2022年11月30日水曜日

第3157話 築地場外 完全復活 (その1)

諸物価値上がりの折、
わが家計を直撃するのはパンとわさびだ。
とりわけわさびが痛い。

常日頃、谷中銀座のスーパーで調達しているが
価格が跳ね上がったのにサイズは逆に縮む始末。
これではやってられまへん。

そこで思い浮かんだのが築地の場外市場。
あすこなら上物がそこそこの値段で買えるだろう。
メトロ日比谷線を東銀座で降りた。

ぶらぶら歩きながら
買い物前の腹ごしらえを何処にしよう・・・。
思いあぐねていた。

「きつねや」のホルモン煮か肉豆腐でビールかな?
「幸軒」のしゅうまい&ラーメンもいいゾ。
「小田保」でミックスフライも捨てがたい。
「黒川」の天丼、「ととや」の焼き鳥丼も誘ってる。

場外市場の玄関口、
もんぜき通りの「きつねや」に黒山の人だかり。
飯を食う客、ビールを飲む者半々だが
この店、こんなに人気だったかな?
とてもじゃないけど、人混みにもまれたくない。

1本内側の通りに分け入る。
このストリートもスゴいや。
邦人・外人混合であふれ返っている。
場外市場は完全復活を遂げた。
さらにメインランド・チャイナが押し寄せたら
阿鼻叫喚の地獄絵は必至、あゝ神よ!

狭い小路の奥の「幸軒」をのぞくと待ち人3名。
これならOK、後ろに着き、10分待って中へ。
昔と変わらずカウンター9席のみ。
店主と女将、そして若い女性の3人体制だが
娘はもっぱら出前に勤しんでいる。

赤星大瓶(750円)、しゅうまい2個(400円)、
ラーメン(800円)を発注した。
壁のポスターに
創業昭和25年 60年以上変わらぬ味
とあり、今年で72年。

最初に訪れたのは平成12年でちょうど創業50周年。
以来、オジャマすることたびたびながら
直近は平成18年、実に16年の月日が流れ去った。

現在の3人が往時のままかどうか、
まったく記憶にございません。
それでも記録だけは廃棄せずに残してあり、
国民の血税をシャアシャアと猫ババする奴らより、
よっぽどマシでござります。

奴らを糾弾する宮台サン、襲われちゃって心配。
命に別状なさそうでよかった。
回復を祈ります。

=つづく=

2022年11月29日火曜日

第3156話 食卓に 牡蠣のソースが 匂い立つ

先日、土曜に行って長蛇の列に心くじけた、
アメ横の町中華に再挑戦。。
平日とあってすんなり席にありつけたが
それでもほとんど相席状態、致し方あるまい。
「大興」は10年ほど前に晩酌利用した。
いつの間にやら人気店となり、敷居が高くなった。

店外のビールラックはキリン&アサヒ。
意を強くしたが他卓に立つのはキリンばかり。
理由はすぐに判った。
銘柄を指定しないと自動的にキリンラガーだ。

日本人の一つ覚え。
何処へ行っても、ただ「ビール!」と注文する。
味覚センサーが繊細とは言えない米国人ですら
バドワイザー、ミケロブ、ハイネケン、コロナ、
ちゃあんと指定する。

注文はあらかじめ決めてあった。
立て看板を何度も見てたからネ。
上海・オイスター・五目と3種揃う、
焼きそばのオイスターだ。
ドライとともにお願いした。

牡蠣そのものは入っていない。
オイスターソース、
いわゆる牡蠣油が味付けの決め手。
どんなのが来るか、あれこれ想像しながら待つ。

おや? また珍しいのが着卓したヨ。
茶褐色の焼きそばの具材は
相当量の豚挽き肉と少なめの生トマト。
鷹の爪も散見された。
立ち上るの牡蠣油の匂いである。

豚挽きは粗挽きではないんだが
あちこちで固まっている。
”ほぐし”が足りないんだネ。
どうも意図的にそうしてるらしい。
よってルックスはまるで中華風ボロネーゼ。

上手いことまとめられてはいるが
やけに油っこく、唇がベトベト。
ティッシュで口元を拭うことたびたびだ。

ランチメニューは一律800円。
油淋鶏・蒸し鶏ネギソース・酢豚・ニラレバ・
キクラゲと豚肉の玉子炒めなどが並び、
8割近くの客がこの中から択んでいた。

でも正直言って
人気の秘密を解き明かすことはできなかった。
おそらく豊富なメニューと廉価な値付け。
これがW効果を発揮しているものと思われた。

「大興」
 東京都台東区上野6-2-14
 03-3831-6249

2022年11月28日月曜日

第3155話 氷雨と俺とはどうにもモグラ (その2)

千代田線直結のサンホップ町屋地下、
「ときわ」で飲んでいる。
前話のマクラに案の定、
浪花の小姑から物言いがついた。

朝から軍歌はないやろ!
「世界にひとつだけの花」とかにしとけ!
まっ、ふりゃふうだ。
朝っぱらから神風特攻隊は不味いわな。
取り直しの一番ともいかず、ここはスルー。

はまぐりは小粒ながら6個もあった。
レモンスライスに
パセポン(パセリ微塵切り)が好アシスト。
よい出汁の出たスープまで飲み干す。

小いわし酢漬け(250円)を追加。
カタクチイワシはいいが
黒胡麻・生姜・粉わさの脇役は思惑外れ。
好みじゃないけど、悪くはなかった。

周りでは日替わり定食が一番人気。
本日はかれい塩焼き、玉子焼き、昆布佃煮、
味噌汁、新香にフルーツまで付いて600円。
なんでんかんでん東京電まで値上がりするご時世、
どうやって利益を出すのやら?

飲んでる客も少なくない。
あっちゃこっちゃの卓に大瓶が屹立している。
仲間が多いと心強いねェ。
この平和でのどかな空間を
シェアしましょうや、ご同輩。

大瓶とバラカツ皿(570 円)を追注した
こいつがまた立派な一皿で
厚みのあるカツの存在感が際立つ。
バラといえども脂身ほどよく、
玉ねぎと溶き玉子になじんでる。
会計は2620円也、満足。

地上から改札階に降りてくる、
乗客の傘が濡れている。
これじゃ外歩きはムリ、このまま帰ろう。

千駄木の階段を上がると、
降り続く雨はやむ気配すらない。

♪   外は冬の雨 まだやまぬ
  この胸を 濡らすように
  傘がないわけじゃ ないけれど
  帰りたくない
  もっと酔うほどに 飲んであの人を
  忘れたいから       ♪
   (作詞:とまりれん)

「氷雨」は今上天皇のカラオケにおける、
持ち歌ってご存じでしたか?

