2022年12月30日金曜日

第3178話 ローストチキンを焼きました

もみの木リキュールを楽しんだのち、
晩酌の肴を求めて雷門のはす向かい、
スーパー「オオゼキ」に立ち寄る。

立派なヤツがそこそこで買えた生わさびは
ずいぶん前から姿を消したままだ。
不動前の行きつけサロン「W」。
その隣りの「オオゼキ」にはまだあるのにネ。

雷門店でよく購入するのは
ノルウェー産スモークサーモン。
これは気に染まっている。
バスケットに投入しといて
あとは豚バラ生姜焼きでも作ろうかな?

目に飛び込んだのは骨付き鶏もも肉だ。
”メリークリスマス”のシールが
パックに貼られている。
家にオーヴンがないため、丸1羽は無理だが
もも1本なら大丈夫だろう、買っちゃった。

とは言うものの、作ったことがないんだ。
どうしたら上手く仕上がるか
ちょいと思案をしはしたが
ネットでレシピなんか見やしない。

結論はスロー・クッキング。
これしかないと意を強くする。
それでは、ア・ラ・キュイジーヌ!

① ペーパータオルを敷いた皿にチキンを置き、
 常温に戻ったら両面に岩塩をガリガリガリ。
 (好みで胡椒だが使わなかった)
② 1粒のニンニクを縦割り4切れ、肉に埋め込む。
③ フライパンを熱し、皮目を下にしてジュッ!
 (油は引く必要ナシ)
 30秒ほどで薄い焼き目がついたら最弱火に。
④ アルミホイルで全体を覆い、
 (空気を抜く隙間が開く程度)
 重石代わりの小皿は底面を上にしてかぶせる。
⑤ 30分後にターン・オーヴァー。
 ニンニクを焦がさないよう皮目の上に避難させ、
 先刻同様にホイルと皿をかぶせ、最弱火で15分。

ハイ、出来上がりました。
チキン以外はニンニク1粒と適宜の岩塩のみ。
所要時間は1時間弱だった。

これなら料理苦手のやもめ暮らしも失敗はない。
焼いてる間、ガスレンジの前でビールを飲むもよし。
TVを観たけりゃ、キッチンタイマー必須。
無いオッサンは最寄りの100円ショップにダッシュ。

肝心の出来映えはどうだったんだ! ってか?
いやあ、完璧でした。
レストランやデパ地下の高級品と比べても遜色ナシ。
しっとりジューシー、、ほっくり柔らか、
それでいて皮目こんがり、たまりませんな。

年の瀬はあちこち行きましたが
紹介するスペースがなく、年明けにあらためてー。
来たるラビット・イヤーが
みなさんの飛躍の年となるよう祈ります。
ピョン、ピョン、ピョン、
三段跳びとまいりましょう。

「オオゼキ 雷門店」
 東京都台東区雷門2-16-11
 03-5830-0731

2022年12月29日木曜日

第3177話 ストラスブールの もみの木リキュール

人柄の好いご夫婦に出逢えてシアワセな気分。
蔵前橋通りを左折し、三ツ目通り。
さっきのうなぎ屋サン「川勇」の店先で
(年が明けたら来るからネ)
つぶやきながら北に向かった。
やって来たのは本所吾妻橋だ。

この街に来たら必ず立ち寄るのが
角打ち「明治屋酒店」。
こちらは明治十六年創業。
「三河屋」、「尾張屋」より
さらに長い歴史を刻んでいる。

レギュラー缶を2つ飲んできたので
大瓶はやめ、中ジョッキにした。
そうしておいて
アルザス リキュール・ド・サパンを所望した。
水割り、ソーダ割りを問われ、ストレートでお願い。
アルコール度数は30度、電気ブランと同じだ、

珍しいことに原料がもみの木(fir tree)の新芽。
薄い緑色はもみの木由来だろうが
着色料も一役買っていそうだ。

J.C.がアルザスの最大都市、
ストラスブールを訪れたのは1974年。
ブザンソンから入ってルクセンブルクへ抜けた、
街の中心部はイル川の中洲。
流水に恵まれて
コロンバージュ(木骨造り)の家並みが可愛い。

仏独による係争の歴史に翻弄され続けてきた土地は
フランス領でありながらドイツ色を強く感じた。
もっぱらビールと白ワインばかり飲んでいて
サパンの存在には気づかなかった。

生ビールをチェイサーにサパンを味わう。
これがもみの木の風味なのだろうか?
あの葉っぱを噛んだことがないので判らない。
今度どこぞで見かけたら、ぜひかじってみよう。

口当たりの第一感はトロ~リとした糖分。
昔からデザートを取らない代わり、
リキュールを好んで飲み続けてきたが
トロ~リ感でサパンの右に出るものはなかった。

産地はストラスブールの南30kmにあるコルマール。
造り手は1874年創業のヴォルフベルジェール社。
グルメ向けの酒造りがモットーの由。
1874年ということは明治七年。
「明治屋」よりさらに古い。
この年の瀬にきて
温故知新の日々が続いております。

「明治屋酒店」
 東京都墨田区吾妻橋3-7-12
 03-3622-1592

2022年12月28日水曜日

第7176話 うなぎにフラれ お好み焼き (その2)

墨田区・石原の「尾張屋」は蔵前橋通り沿い。
浅草の有名な日本そば屋と同じ屋号だ。
軽食&甘味のセット、その名も「松風」。
大仰なネーミングである。

軒続きの隣りでは和菓子や弁当を販売している。
この日はイヴ・イヴ。
季節柄、クリスマスケーキも。

驚いたのは箸袋。
昭和八年創業 伝統の味 
とあった。
数日前の町中華「三河屋」は昭和三年。
静岡VS愛知は5点差で静岡の勝ち、ってか。

目を引くのがかなりのサイズのお好み焼き。
これは食べ切れそうにない
半月二つに分断されて具材は豚肉・キャベツ・玉子。
ソース焼きそばにも豚肉&キャベツ。
脇に真っ赤な紅しょうが。

サラダはきゅうり・レタス・キャベツに
なぜかカニカマ1片。
これが半解凍状態でシャリシャリしやんの。
鮭のルイベみたいなもんだネ。

やはり食べ切れず、半月が一つ残った。
おもむろにみつ豆を手に取った。
寒天に赤えんどう、缶詰のみかん&パイン、
白玉1粒に、黒みつが添えられる。
みつ豆なんて何年ぶりだろう?

