2013年7月15日月曜日

第620話 裕次郎も旭もアサヒ麦酒 (その2)

「錆びたナイフ」を観た二日後に
同じひかりTVで観たのが小林旭の「意気に感ず」。
旭は珍しくも熱血サラリーマンを演じている。
都会派・裕次郎にはリーマンものが多く、
銀座の街角や日比谷の公園に立つと、ピタリ絵になった。
もっとも彼の真骨頂は港と波止場と船の上。
いっぽう旭は草原とギターと赤い夕陽だろうか。

何ともダサいタイトルの「意気に感ず」。
共演者は怪優・伊藤雄之助。
この人の容貌がスクリーンに映し出されると、
ほかの俳優はまったく太刀打ちできない。

女優陣はお馴染み浅丘ルリ子、それに十朱幸代。
当然ながらルリ子のほうが格上だ。
ところが二人並んでいるのを見て驚いた。
存在感ではルリ子が際立っているものの、
清楚さ、可憐さで幸代が圧倒している。
スラリと健康的に伸びた四肢に加え、頭身バランスがとてもよい。
八頭身まではいかなくとも七頭身はクリアしていよう。

東京五輪が無事終わり、高度経済成長真っ只中。
銀幕に1965年の東京の街が活写されてまぶしい。
尾張町交差点(銀座4&5丁目)は服部時計店の時計塔。
有楽町駅前の交通会館に日比谷公園の噴水。
すべてが半世紀を超えてなお、残存しているのはスゴいことだ。

2本の映画の間には7年もの時代差がある。
日活とアサヒの蜜月は続いていたのだろう。
やたらめったらアサヒビールが登場する。
それもメーカーの意向を反映してか、小瓶のスタイニーばかり。
銀座のバーで旭に「アサヒスタイニー!」と叫ばせてるもんネ。
しかも「給料前で金がないから小瓶にしとく」だとサ。
ミエミエの言い訳までさせちゃって、あざとさもここに極まれり。
まっ、しょうがねェか、旭は読みようによっちゃアサヒだから。

そのスタイニーを中ジョッキにドバドバっと注いで
ガバガバっと飲むんだからアカ抜けないことはなはだしい。
当時の”バー”は現在の”クラブ”とほぼ同じ。
今のホステスさんは昔はバーの女給さんだ。
小瓶のビールをジョッキにそそぐ銀座のクラブがどこにある。

それにしてもあの頃のアサヒビールはとてつもなく不味かった。
3年ほど前だと思う。
往時のアサヒの復刻版が季節限定で売り出されたから
ロング缶を6缶も買って飲んでみたら
あまりのヒドさにしばらく手が出なかったもんネ。
結局、友人に
「珍しいのがあるから飲んでみなヨ」―
そう言って処分したんじゃなかったかな?
ふっふっふ、J.C.もなかなかのワルよのォ。