「ときわ」
 東京都荒川区荒川7-50-9サンポップ町屋B1
 03-3809-2335

2022年11月25日金曜日

第3154話 氷雨と俺とは どうにもモグラ (その1)

出し抜けに軍歌で失礼します。
♪   貴様と俺とは 同期の桜
  同じ航空隊の 庭に咲く
  咲いた花なら 散るのは覚悟
  見事散りましょ 国のため ♪
   (作詞:西条八十)

鶴田浩二のセリフと歌唱を聴きながら
指先を運んでいる。
英霊をこんな駄文のダシにして
まことに申し訳ないが許されたし。

勤労感謝の日は朝から冷たい雨が降っていた。
氷雨は苦手だ。
氷雨と俺とはどうにも相性が悪い。
雨空の下を傘さして歩くのはイヤだから
今日は地下にもぐったままモグラに徹する。

昼めし、または昼飲みの候補地は3箇所。
みな便利なメトロ千代田線沿線で
北から足立区・北千住、荒川区・町屋、
千代田区・日比谷である。
これなら地上に出ずともことが足りるのだ。

日比谷は地下道づたいに中央区・銀座も可能だが
千駄木の改札を入ったとき、町屋に決めていた。
2駅5分で到着し、駅直結のサンポップ町屋へ。
ビルのB1は地元の家族連れに人気の店が多い。

「サイゼリヤ」「KFC」
「リンガーハット」といった塩梅。
子どもはあまり見かけないが
「サンマルクカフェ」「おらがそば」
そして「ときわ」もー。

気楽に飲める「ときわ」に入店。
此処は京成町屋駅近くにある、
「食事処 ときわ」㋨支店。
本店ではこの春に飲んだ。

ドライの大瓶を通しておいて
おびただしい数の品書きに見入る。
まずはパッと目についたはまぐりバター(500円)を。
そうしておいて四方八方に貼り巡らされた、
品書きに目を通す。
壁毎に品目が異なるから厄介至極なり。

飲み食いしながらだけれど、
読了に小一時間はかかったネ。
おかげで首が疲れた、と言うよりむしろ痛いわ。
帰ったらトクホンのお世話になりたいが
そんなモン家にあるわけ無いわ。

=つづく=

2022年11月24日木曜日

第3153話 そば屋より スピン・オフした 天ぷら屋

先週の土曜日。
ランチに出向いたアメ横の町中華は長蛇の列。
しからばと回ったとんかつ屋の列はさらに長い。
週末は上野・浅草に近づくもんじゃないネ。

地下に潜って都営大江戸線のプラットフォーム。
内回りでも外回りでも先に来たほうに乗るつもり。
内回りの都庁前行きが先だった。
一駅乗っただけで下車した本郷三丁目。
目指すは天ぷら店「天㐂」である。

本郷は人が少ないねェ。
それでもゆったりとした店内に先客が2組。
カウンターがいいんだけど、
混み合わないと使わせないようで二人掛けに促される。

狙いを定めた江戸前天丼(1550円)の内容は
穴子・キス・めごち・ししとう)。
理想的なメンバー構成じゃござんせんか。

ところがお運びの娘さん。
「今日はめごちのご用意がなくて
 代わりにつまみ海老ですが宜しいでしょうか?」
「けっこうですヨ」
応えたものの、少しばかり落胆。
つまみ海老というのは小海老の二連いかだ揚げ。

おおっ! 錦牡丹の蓋丼が着卓した。
しかも蓋の抑え込みに抗うかのごとく、
穴子の腹と尻尾が飛び出ていた。
何とまあ、グッ・ルッキン!

海老の尻尾がハミ出てないと
天丼食った気がしないと言ったのは
萩本の欣チャンだったっけ。

めごちとつまみ海老では単価が異なるため、
いかだは三連で来た。
かような気働きこそ古く良かりし老舗の美点だ。
ちなみに当店は「本郷藪蕎麦」より、
天ぷら専門店として独立後、
百年の歴史を刻み続けている。

天ぷらがしっとりしてるのは
蓋付きで蒸れたせいかな?
ふっくらキスはともかくも
穴子はもっとカリッと揚げて欲しいな。

新香は、きゅうり浅漬け・たくあん・キャベツもみ。
ここにお椀があれば言うことナシ。
品書きは天ぷら以外に余計な料理がなく、
予約のコースの刺身くらいのものだ。

ビールはキリンのみ。
生が一番搾り、瓶はラガー。
よって、中ジョッキ1杯で切り上げ、
あとは緑茶を飲みました。
文字通り、お茶を濁したのでありまする。

「天㐂」
 東京都文京区本郷4-5-8
 03-3811-5421

2022年11月23日水曜日

第3152話 カラスが止まったプラタナス

日暮里駅直下のSoftbankで用事を済ませた。
さて、何処で飲もうかの?
目の前のバスターミナルからは
亀戸行きと錦糸町行きが出ている。
どっちでもいいや、先に来たほうに乗ろう。

錦糸町が先だった。
いずれにしろ「亀戸餃子」のつもり。
亀戸なら本店、錦糸町なら支店だ。
終点に着いたとき、
毎度のことだが気が変わっていた。

東京楽天地に角打ちがあったハズ。
飲食店の案内板に見とめたのは
はるか昔、何度か利用した、
「信州そば処 そじ坊」だ。
当時は線路の反対側にあったが移転したらしい。

懐かしさも手伝って角打ちからチェンジ。
空腹感薄く、そばを食べる気になれない。
お誂え向きなのは、ほろ酔いセット。
飲みもの1杯につまみが2品付いて千円+税。
ドライ生中にわさび茎漬け&板わさをチョイスする。