奥から店主が出て来て
ダンボールの中身を取り出した。
のし餅である。
これをきっかけに言葉を交わす。

「サトウの切り餅なんかある時代に
 のし餅はよく売れるんですか?」
「いやあ、少なくなりましたねェ。
 昔は1世帯で10枚なんてこともあったけど
 今は1枚か半枚、あとは大会社の鏡餅かな」
「和菓子と洋菓子じゃ大変でしょう?」
「いえ、ケーキはクリスマスんときだけ。
 倅が『不二家』に居たんでネ」

訊けばさっきの女将さんと息子夫婦の家族経営。
どおりで昔の下町の匂いがするわけだ。
女将さんも加わってしばし談笑。
残ったお好み焼きを包むと言うんで
丁重に辞退した。
すると、みかんを二つくれたヨ。

下町の人情に触れることができたのもみな
うなぎ屋サン(サン付けになった)のおかげ。
早仕舞いがなかったら永久に「尾張屋」の敷居を
またぐことはありませんでした。

「尾張屋」
 東京都墨田区石原3-20-8
 03-3622-9437

2022年12月27日火曜日

第3175話 うなぎにフラれ お好み焼き (その1)

朝食のミントティーを飲みながら
前日デパ地下で見た、うなぎ肝焼きを思い浮かべた。
蒲焼きはさほど食べたくないけど、
肝焼きでビールを飲みたし。

墨田区・石原の「川勇」に向かった。
近い駅がなく、蔵前・両国・本時吾妻橋・錦糸町。
どの駅からも速足で10分以上かかる。
両国から歩いた。

13時10分到着。
エッ? 何だヨ、”準備中”の札は?
ままヨと入店すると店主かな?
わりと若めの男性が出て来て
「すみません、お昼終わりました」
「エエッ! 昼は何時まで?」
「1時半ですが、うなぎが売り切れちゃって」

それはないぜセニョール。
数分前に通りすがった店に戻る。
甘味処なんだが、お好み焼き、焼きそばもある。
いや、それはどうでもいいんだ。
さっき店先の貼り紙を見たからネ。
”ビール ハイボール レモンサワーあります”

引き戸を引くと先客ゼロ。
女将さんと思しき女性が一人。
4卓しかないのに2卓はダンボールやら
紙袋やらで埋まり、ちょいと乱雑な感じがした。
とにかく着卓し、頼んだビールはドライの缶だ。
すかさずもう1缶お願いした。

サービスのおつまみは
ピーナッツを糖衣でくるんだような甘いヤツ。
ハハハ、さすが甘味処だねェ、
ビールにお菓子なんて初めて。
うれしくないけど、ポリポリやったら
それなりにビールのアテになってくれた。
合格点。

壁の品書きに見入る。
お好み焼き、焼きそば、おにぎりに甘味の付く、
セットが主流で、そのネーミングがスゴい。
桐壺、葵、若紫など、
みな「源氏物語」全五十四帖の巻名なのだ。

松風に白羽の矢を立てる。
帰宅後調べたら、これは第十八帖であった。
内容は、お好み焼き・焼きそば・サラダ・みつ豆。
うなぎ屋が早仕舞いしたせいで
まったく自分らしくないものを
食べる羽目に陥っちゃったじゃないかー。
イヤなら食わなきゃいいだろ! ってか?
へい、ごもっとも。

=つづく=

2022年12月26日月曜日

第3174話 区境は かつて国境だった

時代が止まったよな「三河屋」をあとにして
平和橋通りを南下しかけた。
真っ直ぐ行けば新小岩、いや、ちょっと待て。
南に行ったら陽光まぶし過ぎ。
北に歩けば背中が温まる、よってUターン。

川の手通りは何度も歩いているため、
ちょいと気分を変えて綾瀬川通りを往く。
人通り少なく、車の走行またしかり。
途中、古隅田川を陸前橋で渡った。
かつてこの川筋は武蔵&下総の国境だった。
今は足立&葛飾の区境となっている。

自然と人工による変遷を経て
古隅田川は往時の姿をとどめていない。
中川から分かれ、流路を西に取って暗渠が続く。
下流600mほどで地表に現れ、綾瀬川に注ぐ。

今はほとんど小川と化した古隅田川沿いを歩む。
界隈の地番は東京拘置所のある小菅。
拘置所の裏門そばの堀は
古隅田川がせき止められた名残りだ。

メトロ千代田線・綾瀬駅西口に到達。
引き戸を引いたのは酒と飯の「かあちゃん」。
実は3年前に入りかけたものの、
あんまりの店名にたじろぎ、ヨソへ回った。

その後、足立区在住の友人から
あそこは悪くないと聞き及び、決断した。
半端な時間に中休みナシもはありがたい。
さして広くもないところに
常連ばかりが7~8人、完全アウェイとなった。

切盛りするのは若い女性が二人。
酒場「かあちゃん」に
かあちゃんはおらず、ねえちゃんが居た。
マスクを外したときに見たら
鼻梁のカタチが似てる、これは姉妹だな。
中学生三人組のあとは姉妹二人組と来たもんだ。

ビールをやめといて酎ハイと厚揚げ焼きをお願い。
入口の引き戸にハッピーアワーは
酎ハイ200円と一筆あったのでネ。
というより常連は酎ハイ一辺倒、郷に従った次第なり。

3杯目と同時にハタハタを追加すると妹のほうが
「マヨネーズ要りますか?」
「いや、けっこう」
小ぶりのハタハタをかじりながら思った。
はは~ん、こいつはアタリメやエイヒレの
マヨネーズと同じ感覚だな。

酎ハイをノドに流し込みながら
迷わずマヨを頼みゃよかったと
悔やんだことでした。

「かあちゃん」
 東京都足立区綾瀬 2-26-8
 03-6662-4333

2022年12月23日金曜日

第3173話 時代(とき)が止まった よな中華

日暮里で乗った京成本線を堀切菖蒲園で降りた。
菖蒲など咲いてるはずもない。
世の中、菖蒲湯じゃなくて柚子湯の季節だ。
駅前の川の手通りを北に向かう。
道路の両側にやたらと中華料理屋が多い。

過去に何軒か訪れたが初めての「三河屋」へ。
ちょっと見、界隈最古と思われた。
酒屋みたいな屋号だが、う~ん、雰囲気あるなァ。
畳敷きの小上がりまであるヨ。

こうなると美味い不味いは二の次、
この空間に身を置けるシアワセを噛みしめたい。
接客は丸刈りのアンちゃん、黒ラベルを通し、
「ちょっと待ってネ」ー
一声掛けてメニューを開く。
ずいぶん若いな、跡継ぎの倅だネたぶん。

もう1軒回るつもりなので
ストマック・キャパに余裕を持たせたい。
かと言って餃子・焼売では味気ない。
ん? 豚ロースの香り揚げか、いってみよう。

厨房にも丸刈りの坊主が見える、しかも二人だ。
はは~ん、これは三兄弟だな、よく似てるわ。
同じ年恰好だからひょっとして三つ子かも?

