰しているが
鮨屋に比べりゃ、相対的に鰻屋のほうが安い。

桜海老のつもりが何で鰻になるんだヨ。
自問しつつも引き込まれるように敷居をまたいでいた。
予想した通り先客はゼロ、貸切状態である。
身体は冷えているのに例によってまずはビールだ。
念のために銘柄の品揃えを質してみると、
マンマ・ミーア!
絶望的な返事が返ってきた。

=つづく=

2014年2月10日月曜日

第770話 ソチに合わせて東京も雪

ソチ冬季五輪が始まり、寝不足の日々。
しかしながら仕事がらみの夜更かしと違い、肉体的にツラくない。
徹夜の残業はキビしいけど、
麻雀の徹マンはそうでもないのとおんなじか?

一昨日の土曜は東京にもずいぶん雪が降った。
新しい東京都知事は舛添サン。
細川サンの不人気は意外だったが
とにもかくにも、”そのまんま”が立候補して
そのまんま当選しなくてよかった、よかった。
何せ大阪にゃ、おかしくも悲劇的な前例があるからネ。

それより新種目に採用されたフィギュアスケートの団体戦。
羽生結弦クンのSPは圧巻だった。
何のプレッシャーも感じさせずに
シレッと滑ってサラッと跳んだ感じ。
スゴいなァ、過去にこんなヤツはいなかったぜ。

観ていて思ったが彼は歌舞伎界でも超一流として通用する。
玉三郎の上をいくんじゃないか?
玉さぶファンのオバさんたちに叱られるかもしれないけど、
素直にそう思いました。
J.C.にそっちの気(ケ)はないが
武田信玄や織田信長ならハマるだろうネ、きっと・・・。
まっ、そのアタリにはあんまりふれないようにしましょ。

真央チャンはあれで精一杯、とにかく緊張し過ぎだった。
男子のパトリック・チャンですらあの演技だから
やはり五輪本番の舞台はハタから観ている者には
想像できない圧力が掛かるものなんだ。

モーグルの上原愛子。
彼女のメダル逃がしは不可解だった。
カナダの姉妹には譲るとしても
ミスの目立ったアメリカの第一人者が上に来たのは何だかなァ。
採点競技はときとして観客に納得のいかないモノを引きずらせる。

思い起こすはシドニー五輪、最重量級の柔道。
そう、日本・篠原とフランス・ドイエの一戦だ。
世紀の大誤審にクレームをつけられなかった国民栄誉賞受賞者は
言葉の壁が厚かったにせよ、情けなさすぎた。

代わりにNHKの女子アナ・有働サンが
涙を流さんばかりに憤慨していた姿がなつかしい。
その後、彼女は局のお偉いサンにずいぶんお叱りを受けたことだろう。
でも、国民の憤りを見事に代弁してくれていた。
最近では腋の下の発汗が話題になったりもしたけれど、
好きだなァ、あの人・・・。

さて、それはそれとして
これから女子フィギュア・フリー、鈴木明子の演技だ。

2014年2月7日金曜日

第769話 焼き鳥はかくあるべし (その3)

有名店ながらロケーションがロケーションなので
神楽坂の隠れ家的店、「白金 酉玉」のカウンターにいる。
ハートランドの中瓶を飲みながら
食べるべき焼き鳥を吟味しているのだ。

目の前には突き出し代わりの野菜スティック。
きゅうり・にんじん・大根が同居している。
あとはうずらの生玉子をポトンと落とした大根おろし。
粗めにおろした鬼おろしだ。

気になったのは卓上に置かれた三色の小樽、
なかなかにオサレだ。
中身を試してみると、赤樽は七味、茶色は山椒、
はて白い樽はなんだろうネ、コレ?
どうも生姜の粉末のようだ。
接客のオニイさんに訊ねたら、やっぱりそうだった。

いの一番の串は丸ハツ、いわゆるハートだ。
キレイに掃除されており、ありがちな血栓は皆無。
丁寧なシゴトといえよう。
小豆(アズキ)は俗にいうチレ、脾臓のことだ。
ずいぶんとレア状態できた。
この時点ですでに串の受け皿は血の海。
気の弱いお嬢さんなら退散するかもしれない。

ちょうちんは金の玉が2個(失礼!)、口中で弾けた。
卵管部分もクチュクチュと味わい深い。
アッサリ甘めのタレによく合っている。
胸肉の脇部分のえんがわはクニュクニュの食感で
そろばん(首肉)に似ている。

続いては大好物の背肝(腎臓)だ。
これは期待したほどのインパクトがなく、やや不満。
雄鶏の白子が入荷しているとのことで即お願い。
天豆(そらまめ)サイズが5個、塩焼きで現れた。
たら白子のようにポン酢も添えられ、まずまず。