お運びの娘さんに
「おそばに今も小さい生わさびが付くの?」
「ハイ、でも有料になってしまって150円です」
「いいとも1本付けてー」

昔はずいぶん感心したものだ。
町場のそば屋と変わらぬ価格に生わさびだもの。
しかもすり残したときに
持ち帰り用のビニール袋までくれた。

わさび茎漬けが相当辛い、ツンツン。
板わさのニセわさびは打っちゃっといて
おろし金ですりすり、偽物と本物の差は雲泥だ。
小田原のかまぼこは上物だった。

ドライの中瓶を追加して
窓の外をぼんやり眺めていた。
京葉道路の街路樹はプラタナス。
その向こうに
北海道居酒屋のバカデカい看板が見える。

何処かヨソに移動しようか?
それともこの街でもう1軒か?
思案しているとプラタナスの梢に
一羽のカラスが止まったヨ。

ここでハタと思い出す。
行きつけのバーでカラスの群れに
一羽の鶴が舞い降りたあの夕べ。
せっかく錦糸町に来たんだから
あすこで軽く飲んでいこう。

これは作り話じゃありません。
ホントにカラスが止まったんです。
♪ カ~ラ~ス、なぜ止まる? ♪
カラスの勝手でしょ、ってか。

「信州そば処 錦糸町店」
 東京都墨田区江東橋4-27-14
 03-3634-6041

2022年11月22日火曜日

第3151話 外国人 谷中銀座に あふれけり (その2)

イタリアンを空振って町中華。
5分で肉野菜炒めが運ばれた。
清湯のほかに切り干し大根となぜか梅干が1粒。
振り返れば定食仕立ては初めての注文である。

それにしてもすごいボリュームだ。
豚肉もさることながら
キャベツ・もやし・にんじん・ニラ・キクラゲ。
3日分の野菜を1度に摂取した思いである。
もう1本ビールが欲しくなったけどガマン。

ラブホ街に足を踏み入れた。
ほどなく立ちん棒の姐さんに声を掛けられたが
ちょっと何言ってんのか判らない。
丁重にお断りしてラブホ街を突き抜けた。

JRの線路沿いに根岸から下谷。
清洲橋通りを北上野から東上野。
下谷神社の大鳥居をくぐった。
すると小鳥居の前に居たのがチンドン屋軍団。
男女2人づつの4人組である。

男はサックスと大太鼓。
女は1人が鉦&小太鼓セット担当。
もう1人はビラ配りである。
休憩中で演奏はしていない。

近づくとビラ配りの姐さんがくれたのは
御徒町の安売りストア「多慶屋」内にオープンした、
スーパー「サミット」のチラシだった。
どの辺を回るのか訊ねると
もうしばらくして、この辺りとのこと。

ビタマークするわけにもいかず、散歩の続き。
以前、何度か利用した、
下谷神社裏の鮮魚店と洋食屋の界隈を流し、
西町公園で一休み。

ずると風に乗って流れるのは懐かしのメロディー。
彼らが通りの向こうからやって来る。
曲は「侍ニッポン」だ。

♪   人を斬るのが 侍ならば
  恋の未練が なぜ斬れぬ
  のびた月代(さかやき)
  寂しく撫でて
  新納鶴千代 にが笑い ♪
   (作詞*西条八十)

チンドン屋だから歌は歌わない。
でもJ.C.の頭ン中は歌詞がグールグル。
「侍にっぽん」は同名映画(1931年)の主題歌。
徳山漣(たまき)が歌った。

曲が古過ぎて路上の聴衆のウケがあまりよくない。
次曲は坂本九チャンの「上を向いて歩こう」。
これならみんな知っている。
演奏後あちこちからパチパチパチ。
このまま金魚のウンコみたいについてくのもなァ。
後ろ髪を引かれながら
踵(きびす)を返したことでした。

「大弘軒」
 東京都台東区根岸1-7-11
 03-3875-6493

2022年11月21日月曜日

第3150話 外国人 谷中銀座に あふれけり (その1)

昼過ぎに家を出て、よみせ通りから谷中銀座を歩く。
このところインバウンドの復活がいちじるしい。
殊に米国からが目立ち、中国はまだサッパリだ。
小唄じゃないけど、
♪  アメは咲いたが
  チャイナはまだかいな ♪
てな感じ。

先週のある日なんぞ、夕焼けだんだんの段上に
30人超えのグループあり。
うち一人のオジさんに訊いたら
西海岸からのツアーだとサ。

ただ、やたらめったら年配者が多い。
ジイジ・バアバ、じゃなかった。
グランパ・グランマのオンパレードなのだ。
J.C.思うに彼の国では今、
日本旅行が大ブームなんじゃないかな?

”冥途のみやげにジャパン・ツアー”
これが彼らの合言葉。
連中は信じて疑わないものとみえる。
冥途・イン・ジャパンをー。

今日もまた、夕焼けだんだんですれ違った。
赤や黄色、派手な衣装のオバさん5人組。
楽しそうにしゃべくるねェ。
中西部の訛りがあった。

七面坂上を右折、谷中霊園の西側、
三崎(さんさき)坂に通ずる道筋を往く。
霊園には徳川慶喜、渋沢栄一、
高橋お伝といった面々が眠っている。

ありゃ、目当てのイタリアンは =CLOSED=。
どうやらランチ営業を休止している様子だ。
まっ、いいか、そのまま直進した。

言問通りの寛永寺陸橋で
JRの線路を何本もごっそり跨ぎ、鶯谷駅前に到達。。
此処へ来たら行きつけの町中華しかないな。
最近ずいぶん混み合っている。
カウンターの一番手前の端っこにチョコンと座った。

ドライの大瓶を飲みつつ、
今日は普段と違うものにする気になっていた。
塩ラーメン or 五目そばの麺半分が定番だからネ。
通したのは肉野菜炒め&半ライス。
ビッグコミックの「ゴルゴ13」を読みながら待つ。

=つづく= 

2022年11月18日金曜日

第3149話 鶴は舞いおりた

「ますらお」は15時オープンと思い込んでいた。
勘違いもはなはだしい。
 勘違い こたつで母の 手をにぎり
ってネ。

さいわい錦糸町のターゲットは15時オープン。
門仲に見切りをつけた。
深川不動のそばに錦糸町行きのバスが待機しており、
これまたさいわい乗り込んだ。

ブレイクルーム「vivo daily stand」はしばらくぶり。
独りで取り仕切るバーテンダレス、
山チャンが相変わらず元気いっぱいだ。
独楽ねずみよろしく動き回る。
明るい性格で固定客をガッチリつかんで離さない。