豚ロースは生姜焼き用が5枚。
小麦粉を軽くはたいて揚げてある。
ガーリック・チップが散らされ、
繊切りキャベツには玉ねぎと水菜も。
ビールにピッタリの一皿だった。

会計時(1050円)、女将さんに訊ねた。
「お店は長いことされてるんでしょう?」
「ええ、昭和3年創業です」
「3年? 30年じゃなくて?
 すると今は3代目くらいですか?」
「4代目です」
「あの3人は息子さん?」
「ホホホ。いいえ、
 近所の中学生の職場実習なんです」
「エエ~ッ! そんなのあるんすか?」
「ちょうど今日が最終日になります」

中学生の職場実習なんて初耳もいいところだ。
世の中変わったんだねェ。
「お店も地域に貢献してますネ。
 どうもごちそうさま」
「ええ、そうだといいんですけど。
 ありがとうございます、またお寄り下さい」

明るい陽射しの下、次は何処へ行こうか。
手びさしで南の空を見上げた。

「三河屋」
 東京都葛飾区堀切4-57-15
 03-3602-1579

2022年12月22日木曜日

第3173話 名前に似合わぬ いかついカレー

カレーが食べたくなって
かねてより狙っていた店に赴く。
ところは原宿、わっれわれオッサンは
オフリミットの竹下通り、そのすぐそばにある。

「みのりんご」は名前が可愛いのと
名代のチーズトッピングがインスタ映えするのとで
若い娘たちに絶大な人気を誇っているそうな。
場違いは百も承知の上、挑んでみた。

おや、おや、花咲く乙女たちも居るには居るが
オッサンも数人、中にはJ.C.と同年配の姿さえ。
10数席のカウンターと2人掛け1卓。
8割方が埋まっている。
オジさんと娘(親子ではなさそう)のツーオペだ。

カレーの品揃えはかくの如し。
キーマカレー<中辛>
チキンカレー<甘口>
ポークカレー<辛口> 以上1000円
ビーフカレー<激辛>   1100円
みのりんごスペシャル   1400円
キーマチーズ       1200円
トマトキーマチーズ    1500円
スペシャルはキーマとチキンの合い盛り。

豚肉好きにつき、迷わずポークまっしぐら。
ドリンクセットはドリンクに加え、サラダが付く。
中生だと+600円、大生なら+800円。
もちろん大、銘柄はハイネケン。
ビール単品も同値だから
サラダのぶんがお得になる寸法だ。

ジョッキではなく
ハイネケンのロゴ入りグラスが来た。
おう、確かにデカいネ、看板にいつわりナシ。
どこにでもありがちな小サラダは
グラノーラのトッピングが効果的。
食感の変化に一役買っていた。

「熱いから気を付けてください」ー 
オジさんがカウンターにドンと両手で置いた、
ポークカレーは迫力満点。
皿もデカいが豚肉もデカい。
200g近くありそうな骨付きチョップである。

問題はキツい塩気。
スパイスもクローヴが主張して
カレーの生命線とも言える、
カルダモンの香りがしない。
大胆であるがゆえに繊細さに欠けた。

若いコが好んでチーズキーマを
食べる理由が何となく判った、
可愛い店名とは裏腹に何ともいかついカレーだ。
奮闘努力空しく、皿には骨と肉が残ったのでした。

骨肉や 敢え無く残る 夢の跡

「みのりんご」
 東京都渋谷区神宮南1-22-7
 03-6447-2414

2022年12月21日水曜日

第3172話 また3時だョ!2人集合

今年も残すところ10日ほど。
振り返ればあまり良いことがなかった。
さりとてイヤなこともなかった。

盟友・N田クンと忘年飲みを催した。
ところは最近ちょくちょく出没する錦糸町。
内房からやって来る彼にとって
いつもの上野より多少なりとも近いしネ。

早仕掛け早仕舞いを心がけるJ.C.、
この日もまた3時集合とした。
2人きりではあるけれど。

1軒目は「亀戸ぎょうざ 錦糸町店」。
「これから飲もうってのに
 餃子なんか食っちゃって大丈夫かい?」
「軽くて小さいヤツだから問題ないヨ」
スーパードライのグラスをカチン。

何のこたあない奴サン、
3皿(15カン)もやっつけやがんの。
こちとら1皿だけなのに。
何が「大丈夫かい?」だヨ、まったく。
それぞれ日本酒と五加皮酒に切り替え、
滞空わずか1時間弱で移動した。

2軒目は先日、白鶴が舞いおりた、
「vivo daily stand」。
取り合えず黒ラベルの生、
続いて仏のピノ・ノワールを抜栓してもらう。
バーテンダレス・山チャンは今宵も元気いっぱいだ。

健啖家のN田はフードメニューとにらめっこ。
いきなり3品ほど注文した。
おう、おう、食うわ、食うわ、
食欲は若いアンちゃん並みと来たもんだ。

かく言うJ.C.も鶏レバーのムースを
バゲットの小片に塗りたくり、
かじってはいたんですがネ。

もう1本抜いてもらい、
山チャン交えてよく飲んだ。
19時過ぎに相方は帰途についたが
ビールに戻した当方は
”居残り佐平次”を決め込む。

此処に来るとつい長居をしてしまう。
次から次と顔見知りが現れるので
話に花が咲いてしまうのだ。

重い腰を上げたとき、
時計の針は22時を回っておりました。
ちっとも早仕舞いじゃないじゃないのサ。
ハァ~!

「亀戸ぎょうざ 錦糸町店」
 東京都墨田区江東橋3-9-1
 03-3634-9080

「vivo daily stand 錦糸町店」
 東京都墨田区江東橋4-21-6
 03-6240-2101

2022年12月20日火曜日

第3171話 戦いすんで 夜が明けて

日本時間0時のキックオフにより、
わりとラクな週明けを迎える予定が
予期せぬエクストラタイムとPK戦。
オフィスで眠い目ゴシゴシの向きも
多かったことでありましょう。

後半半ばまで完璧に封じ込まれていたフランス。
あのまま終了のホイッスルを聞いたら
ファイナリストになった意味がない。
プレジダン・マクロンにしても
カタールくんだりまで出張ってきた甲斐がない。

サッカーというスポーツは
我慢を重ねてゆけば必ず転機が訪れる。
波打ち際に寄せては返すさざ波の如くに。
とは言いつつもせいぜい一矢報いるのが
精一杯だとあなどっていた。