締めはキンチャク(雄のホルモン)。
これだけはニンニク醤油味で供される。
おかげで舌の感覚が一気に朝鮮焼肉の世界に突入だ。

ついでだから稀少部位の説明をしときましょうか。

みさき(雌の尾) ぼんじり(雄の尾) 油つぼ(尾腺)
おたふく(胸腺) 心のこり(動脈) おび(モモの外側)
ソリレース(モモの内側) 羽子板(挫骨上部の筋肉)
銀皮(砂肝回りの筋肉) べら(十二指腸)
ぺた(皮の分厚い箇所)

こういう焼き鳥屋なら焼きとん屋に等しく、われは愛す。

=おしまい=

「白金 酉玉 神楽坂店」
 東京都新宿区神楽坂5-7 山桝ハウス B1F
 03-6457-5131

2014年2月6日木曜日

第768話 焼き鳥はかくあるべし (その2)

神楽坂上、ちょうど早稲田通り(神楽坂そのもの)と
大久保通りの交差点に近い「白金 酉玉」にいる。
飲みものを紹介したので、今度は食べもののご案内。

=食べもの=

おすすめコース
 酉コース 串7本    1785
 玉コース 串10本    2520
 白金コース 串12本  3150

串 酉 他
 つくね かしわ 皮 レバー ハツ ガツ
 おび みさき ひざがしら アキレス
 そろばん えんがわ おたふく さえずり
 ペタ 背肝 キンチャク 小豆 心のこり
                 以上 210
 ふりそで ちょうちん 豚カルビ ソリレース
                 以上 315
 合鴨 420  土佐の赤牛 525

串 野菜 他
 青唐 ペコ玉 厚揚げ 銀杏 生麩 椎茸
 金針菜 アスパラ アピオス  以上 315
 プロボローネチーズ 473

一品
 冷やしトマト 525  おひたしざんまい 630
 広島こんにゃくのキンピラ 525
 味噌漬けモッツァレッラとセミドライトマトのカプレーゼ 788
 白レバーのたたき 840  ささみの塩こんぶ和え 788
 酉玉丼 840  巨匠の親子丼 997 
 炊き込みごはん 525  とり茶漬け 788

鳥の稀少部位が210円から味わえる。
焼き鳥屋はつくづくこうでなくっちゃいけない。

もともと焼き鳥屋よりも焼きとん屋が好き。
廉価なこともあるが、モツ類が豊富だからだ。
カシラ・タン・ハツ・ナンコツ・ガツ・レバ・シロ・テッポウ。
いや、たまりませんな。

その点、焼き鳥屋だとモツは
ハツ・レバー・砂肝・やげん・ボンジリがあるくらい。
せいぜい、背肝・ちょうちん・ひざナンコツどまりじゃなかろうか。

鳥にせよ、豚にせよ、正肉以外の部位に魅力を感じる。
正肉を食べるなら、鳥はロースト、豚はとんかつが一番だと思う。
「白金 酉玉 神楽坂店」にたまたま出会い、
品書きの”串 酉 他”が目に入った瞬間、
もう身体は地下への階段を降り始めていたんだもんネ。

=つづく=

2014年2月5日水曜日

第767話 焼き鳥はかくあるべし (その1)

2月4日、まっ、早いハナシが昨日のことですが
TVのワイドショーでアナウンサーが言っていた。
「昨日(3日)の温かさから一変して
 今日(4日)の寒さは真冬並みです」―
フン、どこかおかしくないかい?

確かに暦の上では2月4日は立春。
でもネ、1年を通してもっとも寒い時期がこの頃。
いつ寒いか? 今でしょ!
その極寒期だってのに真冬並みの寒さもないもんだ。
近頃のアナウンサー及びTV局はいったいナニ考えてんだか・・・。

港区・白金に稀少部位の豊富な「酉玉」なる焼き鳥店がある。
初訪問は2005年8月、今や昔である。
神楽坂は本多横丁、兵庫坂界隈を徘徊していて神楽坂店に遭遇した。
白金の旗艦店と異なり、こちらは地下だ。
当然のことながら、地上からは店内の様子がうかがい知れない。

ところが親切にも階段の降り口に克明な品書きが2枚貼付されている。
かたや飲みもの、こなた食べものである。
せっかくだから抜粋して紹介しよう。

=飲みもの=

泡もん
 ビール生 プレミアムモルツ   693
    びん モルツ(中)     661
        ハートランド(中)  682
        エビス黒(小)    567
 カバ モンテスキュー      4515
 シャンパン ニコラ・フィアット  6300

焼酎
 ウーロンハイ           525
 生レモンサワー          525
 生すだちハイ           578
 
 不知火               525
 村主(すぐり)           735
 
 宮路                893
 日南娘               788

日本酒
 越乃寒梅             735
  神亀                945
 酒屋の女房の盗み酒       472
 能古見               525
 北雪 佐渡の鬼ころし      399

ザッとこんな塩梅である。
ハハハ、”酒屋の女房の盗み酒”というのが可笑しい。

ビールはほかに小麦使用の白ビール、
ヒューガルテンまで揃っているが
わが嗜好に合致するのはキリンのハートランドのみだ。
まずはお願いした。

=つづく=

2014年2月4日火曜日

第766話 御徒町のガード下

今年に入ってからだから、つい最近のことである。
浅草の雀荘でY沢サンという、面白い人物と知り合った。
麻雀の腕もさることながら、人柄がとても面白い。
実に好人物なのだ。