彼女に紹介された先客はM野サン。
ほどなく来店したのはC野サン。
これで3匹のオッサンが出揃った。
山チャン曰く、
「今日は平均年齢が高いわ」
ほっとけや。

そこへ毎日通うK太クン現る。
daily stand だけに daily customer は貴重だ。
彼のおかげで店内の平均年齢はだいぶ下がった。
ただ血圧降下剤の効果はあったが引き続き男ばっかり。
止まり木に4羽のカラスが並ぶ殺風景。

黒ラベルの生を2杯飲んだあと
スペインの赤を抜いてもらう。
ABAIはスパニッシュには珍しいメルロー。
この品種に傑作はまれながら逆にハズレも少ない。

スペインつながりでマンチェゴを所望すると
今日のチーズはフレンチのブリーとコンテ。
よりハードなコンテを選択。
当店の客は初対面でもすぐに打ち解けて
言葉を交わし始める。
山チャンの客あしらいが巧みなんだネ。

帰ったM野サンと入れ替わりに妙齢の女性現る。
面立ち、身のこなし、
ともによろしき一羽の白鶴が舞いおりたのだ。
反応したカラスがザワつく水曜日。
さかなクンじゃないけれど
カラスたちはギョギョッ!
目をむいたのでギョざいます。

鶴のおかげで滞空時間が大幅に予定オーバー。
ワインボトルが空いてもビールに逆戻り。
ちょいと飲み過ぎた。

帰巣してゆく鶴の羽ばたきを見届けて
こちらは止まり木に舞い戻る、パタパタ。
いや、だいぶ飲み過ぎた。

ようやく腰を浮かせた一羽のカラス。
夜の街をフラフラ、ヨロヨロ千鳥足。
錦糸”鳥”駅に向かいましたとサ。
やれやれ。

「vivo daily stand 錦糸町店」
 東京都墨田区江東橋4-21-6
 03-6240-2101

2022年11月17日木曜日

第3148話 歌舞伎座横にて ぶたざんまい (その2)

9月下旬、「早川」再訪。
告白すれば、3ヶ月で4度も訪れたのだ。
2回目はポークしょうが焼き定食をー。
前回、相席客のライスが少なめだったので
何も言わずにそのまま通した。

ハッキリ言って評価を落とした。
味付けがとても塩辛い。
ハイネケンで洗い流すも口中はしょっぱいまんま。
此処はカツレツがいいのだろうか?

そこで3回目はポークカツ定食。
とんかつ専門店に比べたら
ずいぶん薄いのが来たけれど
料理にボリュームを求めぬ身にはちょうどいい。
うん、やはり「早川」はカツだネ。
ただし、カツカレーほどのインパクトはなかった。

周りを見ていると一番人気はオムライス。
ほかはまんべんなく出ているが
ナポリタン&イタリアンのスパゲッティは
ほとんど注文が入らない。
この日もハイネケンを2本飲んだ。

そして締めくくりの4回目は先週。
あじフライやハンバーグなど、
毛色を変えりゃよいのにまたもや豚クン。
ポークソテーを発注に及ぶ。
飽きもせず歌舞伎座横のぶたざんまい。
隣りの築地はすしざんまい。

カツ同様にソテーは薄手。
それはそれでいいんだが
しょうが焼きのソースみたいに
デミグラスもしょっぱかった。

必然的にライスの助けが求められ、
少食のJ.C.ですら一皿ペロリ。
しかし、強い味方となってくれたのは
2本のハイネケンだった。

ぶたざんまいを無事終えて歩く東銀座。
時刻は14時、この日は夕刻から
錦糸町のブレイクルームで翼を休める予定だ。
腹ごなしの散歩をスタート。

築地・月島を経て深川は門前仲町。
深川不動の境内を散策するうち
15時になったので門仲のブレイクルーム、
立ち飲み酒場「ますらお」へ。

あれっ、立て看板が出てないゾ。
2階へ上がると女性スタッフが
入口のガラス戸を磨いていた。
「開店は何時だったっけ?」
「4時ですが・・・」
やっちまいやした。

「レストラン早川」
 東京都中央区銀座4-10-7
 03-3541-7664

2022年11月16日水曜日

第3147話 歌舞伎座横にて ぶたざんまい (その1)

その日はやけに暑かった。
そりゃそうだヨ、8月半ばのお盆明けだもんネ。
午前から午後へ移るあたりに銀ブラのスタート。

和泉雅子&山内賢の「二人の銀座」じゃないが
みゆき通り・すずらん通りと来て
メインの銀座通りを渡り、東銀座へと歩く。
そろそろ昼めしにしようじゃないかー。

思いつつも三原橋の交差点に到達。
斜め向こうに歌舞伎座を見ながら
晴海通りを北へ横断した。

歌舞伎役者の御用達、
インドカレー「ナイルレストラン」の店先に
短い行列ができている。

その隣りにちんまりたたずむ「レストラン早川」。
ずいぶん来てないなァ、入ろう。
ガラスのドアを透かしてのぞくと、
どうにか座れそう・・・座れた。

コロッケ・あじフライ・ポークカツ・
ポークソテーなど並ぶなか、
カツカレーをライス少なめでお願い。
ビールは一番搾り中瓶だというので
うれしくないけど発注。

料理が整うあいだ、メニューの裏側を見たら
ハイネケンの小瓶があったヨ、失敗。
すぐに相席となり、後客はポークソテーを注文。
2・4・6、3卓12席の小さな店は
何十年も変わることがない。
椅子2脚のカウンターは使われておらず死に体だ。

たぶん、ご夫婦と倅だろう、
3人態勢だが昔を覚えちゃいない。
カツカレーが運ばれた。

手前に洋食屋というより、
日本そば屋にありがちな黄褐色のカレーソース。
奥にライスを敷いた小さめのロースカツ。
カツにカレーが掛かっていないのがいい。

卓上に中濃&ウスターが用意されてるから
カツライス&カレーライスの二段活用が可能。
一皿で二度楽しめるのだ。
傍らに福神漬けの小皿が供される。
ハイネケンを追加した。

カツは肉質、揚げ上がりともにけっこう。
期待を大きく上回った。
あれェ、この店こんなに旨かったっけ?
近々、再訪してほかの料理も試そう。
決意を固めたのでした。

=つづく=

2022年11月15日火曜日

第3146話 新井薬師のシシケバーブ (その2)

