2012年4月30日月曜日

第305話 みちのくながれ旅 (その1)

日曜日の早朝、気心の知れた仲間4人でみちのくへ。
ハーピスト・石﨑千枝子サンによる演奏旅行のお供である。
J.C.の役割はコンサートのMC。
ひょんなきっかけで数年前から手伝うようになった。

上野発の新幹線を降りたのは栗駒高原駅。
迎えに出てくれたR子チャンのクルマで到着したのが登米市。
彼女の実家が経営するレストラン「麺や文左」にて
ランチショーとディナーショーが開催される手はずとなっていた。
流れは
ランチ→コンサート→休憩→コンサート→ディナー
てな感じ。

新幹線組のもう一人はカメラマン役のHしクン。
ハーピストの旦那のKチャンはハープの運搬役で
朝早く都内を出発し、コンサートが終わったら即トンボ帰り。
まったくもってご苦労なこった。
ハーピストと所帯なんか持つもんじゃあないネ。

お客さんの食事は昼夜ともに季節感満載の和食コース。
われわれスタッフの昼食は花つるりんと山菜天ぷらの盛合わせ。
花つるりんというのは手打ち風の細うどんで
秋田の稲庭うどんに似ている。
あえて太さにバラツキを持たせた製麺が功を奏して旨い。
これを文字通り、つるりんとやったわけだ。

夜の部も無事終了して
夕食はスタッフもお客さんと同じコース料理。
ダイジェストで献立を紹介しましょう。

前菜
 ふきのとう味噌和え・うるい明太子添え・蕨しのだ巻き・
 独活(うど)と白魚の南蛮漬・たらの芽香煎揚げ
お造り
 真鯛の山葵ジェノベーゼ風・鮪の黒胡椒風味
焚合わせ
 海老入り桜道明寺・蛸やわらか煮
強肴
 みちのく鶏香草焼きラタトゥイユ添え
食事
 油麩丼
水菓子
 杏仁豆腐梅風味

焚合わせの出汁がよく引けている。
特別に作ってもらった登米名物の油麩丼がユニーク。

食事もたっぷりいただいたが酒もさんざん飲みやした。
スーパードライの生に始まり、澤乃泉大吟醸へ。
そしてR子秘蔵の
ジュヴレ・シャンベルタン 1er Cru 1999  ドメーヌ・ドニ・モルテ。
赤・白の順序が逆になったけれど、
お次はムルソー・ジュヌヴリエール 1979 ルロワ。
ところがこいつが珍しくもブショネときた。
気を取り直し、Hしクンが鹿児島で仕入れた黒島美人を。

このあたりでハーピストとカメラマンは睡魔に襲われ、
座敷に敷かれた布団の中へと消えてゆく。
残った二人が最後に飲ったのはズブロッカ。
ヨーロッパ野牛のエサとなるバイソングラス風味のウォッカだ。
バイソングラスの香りは桜の葉っぱにそっくり。
目を閉じて味わえば桜餅を頬張っているかのようである。
こりゃ、翌朝は二日酔いに確定の赤ランプだろうよ。

「麺や文左」
 宮城県登米市南方町雷35
 0220-29-7227

2012年4月27日金曜日

第304話 烏骨鶏の卵

一昨日の水曜日の朝。
当ブログのアップやらメールの整理やらを終えて
何気なしにTVをつけると、
ありゃりゃ、ダルビッシュと黒田が投げ合ってるヨ!
まだ浅い回でよかったものの、こいつはうっかりしてたぜい。

両投手とも応援してるから
イマイチ行け行けドンドンとはいかないものの、
朝めしも食わず(普段から食いませんが)、
飲みものすら飲まず、TVの前に釘付けである。
今シーズンの場合はほとんどの日本人がダル派でしょうよ。
しっかし、9回一死でヒットを打たれたときは天を仰いだ。
あの場面、メジャーは投手交代がほぼ常識だもんなァ。
個人記録の完封なんてどうでもいいことだもんネ。
まっ、昭和のいる・こいるじゃないが、しょうがね、しょうがね。

その日は週刊誌のランチ取材で遠出の予定を取り止めた。
これをキャンセルとは言わない。
店を予約したのでもなく誰かと約束したのでもないからネ。
したがって昼めしは急遽、ウチで食べることにした。

6回を終わったあたりで米をとぎ、
1時間ほど経ったら炊飯器のスイッチをオン。
試合終了時にはバッチリ炊き上がっていた。
ちなみに米は近所の米屋で買った佐渡産コシヒカリ。
その前は富山産コシ、そのまた前は三重産コシ、
そのまたまた前は珍しくも宮城産ササニシキであった。
まっ、どうでもいいっか!

問題はオカズである。
あいにく冷蔵庫には玉子がない。
でもネ、鶏卵はないが烏骨鶏卵が3個あった。
月曜の朝、宮城県・登米市の道の駅で買ったものだ。
ほかには仙台の市場で仕入れた甘ユリなる山菜も。

朝めしみたいな昼めしの献立は

烏骨鶏の生玉子 烏骨鶏の目玉焼き 
野菜(ピーマン・キャベツ・玉ねぎ)炒め 
甘ユリの味噌汁 焼き海苔 ごはん 麦茶

甘ユリは長ねぎとホワイトアスパラの中間感じ。
ほのかな苦みがあってとてもおいしい。
烏骨鶏卵は口当たりがまろやか。
生玉子はススーッと、のどを滑っていった。
目玉焼きは半透明の白身が固まりにくく、
ちょいと海亀のそれを思い出させる。
鮮やかなレモン色の黄身が崩れやすいので要注意。

今は昔、シンガポール赴任時代。
扁桃腺を腫らして5日ほど寝込んだあと、
病み上がりに中国系の友人が
烏骨鶏を丸ごと使ったスープを作ってくれた。
骨のみならず皮も真っ黒の烏骨鶏。
肉は食わずにスープだけを飲むのが彼らのスタイルだ。
これが効いたかどうかは定かでないが
そこは医食同源を貫いてきた民族の知恵、
元気になったことだけは間違いなかった。

2012年4月26日木曜日

第303話 また観てしまった渡り鳥 (その2)

映画「渡り鳥いつ帰る」のハナシの続き。
この作品には昭和30年の浅草が活写されている。
地下鉄銀座線・浅草駅の階段を
岡田茉莉子が昇ってくるシーンは白眉。
”地下鉄”の3文字を鉄枠でデフォルメしたモダンな意匠が
昭和30年にすでに存在していたとは!
思わず身を乗り出していた。

階段を昇り切ったところで田中絹代と偶然に再会。
短い会話を交わしたあと、
岡田は雷門通りを横断し、馬道方面に走り去る。
まだ初々しい彼女の輝きがまぶしい。

国際通りの西側、西浅草は合羽橋通りにある、
どぜうの「飯田屋」も登場する。
建て替え前の小上がりには胸が熱くなった。
ここで夏のどぜう、冬のなまず鍋をつついたのは
1970年代も終わる頃のことだ。

森繁久弥と淡路恵子がくだんの小上がりで逢引きをしている。
勘定を済ませて店を出るときに東京大空襲の阿鼻叫喚の中で
離ればなれになった妻の水戸光子にバッタリと出くわす。
水戸は現在、暮らしをともにする織田政雄と連れ立っている。
妻子に未練を残す頼りない男を森繁が好演していた。