それがまさか同点延長とはネ。
あんなドラマが待ち受けていようとは
夢にも思わなかった。

それにしてもPK戦は酷だ。
せめて決勝では廃止してもらいたい。
引き分け再試合は無理だとしても
延長の延長はサドンデス、
ゴールデンゴール・システムを
導入して欲しいネ、柔道みたいにー。

先攻のフランス、エムバペが決めた後、
メッシの際は見ているほうが緊張した。
まだまだ将来のあるエムバペと違い、
メッシのW杯はこれで終わってしまうのか?
結果はご覧の通り、胸をなでおろす。

欧州と南米、W杯の定番が崩壊した。
富める欧州、病める南米。
世界ランクNo1のブラジルでさえ、
欧州列強との強化試合を簡単には組めない。
そんな環境下でアルゼンチンが
勝った意義はとてつもなく大きい。

’78年ケンペス、’86年マラドーナ、’22年メッシ、
アルゼンチンの優勝は
常に国民的英雄とともにある。

此度の決勝PK戦に
J.C.は’94年米国大会を思い起こしていた。
最後のキッカー、バッジォの蹴ったボールが
クロスバーをはるかに越えていったとき、
すべてが終わったのだった。

TVを消したその足で
リトル・イタリーに出掛けた。
独り残念会の苦杯をなめつつ、
バルバレスコを飲むためにー。

今回は違う。
アルゼンチンに祝杯を挙げるゼンチン。
同国産のストックがないから
隣りのチリ産ピノ・ノワールを代用。
’95年、ブエノスアイレスで飲んだ
マルベックの香りを偲びながら・・・。

あれェ、夜がしらじらと明けてきたヨ。
そろそろ眠ろう・・・おやすみなさい。

2022年12月19日月曜日

第3170話 3時だョ!6人集合 (その2)

「又一順」に集結した顔ぶれは
おなじみの美女軍団に加え、
先日、自宅に招いてくれた高校の後輩夫妻。
軍団と夫妻は初顔合わせである。

ビールのグラスをカチカチ山。
すかさず腸詰&玉子焼きが運ばれ来た。
乾焼蝦仁が続く。
蝦仁は小海老を指すが、けっこうなサイズ。
中華料理の海老は
蝦仁→明蝦→大蝦と大きくなってゆき、
伊勢海老、ロブスターの最大級は竜蝦。
ケチャップの主張を抑えた上品な仕上がりだ。

紹興酒に移行した。
ちょいとおごって中国産花彫酒・龍晶泉の10年物。
これを2本、おのおの好きなようにして飲む。
常温・ロック・氷砂糖入り・お湯割りなどなど。

J.C.的には本日の主役、なまこの醤油煮。
ゼラチン質の歯ざわりが楽しい。
中国の四大乾貨(乾いた貨幣)は
フカヒレ・アワビ・貝柱・ナマコ。
一翼を担うだけのことはある。

前話に記した通り、料理が流れ、
締めはあわびそば(鮑魚湯麺)。
この評判が一番よかったかもしれない。

今年の忘年会はこれが最初で最後。
本日あらためて思った。
会食は6人どまりがいいネ。
それより増えると
言葉を交わさない者同士が出て来るし、
気もバラける。

コロ助の影響で宴席の頭数は
絞るに如くはないことを気づかされた。
これぞ怪我の、もとい、病の功名である。
そして早めの仕掛け&お開きが望ましいことも。
この環境下で3年近く過ごせば、
クセになるのも道理だ。

会計は¥5600・パー・パースン、CPが高い。
よみせ通りのカラオケ・スタジオに向かう。
いつものパターンである。
初顔合わせの面々も意気投合して
次回は下町でケトバシの刺身&鍋を
エンジョイすることになった。

この会は続くネ。
おまけに頻度も高まりそうだ。
何せ、後輩のN々が
前のめりになっっちゃってるもの。

「又一順(ユーイシュン)」
 東京都荒川区西日暮里2-18-3
 0066-9809-43885115
(何でこんなに長いんだ?)

2022年12月16日金曜日

第3169話 3時だョ!6人集合 (その1)

今年を振り返ると、
会食の人数は5人がマックス。
この日は6人が集まった。
年の瀬に年初来最多数の更新である。

集合したのは荒川区・日暮里。
マイ・ブレイクルーム、
「又一順(ユーイシュン)」2階の
円卓並ぶ宴会ルームだ。

土曜の午後3時とあって
部屋はわれわれの貸し切り状態。
快適なこと、この上ない。
食事の後は酔いに勢いを借り、
フォークダンスにハンケチ落としでも
やろうか? そんなアホな。

実は4日前の昼下がり。
当店の1階にJ.C.の姿を見ることができた。
いつものように酒&つまみセットを通し、
中瓶&大根餅を楽しみながら
4日後の料理を選抜していた。
ボールペン&メモ用紙を持参してネ。
少食の身にこのセットはありがたく、
ブレイクルームたり得る大きな要因になっている。

決定した献立の発表。
まず最初に前述のセットを6人分。
各自てんでんばらばらでは
厨房がたまったものではない。

腸詰、干し大根の玉子焼きを3人前づつ。
ドライの中瓶を6本、これでスタート。
続いて
乾焼蝦仁(海老のチリソース)
なまこの醤油煮
アワビ・鶏むね肉・ハム・きゅうりの炒め
古老肉(酢豚)
沙茶牛肉糸(細切りの沙茶醤炒め)
アワビそば

うん、われながらなかなかのオーダーを組んだ。
何度も利用している「又一順」だが
本格的なフルコースは初めての試み。
馬主の半チャンやハマのT子との
二人連れはあっても
ほとんど単身だったからネ。

=つづく=

2022年12月15日木曜日

第3168話 時代(とき)が止まったよな酒場 (その2)

そう、久保田万太郎の命を奪ったのは
1カンのにぎり鮨だった。
鮨種は赤貝である。

その夕べ、洋画家・梅原龍三郎宅(新宿区・市谷)にて
催された宴席で普段は噛みにくいからと
口にしなかった赤貝のにぎり鮨を
他のメンバーの手前、無理して頬張った。

咀嚼はしたのだろうがノドに詰まらせ、
その場でどうにか吐き出せばよいものを
がまんしてトイレに駆け込む途中、絶命に及ぶ。

赤貝や いのちのはての みちづれに

そんなことを思い浮かべながら
4片の赤貝をつまんだ。
ここで酎ハイに移行する。
夜の帳が落ちるとともに客足が伸びてきた。

立て込むというほどでないのは
駅から遠いせいだろう。
「伊勢周」は新小岩と船堀の間にあり、
船堀からならバスで2ストップだ。

焼きとんのレバーを2本タレで焼いてもらった。
お前はしょっちゅう豚レバー食ってるな、ってか?
ハイ、仰せの通りです。

理由はいろいろあって、旨い、安い、早いに加え、
一品料理より絶対量が少なくて済む。
そして肝臓に負担のかかる酒飲みにさやさしい。
言わば、ポークレバー・フォー・マイレバーなのだ。

