2015年3月12日木曜日

第1053話 閃いて日暮れの里 (その1)

サブタイトルは変われども今話は昨話の続編みたいなもの。
30年ぶりに再会したT栄サンとともに
JR赤羽駅で京浜東北線の電車に乗った途端、少しく後悔。
埼京線で一つ目の十条に向かえばよかったものを―。
そのことであった。

突然の雨のため、傘ナシの二人は赤羽でのはしご酒を断念したのだ。
いわば降雨コールド負けである。
よって2軒目は駅から至近でなければならない。
京浜東北沿線だと、まず東十条の「杯一」が第一感。
そうだ、ここにしようと決めたものの、
電車は無情にも東十条駅のホームを離れたところであった。

王子の「山田屋」は気に入り店ながら駅からちと遠い。
乗降客も少なけりゃ、飲食店なんざ指折り数えて片手に余る、
上中里で唯一使える「百亀樓」は一皿のボリュームがあり過ぎる。
豚肉の朝鮮焼きなど、なかなかの旨さだが
エイジ的にわれわれ二人にはムリだ。

田端・西日暮里では駅そばにこれといった店が思い浮かばない。
日暮里・鶯谷・・・やはり上野まで行ってしまうか・・・。
いや、新宿・池袋ほどではないにせよ、
メガ・ステーションの上野は駅の周りが遠い。
かといって駅中(なか)の店舗では味気ない。
上野ならむしろ一つ先の御徒町のほうが使い勝手がいい。
頭の中で漠然と御徒町のガード下をイメージしていた。

前述の通り、乗降客の数きわめて少ない上中里で停車中、
向かいのホームにも反対方向の大宮行き電車が停車していた。
ん? 大宮? 大宮ねェ・・・
駅東口には街で一番有名な酒場「いづみや」があったなァ。
雰囲気のいい店だが一昨年の夏には
史上最悪の目刺しを食わされたっけ・・・。
それを差し引いてもあの臨場感は捨てがたい。

なあんてぼんやり思っているうち閃(ひらめ)いた。
そうだ、日暮里には「いづみや」の支店があるじゃないか!
ツレのT栄サンにかくかくしかじか、
店のプロフィルを説明して日暮里駅下車の巻であった。

冬至から2ヶ月経過したとはいえ、冬の日は短い。
小雨そぼ降る東口ロータリーに出たとき、すでに日が暮れていた。
文字通りの日暮里である。
「いづみや日暮里店」は本店よりずいぶんコンパクトな造りにつき、
席を確保できるかどうか懸念したが店内は意外にも空いていた。

さっきまで居た赤羽「まるよし」のそれに似たカウンターに落ち着き、
さっそくの大瓶ビールはサッポロラガー、いわゆる赤星である。
これは大宮の本店同様だ。

向かいのオジイさんが片手に持ったグラスを差し上げてこちらに向かい、
乾杯のポーズをとったのでわれわれもそれに応える。
大衆酒場ではこういうシーンがしばしば見受けられるんだよねェ。

=つづく=