脇役陣もクセ者揃い。
”買春”にやって来る中村是好と藤原釜足がともに怪演。
たまらないキモさだ。
あんな客をとらにゃならない女はつらいよ。
何せ二人とも想像を絶する薄気味悪さだもの。

さて今回の観直しによるあらたな発見。
映画のラスト近くでヒョンな偶然から
関係のない二つの死体が心中として処理されてしまう。
堀切橋のたもとの草むらでは睡眠薬を服用した桂木洋子。
堀切橋からあやまって川に落下したのは森繁久弥。
かたや心中相手に逃げられた薄幸の娘、
こなたヤケ酒くらって泥酔したオヤジである。

ところが翌朝、
森繁の水死体が葛西橋に揚がる。
こりゃ、どう考えてもおかしい。
堀切橋も葛西橋も下を流れるのは荒川だけれど、
10キロ以上はラクに離れている。
ドザエモンが下流に流されたとしても
片方は草むらで睡眠薬、もう片方は水中で泥酔、
これを心中とするにはいささか無理があろうよ。

幸薄い娘やいいトコのお嬢さんがよく似合った桂木洋子。
準主役が多かったが結婚後は次第に仕事を減らし、
静かにゆっくりフェイドアウトしていった。
亡くなってちょうど5年が経つ。
その10年前に先立った彼女の夫は作曲家の黛敏郎である。

2012年4月25日水曜日

第302話 また観てしまった渡り鳥 (その1)

アップ・スケジュールをしっかり組み込んでも
なぜか時間通りに起動してくれない当ブログ。
原因不明でただ今、調査中なのだが
読者にはご迷惑をおかけしてすみません。
昨日もそうだし、一昨日もそうだった。
殊に一昨日の朝は旅先におり、
あちこち手配してアップできたのが夕方近く。
いかんともし難かったのであります。

それはそれとして
そろそろ上野・不忍池のゆりかもめが
夏羽に着替え、北へ帰る季節。
桜散り、鳥帰り、そして誰もいなくなったあと、
梅雨が明けるあたりから蓮の花が開き始める。
蓮は夏の季語である。

過日、神保町シアターで
『春情鳩の街より』渡り鳥いつ帰る」をまた観てしまった。
「女優・高峰秀子 アンコール」と銘打った特集の一環だ。
永井荷風の原作を久保田万太郎が構成し、
久松静児がメガフォンをとった1955年の映画である。
いまだDVD化されてないため、
都内の映画館にこの作品がかかると、
時間の許す限り出向いてゆく。

今も往時を偲ばせる墨田区・鳩の街から映画は始まる。
セットではないロケ、これが何ともありがたい。
花売り娘ならぬ花売り爺さんに始まり、その爺さんで終わるのだ。
扮するのは ♪ ドゥビドゥバー やめてけれ ♪ で有名な左卜全。

鳩の街は戦災から焼け残り、
「濹東綺譚」の舞台となった玉の井の業者が移転して来て
アッという間に作り上げた新興カフェー街。
比較的素人っぽい女性が多いと喧伝され、
それから客足に拍車がかかったという。
映画が生まれる前夜の昭和28、29年には
100軒以上が営業しており、
春をひさぐ女性は300人を超えていた。

映画では夜のシーンもさることながら
こと済んだあとの翌朝が丹念に描かれている。
東京最大の紅燈街・吉原の朝があわただしかったのに比べ、
鳩の街はおおらかで、客が昼近くまでダラダラしていても
べつに文句は言われなかったようだ。
けだるさの中にものんびりとした空気が流れ、
観客までほのぼのとした気分になってくる。

ロケシーンがとても多く、
当時の東京の映像がふんだんに映し撮られ、
映画ファンならずとも昭和にノスタルジーを感ずる向きには
まさに垂涎、貴重な本作は必見でありましょう。

=つづく=

2012年4月24日火曜日

第301話 うなぎ屋の嘆き

アンギラ・ジャポニカこと、日本うなぎの稚魚が高騰している。
いわゆるシラスウナギのことだが
香港からの輸入量が激減しているのだ。
もともとシラスウナギは台湾の産。
資源保護を理由に台湾政府が輸出を禁止したものの、
そこは金のなる木、台湾から不正に持ち出され、
香港を経由して日本に入ってくるのだという。

ただでさえうなぎは庶民にとって高嶺の花。
それが今では高嶺の花どころか高山植物並みになってしまった。
普通の日本人は斎藤茂吉や正岡子規のように
そうしょっちゅう食べたがらないけれど、
三月か半年に一度くらいは口にしたいと思うもの。
ましてや資源が枯渇していって絶滅のおそれまであるんじゃ、
なおさらにそう願うのも人情だろう。

実に久しぶりにうなぎ屋を訪れた。
最後に食べたのは去年の暮れの浅草「小柳」。
ほぼ4ヶ月ぶりになる。
出向いたのは谷中・善光寺坂にある「丸井」。
平日の昼に暖簾をくぐると小上がりに腰掛けた女将さんが
人懐こい笑顔を見せてくれた。
ほかにお客はいない。

さっそく品書きを見ると、
うな重(中)・・2300円 (特)・・2600円 (特上)・・3300円
けっこうなお値段である。
数字の上にポストイットが貼ってあり、
ちょいとめくってみたら
一律300円の値上げになっていることが判明した。
ほかには親子重・とり重の(並)が700円、(上)は800円。
ハーフ&ハーフなのだろう、うなとり重というのが1400円。
蒲焼きは重箱の200円引きとなる。

うな重(中)と肝吸い(300円)をお願いすると
「すみません、吸い物は仕込んでないんです」―これじゃダメじゃん。
肝焼きはなくとも肝吸いのないうなぎ屋は初めてだ。
何年か前にこの店に来たとき、そんなことはなかった。

15分と少々で運ばれたお重に箸を入れるがパッとしない。
粉山椒を振ってもう一箸、まあ、こんなものかな。
肝吸いナシでは食べるほうも張り合いが湧かない。
実は「小柳」でも思ったのだが
なんかうなぎに魅力を感じなくなった今日この頃。
脇の新香はきゅうりのぬか漬に奈良漬とたくあん。
きゅうりはよいが、ほかはヤケに甘じょっぱい。

話好きの女将さん、そう、前回もこの人と話したっけ。
確か娘さんが浅草橋の和菓子屋に嫁いでいるハズ。
それはともかく近頃お客が激減してしまったとのこと。
シラスウナギの激減が客の激減に通じている。
「来やしませんよ、高いんですもん」―あきらめ顔はため息交じり。
それもそうだよ、千円も出せば豪勢な焼き鳥丼が食べられるのだ。
親子重やとり重を用意していても
そのために客がうなぎ屋には来ることはないだろう。

うなぎ屋がどんどん店をたたみ、
代わりに焼き鳥屋がジャンジャン生まれるご時世。
うなぎよ、うなぎ、
お前たちゃいったいどこに雲隠れしちまったんだい?
そう遠くない将来、
うなぎ屋もどぜう屋が来た道をたどるんだろうか。
ぼんやりとした不安、芥川の心境が判るような気がする。