J.C.は肝臓のためにウコンも欠かさない。
摂取するサプリメントはほかに亜鉛。
こちらは味覚の劣化を防ぐため。
それに老化の速度を緩めてくれている気もする。
ウコン&亜鉛には
20年以上お世話になっているのだ。

一人の客がウーロンハイを通した。
ウーロンハイかァ・・・何年も飲んでないなァ。
「こっちもウーロンハイ下さい!」
懐かしみを覚えた。

ところで炭酸を使わずに何故、
ウーロンハイと呼ぶのだろう?
ハイはハイボールのハイだから
炭酸はマストのハズだがなァ。

腑に落ちないけど、まっ、いいかー。
時代(とき)が止まったよな酒場で
ぼんやり思ったことでした。

「伊勢周」
 東京都江戸川区松江3-3-4
 03-3651-6013

2022年12月14日水曜日

第3167話 時代(とき)が止まったよな酒場 (その1)

西五反田はTOCビル地下、飲食店街を一めぐり。
櫛の歯が欠けるように閉業した店舗が目立つ。
ザッと見、残っているのは3~4割といったところかー。
4年前に利用した「食事処 志野」は今も健在、
そして盛況、競合店がかなり減ったしネ。

ビルの前に五反田駅とのシャトルバスが停車中。
大した距離ではないが乗った。
歩き、電車、バスを組合わせ、
上手いことタイム・キリングしながら
到達したのは江戸川区・松江だ。

同じ松江でもこちらは
宍道湖の代わりに中川が近くを流れている。
江戸川競艇場もそう遠くはない。
ちなみにこの競艇場、江戸川ではなく、
中川の川面を活用している。

16時を回り、開店間もない、
「伊勢周」の敷居をまたぐと先客はゼロ。
此処へ来るのは2018年2月以来だ。
のみともと界隈を4軒も飲み歩いたっけ。

時代(とき)が止まったよな空間に身を置く。
ドライの中ジョッキをグイッと飲って
シアワセを肌で感じた。
ナシレマのせいで空腹感はまったくない。

何か軽いものをー。
赤貝刺しを通し、ドライの大瓶に切り替えた。
「ジョッキで飲むからグラスはいいですヨ」
「あら、だいじょうぶ?」
カウンターはオバちゃん独り、
厨房はオニイさん独り。
客もわれ独り。

ほどなくオバアちゃんが出勤して来て
オバちゃんの横に立ち並んだ。
かなりお歳を召してらっしゃるが
大女将といった風格が漂う。

赤貝は肉薄で軽かった。
おそらく韓国産だろう、でも美味しい。
宮城・閖上の本玉は肉厚だが
目玉が飛び出るほどに高価。
目方で比べりゃ、
黒あわびと変わらないんじゃないかな。
赤貝で思い出されるのが作家・久保田万太郎だ。

湯豆腐や いのちのはての うすあかり

あまりにも有名な句だが
彼を命の果てへと導いたのは
豆腐ではなく、赤貝であった。

=つづく=

2022年12月13日火曜日

第3166話 マレーの朝食 ユニークなり

普段と順序が逆、理髪後のランチとなった。
あらかじめ焦点を当てていたのは
東京では珍しいマレーシア料理店。
TOC(東京卸売りセンター)ビルの近くだから
不動前→大崎広小路へ歩いた。

「ちりばり」は狭いながらも変わった造作。
カウンター&テーブルの奥に半個室があり、
3人以上はそちらに通される。
ちなみに店名はシンガポールでおなじみの
刻み青唐辛子の酢醤油漬けのこと。
卓上に小壺が配備されていた。

当店の一番人気は
特製カレー&海南チキンライスのコンビ。
ランキングのTop3はいずれも鶏飯系だ。
J.C.は事前に決めていたナシレマを
タイガーの小瓶とともに通す。
マレー半島の典型的な朝食メニューがナシレマ。

シンガポールに4年も居て食べたのはホンの数回。
海南鶏飯と比べものにならないくらい少ない。
ユニーク過ぎて現地の邦人には
あまり人気がなかった。

懐かしいルックスのプレートが整う。
写真を1枚アップすれば一目瞭然ながら
ずいぶん前に撮るのをやめたので説明。

中心に片目玉焼きを頂いたライス。
その周りを囲むのが
フライドチキン2片、きゅうり薄切り3枚、
サンバルソース、海老せん2枚、
そしてナシレマには欠かせないイカンピリス。
サイドにチキンスープ。
にっぽんの朝食ならさしづめ、
玉子焼き・しらすおろし・納豆・焼き海苔・
たくあん・豆腐味噌汁といったところだろうかー。

サンバルは唐辛子・玉ねぎ・ニンニク・発酵海老を
じっくり炒め、ペースト状にしたもの。
イカンピリスは小魚の意で
日本のシラスより大きく、煮干しより小さい。
イカナゴの幼魚、コウナゴと同じくらい。
これを素揚げにし、皮つきピーナッツと合わせる。

うっかりチリバリを乗せ過ぎてヒーハー!
それなりに美味しかったがライスには不満。
ナシ(米)レマ(油)は本来、スープではなく、
ココナッツミルクで炊き上げるものだ。

さもないと独特のあの風味が生まれない。
当店では海南鶏飯のチキンライスを流用していた。
かく言うJ.C.も
朝食メニューをランチに流用したがネ。
会計は1650円。

久しぶりにTOCの地下に潜ってみようかー。
以前から建て替えの噂が絶えないけれど、
どんな塩梅であるかな?

「ちりばり」
 東京都品川区西五反田7-12-4
 03-6420-0133

2022年12月12日月曜日

第3165話 思い出のクロアチア&コスタリカ

今日は理髪日。
このところマイ・サロンの人気が上昇し、
1週前くらいじゃ予約が取れなくなった。
この日、どうにか取れたのが12時ちょうど。
いつもは15~16時なのにネ。

のんびりビールを飲みながら頭をハサミに委ねる。
コリアンの旦那がシャンプー担当。
話題はもっぱら、日本ークロアチア、韓国ーブラジル。
どちらも残念でした。

クロアチアを訪れたのは1986年夏。
シンガポール赴任中にツーカップル4人で
イタリア周遊後、ギリシャのアテネに移動した。
休暇をたっぷり取って出掛けた旅好きのJ.C.、
そこでシンガポールへ帰る3人と別れ、
独り旧ユーゴスラビアへ飛ぶ。

ベオグラード(セルビア)と
ドゥブロヴニク(クロアチア)に
それぞれ数日間の滞在。

アドリア海の真珠と謳われるドゥブロヴニクは
海に突き出た要塞都市、美しい街だった。
目の前にひょっこりひょうたん島みたいな
ロックルーム島が浮かんでいる。

此処はヌーディスト・ビーチ発祥の地。
郷に入れば郷に従え。
人生最初で最後の体験だった、
結果として”粗品”を披露しちゃったわけであります。
タハッ!