中野区・新井薬師前のターキッシュに独り。
小瓶のエフィスがなくなった。
ふと思い、一番搾りの生を注文。
エフィスの重さがどの程度なのか確認するために。
はたして・・・一番の生よりエフィスは軽かった。
それでも欧州各国、仏・伊・西のビールより重い。

スープ・ケバーブ・サラダ・ピラフを完食。
ここでシェフ&マダムと言葉を交わす。
二人はやはりご夫婦で
滞日15年に及ぶオゼリさんは日本語ペラペラ。
エーゲ海を臨むイズミル出身とのこと。

あれは1984年夏、トルコをほぼ一周した。
イズミルへは純白の石灰棚田で名高い、
パムッカレから入り、
トロイの木馬の観光拠点、チャッナッカレへ抜けた。

イズミルの思い出はクラブで観たベリーダンスと
夜の屋台の生アーモンド。
ベリーダンスはカイロのサハラシティでも観たが
生アーモンドは初めての経験。
生だと本当に杏仁豆腐の香りがするんだネ。

旅行中はビールばかりで
名物のトルココーヒーやチャイ(紅茶)はホンの数回。
ここで店名「メイハーネ オゼリ」の意味である。
前述のようにオゼリはシェフの苗字だ。
トルコ語でチャイハーネはティー・ハウス(喫茶店)。
しからばメイハーネは食堂だろうか?

オゼリさんに訊ねると、居酒屋だった。
メイは酒なんだ。
トルコの地酒・ラクを飲み過ぎると
メイ酊するわけだヨ。
店名通り、酒の取り揃えが豊富。
ランチもいいけど晩酌もよさそう。
そのうち近隣の友人を誘って一献傾けよう。

お勘定は2100円也。
再訪を約して退店した。
哲学堂公園にでも行こうかな?
歩き出すと目の前に中野行きのバスが停まった。
反射的にチェンジ・オブ・マインド、乗り込む。

JR中野駅の北と南をぶ~らぶら。
南口レンガ坂の「vivo daily stand」に立ち寄ろうか?
坂入口のゲートをくぐったところで
またもやチェ~ンジ! 俺らはオバマ元大統領か?
おのれの気まぐれにはホトホト呆れる。

JR中央線に乗り、新宿で降りた。
駅ビル・ルミネの「ベルク(丘)」に登ろう。
登ると言っても店は地下なんだけどネ。

「メイハーネ オゼリ」
 東京都中野区上高田5-46-8
 03-5942-6621

2022年11月14日月曜日

第3145話 新井薬師のシシケバーブ (その1)

西武新宿線に乗って新井薬師前に来た。
本日のランチは「メイハーネ オゼリ」。
トルコ料理店である。
新井薬師こと新井山梅照院の反対側、
哲学堂公園のある北へ歩き、数分で到着。

店内はきわめてコンパクトで
3・4・3の3卓10席のみ。
真ん中の4人掛けをすすめられる。
奥に階段が見え、2階席があるようだ。

シェフはトルコ人男性、接客が日本人女性。
ご夫婦らしき二人の切盛りである。
ビールは生が一番搾り、瓶はトルコのエフェス。
はるか昔、周遊旅行中にさんざお世話になった銘柄だ。
さっそくお願いし、メニューのチェック。

家を出る前から漠然と思い描いていた。
ペースト系をエキメキ(トルコパン)に
塗りたくろうかな?
ひよこ豆のフムスが最もポピュラーで
ほうれん草とヨーグルトなんてのもある。

やはり王道にして食べ応えもある羊肉系でいこう。
スタンドが東京中の街角にある、
ドネルケバーブは見送る。
迷ったのはキョフテ(羊・牛合い挽きハンバーグ)と
シシケバーブ(羊肉串焼き)だが串焼きに決めたら
ピラフ or エキメキを問われ、ピラフを択んだ。

待つあいだ、ん? エフェスに重みを感じた。
軽い重さがあった。
軽い重さって何だヨ。
ちょっと何言ってるか判らない、ってか?
いや、ごもっとも。
軽い中にもかすかな重みを感じたわけであります。

初めにひよこ豆と野菜のスープが登場。
何を主張するでもなく穏やかなスープだ。
メインプレートは羊肉のケバーブ、
サラダ(トマト・にんじん・玉ねぎ・サニーレタス)、
ピラフの3点盛り。
玉ねぎは刺激の少ないアーリーレッド、
ピラフはシンプルなバターライスだった。

まったく脂のない赤身はもも肉だろう。
串打ちされた6ピースがあっさりと美味しい。
サラダ、ピラフはともに量がたっぷり。
朝食を抜いてきて正解だった。

=つづく=

2022年11月11日金曜日

第3144話 アクリル板の向こうとこっち (その2)

エンコのマイ・ブレイクルーム、
「神谷バー」の1階で独り飲み。
でもネ、独りでいる気がしないのは
アクリル板を隔てて見知らぬ他人が
同じものを飲み、同じものを食べているからだ。

オーダーした串かつが目の前に置かれた。
何度食べたかなァ? ここの串かつ。
大ぶり2本と繊切りキャベツ。
1本に5ピースが串打たれており、
肉・肉・玉ねぎ・肉・肉という並び。
一時期、玉ねぎの値段が高騰したせいでもあるまいが
1ピースだけで豚バラ肉が中心だ。
小袋の中濃ソースとマスタードで食べる。

ややっ! はす向かいのオジさんに
今度は串かつが来たぜ。
いったい全体どうなってるんだ。
互いの違いといえば、
あちらが30°のデンキブラン。
こちらは40°の電氣ブラン<オールド>に加えて
ハチブドー酒というだけ。

どんな面構えか確かめたいけど
視線がからむと気まずい思いをするから顔を見ずに
卓上の酒と料理だけをながめていた。
まっ、この程度は単なる偶然と思える自分がいる。

豚肉と馬肉を食う、一見トンマなオッサン二人。
でもそれなりに楽しい昼飲みではあった。
長居はせずに片割れを残し、エンコの街をフラフラ。
街にはインバウンドとともに活気がだいぶ戻った。
おっと、また島倉千代チャンの歌声が・・・