PS
24日(火)アップの当稿を書き終えて現在21日(土)の午前1時。
週末に東京を留守にするので書き溜めたところだ。
講談社から「FRIDAY」が届いているハズ、
そう思いつきメールボックスからピックアップしたらば、
何と「ウナギ養殖の画期的技術」なる記事が目に飛び込んできた。
まだ読み終えてないが、どうやら朗報らしい。

「丸井」
 東京都台東区谷中1-4-2
 03-3821-3574

2012年4月23日月曜日

第300話 口八丁に手八丁 (その2) にせどろ千夜一夜 Vol.6

森下は「はやふね食堂」の店先である。
うしろから怒鳴られて振り向くと、
狆くしゃフェイスのオッサンが今まさに入店するところ。
引き戸の建てつけが悪いんじゃなかった。
こっちが締めようとしているのに
オッサンは開けようとしていたわけだ。
「あっ、ゴメン、ゴメン!」とあわてて謝ったが
オッサンはムッとしたまま無言で壁向きのカウンター席へ。
ありゃあ、まだ怒ってるな。

その夜は生たらこと肉じゃがで
キリンラガーの大瓶と菊正の一合瓶を1本づつ飲って
早々に退散し、近所の「魚三酒場 森下店」に移動した。
いや、くわばら、くわばら。

後日、最終チェックに舞い戻る。
同伴者はドリンクメートのT村クンだ。
飲んだのはこの夜もラガーと菊正。
前回と異なるのはつまみを片っ端から注文していったこと。
まずは野菜入りおから(130円)と里芋煮(180円)。
ちょいと化調が勝っているが許容範囲であろう。

続いてはあれば頼むことの多いマカロニサラダ。

マカサラの130円は泣かせる

そして二人とも好物のたら子はチョイ焼きでお願いした。

250円なのか300円なのかは判らず

う~ん、やっぱりたら子は旨いや。

お次は野菜煮(180円)と厚揚げ焼き(200円)。
何をとっても学食より安いんじゃないかネ。
まだまだ行こうってんで目刺しとアジフライだ。

これだけは値段を忘れちゃった目刺し

2枚付けで300円のアジフライ

ともに良質である。
目刺しのあぶり加減よろしく、
小ぶりのアジはフライにうってつけのサイズ。
和洋折衷風の料理が大衆酒場の強みだ。

最後にさばの味噌煮(280円)を追加したら
口八丁に手八丁の女将サン、
アンタたちよく食べるねェ! ってな顔をしてた。
いや、ホントだなァ。
節操もクソもあったものではない。
安いからって飽食の限りをつくすのは威張れたことではない。

門仲の陰に隠れた感、なきにしもあらずの森下ながら
どちらか選べと言われたら
森下に軍配を挙げざるを得ないJ.C.であります。

「はやふね食堂」
 東京都江東区森下3-3-3
 03-3633-3230

2012年4月20日金曜日

第299話 口八丁に手八丁 (その1) にせどろ千夜一夜 Vol.6

千円札が2枚ほどあればべろべろどころか
泥酔できる酒場を訪ねて回る、にせどろシリーズ。
久しぶりにいきます。

此度の舞台は江東区・森下。
いわゆる深川の北限に位置する町である。
ここはちょいとした墨東のグルメスポットで
J.C.気に入りの店がズラリと揃っている。
どぜう「伊せ喜」、そば「京金」、天ぷら「満る善」、
洋食「深川煉瓦亭」、焼きとん「三徳」、
深川めし「みや古」、ケトバシ「みの家本店」、
ピッツァ「ベッラ・ナポリ」と、枚挙にいとまがない。

今回訪れたのは「はやふね食堂」。
この店には大女将という名のスーパースターがいる。
齢九十を超えると聞いた記憶があるが、ホントかね?
ちょいと老け気味の六十代でもじゅうぶん通用しまっせ。

とにかくいつもフル稼働。
注文取りからお運びまですべてをこなし、
客との世間話に余念なく、
TVの報道バラエティを観ては
その感想、並びに解説までしてのける。
「まァ、ヒドい事件だこと!」
「ああ、子どもが可愛そうに!」
口をつぐむいとまとてない。
佐賀のがばいばあちゃんも真っ青の活躍ぶりなのだ。

ビールは大・小ともにキリンラガーのみ。
大瓶が530円、小瓶は360円。
清酒は菊正宗の1合瓶で390円。
うれしい安さだが、これでも最近10円づつ値上げした。
ザッと品書きを紹介してみよう。

お新香・・30円  梅干し・味噌こんにゃく・・各90円  
冷やしトマト・きんぴら・・各100円  野菜入りおから・・130円  
ほうれん草胡麻和え・・150円  肉じゃが・里芋煮・・各180円  
冷奴・湯どうふ・・各190円  さば塩焼きor 味噌煮・・各280円 
甘塩さけ・さんま塩焼き・アジフライ・・各300円

こんな塩梅である。
たらこ(生・焼き)が250~300円とあるのは
サイズがまちまちだからだろう。
最初に見たときは生が250円で焼きが300円なのかと思った。

最終チェックに現れたのは17時前後。
暖簾をくぐって引き戸をうしろ手でしめようとすると、
建てつけが悪いせいか戸がしまらない。
力まかせにグイッとやったら
「何だ!何だよォ!」―背後から怒声が飛んで来た。

=つづく=

2012年4月19日木曜日

第298話 煮穴子に初挑戦

とまあ、一風変わった朝食を作って食べたが
実は食材を調達したときに
もう一つ買い求めたものがあった。
開いた穴子である。
これはその日のうちに煮て酒のつまみとした。
紹介する順序があと先になったけれど、
「昼下がりの情事」から「ティファニーで朝食を」へと、
ヘプバーンつながりを優先したもんですから・・・。

今までに数十種類の魚介を購入してきた。
にもかかわらず穴子は初めて。
餅は餅屋、穴子は鮨屋か天ぷら屋。
素人が生半可なシゴトをしても
プロには到底かなわぬものとあきらめていたからなァ。

それが先日、煮はまぐりを自分で作ってみて
意外にも上手くできたものだから
二匹目のどぜうを狙う下心がなかったと言えば嘘になる。
しかもわが家の書棚には
浅草「弁天山美家古寿司」のレシピを記した本という、
つええ味方があったのだ!

著者は先代(四代目)親方の故・内田榮一氏。
江戸前鮨におけるわが心の師である。
四代目のにぎる鮨に出会っていなければ、
江戸前鮨に対する概念はまったく違ったろうし、
わが半生も色あせて味気ないものとなったに相違ない。
まっこと”仰げば尊し、わが師の恩”である。

北千住で買った穴子はかようにさばかれていた。

めそっ子サイズで理想的

師の教えに従い、酒・白砂糖・醤油で煮てゆく。
鍋が小さいので真ん中に包丁を入れた。

きれいに煮あがった穴子

爽やかに煮あげるので、これを爽煮という。
「美家古」の煮穴子は実に個性的な歯ごたえと舌ざわり。
他店とは一線も二線も画する逸品である。
舌の上でとろけるヤワなヤツが珍重される昨今ながら
あんなのは愚の骨頂で、赤ん坊の離乳食じゃあるまいし、
成人映画を観られる成人には永久歯というものがあろう。

燗酒とともに穴子爽煮を味わう。

上半身は煮つめ、下半身はわさび醤油で

煮つめは以前作った煮はまぐりの煮汁と
今回の穴子のとを合わせたものだ。
けっして悪くはないものの、
「美家古」のそれには遠く及ばない。
それもそのはず、煮つめる時間が雲泥の差。
つまりが甘く、コク味が足りない。

三重産の穴子は3尾で350円。
近頃、高騰しているうなぎに比べ、断然安い。
今は昔、貧乏人は麦を食え!とのたまわった首相ありき。
貧乏人でもまだまだ食える穴子クン。
可愛いやっちゃ!

