2013年7月9日火曜日

第616話 巣鴨でそば屋をもう1軒 (その2)

巣鴨は地蔵通りの日本そば舗「菊谷」に入店したところ。
うなぎの寝床とまでは言わないが
幅よりも奥行きのある店内は活気にあふれていた。
外からは予測不可能な繁盛ぶりである。

突き当たりに3~4名掛けの短いカウンターがあり、
ザッと見渡したところ、空席はそこしかないようだ。
案の定、お運びのオバさんに案内されたのはカウンター。
椅子を一つおいて先客は若い女性が独り。
食しているのはもりそばのようであった。

1軒目で中瓶を飲んできたのでビールはガマン。
入店前から食べるのはもりと決めていたものの、
一応は品書きに目を通さねば・・・。

ふむ、ふむ、なかなかにこだわりを見せる店だ。
ゴチャゴチャと但し書きが多いのは垢抜けないがネ。
せっかくだから抜粋して紹介しよう。

=冷たいお蕎麦= 
 ・もり 600円 (大もり800円)
 ・吟せいろ(厳選した蕎麦の実を使用)  850円
    汁にはより厳選された鰹節を使用
 ・利き蕎麦(二種類の異なるもりそば) 1150円
    汁にはより厳選された鰹節を使用
 ・揚げ玉ぶっかけ 800円  (吟) 1050円
    揚げ玉 大根おろし 鰹節 京都祇園の黒七味を添えて

=温かいお蕎麦=
 ・かけ(長崎産焼きアゴ使用) 700円  (吟) 950円
 ・平飼い有精卵の玉子とじ  950円  (吟) 1100円

=小盛りのお蕎麦=
 ・お子様そば(薬味なし) 500円  (吟) 650円
 ・お子様かけそば  600円  (吟) 750円
   大人の方も注文可

 *追加の本わさび 50円 追加のもり汁 100円

とまあ、こんな調子であった。
”より厳選された”の文言がダサい。
”平飼い”されているのは親のほうで有精卵ではあるまい。
大人も注文できるなら”お子様そば”は余計、小盛りそばでじゅうぶん。
細かいところを意地悪く指摘したが
品書きにはセンスの欠如が明らかだ。

利きそばを注文する。
もりと吟せいろ1枚ずつでボリュームは計1.5人前とのこと。
薬味は本わさびと辛味大根、これはうれしい。
つゆは甘みを排して気取ったそば屋にありがちなタイプだ。

もり、吟せいろともにエッジの立った細打ち。
ノド越しより噛み締め感で食べさせる。
運んでくれたお兄サン曰く、
「吟はつなぎ5%です、もりは~~です」―
~~は聴き取れなかったが、あえて聴き返さなかった。

ここ十数年、こんなスタイルのチョイ高そば屋がずいぶん増えた。
江戸前鮨が来た道を江戸そばもまた歩むのだろうか?
庶民に高嶺の花となったら、もはや日本そばじゃあるまいて。
未来を憂う今日この頃であります。

「手打そば 菊谷」
 豊島区巣鴨4-14-15
 03-3918-3462