♪   お参りしましょよ 観音様です 
  おっ母さん
  こゝが こゝが 浅草よ
  お祭りみたいに 賑やかね ♪
   (作詞:野村俊夫)

フラフラを続けても入りたい店は見当たらない。
何だか自嘲気味になって来やがった。

うふふふふ、
J.C.オカザワも今じゃエンコの風来坊、
人生裏街道の枯落葉かァ。
おっと、今度は三波春夫が歌い出す。

♪   義理の 義理の夜風に さらされて
  月よお前も 泣きたかろ
  こゝろ乱れて
  抜いたすすきを 奥歯で噛んだ
  男 男泪の 落とし差し   ♪
   (作詞・猪又良)

もうやってられんわ、そろそろ帰ろ。

「神谷バー」
 東京都台東区浅草1-1-1
 03-3841-5400

2022年11月10日木曜日

第3143話 アクリル板の向こうとこっち (その1)

てなこって片肺飛行をするため、
エンコの街にやって来た。
いつもは昼食後の2軒目として利用する、
「神谷バー」にこの日は直行し、
1階の食券売り場へ。

当店の箸袋にはこうある。
1階 神谷バー 2階 レストラン 3階 割烹
以前は十中八九、いや、百中九十八九十九、
2階だったが最近は1階のほうが多い。
料理を注文する必要がないからだ。

ドライの大瓶(800円)と
馬刺し(950円)のチケットを購入。
卓上に馬刺しの写真がある。
口の中で溶ける脂の旨味をご賞味ください
ご賞味しましょう。
オニオンスライスの上にやや厚めの四角いのが10切れ。
確かに霜降りが舌に溶け、合格ラインに達している。

追加注文はウエイターに現金を預け、
チケットを買ってもららう。
電氣ブラン<オールド>(400円)、
ハチブドー酒・赤 (500円)
串かつ (500円)
以上3点をお願いした。

J.C.が位置する卓は横長の8人掛け。
アクリル板3枚で2・2・2・2に仕切られ、
バーを背にして右から2番目の2だ。
一番右側の2にオジさん着席。
はす向かいのポジションとなる。

見るともなしに眼に入る光景。
オジさんがウエイターに何か言ってるぜ。
ほどなくドライの大瓶とデンキブランが運ばれた。
ハハ~ン、察するに
J.C.の瓶ビールを目にしたオジさんが
生から瓶に差し替えを頼んだんだ。

「神谷バー」で瓶ビールは50人中、
いや100人中1人いるか、いないかだろう。
知る限り、3~4度見かけた地元の紳士一人だけ。
ふ~む、ずいぶん変わった御仁と半相席になった。
そういう自分もかなり珍しいけどネ。

ややっ! 見覚えのある皿が着卓したぜ。
オジさん、馬刺しも頼んだんだ。
どんだけ人の真似をする気なんだい?
でも彼が来たとき、
こっちの馬刺しは完食済みだったがなァ。

=つづく=

2022年11月9日水曜日

第3142話 ガード下の北海道 (その2)

御徒町のガード下にて北海の幸を楽しむ、
やさしいオジさんが二人。
平和でおだやかで極上の時間が流れてゆく。

酒を飲めない人はつくづく不幸よのぉ。
同情するが本人たちは
ちっともそんなこと思っちゃいないから
余計なお世話もいいとこだ。

追加のつまみは牡丹海老の醤油漬け。
J.C.にはすこぶる付きで旨いが
殻をむくのがわずらわしいやら
指がベトベトするわで、N田は心なしかご機嫌斜め。
面倒くさい甲殻類にはまず手を出さないんだとー。

続いてこちらが活北寄貝バター焼き。
あちらは彩美牛・もち豚・ふらのポークの焼肉盛合わせ。
北寄は生もいいけど、軽く火を通すと旨味が凝縮する。
相棒は北の大地の牛・豚に機嫌を直している。

再び飲みもののチェンジ。
N田はおつかれさんサワーというヤツをー。
妙ちきりんなものは敬遠するJ.C.はレモンサワー。
「んん? オロナミンCだな、これはー」
「そんなの店が出すかい?」
お運びの娘さんに質すと、クエン酸割りだった。

話題が浅草に飛んだ。
悪名高きホッピーロードでボラれてきたと言う。
そうだヨ、あすこはヒドいところだヨ。
大したモン出さぬくせに値段だけは観光地価格だから
地元の人間は寄り付かない。
優良店は数えるほどで劣悪店のオンパレード。
君子危うきに近寄らずでいくのが賢いのだ。

その点、アメ横はいいよネ。
ザックリ言ってホッピーロードの半額で済む。
15年ほど前までは二日に一度出向いた浅草。
それほど愛した街なのに近年は様変わり。
飲みたい店がほとんどなくなった。

かんのん通りの「志ぶや」は大好きなれど、
唯一、ビールの銘柄が合わない。
ビール中心の”飲生活”を送る身にこれは致命傷。
だんだんと足が遠のきつつある。

何よりもすし屋通り「三岩」の閉業が痛恨。
〆にしん・まぐろぬた・穴子天ぷら。
失ったものの大きさを痛感している。
よって最近の浅草は
「神谷バー」オンリーの片肺飛行。
俺の浅草は何処へ消えた?

相棒と師走の忘年飲みを約し、
JR御徒町の改札で別れた。
本日もいい酒でありました。

「北海道マルハ酒場 御徒町二号店」
 東京都台東区上野5-20-3
 050-5596-7448

2022年11月8日火曜日

第3141話 ガード下の北海道 (その1)

この日は内房から来る盟友・N田クンと昼飲み。
舞台は御徒町ガード下の「マルハ酒場」である。
正式名は「北海道マルハ酒場 御徒町二号店」と
ヤケにやっかいだどう! 