2012年4月18日水曜日

第297話 ファニーな朝食を (その2)

ある晴れた朝、真面目に朝食を作ってみた。
ちゃあんとごはんを炊いてネ。
米は近所の精米店で購入した富山産コシヒカリ。
その前に買ったのは三重産コシヒカリだったが
どちらもなかなかのレベルに達している。
米は米屋で買うべし。

生野菜だけじゃメシは食えんから
ほかにもいろいろごじゃります。

千葉県産のはまぐり

見よ、この美しさ。
貝殻が傷だらけの中国産とは似て異なるもの、
磨き上げられたマーブルのごとき光沢を放っている。
けっこう立派なサイズが5粒もあったため、
大きい2粒を潮仕立ての吸い物とし、残りは味噌椀にした。
味噌は長野県・上田の信州味噌”蔵の禅”である。
これがマイルドな旨みに満ちみちてグッドなんですなァ。
朝から二重の、もとい、二汁のシアワセに酔いしれる。
エッ? お味のほうは? ときましたか。
どちらがアヤメかカキツバタ、甲乙つけがたしでありました。

実を言うと、この日は朝からアルコール度2.5%にして
糖質ゼロのキリン濃い味ロング缶をやっちゃいました。
野菜と吸い物ともう1皿を友として―。
この1皿こそがファニーこのうえない代物だったのだ。
朝めしなので玉子でも焼こうと思いきや、
冷蔵庫を開けたらば、何とアウト・オブ・ストック。
一瞬、落胆したものの、ここで妙案がひらめいた。

トリの玉子がなけりゃ、アヒルの玉子があるぜ!
登場願ったのは香港みやげの皮蛋(ビータン)クンだ。
元部下のA子がくれたヤツ。

ヘンでしょ? おかしいでしょ?

でも、ちゃんと香菜に白髪ねぎまで添えたんだかんネ。
朝からこんなん食べてるバカはおらんだろ。

そして一膳メシの相方には
前述の味噌椀とハタハタの一夜干しである。

皮目のツヤが何とも言えぬ

このハタハタだけは焼き上がりもお目に掛けましよう。

火を通すと微妙なクネリが発生 

う~ん、コイツはシシャモの上をいっちゃってるぜ。

その朝の献立をもう一度整理すると、
 生野菜盛合わせ・はまぐり吸い物・皮蛋w/香菜&白髪ねぎ・
 ハタハタ一夜干し・はまぐり味噌椀・ごはん
である。

フフフッ、五番街でコーヒー片手にクロワッサンかじる、
オードリーもビックリのファニーな朝食となりました。

2012年4月17日火曜日

第296話 ファニーな朝食を (その1)

足立区きっての繁華街・北千住は
比較的出没率の高い街である。
気に染まる酒場・居酒屋が
待ち受けてくれているのがその理由。

ん?
最近、居酒屋で飲んだくれてばっかじゃねェか!
ってか?
てへぺろ!
(コレ、若い女子の間で流行ってるんですってネ、
  先週、「笑点」でやってました)

いや、ホントだ、その通りだ。
晩飯より晩酌を優先している今日この頃。
というのも週刊「FRIDAY」のミッションのおかげで
毎日、昼めしをガッツリ食ってるから
日が暮れても腹がへらないんざんす。
かといって灯ともし頃になると
飲みたくなるのは変わらない。
これじゃ身体にいいワケないよ。
判っちゃいるけどやめられない。
ホレ!
どっかで聞いた歌の文句だナ。

そいでもって自分の身体をいたわることを思い立った。
ここんとこ野菜不足につき、
ビタミンと食物繊維の摂取はおろそかになっている。
この問題を一気に解決しようと目論んだのが
またもや北千住ときたもんだ。
駅前にルミネと丸井の食料品売り場が2つもあるからネ。

白状しちゃえば当初の目的はやはり酒場。
ところがメトロ千代田線の改札口を抜けると、
そこは雪国、なワケはなく、いわゆるデパ地下だった。
渡りに舟と2店舗をぐるり一周したら惹かれる食品多数。
よって行きつけの酒場で一杯やってから再び舞い戻り、
買い物にいそしんじゃった次第だ。
♪ お買い物 お買い物 ♪
あいや、失礼。

そうしてこうして調達した食材を使い、
翌朝、ブレックファーストを作る運びとなりました。
まずはコレ。
                      緑したたる生野菜

♪  みどりの風に おくれ毛が
   やさしくゆれた 恋の夜
   初めて逢うた あの夜の君が
   今はいのちを 賭ける君  ♪
         (作詞:西條八十)

いけねっ、また悪ノリしてしまったが
純な野菜たちは左から時計回りに
プチトマト・クレソン・ラディッシュ・イタリアンパセリ。
これを朝からむしゃむしゃ食べたのだ。

=つづく=

2012年4月16日月曜日

第295話 BとAの間の小さな恋

サブタイトルをご覧になって
「何のこっちゃい?」と思われた方が多いのではないか。
本日はもったいぶらずにハナから種明かしとまいりましょう。
BとAはボンジュールとアデュー。
その間の小さな恋だから、
ハローとグッバイの間のつかの間の恋という意味だ。
B・ワイルダーがメガホンをとった映画、
「昼下がりの情事」でG・クーパーのシャレた台詞がコレ。
アメリカ映画ながらパリを舞台とした作品らしく、
あくまでもフランス的感覚である。

映画を初めて観たのは1965年。
どこの映画館で観たかは記憶がはっきりしない。
池袋の東武デパート内にあったムービーシアターかな?
それとも高田馬場のパール座?
いやいや、新宿地球座だったかもしれない。

宅配便で取り寄せ、実に47年ぶりで観た。
そして映画の真価を初めて認識したのだ。
さすがは名匠ワイルダー、あらためて感心したものの、
ウブな中学生にはちと早すぎましたネ。

高校生時代の「ティファニーで朝食を」もまったく同じ。
だいぶあとで観直したときのほうがずっと印象的だった。
数あるヘプバーンの出演作中、
「昼下がり~」はあまり好みじゃなかったのに
映画が進行する間、ドンドン惹き込まれてゆく自分に
驚きを覚えながら観終えたのだった。

ヘプバーンもさることながらクーパーがすばらしい。
M・ディートリッヒと共演した「モロッコ」なんか、
大根役者そのものだったのがまるで嘘のよう。
I・バーグマンとの「誰がために鐘は鳴る」は
すでに忘却の彼方なれど、
「昼下がり~」効果で近々取り寄せることにした。

ヨーロッパやアメリカが舞台の映画には
オペラのシーンがよく出てくる。
当作ではワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」。
ワイルダーはワーグナーの愛好家なのであろう、
ヘプバーンの男友だちにワーグナーに比べたら
ロッシーニもヴェルディも子どもだましだと言わせている。
ユダヤ系のワイルダーがヒトラーが敬愛したワーグナーを
賞賛するというのは意外だった。

