浅草は観音通りの「志婦や」。
生ビールを飲みながら
壁の品書きを目で追っていた。
おっと車子があるじゃないかー。
正しい漢字の蝦蛄ではなく、
車子と明記されているのは
蝦蛄と書いたら
読めない人がいるからかな?
小ぶりながらも旨みじゅうぶん。
おそらく瀬戸内産だろう。
たっぷり添えられた本わさびに
当店の矜持を見る思いがした。
菊正のぬる燗に切り替え、
北寄貝刺しを追加。
普段は上燗を飲むが
何せこの暑さだ。
菊正の冷酒があればいいけど
あいにく冷たいのは他の銘柄。
身の厚い北寄貝が一しきり、
舌の上に涼風を吹かせる。
以前は軽く湯通しして
ほんのりピンクの部分も
散見されたが今日は完生状態。
赤貝・ミル貝・鳥貝・石垣貝。
こういう貝の仲間は大好物。
いずれ劣らず柔らかいのに
ほのかなコリコリ感が好もしい。
しばらく来ないうちに
店の人たちも年齢を重ねた。
久しぶりに大将と言葉を交わす。
「懐かしく女将さんのお顔を
拝見したヨ。
最近はお店に出てるんだネ」
「ええ、そうなんですヨ」
いつもお腹が大きかったり、
赤ん坊をおんぶしていた彼女は
なかなかの美人である。
先代の未亡人、大女将が
今も元気に立ち働いている。
この人は焼き物担当。
「お母さんもお元気そうで」
「ええ、おかげ様で」
この翌日。
前日の「神谷バー」で
お替わりしかかった蛍烏賊が
また恋しくなって再訪。
すると、バーの入口で
「志婦や」の大女将とバッタリ。
二人して偶然に驚いたのでした。
「志婦や」
東京都台東区浅草1-1-6
03-3841-5612