平成の世になって早や四半世紀、
なかなかこういう人にはめぐり会えなかった。
欲得の算段に薄く、まず自分の損得を考えない。
一度、卓を囲んだだけで好感を抱いてしまった。

それじゃあ、せっかくだからと一献交えることになった。
初回は浅草の大衆酒場と居酒屋をハシゴしたのだが
数日後、約して再飲した。

場所は上野、厳密には御徒町。
Y沢サンは京成線の青砥在住、
にもかかわらず、めったに上野方面には出て来ないという。
その夜が数年ぶりらしい。
いや、驚いた。

訊けば、以前はフランス料理のシェフを務めており、
時期が微妙にずれているものの、
J.C.と同じシティホテルに在籍していたとのこと。
余計に親近感が湧いてしまった。

とにかくワイワイガヤガヤと飲んでみたいとの仰せ。
青砥界隈の飲み屋は静か過ぎてわびしいそうだ。
それじゃあ、アメ横から御徒町にかけての一帯がよかろうと思い、
この街にやって来た次第。

落ち着いたのは御徒町のガード下、駅のホームの真下である。
サカナのデパート「吉池」直営の「味の笛」が行き着けながら
酒とつまみの品揃えに制限があるのでその数軒隣り、
「かっぱ」の2階に陣を取った。

とにかくこの店はバカ安。
殊に月曜の酒類と土曜のつまみ類は特別サービスデーとなる。
当夜はその恩恵にあやかれない日だったが
それでもかなりの安さである。

ここでは瓶ビールで始め、コップ酒に移行するのが常。
J.C.はその路線でいったが、Y沢サンはホッピーが好み。
ビールを二人で数本飲んだあとはそれぞれの嗜好にゆだねた。

つまみはまず、”セット”という名の串焼き3本。
焼きとんのシロ&レバに焼き鳥のねぎまが1皿に盛られ、
これがたったの210円。
しかもなかなかの水準に達しているのである。
そして気に入りの奈良漬だ。
薄いスライスが10枚ほどで、確か159円じゃなかったかな。
相方も気に入ったようで奈良漬をお替わりする。

焼きとんのカシラ、焼き鳥の正肉を追加したうえに
かきフライなんぞもいただき、
しこたま飲んで、勘定は一人アタマ2500円弱。
心から歓んでもらった。

気の合う相手と交わす酒の旨いこと。
いや、それよりも雀荘で知り合った人物と一緒に酒を飲むのは
わが人生、初めてのことじゃなかろうか・・・。

「かっぱ」
 東京都台東区上野5-27-5
 03-3831-3713

2014年2月3日月曜日

第765話 天丼という名の小宇宙

この店を初めて訪問したのはまだ20世紀、1998年のことだ。
夜には酒肴をそれなりに取り揃えて
晩酌にいそしむ向きにも対応するが昼は天丼のみ。
穴子天丼やかき揚げ丼を出すものの、
客の9割方は金1200円也の上天丼を注文する。

店の名は「富士」。
田原町方面から国際通りを北上し、
浅草ビューホテル(かつて国際劇場ありき)の手前を左折、
しばらく行くと左側にある。

その日、浅草での所用を済ませた正午ちょい前。
同じく天丼を食べさせる「多から家」と迷った末に「富士」を選択した。
ロケーションがあまりよくないせいか、
店内に客があふれているのをついぞ見たことがない。
この日も先客はカウンターに二人、
奥のテーブルに人数は定かでないが一組のみ。
それでも数分後には若い男女の三人組がやって来た。
「富士」にしてはまずまずの入りと言わねばならない。

穴子天丼がチラリと脳裏をかすめたけれど、
こちらは1800円と上天丼の5割増し。
昼からそうおごってはいられない。
よって、いつものヤツに落ち着いた。

第一、穴子にしろ、かき揚げにしろ、
最初から最後まで単一の素材と味では
途中で飽きるデメリットがある。
やはり天丼の場合、どんぶりという名の小宇宙に
ヴァリエーションがあってしかるべきなのだ。

ここで理想の天丼を思い描いてみよう。
巻海老・きす・めごち各1尾、墨いか1片、
穴子半尾ということになろうか。

さて、「富士」の小宇宙である。
その陣容は
海老3尾・穴子半身・帆立かき揚げ・蓮根、
それにコロモをつけず、素揚げにした銀杏が2粒。
海老を減らしてきすかめごちが欲しいところなれど、
宮城・松島産の穴子がうれしく、
これ以上のわがままは言えない。

揚げ油はキャノーラ100%。
キャノーラ油は不純物の少ない菜種油の一種。
下町・浅草らしい胡麻油が主張する天ぷらが好みだが
これはこれで悪くない。
相変わらず丼つゆは甘め。
これがもうちょいとキリリとすれば、言うことナシなんだがなァ。

「富士」
 東京都台東区西浅草3-14-9
 03-3844-6940