オペラ座のシーンで男友だちの上着の袖から出た糸クズを
引っ張り始めたヘプバーン。
裏地をスッポリ抜き取ってしまい、大あわて。
これを山田洋次監督が
「男はつらいよ 奮闘篇」でモロにパクッっている。
もっとも中学時代の初見では気づかなかったけど。

この第7作は寅さんシリーズ全48作中、最愛の1本。
映画が封切られた1971年4月28日は
初めての欧州旅行中。
スペインのマドリッドに高速列車タルゴで入っている。
パクリはともかくも糸くずのおかげで
ワイルダーと山田洋次の糸がつながり、
心なしか胸温まる思いがしたものだ。

2012年4月13日金曜日

第294話 かつては花街だった町 (その3)

ここ数日、名残りの桜を求めて
昼下がり、あるいは夕暮れどきにさまよっている。
昼めしのあとか、晩酌の前に花見を楽しむのだ。
いや、晩酌前というのは当たらない。
花を愛でながら晩酌はすでに始まっているもの。

月曜日の午後、新橋にて取材のための昼食後。
JR山手線・メトロ銀座線・都営三田線とあるうち、
どれに乗ろうかナと、駅前で迷っていた。
さすがに臨海線ゆりかもめはハナから除外した。
フジテレビの職員でもあるまいし、
お台場に出掛けていっても身の置き場に困る。

3線どれでも構わなかったが乗車したのは銀座線。
下車駅は上野広小路である。
となれば行く先は上野のお山か不忍池しかない。
ここは水のある風景に軍配が挙がった。

池のほとりのベンチに独りくつろいでいると、
隣りに座った知らないオジさんに声を掛けられた。
「あれはサンシャインですか?」
「ハア~?」
一瞬からかわれているのかと思ったネ。
スカイツリーを指差しながら、のたまうんだもの。
先方もすぐ勘違いに気づいたらしく苦笑い。
しばし予期せぬ談笑と相成った。

おっと、そんなことより平井の続きだ。
危ない、あぶない。
居酒屋「松ちゃん」に参集したのは総勢11名。
♂4名、♀7名はみな同い年ときたもんだ。
揃って同窓というわけではなくて
おのおの中学か高校のどちらかで絡んだ間柄である。

前回の訪問で刺身に疑問符がついたものの、
こういう宴会においては予約の際に
刺盛りだけは通しておいたほうがスムースにことが運ぶもの。
てなわけでテーブルには3枚の大皿がデンと居座った。
ちと頼みすぎの感否めずである。

平目・かつお・海胆をつまんだ記憶はあるが
あとはトンと覚えちゃいない。
新潟は新発田の酒、菊水の燗を2~3合は飲んだろうか。
料理の守備範囲の広い店だ。
誰が注文したものか、
焼き米粉やスパゲッティ・ナポリタンまで出て来たゾ。

旧花街真っ只中のこの界隈。
昨日記した「まじま」や「からさわ」のほかに
うなぎの「魚政」なんかも一訪の価値ありそうだ。
何よりも近々、金目鯛の「きんめ家」だけは再訪し、
リベンジを果たしておかなければ!

=おしまい=

「松ちゃん」
 東京都平井3-26-4
 03-3638-1682

2012年4月12日木曜日

第293話 かつては花街だった町 (その2)

平井が花街だった頃の風情が残留する一郭に来ている。
実は町で人気の居酒屋「松ちゃん」を訪ね、
たまたま脂粉の残り香を嗅ぐ機会に恵まれたのだった。
色街には独特の匂いがあって
登楼などせずとも(今となっては見果てぬ夢)、
その空間に身を置くだけで
胸の奥に温かいものが湧きおこる思いがするのである。
不思議だ。

「松ちゃん」ではビールで軽くのどをうるおしたあと、
サッポロが輸入販売しているイタリア中部の赤ワイン、
パッシオーネの1/2ボトルをやった。
ワインの友にはおまかせ5本の焼きとんをお願いする。
陣容はタン・ハツ・カシラ・シロ・ナンコツ。
レバーの不在が淋しい、いや、悲しい。
とは言え、焼きとん専門店には及ばぬものの、
そこそこの素材に、まずまずの焼き上がりだ。
350円の安さに惹かれて注文した中とろ刺しは値段相応。
スジっぽくてあまり感心しないのは致し方なし。

ひっきりなしにやって来るフリの客が満席で断られている。
J.C.が入店したのは18時15分前後。
おそらくカウンターに残った最後の1席だったらしい。
入れ込みの広い座敷がある大箱なのに
すべてが埋まってしまうほどの人気店なのだ。
何となくムラッ気が起こって
つい、2週間先の予約を入れてしまった。
幹事を引き受けた飲み会の会場が未定だったのでネ。

そして2週間後。
飲み会があるたびに零次会を敢行する、
K吾&K子の熟年カップルと早めに落ち合った。
行った先は「きんめ家」という大衆割烹風の店。
前回の散策の際に見つけておいたのである。
そのとき店先に出た看板の案内に惹かれたのだった。
主力商品の金目鯛は銚子の外川港に揚がったもの。
銚子は金目の北限で脂のノリが違うのだそうだ。

目当ての金目をさっそくお願いすると
本日は入荷ナシのつれない応答。
おい、おい、「きんめ家」に金目がないってことは
クリープのないコーヒー、あいや、紐の切れた越中ふんどし、
はたまた、柄の折れた肥びしゃくみたいなもんじゃないか!
金目に期待をかけすぎたのが裏目に出た恰好となった。

気を取り直し、もうひとつの店の名物、
銚子の伊達巻を所望した。
それに加えて今が季節のふきのとう天ぷらだ。
ふきのとうは春のそよ風に乗ったがごとく軽やかに美味。
こいつは塩でやるのが一番だろう。

変り種は伊達巻のほうである。
木だか竹だかを軸にして焼き上げた、
巨大な伊達巻を包丁で切り分けて出してくる。
小ぶりのバームクーヘンを想像してもらえると伝わりやすいかな。

こうして小1時間を過ごし、
平井駅前に参集した他メンバーを電話誘導し、
3人は一次会会場の「松ちゃん」へ向かったのだった。

=つづく=

「きんめ家」
 東京都江戸川区平井3-24-19
 03-5626-3210
 

2012年4月11日水曜日

第292話 かつては花街だった町 (その1)

昨日まで3話にわたって紹介した大島界隈だが
いまだに東部戦線の”酒池”を遊泳している。
もちろん日をあらためてのハナシですけどネ。

JR総武線・亀戸と新小岩の間に平井という駅がある。
東京都民にもあまり知られていないハズだ。
たとえ名前に聞き覚えがあったとしても
駅に降り立ち、町を歩いた経験のある人は少ないだろう。

かつて平井には亀戸・新小岩同様に花街があった。
関東大震災で被災した浅草十二階下の銘酒街が
亀戸や平井に移転して来たからだ。
昭和の初めには小松川三業なる株式会社まで設立され、
隆盛を極めた時代があった。
大戦の空襲によって灰塵と化したが昭和25年頃には復興し、
売春禁止法が施行されるまでにぎわいを見せた。
昭和33年以降は他の紅燈街と一蓮托生、衰退の一途をたどり、
男たちを呼び寄せた”肉林”は消滅してしまう。