約束の15時に到着すると奴サン。
当店唯一の窓辺のカップル席で
優雅に生ビールを飲んでやがんの。
この卓はオッサンにふさわしくない。
しかも狭くて料理が並ばない。
即移動してジョッキをガッチンコ。
生は当然、サッポロ黒ラベルだ。

本日のオススメに道産魚・八角があった。
これは抑えておく。
刺身かと思いきや店長曰く、塩焼き丸一本とのこと。
いいでしょう、いただきますとも。 
こういう貴重なモノは
うかうかしてると売切れの憂き目を見るからネ。 

実に好かった、いや、素晴らしく良かった。
脂がじゅうぶんのっているのにクドさがない。
同郷のホッケに似ていても微妙に異なる。
ふくよかな包容力がホッケの長所なら、
鋭いキレ味が八角の魅力だ。

好きな女優に例えれば、
ホッケが太地喜和子で八角は加賀まりこ。 
奇しくも二人は同い年。
ん? サンドのトミーじゃないけれど、
ちょっと何言ってるか判らない、ってか? 
ですよねェ。
無視なすって先にお進み下され。

厚岸湾から揚がった真がき、
ナガえもんをレモンだけでお願い。
ちょいとデカいけど、コイツも旨いや。

話題はN田家の愛犬・小夏と4匹の仔猫たち。
彼らにはこの夏、おジャマしたときに会っている。
けっこう熱く語り合った。
動物の話で盛り上がるんだから
われわれはやさしいオジさんたちなんだねェ。

相方はとっくに日本酒に切り替えているが
ここで当方も追随に及ぶ。
道産銘酒が居並ぶ中、すでに2杯飲み比べて
大雪の蔵より良いと相方が言った、
国稀の冷たいのを所望した。
ふむ、いいんでないかい。

=つづく=

2022年11月7日月曜日

第3140話 ザ・カップル・フロム・GM (その2)

 ジャーマン・カップルと語らう思い出横丁。
「もう1杯飲む?」と訊ねたら
「そろそろ行かなきゃ」の応答。
すでにずいぶん滞空していたらしい。
手を振りながら
「アウフ・ビーダーセン!(さよなら)」

生をお替りして孤軍奮闘のアチラ系女性に
「どこから来たの?」
「福建省です」
話せば日本語はなかなか、
物腰も柔らかいコだった。

横丁でもう1軒いっとこう。
同じ通りの数軒先、「タロー」に入った。
先客が独り静かに飲んでいる。

ビールも黒ラベルの生オンリー。
似たような店だな。
驚いたことにお通しがまた中華の春雨サラダ。
さっきとまったく一緒だ。

「あれェ、今行った『ひなどり』と同じじゃん」ー
つぶやくと
「ハハ、経営者が一緒だからネ」ー
常連らしき先客の一言。
「エッ、そうなんですか?」
何てこったい!

当店も若い女性のワンオペでフロム福建省アゲイン。
そして同様に焼き鳥・焼きとんの二段構え。
さっきは鳥だったから今度は豚レバーをタレで2本。

兄妹ののおかげか、ドイツが懐かしくなり、
ぼんやりと思い出していた。
初めて訪れた1971年。
翌年のミュンヘン五輪に向け、
街はいたるところで建設ラッシュ。
外国人労働者があふれていた。
そのほとんどがトルコ人。
あの五輪は彼らの支えなしでは成り立たなかった。

西ドイツW杯は2年後の’74年。
ベッケンバウワー中心の西ドイツに
クライフ率いるオランダが挑む決勝戦は
ロンドンのパブで観た。
互いにPKの1点づつ。
結局、2ー1でホームの西ドイツが優勝。

また欧州大陸を周りたくなった。
西ドイツのデュッセルドルフと
スウェーデンのストックホルムに
親しい友人がいたこともあり、
W杯直後に出かけた。

ポルトガル・スペイン・フランスをめぐり、
ルクセンブルクからケルンに入る。
デュッセル・リューベックと北上し、
デンマーク・ノルウェーを経て
ストックに3ヶ月滞在、ロンドンに戻った。

楽しかったねェ。
もう一度行きたいなァ。
思い出に浸りきる思い出横丁なのでした。

「ひなどり4号店」
 東京都新宿区西新宿1-2-7
 03-3342-4072

「タロー」
 東京都新宿区西新宿1-2-72
  03-3348-3321

2022年11月4日金曜日

第3139話 ザ・カップル・フロム・GM (その1)

都営大江戸線を東新宿で降りた、
職安通りを西に歩き、区役所通りを左折。
何年も来ていない歌舞伎町をぶらぶら。

同じラブホ街でも新宿は鶯谷と違って迫力満点。
バリ島をイメージしたホテルなんか
同じのが3軒もあったヨ、儲かるんだネ。
こんなところにも「ラーメン二郎」があり、
毎度おなじみ、長蛇の列、儲けてるんだねェ。

大ガードをくぐって西新宿。
思い出横丁に踏み入った。
まだ13時だが開けてる店は多い。
狭いブロックを2周して品定め。
「ひなどり4号店」にステップイン。

7席ほどのカウンターの一番奥に招き入れられた。
ヒョイと横を見ると外人のカップルが
隣りのオジさんとおしゃべり中。
話題は彼らが明日から行く京都の街。

黒ラベルの生を通すと、お通しは中華風春雨サラダ。
あまりうれしくないが、まっ、いいか。
焼き鳥&焼きとんの二段構えだが
店名の「ひなどり」に敬意を払い、鳥ももをタレで2本。
串ものは2本しばりだ。
小ぶりの若鶏は柔らかく上々。

一しきりして外人女性と言葉を交わし始めた。
男性も参加してきて
向こうのオジさんと英会話のバトンタッチ。
訊けば二人は恋人同士ではなく兄妹だった。

出身はドイツのハノーバー。
ハンブルクの 200km 南の街だが
初めての欧州旅行の際は
ハンブルクからハイデルブルクへ
ハノーバーを素通りしてしまった。

妹は東京で日本語の勉強中。
兄はミュンヘンでコンサル勤め。
訪日した兄が妹を連れて長旅に出発するという。

旅程を聞いたら京都以降は
奈良→広島→博多→韓国→香港→ベトナム→
カンボジア→タイ→インドネシア
あと何処だったっけな?