思い起こせばその10年後、コスタリカ訪問。
こちらも今回のW杯で日本を倒した国だ。
NY時代のことで
もともと同じ中米のエルサルバドルに行くつもりが
急遽、変更を余儀なくされた。

当時のGFはスペイン系エルサルバドリアン。
彼女の猛反対にあったのだ。
「あんな危険な国はハポネスやアメリカーノが
 気軽に旅行できる所じゃないのっ!」
「自分が生まれ育った国だろ?」
「じゃあなんで今、ワタシはNYに居るの?」

若かったんだねェ。
郷ひろみの「How Many いい顔」じゃないけれど
♪ 退屈よりは 危険を選ぶ ♪
そんな生き方をしていた。

結局は薬局、拝み倒されて断念。
その代替が平和なコスタリカというわけだ。
首都・サンホセしか知らないが
確かにのどかな風景が広がり、治安もよかった。

だけど、ほとんど覚えちゃいないんだ。
飲んで食べて歩いていただけ。
蝶々や野鳥に造詣が深けりゃ、
もっと楽しめただろうにー。
ただ、仕事で忙しい日々を送っていたから
自分に捧げる慰安旅行にはなりました。

2022年12月9日金曜日

第3164話 ラーメンに 香るトリュフと ポルチーニ (その2)

メトロ千代田線・千駄木駅前の団子坂下交差点。
はたして「しのぶ」のポルチーニ入り塩らぁ麺は
どうだったんだ? 
と問われれば、旨かったヨと応え ます
近くに真っ当なラーメン店が生まれ、歓んでもいます。

そしてなおもそそられたのが
トリュフ香るまぜそばである。
中華料理屋でいうところの拌麺(ばんめん)は
いわゆる汁ナシの混ぜ混ぜそばのこと。

翌週、再訪に及んだ。
「しのぶ」の品揃えはほかに
鴨と大山鶏出汁の醤油らぁ麺、
鶏&背脂のコクある背脂醤油らぁ麺、
濃厚昆布水掛けつけ麺である。

此度はトリュフ香るまぜそばを狙いうち。
お~っと、山本リンダがヘソ出しルックで歌い出す。

♪   弓をきりきり 心臓めがけ
  逃さない パッと狙いうち  ♪

まぜそば着卓。
角切り鶏チャーシュー、刻みシナチク、
そしてここにも緑髪ねぎがこんもり。
サイドにはトリュフオイル醤油漬け卵黄と
カットレモン1片。

目の前にまぜそばを美味しく味わうための但し書き。
一、よくまぜてそのまま
二、トリュフ漬け卵黄を入れ、釜玉風に
三、レモンを搾ってサッパリと

言われた通りにやってはみたが
最初の”よくまぜて”は実行しなかった。
飯や麺を混ぜ合わせるのが嫌いなのだ。
滅多に食べないビビンパですら混ぜない。
カレーライスやミートソースを
ハナからグチャグチャに和える向きもあるが
あれは出来ない芸当なり。

当店を再訪しても
まぜそばは二度と注文しない。
とにかく味付けがしょっぱ過ぎる。
修正は効かず、濃い味がずっと続く。
おかげで生を2杯飲んじゃった。
味薄めでお願いすれば、棲むことだけど。

さりとて近所のよしみ。
つけ麺を食べる習慣はないけれど、
醤油&背脂醤油はおいおい試すつもり。

散歩にゃいいが
飲食の優良店に恵まれない千駄木の町。
美味しい店が増えるといいな。
おっと、桂文枝の叫び声が聞こえたヨ。
「新店さんいらっしゃい!」

「麺処 しのぶ」
 東京都文京区千駄木2-33-9
 03-6683-3788

2022年12月8日木曜日

第3163話 ラーメンに 香るトリュフと ポルチーニ (その1)

住まいの近所に美味しいラーメン店がない。
富山出身の老夫婦営む「砺波」が数年前に
閉業してしまい、界隈は不毛地帯と化した。
よって、食べたくなったら鶯谷まで出向いている。

先月のアタマ、団子坂下に「しのぶ」が開店。
テリー伊藤とワタミグループがタッグを組んだ、
「から揚げの天才」が撤退した跡地だ。

都内に限らず、あっちゃこっちゃに
すさまじい開店ラッシュを仕掛けた「天才」は
今や目も当てられぬ凋落ぶり。
他のから揚げチェーンもおおむね苦戦続きだが
から揚げだけで商機をつかめるはずがない。

さて、その「しのぶ」。
開店後しばらく行列が見られたが
このところ落ち着いてきたので参上仕った。
店頭の立て看板にポルチーニ香る塩らぁ麺を見て
ポルチ好きは狙いを定めていた。

850円のそれと390円の一番搾り生中をポチッ。 
カウンター、テーブル2卓合わせ、
15席ほどのキャパである。
正午を過ぎても、さほど来店者はいなかった。

待つこと5分少々、
ほう、モダンなルックスがいいヨ。
ポルチーニもちゃんと香ってる。

豚肩ロース&鶏ムネ肉、チャーシューは2種。
細長い穂先シナチク1本。削りポルチーニ、
そしてねぎの青い部分の細切りは
白髪ねぎならぬ、緑髪ねぎである。

古来、この国では乙女の美しい黒髪を
緑の黒髪と言い表す。
お~っと、小林旭が歌い出した。

♪   君がさやけき 目の色も
  君くれないの 唇も
  君が緑の 黒髪も
  いつかまた見ん この別れ  ♪
   (作詞:島崎藤村)

藤村翁、さすがであります。
中央大学の学生歌でもある「惜別の歌」。
さまざまな歌手がレコーディングしており、
倍賞千恵子、ちあきなおみ、舟木一夫、
みなそれぞれに良かりしが
何といっても小林旭にトドメを刺す。

あの頭のてっぺんから突き抜ける高音が
この歌に色褪せぬ息吹を吹き込んでいるのだ。

=つづく=

2022年12月7日水曜日

第3162話 アナタハンの女王蜂

青い花びらが静かに散りました。
よって次は決勝戦の観戦記をお送りします。
ブラヴォー!消え去り、アーメン!