ある日、ふと思い立って平井の町を歩いてみたくなった。
かく書き進めているJ.C.自身が
ほとんどこの地を知っちゃいないのだから
踏破してみる気になったのだ。
平井を訪れたことはホンの数回。
よくぞこの町にこんなフレンチがと、
人々を驚かせてやまないレストラン「コバヤシ」に何回か。
あとは友人のマンション探しにつき合って
ほうぼう見て回ったあと、今は無き「平井食堂」で
旨くもない昼めしを一度食べただけだ。
もっとも友人が棲んだのは総武線のもっと先、
千葉県の市川だったけどネ。

平井駅南口を出てすぐに一筋の通りを右折した。
3分ほど歩くと往時の面影を今にとどめる、
「和食からさわ」が右手に現れた。
かつての栄光はどこへやら、佇まいにわびしさが漂う。
廉価に設定した晩酌セットなども用意され、
集客に苦労している様子がしのばれる。

そのまましばらく進むと風格ある「料亭 まじま」の前に出た。
こちらも現役の料理屋だが商いの実情はどうであろうか。
推察するにけっして芳しいものではなかろう。
昨日今日、社会人になった若者ならいざしらず、
多少なりとも人生経験を積んだオトコとオンナならば、
こういう場所で合コンとシャレ込んでほしいものだ。

「まじま」の向かいに「松ちゃん」があった。
平井で一番の人気を誇る居酒屋である。
白状すると、当夜はこの店が目当てだったのだ。

=つづく=

2012年4月10日火曜日

第291話 東京で飲むなら西より東 (その3)

都の真東、江東区・大島に来ている。
酒場「ゑびす」にて移動先を算段している。
前週は大島・住吉・菊川と、
都営新宿線沿線を三段活用して飲み歩いた。
同じルートを踏襲する手もあるが
気分を変えて進路を北に取り、
亀戸・錦糸町に流れるのも悪くない。
あるいは南下して木場・門仲あたりに行き着くか・・・。

そんなことをボンヤリと思いながら
底に少しばかり残ったデンキブランを飲み干したとき、
頭の中の裸電球がピカッと光彩を放った。
ついさっき「ゑびす」の敷居をまたぐ前、
チラリ視線を投げかけた隣りの店のことだ。

「亀戸餃子大島店」は
本店を亀戸に構える「亀戸餃子」の姉妹店。
いや、支店なのかな?
そのへんのことは詳しく知らない。
本店には餃子しかないが
「大島店」には麺類や炒飯や一品料理がある。
「錦糸町店」もそうだった。
未訪の「両国店」もおそらくそうであろう。

相方に打診すると餃子にOKのサイン。
移動の手間も省けるし、
これを渡りに舟と言わずして何と言う。
でもって、お勘定の1分後、
餃子屋のカウンターに連座する二人の姿を見ることができた。

餃子一つで名を成したくらいだから
「亀戸餃子」の餃子はそれなりの美味しさをたたえている。
飲みものをいったんアサヒの大瓶に戻し、
しばらくして常温の老酒に切替えた。
「大島店」といえば炒飯の評価が高い。
原則、夜にごはんモノは食べない(鮨を除く)けれど、
”男の昼めし”にまつわる連載を抱えていることだし、
旨いめしは機会あるごとに試しておきたい。

再度の打診にまたもやOKサインが出た。
数分後に現れた炒飯はなるほどの出来映えである。
ふんわりと軽いタッチで仕上げられ、シツッコさなど皆無。
炒飯の旨い店はありそうでないのが現状だ。

隣り同士の「ゑびす」と「亀戸餃子」を満喫したのに
のみともの夕べはまだお開きにならない。
タクシーに手を上げて住吉の「山城屋酒場」に向かう。
閉店まで30分しかないから
黒ホッピーの外(ホッピー本体)1に、中(甲類焼酎)2を。
これでキッチリ1本がカラになる。
お腹パンパンなれど何か1品ということで
”本日の煮物”を所望すると、おでんであった。
まっ、おでんも煮物の一種、いいでしょう、いいでしょう。

名うての酒場が目白押しの東京下町・東部戦線。
一度バトルフィールドに足を踏み入れたが最後、
戦況は泥沼化して安易に抜け出せなくなる。
ベトナムの原野に敗北した大国アメリカの図さながらだが
どうしてどうして、
こんなに楽しい戦線はそうそうあるものではございません。

=おしまい=

「亀戸餃子大島店」
 東京都江東区大島4-8-9
 03-5628-0871

「山城屋酒場」
 東京都江東区住吉2-7-14
 03-3631-1216

2012年4月9日月曜日

第290話 東京で飲むなら西より東 (その2)

2週連続で江東区・大島の酒場「ゑびす」を訪ねた。
前回は独りで生ビールを2杯飲んだ。
突き出しの炒り天豆(そらまめ)が独創的。
柿ピーなんかよりずっと気が利いており、
皮付き南京豆や塩豆に匹敵するほど、
小粋なアテに成り得ている。

つまみには〆加減強めのアジ酢を。
本来、こういうものは日本酒向きだが
あとにはしご酒が控えていたので自重した。
調子に乗って第一コーナーからとばすのはよくない。

2回目は宮城から上京してきたのみともR子を同伴。
東京暮らしの経験を持つ彼女も
さすがにこの界隈は未踏とのこと。
知らない町の商店街を歩きたいというから
サンロード中の橋なるやたらめったら
八百屋系店舗の目立つ通りをひと流し。
昭和の匂いの立ち込める場所をブラつくのは楽しい。
そうしておいておもむろに第一目的地の「ゑびす」へ。

ビールはアサヒの大瓶、日本酒は菊正の燗。
ここまではいつものパターンだ。
当夜はそれに加えて合同酒精のデンキブランを1杯。
浅草「神谷バー」の名物につき、たびたび飲むうちに
酒におけるレパートリーの仲間入りを果たされてしまった。

つまみは菜花の辛子和えとケチャップの掛かったオムレツ。
菜花はともかく、オムレツで外すことは考えにくい。
と思ってはみたけれど、
北仏はノルマンディーの名勝地、
モンサンミッシェルのオムレツは相当に不味いらしいネ。
いや、食べたことはないんだが・・・。

ここで大衆酒場や大衆食堂でしか見られない料理を1品。
豚肉と玉ねぎを炒めて作る炒り豚というヤツで
通常はナポリタンみたいなケチャップ味が多い。
「ゑびす」では化調を感ずるものの、シンプルな塩味だった。
ここまではそれぞれにOK。
ところがこのあとに追加した穴子フライが失敗の巻だ。
穴子自身と揚げ油の双方にに難点があり、
4品目にして初めてハズレの憂き目を見る。

店内の空気おだやかにして、時間はゆっくり流れている。
男の単身客がほとんどを占める中、
若い女性がひとしきり飲んだあと、おにぎりを食べ始めた。
浅草や深川ではあまり見かけぬ光景だ。
近所に棲む常連だろうが、どことなくローカル色を感じる。

大衆酒場ではダラダラと長居をせず、
早め早めにに切上げるのがスマート。
つい、ダラダラ飲んでしまうJ.C.が
はしごを余儀なくされる理由がコレである。
はて、どこに流れるとしようか・・・。

