2013年7月30日火曜日

第631話 アナタはたら子派? 明太派? (その1)

たら子と明太子の違いがお判りですか?
そんなもん判っとるヨという方が大半ではあろう。
ところが所変われば呼び名も変わるで
関東以北と関西以西では微妙に違うんですナこれが。

例えば東京ではたら子を唐辛子や清酒などの調味液で
二度漬けしたものが明太子と呼ばれている。
それが関西や九州では東京のたら子が明太子で
東京の明太子は辛子明太子と相成るのだ。
どちらも原料は助宗鱈(スケソウダラ)の真子限定。
真鱈(マダラ)のは大きすぎて大味で塩蔵には向かない。

中国語でスケソウは明太(ミンタイ)、朝鮮語では明太(ミョンテ)。
驚いたことにロシア語もミンタイだ。
もともと塩漬けたら子の生食は日本独自の食べ方だった。
いつしか朝鮮半島でたら子のキムチが作られるようになり、
これが明太子の原型になる。
関釜連絡線で運ばれたたら子キムチが辛子明太子となり、
逆輸入のカタチで下関や北九州地方に広まったわけだ。
ちなみに日本最古のの辛子明太子専門店は1954年、
下関に誕生している。
もっとも辛子明太子そのものは大正時代から輸入されており、
輸入元は下関が8割以上を占めていたそうだ。

J.C.はたら子を好み、明太子を好まない。
明太子を購入することはまずないから嫌いなのだろう。
たら子好きの明太子嫌いって矛盾してるかな?

いや、いや、もう数十年も前になるけれど、
5代目月の家圓鏡(現8代目橘家圓蔵)がラジオ番組で
得意げにくっちゃべっていた。
「オレは天ぷらが大嫌いだけど、天丼は大好きだヨ!」―
そう、こういうことってあるんだよネ。
圓鏡は天ぷらの油っこさがイヤだったが
天丼の甘辛さには目がなかったんでしょうネ。

J.C.の場合も似たり寄ったりで明太子だと味が濃すぎるのだ。
何かの本で読んだところでは
漬ける調味液の原材料がたら子の比じゃなかった。
キムチにしたって韓国の真っ赤なヤツより
北朝鮮でポピュラーな水キムチのほうがいい。
第一、日本には白菜漬という傑作があるじゃないか。

好き嫌いが少ない嗜好の持ち主なのに
韓国料理店だけはあまり足が向かない。
最近は無煙ロースターのおかげで
衣服に匂いが移ることもなくなった。
それでもやはり気が進まない。

おそらく韓国料理は地球上でもっとも味の濃い料理。
焼肉でもチゲ鍋でもビールや白飯の助けが必要不可欠だ。
店内にこもる煙り、飛び散る油の粒子、他に例のない濃厚な味付け、
この3点こそが欧米でなかなか受け容れられない理由だろう。
欧米人は極端にそういうのを嫌いますからネ。
真逆の日本料理がゆっくりと、でもしっかりと
世界に普及してゆくのとは実に対照的な景色がそこにある。

=つづく=