てなこって坂を下り、九段下の昭和館。
懐かしのニュースシアターに直行の巻である。
今週、どうしても観ておきたいニュースが一つあった。

読者のみなさんは
アナタハン島事件をご存じでしょうか?
世にも奇怪な物語(実話)であります。

アナタハン島は硫黄島の南1000km。
サイパン島の北120km。
マリアナ諸島の小島である。
太平洋戦争末期、事件はこの島を舞台に起こった。

当時、島には沖縄出身の漁夫を中心に31人の男と
たった一人の女性、
南陽興発社員の妻・比嘉和子が暮らしていた。
出張中の和子の夫はサイパン島陥落後、
拡がる戦火に島へ戻れぬ状況下にあった。

女1人に男が32人。
どうなるるのか、火を見るより明らかだ。
怪死や失踪が立て続けに起こった。
ただし、和子は凌辱されるでもなく、
女王蜂として小さなコミュニティを差配したが
のちに身の危険を感じ、独り米軍に投降する。

1951年、生き残った者が帰国すると
列島はこの話題に席巻される。
あまり娯楽のない国民は猟奇的にして
スキャンダラスな話題に飢えていたのだ。
詳細はウィキペディアを探って下さい。
比嘉和子自身の写真まで掲載されてます。

観終わってガス補給に赴いたのは新宿三丁目。
昭和の昔に懐かしみを覚え、「長野屋」の暖簾を潜る。
昭和どころか、大正4年の創業である。
一番搾り大瓶、たら子ちょい焼き(450円)を通す。
すじ子も同値だが、すじ子はハズすとヤバい。
生臭くてどうにもならなくなるため、避けた。

フロアには着物姿の若い女性と年期の入った年配女性。
着物のほうは心配り、気働きに加え、
言葉に如才なく、愛想もよろしい。
あとで訊いたら娘、年配が母親だった。
父親も健在で娘の兄ともども厨房を仕切っている。

写真入りメニューに
写真と実物が異なる場合がございます”
の但し書き。
ハハハ、食堂だから許されるけど
見合い写真だったら一大事だぜ。

レモンサワーを2杯いただき、
お勘定は1970円。
さて、還るとしましょうかの。
ほろ酔い歩きの鼻歌交じり。

♪   新宿はみなと町
  はぐれ者たちが 生きる辛さ
  忘れて酒を くみかわす町 ♪

なんか最近、新宿が多いよネ。

「食堂 長野屋」
 東京都新宿区新宿3-35-7
 03-3352-3927

2022年12月6日火曜日

第3161話 玉丼に 及ばずながら 海鮮丼

午前中に家を出て、向かったのは市ヶ谷。
メトロ南北線の市ヶ谷駅は新宿区・市谷田町にあるが
JR中央線と都営新宿線の市ヶ谷駅は千代田区だ。
外濠が区界となっており、釣り人が糸を垂れている。
本日利用したのは新宿線。

12時半、割烹「うお多」に入店。
供する料理は魚介のみ、四つ足は扱わない。
狙いは
うお多特製 丼 
ラインナップが
中おち丼 850円  まぐろほたて丼 1000円
二色丼(まぐろ・穴子) まぐろかにいくら丼
海鮮丼 各1200円 

まぐかにいくら丼と迷いつつ、海鮮丼を発注。
先日、靖国神社の「八千代食堂」で
玉子丼をいただいたばかりだが本日は海鮮丼である。
ドライの中瓶を飲みながら待つこと2分で
どんぶり着卓、おっそろしく早えなァ。

彩る陣容は
赤身3切れ・カンパチ2切れ・サーモン・たこ・
甘海老・ずわい蟹・赤貝ヒモ・とびっ子・
ほたて(茹で)・新いかゲソ(茹で)・
玉子焼き・漬けしょうが
バラエティに富んでいる。

残念なのは光りモノの不在だ。
1切れでいいから
ここに小肌か鰺か鯖が居てくれたらなァ。
場所柄OLサンが目立ち、、
若い娘は青背のサカナを苦手とする向きが多い。
いや、もったいないねェ。

脇役陣は
ひじき煮、刻みたくあん、豆腐&わかめ味噌椀
玉子丼には及ばぬものの、満足感は残った。
ビールのお替りの代わりに冷めた緑茶を飲み干す。

丼もの以外の定食類は
煮魚(かれい)・焼き魚(さば)・あじたたき・
ぶり照り焼き・刺身
これが1050~1400円。

お勘定は1900円だった
食後に界隈の物色、地番は九段南である。
15年ほど前、ひんぱんに出没したエリアながら
近年は足が遠のいてしまった。
通りの反対側、靖国神社は年に一度訪れるのにネ。

多くの新店がオープンしており、
BMに値する店も数軒。
近いうち集中的に攻めてみようかな?
昭和館にはしょっちゅう来るから
その前に昼めしを食べよう。
実はこの日も九段坂を下ってゆくのです。

「うお多」
 東京都千代田区九段南4-6-6
 03-3237-7563

2022年12月5日月曜日

第3160話 夜明けのビールと日の丸弁当

いやあ、逆転してからの44分は実に長かった。
ホイッスルが鳴ってガッツポーズ。
さァ、祝杯を挙げよう、プシュー!
夜明けの缶ビールである。
2缶飲み干し、3缶目、
ついでに朝めしも食べちゃおう。

日の丸を振りたいけれど、家にそんなモンない。
代わりに思いついたのが日の丸弁当。
コンビニで買った白飯パックをチンして
ど真ん中に梅干しという名のゴールを決めた。

それではスペイン戦を振り返ろう。
J.C.は立ち上がり5分で唖然、茫然。
相手の圧倒的なキープ力による、
自信に裏打ちされた完璧なパスワーク。
前半に押し込まれるのは覚悟の上だが
まさかここまでとは!

彼我のあまりの差に心がくじけた。
そこへ頭二つぶん高いヘディングがズドン!
0-7の再現かァ? だめだ、こりゃ!