=つづく=

「ゑびす」
 東京都江東区大島4-8-8
 03-3681-6823

2012年4月6日金曜日

第289話 東京で飲むなら西より東 (その1)

3週前の木曜日。
翌日の当ブログ稿を書き上げるやいなや、
都営新宿線・大島へと出掛けて行った。
ここへは前週もやって来ている。
その折は昔の部下A子たちと
住吉の「山城屋酒場」で飲む手はず。
行き掛けの駄賃で酒場「ゑびす」を訪ねたのであった。

此度はその「ゑびす」にみちのくののみともR子を伴った。
彼女はペースさえ乱されなければ相当の飲み助である。
いわゆる長距離ランナーなのだ。
元部下A子が瞬発力のあるスプリンターだとしたら
R子は持久力に優れたステイヤーといえる。

ハナシはちょいとそれるが周知の通り、
J.C.の縄張りは一にも二にも下町である。
当節は、ニューヨークのブロードウェイになぞらえると
オフ・ブロードウェイやオフ・オフ・ブロードウェイ、
要するにオフ下町、オス・オフ下町まで脚を伸ばしている。
さしづめ大島・住吉界隈はオフ下町にくくられよう。

東京都23区を縦割りに一刀両断してその東側、
早いハナシが隅田川の両サイドを皮切りに
荒川から江戸川右岸までのエリアに精通することは
呑ん兵衛にとってきわめて有用である。
何となれば、行けども行けども行きつくせないほどに
優良な料理屋・酒亭・居酒屋・大衆酒場が
ひしめいているから、まず自分自身が楽しめる。
そしてこちらがより重要かもしれないが
老若男女を問わず、下町に誘ってやると
ほとんどの相方が瞳を輝かせて二つ返事のゴーサイン。
みんな好きなんだねェ、下町が!

「ええ~っ、ヤだァ、そんな遠いとこォ!」―
まっ、たまにはこういう馬鹿も居るには居やすがネ。
おおかたこの手は吉祥寺とか立川とか
大東京の西の彼方に棲んでる田舎者。
J.C.に言わせりゃ、
「オメエの棲んでるところが遠いんだヨ!」てなことになる。
(吉祥寺・立川方面にお棲みの方、
  ごめんなさい、言葉のアヤってもんです)

昨日のブログで杉並・西荻を賛美しといて
舌の根が乾く間もないのに恐縮ながら
東京で飲むなら断然、西より東。
安くて旨くて雰囲気がよく、何てったって現れる客に味がある。
年は食っちゃあいるが、亀の甲より年の功、
積み重ねた年輪から滲み出る出し昆布にも似た味がある。
常々思っていることは東東京と西東京の住民の平均年齢。
誰か調べちゃくれまいか、
おそらくべらぼうな年齢差が明らかになるだろう。

日本全国津々浦々、北に棲もうが南に棲もうが
年寄りが消えた土地に人が棲みよい場所はない。
ん、何だって?
「オメエ自身が年寄りだからだヨ!」ってか?
へっ、ごもっともで。

=つづく=

2012年4月5日木曜日

第288話 広島焼きを食べました

たびたび書いているが西荻の町が好きである。
コンパクトで落ち着きのある佇まいが気に入っている。
逆に大きなロータリーが駅前にあって
バスやらタクシーやらが幅を利かせ、
歩行者はグルリと迂回しなければならない町は嫌いだ。

のみとも兼パイとも(ポン友)のフタちゃんから
耳寄りの情報が寄せられた。
某大手金融機関にお勤めの彼とは
かれこれ四半世紀のつき合いになろうか。
ニューヨークの滞在も重なっている時期があった。

とにかくフットワークが軽い人で交友関係も広い。
驚いたのは去年の震災後、
住んでいた足立区の地盤は心もとないと
またたく間に杉並区に引っ越してしまった。
疾きこと風の如しとはこういうことをいう。

寄せられた情報とは掘出し物のお好み焼き屋を
西荻に発見したというもの。
お好み焼きは不得意ジャンルだが
信頼できる御仁に太鼓判を押されては行かずばなるまい。
かつて西荻に棲んでいた編プロ勤めの友人を誘い、
やって来たのは土曜日の灯ともし頃。
うん、いつ来てもこの町は来訪者に優しい。
南口のバス通りを南下すること10分弱。
五日市街道にぶつかる角地に「カンラン」はあった。
あれれ、ここは以前モーターバイク屋だったんではないかな?
編プロくんが相槌を打ったから間違いない。

さっそくメニューを開いてガックシ。
ビールがモルツの生だけだぜ。
無いよりマシだってんで失意の乾杯に及ぶ(やっぱ旨くねェ)。
さて何を食うべェかと壁の品書きを見てのけぞった。
スーパードライの瓶があるじゃないのっ!
貴重な最初の1杯をムダにしちまったじゃないか!
なぜ、初手からメニューにも明記せぬ!
!マークの三連発だぜ、ったく!(四連発か)。

気を取り直してフードの注文である。
評判が高いというスジポン酢はまずまず。
広島菜漬はまあそれなり。
そう、ここはお好み焼きでも広島焼きの店なのだ。
新じゃがとクレソンのポテサラはどうってことなし。
おあとのチーズ鉄板焼きが当夜のMVPであった。
焼かれたチーズは香ばしさがつのり、ワインがほしくなったほど。
締めのそば肉玉は広島焼きの定番であろう。
焼きそばを包み込んだところを鉄ゴテで一口サイズに切分ける。
これもよかった。

支払いは2人で5千円弱。
月島のもんじゃタウンが証明するように
高価な食材を使用するわけじゃないから
こんなものかと思うけれど、同じ目の前で焼かれるのでも
黒毛の霜降り牛とはすさまじい価格差だ。
無理してあんな身体に悪いものを食うくらいなら
じゃんじゃんお好み焼きを食べ続け、
差額をせっせこ貯金したほうがよっぽどお利口さん。
将来の年金なんかまったくアテにならんのだからネ。

「カンラン」
 東京都杉並区西荻南2-6-23
 03-3334-5077

2012年4月4日水曜日

第287話 「FRIDAY」で連載スタート

写真週刊誌「FRIDAY」で連載コラムを担当することになった。
今週金曜(4月6日)発売の号からでタイトルは少々長く、
「超辛口グルメ評論家J.C.オカザワがうなった!
旨すぎる!男の昼めし」
ちょいとばかり何となく面映い。
巻末のカラーグラビアですから
当ブログをご覧の方々には併せてご愛読をお願いします。

売上に直結しかねない重要コラムにつき、
目下、全力投球で臨んでいる次第。
購買層を慮ってボリューム重視のガッツリ系を心がけるとともに
写真週刊誌の性格上、ビジュアルも大事な要素となる。
てなこって連日連夜、食べ歩きにいそしんでいる。
昼めしなのに”連夜”というのは
昼夜同じものを供する店が少なくないからだ。
自分では取材をせず、黙って食べ、黙って帰ってくる。
支払い時に「ごちそうさま」のひとことは添えますがネ。

1ページ、ズドンと写真入りで掲載するからには
店との折衝、並びにデータの取材が不可欠。
このミッションはライターのS子女史が担当してくれる。
編集のK原サンと仲良くトリオを組んで
毎週、これぞという男の昼めしを紹介してゆくわけである。