ミュンヘンには2度行ってるので
思い出話と現況リポートの交換。
あとはもっぱらW杯。
何せ、互いの故国が初戦で激突するんだもんネ。

=つづく=

2022年11月3日木曜日

第3138話 「池上線」の現場検証 (その3)

久が原の隣り駅は千鳥町。
池上はそのまた隣りだ。
ヨソ者がまず行くことのない千鳥町。
人通りまばらにして、店舗も少ない駅周りに
2軒のそば屋と1軒の食堂があった。

”エビスビールあります”
札が下がるそば屋を避けて「更科 広栄」へ。
更科は好きなタイプだが14時過ぎではダメかも?
懸念したものの、滑り込みセーフ。

ドライの中瓶でわが身を元気づけていると
枝豆のサービス。
これだけで2本は飲めるが、そうもいかない。
品書きをチェック。

豆あじの唐揚げにしようかな?
いや、10尾も来られたら持て余す。
結局、そば少なめでもりをお願い。
それでも池之端の行きつけと同程度の量だ。
さっきの小さいラーメンの倍はある。」

薬味はさらし葱と粉わさび。
徳利で来たつゆに好感度が上がる。
近頃は猪口だけというのが一般的だからネ。
しかもこのスタイルならそば湯が飲みやすい。

中細のそばにコシあり。
あまり色白じゃないが更科系ではある。
甘みが勝ったつゆに
一瞬、おや? と思ったけれど
そばをたっぷり浸して本領発揮。
やせ我慢の江戸っ子には出来ない作法だがネ。

そば湯を味わいつつ、壁の品書きをながめる。
ひときわ映える短冊は
 麦きり 700円
うどんと呼ばないところに粋を感じた。

ユニークなのは天ぷらそば・天丼が並んでいても
海老の文字がいっさい見当たらないこと。
代わりにイカ天丼・イカ天そば・イカ天とじなど
イカものが幅を効かせるのはイカがなものか?
まっ、海老を省いても
天丼は海老天丼に決まってるがネ。

さらにもうひと駅歩いて池上に到着。
「池上線」の恋人たち(最後の日)とは逆に
踏切りから駅に向けて商店街を往く。

五反田行きの電車で帰った彼とは異なり、
J.C.は駅前で上池上循環バスに乗った。
馬込・大森両駅を経由するので
どちらかで途中下車するつもり。
開いてる店の数を考慮したら
大森でしょうネ、おそらく。

=おしまい=

「更科 広栄」
 東京都大田区千鳥町1-16-1
 03-3751-1165

2022年11月2日水曜日

第3137話 「池上線」の現場検証 (その2)

そうしてこうして出動に及んだ現場検証。
池上線の始発駅・五反田から蒲田行きに乗った。
到着前に腹ごしらえをと
久が原の二つ手前、御嶽山で下車。
駅名の由来はすぐ近くに
木曽の御嶽山の分祀、御岳神社があるため。

正午過ぎ、線路沿いの「安信屋」に入店。
遠征時は石橋をたたくことにした。
事前調査で当店には
★一品料理の半分シリーズ
★麺類の小さいシリーズ
この二つの存在を承知していた。
ジャスト・マイ・スタイル以外の何物でもない。

半肉だんご(650円)&小ラーメン(300円)を
ドライの中瓶とともに通す。
おっと、肉団子が昔食べたメンチボールに似てるネ。
半分といえども6個あったヨ。
甘酢あんがかかって酢豚味と言うか、
天津味と言おうか、そんな感じでとても好い。

ラーメンはいたってシンプル。
分厚いももチャーシュー1枚に
シナチク・ナルト・わかめの具材。
スープは薄い醤油味、麺は中細ほぼ真っ直ぐ。
水準に達していた。
窓の向こうに緑の電車が行き交っている。

踏切を渡って線路の反対側、御嶽神社参道に
系列店だろう、青果・惣菜 「安信屋」がある。
境内には入らず、鳥居越しに一礼して現場を目指す。

徒歩15分、末広商店会に来た。
久が原駅から西に走る商店街はたかだか200m。
通り抜けたら環八通りにぶつかる。
右手角に白山神社があり、此処は白山神社交差点。
違うネ、末広商店会はあの曲の舞台じゃないネ。
駅界隈には商店街があと二つある。
念のため、久が原栄会、ライラック通りも歩いた。
どちらも歌詞とは合理的に結びつかない。

♪   角のフルーツショップだけが
  灯りともす夜更けに  ♪

あれはやはり池上駅なのだ。
ホッとしたらノドの渇きを覚えた。
久が原には適当な店が見当たらない。
そうだ、あの商店街を歩きに行こう。

=つづく=

「安信屋」
 東京都大田区北嶺町10-10
 03-3720-3740

2022年11月1日火曜日

第3136話 「池上線」の現場検証 (その1)

とある夜、とある場末のスナックでの出来事。
入口周りが小ジャレており、
置かれたビールラックも愛飲銘柄とあって
何も確かめず、衝動的にドアノブを引いたのだ。

カウンターの内側にオネバのママ。
外には客だろうか、ホステスだろうか、
はたまたサクラだろうか、オネエが一人。
オネエといってもLGBTQには属さぬ、”純娘”だ。

中瓶をお替りしたとき、
ママがオネエにささやいた。
「Mきチャン、そろそろ歌ったら」
Mきチャン、こちらを振り向いて
「お客さんは?」
「いや、ボクはいいヨ」
ちとあわてたネ。

そうして彼女が歌い出したのは
西島三重子の「池上線」。
この春、池上に出かけた際も
紹介したが、あえてその2番をもう一度。

♪   終電時刻を確かめて 
  あなたは私と駅を出た
  角のフルーツショップだけが 
  灯りともす夜更けに
  商店街を通り抜け
  踏切り渡ったときだわね
  待っていますとつぶやいたら
  突然抱いてくれたわ

  あとからあとから 涙あふれて
  後ろ姿さえ 見えなかったの
  池上線が走る町に あなたは二度と来ないのね
  池上線に揺られながら 今日も帰る私なの ♪

   (作詞:佐藤順英)

浪花の小姑にまたドヤされそうだが、しゃんめえ。
この再紹介には理由があるのだ。
Mきちゃんの歌唱もさることながら
J.C.が激しく反応したのは彼女の歌声ではなく、
歌詞の流れる画面、ダンボの耳の代わりに目が釘付け。

いつ頃の撮影だか判らんけど、
本人映像が歩くのは池上駅前通りではなかった。
2駅隣りの久が原駅前、末広商店会だったのだ。
春に紹介したとき、
歌詞の舞台は池上線のタイトルロール、
池上駅に相違ないと断定したからネ。

自信は揺らぎ、心が騒いだ。
それから眠れぬ夜が続いている。
ちょいとオーバーながら、ものの弾みです。

=つづく=