おまけに麻也が警告を受ける始末。
すごい剣幕でレフェリーに抗議したが
気持ちは痛いほど判る。
あの程度でイエロー切られたひにゃ、
ディフェンダーはやってられん、お手上げだ。

もっとも手を使えぬサッカーは
ハナからお手上げなんだけどネ。
麻也のプレーはイエローどころか
ファウルを取らずに流すレフェリーも
少なくないんじゃないかー。

”前からいこう” を合言葉に後半が始まった。
具現化を成し遂げたのは
前がかりの前チャンこと、前田大然。
前半こそ相手GKの巧みな足技にかわされ続けたが
ナメんじゃねえゾと言わんばかり、とうとう捉えた。

あわてたGK、一瞬パニック。
パスともクリアともつかぬボールを蹴り上げたぜ。
ずうっとグラウンダーでつないでいた奴さん、
いや、焦った、焦った。

そこを身体を張って競り勝った伊藤純也。
ナイスプレーである。
素早く反応した堂安が豪快に決めた。
通常、GKはシュートコースを予測する際、
キッカーの軸足のつま先を見るもの。
つま先の向く方向に球は飛んで来るからネ。
高低までは読めなくとも方向は判る。
実際に堂安の右つま先はゴールの右を向いていた。

GKはその基本を怠った、というより余裕がなかった。
反応が遅れ、ゴールを割られてしまう。
GKの手はボールをはじくためのもの。
あの一撃は逆にGKの手をはじき飛ばした。
しかも両手をだ。
両手に触れながらの失点は極めて稀なケースだ。

そして訪れた逆転劇。
天国と地獄の境界線は2ミリ足らずのものだった。
日本にとっては神のご加護、
スペインには神のいたずらとしか思えまい。
5分間のスペイン版パニック劇場。

それにしても三苫って選手は型破り。
オフェンスもさることながら
ディフェンスがすばらしい。
どちらも華麗にこなす選手は
日本サッカー史上初めて、他に知らない。
真の二刀流はピッチ上の大谷翔平そのものだ。

もう1戦、いや2戦、いやいやもっとかも?
今夜また楽しめるシアワセを噛みしめよう。
去り行くドイツ、どうにか残ったスペイン。
「ありがとうドイツ、よくそ勝ってくれました!」
「それはないぜスペイン、せめて引き分けろヨ!」
両者言葉を交わす運命の分かれ道。

「サッカーにはドラマがある」
56年前、母国の優勝を目の当たりにして
エリザベス女王が残した言葉である。

2022年12月2日金曜日

第3159話 かきと穴子で迷った末に

ブラヴォー、ニッポン!
このハナシはあらためて月曜日に。

さて、その日は早起き。
近所の公園の池を一めぐりして
ベンチに腰掛け、朝刊をひろげた。

その流れで早めの出立。
やって来たのはメトロ丸の内線の盲腸線、
終点の方南町である。
中野区との区界を越え、此処は杉並区。

目当ては昼から飲める「やしろ食堂」だ。
中休みを取らず、地域の一大人気店となっている。
2年半ぶりの訪問は11時半に入店した。

接客は年配のお婆ちゃん独りきりだが
今日も元気いっぱいだ。
注文・配膳・会計を一手にこなす。
カウンターに収まり、ドライの大瓶をお願い。

メニューボードを見上げ、しばし思案。
電車の中ではかきフライに決めておきながら
穴子フライを目にして迷いが生じた。

すると、後客の常連がフライ盛合わせを発注。
そうか、その手があったかー。
あらためてフライのラインナップを確認する。
あじ・イカ・かき・穴子・メンチといった面々。
盛合わせの相方女性が
メニューにない海老フライ定食を通した。

盛合わせだから少なくとも3種はあるだろう。
あじと海老はメンバーに選出されていよう。
あとはイカと願わくば、かきであって欲しい。
いや、いや、あわよくば、
かき&穴子のリャンコ(ダブル)釣りかも?。

夢見るシャンソン人形と化したJ.C.、
婆ちゃんに向かって元気よく、
「こっちもフライ盛合わせね~!」
待つ間のビールの友はメニューボード。
当店は酒類とごはんセットはそうでもないが
料理がとても安い。

刺身は、まぐろ・カンパチ・〆さば・しまあじ。
しまあじの650円が最高値。
ジャパネットじゃないけど、安いでしょう?
そのわりにサカナたちの注文があまり入らない。
ビールのお替わりは中瓶にしといた。

揚げ立てのフライが運ばれる。
陣容ははたして・・・
あじ・海老・イカの3種であった。
穴子どころか、かきすら姿を見せてくれなかった。

夢破れて山河あり、障子破れて・・・
しょっちゅう使ってるから続きはやめときます。
結局は薬局、二兎を追う者は一兎をも得ず。
てなわけで、ションボリ。

「やしろ食堂」
 東京都杉並区方南2-12-29
 03-3313-6010

2022年12月1日木曜日

第3158話 築地場外 完全復活 (その2)

築地場外の「幸軒」。
赤星を飲みながら待つこと3分。
練り辛子を添えたしゅうまいが登場。
おっと、そうだった、此処のしゅうまいは特大。
久々なので完全に忘れてた。
1個でじゅうぶんなんだよネ。

何もつけず、醤油、ウスターと試す。
近所の玉子焼き屋で生まれ、
子どもの頃からこのしゅうまいを食べている、
テリー伊藤はソースがオススメと言っていた。

日頃から胡散臭いオッサンやなァと思っているが
このしゅうまいに限り、彼は正解やな。
相当に肉々しいので
玉ねぎを入れてくれたらもっといい。

続いてラーメンの出来上がり。
あれェ、こんな風だったかなァ?
厚く大きいバラ肉チャーシュー2枚、
短めのシナチク、絹さや4本。
太さ標準のちぢれ麺に色薄きスープ。

一匙すくって、ウ~ン、懐かしくない。
麺の食感は覚えちゃいないが
スープの味は忘れちゃいない。
おかしいな、舌が劣化しちまったのか?

いや、視覚・聴覚は衰えても
味覚・嗅覚はまだまだ若いモンに負けないハズ。
「幸軒」で首を傾げたのは初めてのことだ。
60年以上変わらぬ味と言われても
16年ぶりのJ.C.は明らかな変化を嗅ぎ取った。

場外をくまなく歩き回る。
寿司・おにぎり・玉子焼きの店頭は待ち人だらけ。
それも整然としておらず、列が乱れていたりもする。
テリーの実家はいつ見てもスゴいや。

築地魚河岸の小田原橋棟でお買い物。
まずは鮪・めかじき専門店「築地大志水産」で
本まぐろの赤身をひとサク購入。
店主、明日は休場につき、
売り切りたいと、すべてのサクが500円引き。
1600円→1100円(税込み)となった。

続いて「築地米金」にて静岡産わさびをー。
6~7年物だろうか?
地元のスーパーよりずっと立派な上物が千円だ。
こちらは+消費税で1100円。
ん? まぐろと同じじゃないか!
これは単なる偶然と思える自分がおりました。

「築地・幸軒(さいわいけん)」
 東京都中央区築地4-10-5
 03-3545-5602

「築地大志水産」
 東京都中央区築地6-26-1小田原橋棟
 03-6278-8988

「築地米金」
 東京都中央区築地6-26-1小田原橋棟
 03-6264-7747