この際、残念なのは白羽の矢を立てたのに
取材を受けてくれない店舗が意外に多いこと。
せっかく固定客が付いているところを
ヨソ者に荒らされたくない店主の気持ちはよく判るけど・・・。

京橋の「栄一」もそんな一軒だった。
昼は親子丼(840円)と焼き鳥丼(1050円)の二本立てのみ。
狙いは串5本分の焼きものが乗った焼き鳥丼だ。
正肉(もも肉中心に胸肉少々)、砂肝、つくね、
レバー(ハツが1片混じっていた)、うずら玉子の計5本。
まさに百花繚乱の華やかさである。
ビジュアル的にも優れているのは
純白のうず玉が絶妙のアクセントになっているからだ。

「栄一」の前の通りは
たかだか30メートルほどの間に4店が焼き鳥丼を競い合い、
焼鳥横丁、あるいはチキン・ストリートと呼ぶにふさわしい。
泣く子も黙る、もとい、鳴く鶏も黙る焼き鳥横丁がここにある。

「伊勢廣」・・・5本丼(1800円)・4本丼(1500円)
「都鳥」・・・鳥重・もつ重(各900円)
「一の倉」・・・焼きとり丼(880円)
といった塩梅。

なお、一番強気の商売をする「伊勢廣」は
13時より3本丼(1000円)を提供しているが
客の立場からすると、これって何だかあべこべだ。
立て混むピーク時にこそ、
時間と金をセーブできる手軽な廉価版が求められるハズ。
ところが反対に店としては割安に見せかけ、
オフタイムにも客を呼び込もうという魂胆なのだろう。
これを”あざとい”と言ったら言い過ぎかもしれないナ。

「栄一」
 東京都中央区京橋1-5-1
 03-3281-6578

2012年4月3日火曜日

第286回 秒読みの 花は上野か 浅草か

一昨日の日曜日に続いて昨日の月曜日も墨堤を歩いた。
別に桜が恋しくて連日訪れているわけではない。
咲いてもいない花を求めて通うほどヒマではない。
実は隔週刊誌「東京ウォーカー」の依頼で1日1軒、3日で3軒、
スカイツリーにまつわる珍メニューを食べ歩いているのだ。

億劫だったが、いいでしょうと引き受けたからには
責任をキチンと果たす義務がある。
ただし、最初の1軒を訪れてすぐさま後悔した。
目の前に現れた一鉢のどんぶりにわが目を疑ったのである。
そいつは想像を絶する代物であった。
リポートは「東京ウォーカー」の次号にゆずるとして
詳細は雑誌の発売後、
当ブログでお伝えする機会もあるだろう。

昨日はミッションのランチを食べたあと、
押上・業平を徘徊し、吾妻橋を西に渡って隅田公園へ。
心なしか桜の蕾のふくらみは前日より大きくなった気がする。
とは言え、1日や2日で花開くとも思えない。
満開の花を愛でるにはやはり週末を待つことになろう。
いずれにしろ花見には秒読みの段階に入ったことは確かだ。
満開だけが桜ではないしネ。

咲かぬ桜を眺めていても始まらない。
キラキラ輝く隅田川に目を転ずると、
水面をかすめてかもめが群れ翔んでいる。
くちばしと脚の黄色いのがカモメ、赤いのはユリカモメ。
日本列島の水ぬるむ頃、連中は南の空から帰って来る。
陽光うららかな好日に先週末の嵐が嘘のようだ。
結局、この日はお花見ならぬお鳥見で心いやされ大満足。

せっかくの好天だもの、なおも散歩を続けた。
駒形から蔵前、御徒町から湯島へと・・・。
こうして不忍池のほとりまでやって来た。
ちょっと見て墨堤より開花が早いナと思ったのは早とちり。
咲いているのは紅色深いヤエザクラでソメイヨシノではない。
桜餅の葉っぱに使われるオオシマザクラの蕾もほころんでいた。
ソメイヨシノは花が散ってから葉が芽吹くが
オオシマザクラは花と葉がシンクロナイズしている。

手入れの行き届いた蓮池では
そろそろ北へ帰るキンクロハジロが岸辺をうろちょろしている。
マガモ・オナガガモの姿はすでにない。
珍しいバンが1羽、水草をついばんでいた。

平日にもかかわらずボート池には多くのボートが浮かんでいる。
そうだった、世の中は春休み真っ最中なのだねェ。
どこからかチンチョウゲの香りが漂ってくる。
今年のかぎ初めは例年よりずいぶん遅かった。
1ヶ月近く遅れたのではなかろうか。
チンチョウゲの香りをかぎつつ、ソメイヨシノの花を愛でる、
こんな経験は人生初めてのことである。

2012年4月2日月曜日

第285話 世界にたくさんある花

日本の国花は桜と菊。
ただし、日本国政府が国花として制定したものではない。
国民にもっとも親しまれ、愛されている桜。
皇室の紋章、国家の象徴になっている菊。
この両花が法定化とは関係なく、
事実上の国花として広く認知されているわけだ。

諸外国も似たようなもので
正式な国花を定めている国もあれば、
事実上の国花すらない国もある。
今、世界の国花リストを眺めながら
この稿を認(したた)めているのだが、なかなかに面白い。
ちょいと実例を挙げてみようか。

アジア諸国で意外な人気を誇るのが蓮である。
お釈迦様が乗っかっちゃうくらいだからインドは判る。
ほかにはスリランカとベトナムの国花も蓮。
あとはバングラディッシュが蓮そっくりの睡蓮で
はては北朝鮮の木蓮ときたもんだ。

もっとも木蓮は蓮とは関係ない。
そもそも蘭の花に似ているので木蘭と呼ばれていたのが
蓮のほうがもっと似てるってんで木蓮になったのだそうだ。
ふ~ん、そんなものかネ。
蘭のほうがよっぽど似ていると思うんだけどな。

よく話題に上るが蓮と睡蓮はどこが違うのだろう。
周知の通りに花はそっくり。
違いは茎と葉にある。
蓮の茎は水面を貫いて伸びてゆくが
睡蓮は水面に出たらそこからは伸びない。
睡蓮の花が水に浮かんでいるように見えるのはそのためだ。
まっ、中には例外もあるけれど・・・。
そして蓮の葉は緑色の円形で水をよく弾く。
睡蓮の葉は赤茶けたり、まだらになることがあり、
水を弾かず、葉に細い鋭角の切れ込みがある。

植物学じゃなく国花のハナシであった。
アジアの外に目を転ずると、
国のイメージにピッタリの国花がいくつか存在する。
イギリス(ただしイングランドのみ)のバラ、
スイスとオーストリアのエーデルワイス、
オランダのチューリップ、スペインのカーネーションなどなど。
まあ、何だかんだ言っても日本の桜に勝る国花はあるまいて。

昨日の日曜日の昼下がり、墨堤を歩いた。
開業を間近に控えたスカイツリー効果で人出は急増だ。
いざ開業したらどういうことになっちゃうのかなァ。
まさか隅田川の花火みたいなことはなさそうだが・・・。

隅田川両岸の桜はいまだ五厘咲きといったところ。
それも陽当たりのよい右岸に限って―。
一昨日、吹き荒れる春の嵐の中で東京の開花が宣言された。
このぶんだと今週末は絶好の花見日和になろう。
夜桜ならば金曜と土曜、青空の下なら土曜と日曜であろうよ。